K-POP 0
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じつは ひそかにラブストーリーが好きです小説だけでなく 映画やドラマ そして歌でも 恋の物語にひかれますだけど いつまでたっても 恋というものがわからない 困ったもんですそんなこんなで 図書館で見つけて借りてきたわけですが作者はお名前は存じていますが 初読みかな?そしていつものようにタイトルだけで 事前情報に触れずに読みはじめました本書の主人公アイコは 生まれつき顔に大きなアザがある女性そのアイコが ひとりの男性に出会って恋におちる物語なんですがやはりこれは 恋物語ではなく アイコの人生の物語でした人間 外見より中身が大切なんて 気安く言われますが現代は マスメディアでもSNSでも 「美容」とか「可愛い」という言葉が氾濫していてアザはなくても 多くの女性や 最近では男性も 自分の容姿を気にしないではいられない時代本書を読んでも アイコの心中をどこまで推し量ることができたのかなまして 好きな男性を前にして アイコがどう葛藤し苦しんだのか 理解はできないと感じましたそして 外見より中身といわれても私などは その中身におおいに問題を感じていてアザなどと違って 人からは見えないだけに このコンプレックスはやっかいですその弱さ醜さのゆえに 人と関わらないで生きていたいとさえ思えてしまうアイコのように 自分の考え方次第で どうにでもなるのかもしれませんがはあ 人生とは やっぱり やっかいなものです読後に 松井玲奈さん主演で映画かもされていたことを知りましたそちらも見てみたいです『よだかの片想い』 著 者 島本理生 発行所 集英社 初 版 2013年4月30日
Jun 20, 2024
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いつもどうり 事前情報無しで タイトルでSFっぽい話かななどといういいかげんな理由で選んだ一冊でしたけど読み進める中で 行間から浮かび上がってくる 不穏な緊張感に 襟を正すことになりましたそれぞれ20ページに満たない 15の短編で それぞれテーマは異なっていますが正常から異常までの 様々な人間心理の闇の深さや耐えられないような重圧をもって迫ってくる 世界や社会のありようで心が揺さぶられたような気がします特に1901年にドイツで生まれた作者が生きた戦火の時代は同じく敗戦国家である日本にも通じる空気感を感じてヒットラーの好戦国家ではなく そこで生きていた一般庶民の悲惨な姿にも感じるものがありました最後の訳者あとがきで 本書が「カシュニッツ短編傑作選」の第二集だと知りました出版順に読むべきであったかはわかりませんが近いうちに第一集も読まざるをえないでしょうね 今の気持ちでは『ある晴れたXデイに カシュニッツ短編傑作選』 DER TAG X UND ANDERE GESCHICHTEN 著 者 マリー・ルイーゼ・カシュニッツ 編訳者 酒寄進一 発行所 東京創元社 初 版 2024年4月26日 収録作品 『雪解け』Schneeschmelze (1960) 『ポップとミンゲル』Popp und Mingel (1960) 『太った子』Das dicke Kind (1951) 『火中の足』Die FuBe im Feuer (1964) 『財産目録』Das Inventar (1966) 『幸せでいっぱい』Glickes (遺稿 1960年から1964年の間) 『作家』Der Deserteur (1965) 『脱走兵』Der Deserteur (1960) 『いつかあるとき』Zu irgendeiner (1964) 『地滑り』Der Bergrutsch (1949) 『トロワ・サパンへの執着』Die ubermaBige Liebe zu Torois Sapins (1960) 『チューリップ男』Der Tulpenmann (1966) 『ある晴れたXデイに』Der Tag X (1963) 『結婚式の客』Die Hochzeutsgast (遺稿、おそらく1946年頃) 『旅立ち』Die Abreise (1950)
Jun 19, 2024
