日本の解き方 円安の「恩恵」数十兆円〝国民に還元〟せよ 財務省はマスコミの「円安悪者論」に加担 トランプ氏はバイデン政権の無策批判も
外国為替市場の円相場は一時、1ドル=160円まで円安ドル高が進んだ後、政府・日銀の為替介入とみられる動きがあり、乱高下している。「円安=悪」という論調も多いが、元内閣参事官で嘉悦大教授の高橋洋一氏は「 日本経済にとって円安の恩恵は大きい 」と説く。それを裏付けるかのように、米国の製造業を重視するドナルド・トランプ前大統領は円安ドル高を強く批判した。大統領選の結果次第で円高基調に反転する可能性も出てきた。高橋氏は、これまでの円安による最大の受益者は日本政府だとして、いまのうちに数十兆円分の「含み益」を国民に還元すべきだと主張する。
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トランプ前米大統領は、為替の円安ドル高について「 米国の製造業にとって大惨事だ 」とSNSに投稿し、無策のジョー・バイデン政権を批判した。
古今東西、 自国通貨安は「近隣窮乏化政策」 として知られている。円安は日本の国内総生産(GDP)にプラス要因で、米国にとってはマイナス要因だ。
これは国際機関での経済分析からも知られている。ちなみに、経済協力開発機構(OECD)の経済モデルでは、10%の円安で、日本のGDPは1~3年以内に0・4~1・2%増加するが、米国のGDPは0・2%低下する。
その証拠に、最近の日本企業の業績は好調だ。直近の法人企業統計でも過去最高収益になっている。これで、法人税、所得税も伸びるだろう。そして国内で最大の利益享受者は、百数十兆円のドル債を 外国為替資金特別会計(外為特会) で保有する日本政府だ。含み益は数十兆円になるだろう。
このため、国内から円安を止めることは国益に反する。しかし、マスコミ報道の大半は「 円安が悪い」という印象操作 をしてきた。財務省も外為特会に言及されないように、この「円安悪者論」に加担してきた。
しかし、ついに海外から文句が来た。今まで米国から文句がなかったのは奇跡であり、トランプ氏が指摘するようにバイデン政権の無策かもしれない。
トランプ氏の周辺には、国益優先のスタッフがいるのだろう。本来であれば、バイデン政権は労働者層の支持を得ているので、円安が米国の不利益になっているのを見逃してはいけなかった。トランプ政権になったら、そうも行かなくなるだろう。
為替が両国通貨の交換比率である以上、理論的には両国通貨量の比が「理論値」となるはずで、それが足元で1ドル=110円程度であることを考えると、現状の円安は大変な幸運だった。その幸運のうちに、外為特会の含み益を早く取り出すことを考えるべきだ。
単純にいえば、外貨債を売却するわけだが、それが円安是正への介入とみなされても、今ならさほど問題にならないだろう。その売却自体は為替相場に与える影響はごく短期しか有効でないが、ひょっとすると理論値への回帰になるかもしれない。
ただし、それが政治的に「トランプ氏支持」とみなされることを警戒せざるを得ないなら、有期の外貨債を償還することで手じまいすればいい。これは売却と同じであるが、償還なので介入とはみなされないはずだ。そもそも日本の保有外貨債残高はGDP比100%以上で、先進国平均の10%程度と比べて突出して高い。それは償還時期を迎えた外貨債を再購入しているからで、いってみれば「 ステルスドル買い 」だ。変動相場制なら、再購入してはいけないので、自然体で対応すればいい。
そのうえで、外為特会の含み益を順次取り出して、国民に還元すべきである。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【 外国為替資金特別会計 】為替相場が急激に変動した際の為替介入などのために設けられた特別会計。かつての円売り外貨買い介入の際に取得した外貨を資産、円を調達するために発行した政府短期証券を負債として保有する。2023年3月末時点で保有する有価証券は 124兆6160億円 。
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