(社説)夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める
2021
年 5
月 26
日 朝日新聞
新型 コロナウイルス の感染拡大は止まらず、 東京都 などに出されている 緊急事態宣言 の再延長は避けられない情勢だ。
この夏にその東京で五輪・ パラリンピック を開くことが理にかなうとはとても思えない。人々の当然の疑問や懸念に向き合おうとせず、突き進む政府、都、五輪関係者らに対する不信と反発は広がるばかりだ。
冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める。
生命・健康が最優先
驚くべき発言があった。
国際オリンピック委員会 (IOC)のコーツ副会長が先週、宣言下でも五輪は開けるとの認識を記者会見で述べた。
だが、ただ競技が無事成立すればよいという話ではない。国民の感覚とのずれは明らかで、明確な根拠を示さないまま「イエス」と言い切るその様子は、IOCの独善的な体質を改めて印象づける形となった。
選手をはじめ、五輪を目標に努力し、様々な準備をしてきた多くの人を考えれば、中止はむろん避けたい。 だが何より大切なのは、市民の生命であり、日々のくらしを支え、成り立たせる基盤を維持することだ。 五輪によってそれが脅かされるような事態を招いてはならない。
まず恐れるのは、言うまでもない、健康への脅威だ。
この先、感染の拡大が落ち着く保証はなく、むしろ変異株の出現で警戒の度は強まっている。一般への ワクチン 接種が始まったものの対象は高齢者に限られ、集団免疫の状態をつくり出せるとしてもかなり先だ。
そこに選手と関係者で9万を超す人が入国する。無観客にしたとしても、ボランティアを含めると十数万規模の人間が集まり、活動し、終わればそれぞれの国や地元に戻る。世界からウイルスが入りこみ、また各地に散っていく可能性は拭えない。
IOCや組織委員会は「検査と隔離」で対応するといい、この方式で多くの国際大会が開かれてきた実績を強調する。しかし五輪は規模がまるで違う。
「賭け」は許されない
選手や競技役員らの行動は、おおむねコントロールできるかもしれない。だが、それ以外の人たちについては自制に頼らざるを得ない部分が多い。
順守すべき行動ルールも詳細まで決まっておらず、このままではぶっつけ本番で大会を迎えることになる。当初から不安視されてきた酷暑対策との両立も容易な話ではない。
組織委は 医療従事者 を確保するめどがつきつつあると言う。では、いざという場合の病床はどうか。医療の逼迫(ひっぱく)に悩む東京近隣の各知事は、五輪関係者だからといって優遇することはできないと表明している。県民を守る首長として当然の判断だ。
誰もが安全・安心を確信できる状況にはほど遠い。残念ながらそれが現実ではないか。
もちろんうまくいく可能性がないわけではない。しかしリスクへの備えを幾重にも張り巡らせ、それが機能して初めて成り立つのが五輪だ。十全ではないとわかっているのに踏み切って問題が起きたら、誰が責任をとるのか、とれるのか。「賭け」は許されないと知るべきだ。
こうした認識は多くの市民が共有するところだ。今月の小紙の 世論調査 で、この夏の開催を支持する答えは14%にとどまった。 背景には、五輪を開催する意義そのものへの疑念が深まっていることもうかがえる。
五輪は単に世界一を決める場ではない。肥大化やゆきすぎた商業主義など数々の問題を指摘されながらも支持をつなぎとめてきたのは、掲げる理想への共感があったからだ。 五輪憲章は機会の平等と友情、連帯、フェアプレー、相互理解を求め、 人間の尊厳
を保つことに重きを置く社会の確立をうたう。
憲章の理念はどこへ
ところが現状はどうか。
コロナ禍で、競技によっては予選に出られなかった選手がいる。 ワクチン 普及が進む国とそうでない国とで厳然たる格差が生じ、それは練習やプレーにも当然影響する。 選手村 での行動は管理され、事前合宿地などに手を挙げた自治体が期待した、各国選手と住民との交流も難しい。憲章が空文化しているのは明らかではないか。
人々が活動を制限され困難を強いられるなか、それでも 五輪を開く意義 はどこにあるのか。社説は、政府、都、組織委に説明するよう重ねて訴えたが、腑(ふ)に落ちる答えはなかった。
それどころか誘致時に唱えた復興五輪・コンパクト五輪のめっきがはがれ、「コロナに打ち勝った証し」も消えた今、 五輪は政権を維持し、選挙に臨むための道具になりつつある。 国民の声がどうあろうが、首相は開催する意向だと伝えられる。
そもそも五輪とは何か。社会に分断を残し、万人に祝福されない祭典を強行したとき、何を得て、何を失うのか。首相はよくよく考えねばならない。 小池百合子
都知事
や 橋本聖子
会長ら組織委の幹部も同様である。
(社説)夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める:朝日新聞デジタル (asahi.com)
天声人語では、早くから開催に疑問を呈していた 朝日新聞
ですが、ここに来てようやく社説で立場を鮮明にしました。
オリンピックというメガイベントを開けば感染拡大のリスクは大きく、それが現実化した時の被害ははかり知れません。
ここは、延期もしくは中止するのが妥当なところでしょう。
米国が、日本を渡航禁止の レベル4
に指定しました。
ちなみに、中国はレベル3、韓国はレベル2です。
他の150か国と同じとはいえ、やはり最高レベルのパンデミックです。
経済的な損失が膨らむという近視眼的な理由から、強行するのは疑問です。
開催の大義がないのも明らかでしょう。
これまでも中途半端な対策で、事態が悪化してきました。
舛添元都知事「たかが1.8 兆円」東京五輪中止損失の試算に「開催で感染が長引いたほうが損失は遙かに大きい」 (msn.com)
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