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生物学に興味がありますが 素人にすぎないですから「数理生物学」なる研究分野があることは まったく知りませんでした宇宙物理なら数学が重要なのは理解できますが生物の研究に数学が どのように関わってくるのか まったく想像できませんでした著者は その分野の専門家ということで複雑な生命の種分化を 数学理論によって 解き明かすことが本書の目的であるらしいのですがなにぶん 高校時代に数学からドロップアウトしてしまった 数学音痴なものですから読み進めるなかで 次々に登場してくる数式と それから描かれるグラフの意味がまるで理解不能で その後の解説の文章が頼りでしたから本当の意味で 主旨を理解できたかどうかは 怪しいものですけど・・・種分化 生物のある種から別の種が生み出されることでダーウィンの『種の起源』で有名な ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチなどが進化論のはじまりから その証拠(?)とされてきましたしかし 疑ダーウィニズム者としては 本書で語られている実例がその生物がもともと持っているもののバリエイションに過ぎないのではないかと感じますほんとうに教えていただきたいのは もともと持っていなかった機能をどのように獲得して異なる種として存在するようになったのかという答えなのですどのように 海中に適応していた 植物や動物が 陸上で生活できるようになったのか昆虫や鳥は どのようにして飛べるようになったのかなどなど 進化論の根幹に関わる疑問が突然変異と 長い時間と 自然淘汰によるというダーウィンの時代から 代わり映えのしない説明に終始しているのがそして 多くの科学者が それをまるで信仰のように守っていることがあ~ モヤモヤする『新たな種はどのようにできるのか? 生物多様性の起源をもとめて』 著 者 山口諒 コーディネーター 巌佐庸 発行所 共立出版 共立スマートセレクション 42 初 版 2024年3月30日 目 次 ①種の多様性と分類学 1.1 生物多様性 1.2 スラウェシ島のチョウ 1.3 北海道のオオヨモギハムシ 1.4 種の境界線はどこに? ―分類学は何を見ているのか― ②生物の性質としての「種」 2.1 種概念と生殖隔離 2.2 生殖隔離の種類 2.3 種の違いを生殖隔離で量る 2.4 連続的な種分化プロセス ③種分化のメカニズム 3.1 適応度の谷 3.2 中立突然変異と雑種不稔 3.3 2島モデル 3.4 曖昧な種の境界はどこか ー種分化の転換点ー ④環境適応と種分化 4.1 進化を目撃する 4.2 生態的種分化 4.3 適応度地形理論 4.4 フラスコの中の種分化 4.5 突然変異順位種分化 4.6 種分化の不死鳥仮説 ⑤交雑帯 5.1 種分化後の二次的接触 5.2 クライン 5.3 生殖隔離の強化 5.4 生態的・生殖的形質置換 5.5 雑種種分化 5.6 交雑帯の進化・生態ダイナミクスは予測できるか ⑥種分化サイクル 6.1 種分化サイクル:繰り返し起きる種分化 6.2 移住率と種分化率の単純ではない関係性 6.3 高い種多様性は種文化を促進するか 6.4 適応放散する種・しない種 6.5 種分化と絶滅のバランス 6.6 絶滅による種文化 6.7 固有種数のダイナミクス ⑦種分化研究と系統樹 7.1 分子系統樹 7.2 生物系統地理学 7.3 ミクロ進化とマクロ進化 7.4 種文化研究のこれから
Jun 16, 2024
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日頃 SFはガチなハードSFが好きだとか宇宙の謎と生命の起源の謎の答えを求めて 科学書を読み漁っているのに何を血迷ったか 少女ふたりが主人公のラノベを読んでしまいましたまあ アイドルも大好きだったりするので あながち 的外れではないですけどただし 読んでいる最中 ヘ理屈頑固親父としては 突込みを我慢しっぱなしではありましたが・・・たとえば 直径50キロの小さな星に 大気が存在してるだと!とかねそれはそれとして 作者の創造したこの可愛らしい宇宙を現代社会の諸問題への眼差しを含んだ寓話として 楽しく拝読したしましたたぶん 私は 天才的な女性科学者や 友情のために爆発的な戦闘力を発揮する少女がお気に入りなのでしょうね ロリコンではないと 自分では思ってますけど作者はあとがきで 続編への意欲を表明されていますがさて 7月にも刊行されるという『少女星間漂流記2』私は 読む それとも 読まない はたしてどちらになるのでしょうかところで 主人公二人の名前が 渡り鳥のシャレだという噂は真実なのでしょうか『少女星間漂流記』 著 者 東崎惟子 発行所 KADOKAWA 電撃文庫 あ-55-4 初 版 2024年3月10日
Jun 14, 2024
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昨年あたりから それまで苦手だと思っていた 海外の文学作品にも手を染め始めていて本書も 事前情報も無しで 初見の作家さんでしたが東京創元社の「海外文学セレクション」のシリーズということで手を出しましたなので まず目次を開いてビックリ ずらずらと100タイトルが並んでいるではないですかつまり 一作品が2ページほどということで ショートショートなの?って予感しかし 読み進めるなかで けっしてシンプルなアイデアストーリーではないと わかりました幽霊といっても 日本風の「うらめしや~」などという ホラーではなくそれぞれ 幽霊が物語の軸として登場しますが 純粋なファンタジーとも違った味わいでわずか2ページの間に 生ける者と死せる者をめぐる 深みのある物語が展開されます書面から目を離して 自分の人生に思いを馳せることもありまさに わずか2頁の「人生劇場」であり 「人生喜劇」や「人生悲劇」でありましたもちろん 文化的背景の違いから 理解できたか怪しい作品もありましたがとても ユニークで楽しい読書体験でしたただ この百作品を 私は2日に渡って 5時間程度で読みましたがそんな読み方ではなく 少しずつ読むことで もっと味わい深かったかもしれません『いろいろな幽霊』 THE GHOST VARIATIONS (2020) 著 者 ケヴィン・ブロックマイヤー 訳 者 市田泉 発行所 東京創元社 [海外文学セレクション] 初 版 2024年4月19日
Jun 12, 2024
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このところ 科学書は宇宙論のものばかり読んでいましたが宇宙の謎以上に 自分を含めて身近な存在でありながら宇宙以上に謎の存在は生命だと思っていてしかも このタイトルの本書を手に取ったのは私が ダーウィニズム進化論というものに懐疑的な 異端者だからですけどね21世紀になって 遺伝子あるいはDNAの解析技術が 驚異的に進歩した結果動物間のDNAの比較研究から 進化の仕組みを研究する流れになって本書のほとんどの部分も ほぼ分子生物学からのアプローチになっていますがいまだ DNAでも不明の部分が多い現状で その配列が近似的だからといって即 進化の証拠だと言えるのでしょうかまた 不思議な形状の兜が もとは羽の遺伝子が移動して 作られているといってもその擬態用の形状の起源の何がわかったというのでしょうかわたしには 極小の世界だけ見て 全体を見ていないのではとしか感じられませんそんなことで 大進化も小進化の積み重ねで可能だと言えるのでしょう現在生きている生物も 化石で発見される古生物も生きている(生きていた)ことが 驚異的なことであって 尊い存在なのですその起源は 神かダーウィニズムかだけしかないのでしょうかどちらでもない 真実とよべるものは 存在しないのでしょうか『ダーウィンの進化論はどこまで正しいのか? 進化の仕組みを基礎から学ぶ』 著 者 河田雅圭 発行所 光文社 光文社新書 1307 初 版 2024年4月30日 目 次 第1章 進化とは何か 1・1 そもそも進化とはなんだろうか? 1・2 有害な進化も起こりうる 1・3 ダーウィン進化論は時代遅れ? 第2章 変異・多様性とはなにか 2・1 突然変異はランダムなのか? 2・2 多様性は高ければいいってもんじゃない 2・3 受け継がれるのは遺伝子だけか? 第3章 自然選択とは何か 3・1 種の保存のために生物は進化する? 3・2 生物は利己的な遺伝子に操られている? 3・3 生き残るためには常に進化しないといけない? 第4章 種・大進化とは何か 4・1 進化=種の誕生か? 4・2 大進化は小進化で説明できないのか?
Jun 10, 2024
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昨年読んだ 第三回警察小説大賞受賞作の『転がる検事に苔むさず』がまあまあ楽しかったので 続編である本書を読んでみました以外にも本書は4作品+αという短編集で それぞれ異なる主人公が登場すしますといっても 前作の主人公である久我検事がメインであることに変わりはないのですがその仲間の検事たちや 前作でも登場した警察官や弁護士 おまけに警察医や民間人まで登場してどちらかというと チーム久我のメンバー紹介だったのかなまるでTV Asahi製作の 人情ミステリドラマのような雰囲気をかもしだしてこれは 次作 このメンバーの強力を受けて久我検事が 組織内部の圧力と戦いながら 巨悪に対峙して難事件を解決するという流れなのかな最後の最後に それらしき電話もかかってきましたからねなどと 妄想してしまいましたが まじで次作は出版されるのでしょうかということで 今回もほんわか楽しく読了しました特に『天冥の標』読了の直後なので 張り詰めていた肩の力も抜けた感じですただし 順番に読んでいくと 時系列の面でかなり混乱しちゃいましたけどね『恋する検事はわきまえない』 著 者 直島翔 発行所 小学館 初 版 2022年3月1日 目 次 シャベルとスコップ ジャンブルズ 恋する検事はわきまえない 海と殺意 健ちゃんに法はいらない 春風
Jun 5, 2024
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ついに わが生涯で出会った最長の小説『天冥の標』10巻17冊読了しました読み始めたのが昨年の1月ですから 約1年半かけてしまいましたが今はもっと早く読むべきだったと反省これほど多数の登場人物とエピソードを 記憶弱者の私が憶えていれるはずもなくそうか第1巻は ***のあとのことだったのかと気がついたのは本書を読み終わった後という情けなさしかし、リアルタイムで読まれた読者の皆様は 9年あまりの時間にどう対応されたのでしょうさて 全巻読み終えた感想ですがこれは 史上最長かつ最上の「バカSF」だというものでした 私なりの褒め言葉ですよもちろんなにしろ スケール感がはんぱない本書の最終決戦に登場する宇宙艦艇の数が 何百億隻いや何千臆隻?そして 次から次に繰り出されるアイデアが 突拍子も無さ過ぎる宇宙全てを呑み込もうとする 究極の悪役の正体が じつは***だと!なんだそれ?それを防ぐための作戦が「チャーミング・モデラート」? それはキュンですすぐそばで起ころうとしている 超新星爆発から身を守る?いやいや そんなのないでしょと思いながらも 読んでるうちに納得させられる?などなど 宇宙物理学者や生物学者がひっくり返ってしまいそうなこの超絶の「バカSF」を 楽しみ抜いて感動すらしているそんな私も とんでもない「バカSF者」なのでしょうね あ~あ『天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3』 著 者 小川一水 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫JA 1362 初 版 2019年2月25日 目 次 第九章 星間結合 ― 西暦二八〇四年 地球ヒト種彷徨 第十章 青の惑星にて ― 西暦二八〇四年 惑星カンム防衛殻攻略戦 第十一章 控えめに魅力的な種 ― 西暦二八〇四年 MMS戦隊提督指揮座 第十二章 迎え火を焚け ― 西暦二八〇四年 ふたご座ミュー星 終章 風が吹くとき 断章九一 OFF TERRA MATER EST最後にPART1~PART3の書影 並べておきます 富安健一郎画伯 お疲れさまでした
Jun 3, 2024
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PART1に引き続きPART2も一気読み グランドフィナーレに向かって物語りも急加速しかも ここに至ってなお 次々と繰り出される驚異的なアイデアの奔流に 圧倒されました傑作SF小説の肝は それまで誰も思いつかなかったアイデアにあると思いますそういう意味では この大河SF小説に詰め込まれた数々のアイデアを小出しにすればどれだけ多数の 傑作長編SF小説になったかと思うと 贅沢な物語だったと思われます特に 登場する異星生命体については 地球の動物を基にしたような怪物ではなくその進化の歴史から構築されたことによって 驚くべき存在感がありしかも 知性体として 人類とは異なる 思考様式やコミュニケーション形態まで考えられていて小川一水氏の想像力には 限界というものがないのだろうかと 驚愕しました本書では そんな異星知性体との想像を絶する戦いが描かれますがそこでは 手に汗握るアクションシーンが繰り広げられ戦いの終盤では 感動的な対決シーンまで用意されていて 心が震えましたそう この物語はアイデアストーリーに終わらない 最高の物語なのですまた とんでもないファーストコンタクトシーンも用意されていて未知なる知性とのコミュニケーションや 迫真の交渉が繰り広げられますその結果が 最後の最後の残り1冊で どれほど驚愕の結末をもたらすことになるのかあと1冊 早く読みたいもあり 終わってしまうのがもったいなくもあり困ったもんです『天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART2』 著 者 小川一水 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫JA 1359 初 版 2019年1月25日 目 次 第五章 魅力的な子ら ― 西暦二八〇四年 ニジニーマルゲリスクス市 冥王班感染者救護所 第六章 クワガタムシ作戦 ― 西暦二八〇四年 セレス岩石地殻内 断章八 オンエキッツの遺言 ― 惑星カンム重質量特異点、事象地平線上 第七章 「冠絡根環 カンカラコンカン」にて ― 西暦二八〇四年 惑星カンム近傍特大型樹工天体 第八章 背負ったものを ― 西暦二八〇四年 セレス中心虚 ドロテア
Jun 1, 2024
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ついにというか やっとというか とうとうというべきか 最終Xにたどり着きましたそして主人公たちも目的の場所に到達したのですがいきなり 今までのSF小説では類をみないスケールの戦乱が勃発して 驚かされますそして 今まで隠されていた謎が少しずつ解き明かされ始めましたうん そうでもなきゃ 300年では いくらなんでも無理だよね と 納得することもありましたがまだまだ先は見えてこないですこの物語は どのようなグランドフィナーレを用意してるのか年表最後の1行の謎を含めて 今はまだ 想像することもできませんあと2冊 心して熟読したいと考えております。『天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART1』 著 者 小川一水 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫JA 1355 初 版 2018年12月25日 目 次 第一章 芽生えざる種 ― 西暦二〇七九年 月 第二章 迎賓の火 ― 西暦二八〇四年 ふたご座ミュー星近傍 第三章 黄昏の眠り ―西暦二五〇四年 太陽系主小惑星帯 第四章 《百葉箱》 ―西暦二八〇四年 メニー・メニー・シープ 断章七 「強いちからでまもっていこう。」 ―準惑星セレス中心虚 汎展開系オムニフロラ分泌郭内
May 31, 2024
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先日読んだ『京都名庭を歩く』に続いて またまた京都を歩く本でしたが京都観光に出かける予定があるわけではありません たまたまですまして京都の歴史を深く学びたいわけでもありませんどちらかといえば 記憶力に弱点がある私は 日本史は苦手な教科でしたしかし 日本の地名 特に難読地名は 常々面白いと感じていましたしまして 古都京都ならではの 古い由来のある地名があるに違いないそんな軽薄な気分で読んだのですが・・・やはり京都は一筋縄ではいきませんね多くの地名は そこに建っている寺社仏閣の名前であったりして現代の観光客が パワースポットなどと言って 押しかけていますがその多くは 敗れた者たちの怨念を恐れて鎮魂のために建立されていますからはたして 喜んで助けてくれるのでしょうかねそれ以外にも 古の時代の墓所を示す地名であったりしてそういった死への恐れが 仏教への帰依につながり寺社仏閣の存在理由だったりするのですから 恋愛運?仕事運? それは筋違いでしょやはり京都は魑魅魍魎の跋扈する魔都に違いない『京都地名の由来を歩く』 著 者 谷川彰英 発行所 KKベストセラーズ ベスト新書 49 初 版 2002年11月1日 目 次 第一章 京都は水の都だった 第二章 坂に伝わる人の思い 第三章 京都の町づくり ― 開発と産業 第四章 人々を救う仏教思想 ― 気になる寺々 第五章 葬送の地に立つ 第六章 京都にはいくつもの戦いがあった 第七章 占いと怨念の世界 第八章 京都の遊びと地名 第九章 いつまでも慕われる人 第十章 朝鮮半島と地名 第十一章 食べ物・飲み物と地名
May 30, 2024
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なんだか 難しそうなタイトルがつけられていますが内容は ほとんど2020年以降に発表された論文から国立天文台台長特別補佐という役職にもある著者がおもに 最近発見された 宇宙の不思議な天体や現象について解説されていてまるで 科学雑誌を読むように 楽しく読み進めました20世紀後半以降 宇宙望遠鏡などの観測機器の充実と観測データを解析するテクノロジーの発達で世界中の天文学者が 観測可能な宇宙の隅々にまで目を向けた結果これほど多数の新発見があったということが驚きですしそれでもなお 宇宙はわからないことだらけという現状も 逆にワクワクします特に 銀河の中心にある巨大ブラックホールの謎について宇宙自体の起源や 銀河成立のカギをにぎっているかもなど とても興味は尽きないですやっぱり 宇宙は面白いや『ウソみたいな宇宙の話を大学の先生に解説してもらいました。』 著 者 平松正顕 発行所 秀和システム 初 版 2024年3月3日 目 次 はじめに 1章 宇宙はどんな世界なのか ※宇宙のガイドマップ 2章 一番身近な天体・月と太陽 ※38万km先の別世界 ※太陽系の大黒柱・太陽 3章 太陽系惑星たちの知られざる姿 ※太陽系 ― 地球の家族たち ※太陽に一番近い惑星・水星 ※明けの明星・金星 ※私たちの住む惑星・地球 ※多くの探査機が向かった惑星・火星 ※規格外の大きさ・木星 ※巨大な環がトレードマーク・土星 4章 まるでSF! 未知の天体たち ※驚きの新天体 ※変わった形の星 ※大きさ・重さ・・・・・・規格外の星 ※SFが現実に?分類不能の謎天体 5章 ナゾに満ちた宇宙空間 ※私たちがいるのは宇宙のどんなところか ※超重力の天体・ブラックホール ※宇宙人、巨大彗星・・・・・・果てのない探求は続く
May 25, 2024
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大量に読み残してしまっている SF小説のアンソロジーを できるだけ挽回しようとしていてNOVAシリーズ第一期10巻読み終わったところでずっと気になっていた 第一回の創元SF短編賞の受賞作や応募作をまとめた本書をチョイス本書を開いて まず驚いたのが 高山羽根子さんのお名前があったことですこの時の受賞作が松崎有理さんであり 後に文芸各賞の常連候補者(失礼)である宮内悠介氏も この賞のご出身であることは存じておりましたが後に芥川賞を受賞された高山氏も この賞からデビューだったとは・・・この第一回どれだけ 高いレベルの才能が集まっていたことか実際 各賞受賞作品を含む 最終候補作から厳選されたという10作品松崎氏の受賞作は『年刊日本SF傑作選 量子回廊』に収録されたので ここでは受賞第一作でしたが本当に どの作品も新人賞応募作とは思えない 力作揃いで 面白かったですただ 私の不勉強のせいか 松崎・宮内・高山氏以外のお名前を その後お見かけしていないのがみんさん 才能が溢れていたと思うので 気がかりではありますがでは 収録作品の感想を・・・佳作『うどん きつねつきの』 高山羽根子 この時から 高山ワールド全開だったのですね 短いエピソードかと思ったら まさかの家族の歴史で 驚かされました『猫のチュトラリー』 端江田仗 ケアノイドという 介護のための人型ロボットを中心にした 家族の物語 ロボットの知性について 深い考察を感じられました『時計仕立ての天使』 永山驢馬 学校でのいじめ問題の解決のため導入されるロボットを狂言まわしに じつは心に浸みる 青春小説でした『人魚の海』 笛地静恵 大国の狭間でゆれる 小さな島々で生きる人々を描くファンタジー とても奇妙な世界が描かれますが 強くリアルを感じさせられました『かな式 まちかど』 おおむらしんいち ひらがなの「て」が主人公(?)のおはなし でも そこで描かれているのは 現代人の私たちなのでしょう『ママはユビキタス』 亘星恵風 驚きの奇想に溢れたハードSFであり ポストヒューマンSFの傑作 選外ですけど私は好きです日下三蔵賞『土の塵』 山下敬 またひとつ 時間恋愛SFの名作が・・・山田正紀賞『盤上の夜』 宮内悠介 再読の名作なのですが あいかわらず難解でした大森望賞『さえずりの宇宙』 坂永雄一 ふむ困った 様々な意思と思想と 有意の文章と無意味な文章の集合の向こうに いったい何が見えてくるというのでしょうか この社会の真実なのか?受賞後第一作『ぼくの手のなかでしずかに』 松崎有理 杜の都の恋物語と油断してたら やっぱり理系だ!SFだ! はやく短編集読まなければ・・・『原色の想像力 創元SF短編賞アンソロジー』 編 者 大森望、日下三蔵、山田正紀 発行所 東京創元社 創元SF文庫 739 01 初 版 2010年12月24日
May 24, 2024
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タイトルから 地球外生命探査の本だと思ったら その話は後半の40%それまでは 人類の宇宙探査の歴史が 18世紀のジュール・ベルヌの話からはじまって現代に至る 宇宙を目指した人類の営みがそこに携わった人々のエピソードを交えて 細かく記されています宇宙への夢にとりつかれて 最初はドイツでV2ロケットを開発せざるをえなかったフォン・ブラウンその フォン・ブラウンのアメリカでの努力を上回った ソ連のコロリョフアポロ計画を 当時まだ開発初期の時代のソフトウェアで ささえた女性科学者などなど もう感涙もののエピソードが満載で センスオブワンダー感じてしまいましたそして 1965年に初めてデジタルカメラで火星を写した マリナー4号から送られてきたデータにNASAのメンバーが何をしたかなんていうエピソードにいたってはただただ感動させていただきました著者の小野雅裕氏は NASAのスタッフだそうですけど なかなかの文才ですねそのお名前は あの野田大元帥を彷彿とさせますし 面白いハードSF書けるのではないでしょうか後半の地球外生命探査の記述からも 著者の宇宙に対する熱烈な思いが伝わってきて意外といっては失礼ですけど とっても良い一冊にめぐり会えたと思います読後に知ったのですが 先月新版が発行されていたそうですね表紙のアストロノーツが 二人になったりしてますね『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』 著 者 小野雅裕 発行所 SBクリエイティブ SB新書426 初 版 2018年2月15日 目 次 序 新創世記 プロローグ 第一章 幼年期の終わり~宇宙時代の夜明け 最初のフロンティア 第二章 小さな一歩~技術者のアポロ 異世界の空 第三章 一千億分の八~太陽系探査全史 命の賛歌 第四章 Are we alone? ~地球外生命探査最前線 Pale Blue Dot 第五章 ホモ・アストロルム~我々はどこへ行くのか? エピローグ
May 22, 2024
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なんとも不思議な物語でした解説によれば 作者が書き続けてこられた<コンティニュイティ>という未来史に属する 立派なSFで登場するのは 戦争のために製造された殺戮兵器のロボットだったり人類は太陽系に進出していたり その太陽系をカバーするデジタルネットワークが構築されていたり背景はガチのハードSFなのですが ふむ なのですが・・・タイトルに「夢の都市」とあるように アラビア半島の砂漠に囲まれた都市でくりひろげられるアラビアンナイトか 砂漠に潜む妖精たちの物語のようでヒューマニティあふれる 叙情的な 夢のような物語でした個人的には ロボットの自意識とか感情とかについては 否定的なのですがそこは 子供時代から「鉄腕アトム」のような 日本文化によって育まれてきた者としてはすなおに 物語世界に没入してしまうのが ちょっと悔しくもありますということで 矛盾を内に秘めながらも 楽しく読むことができましたしかし しかしですよ 最後の最後に書かれた一文が謎すぎてその解釈によっては 作品の印象が180度ひっくり返るかもしれないなんだこれは?作者のラヴィ・ティドハー氏は初読みだと思っていたら昨年読んだ『シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選』にこのシリーズの短編が収録されていたそうですあらあら 私の記憶力の貧弱さよやっぱり 私には評論や ちゃんとした解説は 絶対に無理ですね『ロボットの夢の都市』 NEOM (2022) 著 者 ラヴィ・ティドハー 訳 者 茂木健 発行所 東京創元社 創元海外SF叢書18 初 版 2024年2月9日
May 21, 2024
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巻頭で引用されている ラムズフェルド元アメリカ国防長官のことば「(前略)一方、既知の未知というものもあります。つまり私たちは、自分の知らない情報が 存在することをわかっているのです。そしてさらに、未知の未知もあります。自分が知らない ということさえ知らない領域です」いくら 最先端の科学だといえども この言葉は謙虚に受け入れなければならないでしょうね数多く発行されている 科学書の中には 本当に分かっていて書いているのかと思えるものも 時々見受けられる気がしますしかし 本書の著者は 実績ある研究者でありながら 深く考察しつつも謙虚に本当に分かっていることと 分かっていないことを 区別して書かれていると感じました流行の最新理論である「超弦理論」などには 慎重な姿勢を保持するなど「時間」「空間」「物質」「生命」「意識」の 5つのテーマで今 分かっていること 今も分かっていないことを 明確に記述されていて本当に 科学研究の最先端の現状を 知ることが出来たのではないかと思いますもちろん 私などの見識では理解の及ばない 難解な部分も多々ありますけどそして 分かったことは 私が知りたいのは「未知の未知」の領域に属しているのだということ詳しく書いても 妄想になるので書きませんがそんな悩みが解決する日は やって来そうにないです『私たちは何を知らないのか 宇宙物理学の未解決問題』 THE KNOWN UNKNOWNS : The Unsolved Mysteries of the Cosmos 著 者 ローレンス・クラウス 訳 者 長尾莉沙 北川蒼 発行所 KADOKAWA 初 版 2024年4月2日 目 次 1 時間 2 空間 3 物質 4 生命 5 意識
May 19, 2024
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本書も 時々やってる 未知の作家さんの一冊を事前情報完全に排除して読んでみようなどという 当たりかハズレか大博打 で選んじゃいましたまず最初に 本書がアガサ・クリスティー賞優秀賞受賞作品の同じ主人公が登場する第2弾だということに気付いて ちょっとショックそして 世界史苦手な私にとって 18世紀のフランスの修道院が舞台であることにウンベルト・エーコーの『薔薇の名前』が脳裏に浮かび難解な哲学や美学にカトリックの宗教哲学が出てきたら もう降参するしかないと恐れましたしかし これは当代流行の お嬢様と優秀なしもべが探偵役の ちょっぴり恋バナありの軽めのミステリだとわかって一安心 文章も優しく読みやすく スラスラ楽しめましたそして 事件の背景である 当時のフランスの宗教事情にも 興味をひかれました異端尋問による残酷な拷問や処刑が この時代まで存続していたことや厳格だと思っていた修道院が 貴族の娘の花嫁修業のために利用されていたとかそれらが 難しい用語の羅列ではなく 登場人物たちの言葉で語られかなり分かり易く 勉強になりましたそれは 巻末の参考文献のリストから わかりますが作者がかなり勉強されて 理解したうえで 物語に落とし込んでいるからでしょうねこれは 第一作も読まねばなるまいのう いつかは・・・そして 本書の物語とは関係ないですがやはり 宗教というものは 人類の歴史において 多くの悲劇をもたらしてきた悪であるのでしょうかそこで どれだけ理想が語られようと 人間には運営することが許されないものではないでしょうか本書を読んで あらためて感じました『異端の聖女に捧げる鎮魂歌』 著 者 宮園ありあ 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫JA 1566 初 版 2024年2月25日
May 17, 2024
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昨年 この先生の『なぜ宇宙は存在するのか はじめての現代宇宙論』(講談社)を読みましたが最先端の宇宙論がぎっしり詰まっていて さすがブルーバックスらしく難解だった記憶があります本書は 前著の最終章で解説されていた多元宇宙論にしぼって書かれていて内容も噛み砕かれて とても解かり易く面白かったですマルチバース理論が生み出されてきた歴史から 解説されていますがそもそも この宇宙の物理的な環境が 人間の生存に適しているという「人間原理」の科学的可能性から 始まっていると思いますがそれは 例えばキリスト教の原理主義者であれば 神様がそのように計画されたからだと歴史的には信じられたことですが 現代科学の「人間原理」は まず宗教性の排除からはじまりますそして考え出されたのが 無数の宇宙が生まれ存在しているという マルチバース無数の宇宙があれば そのなかのひとつぐらい この条件の宇宙もあるでしょ ということしかし それは直接観測することが不可能でありこの宇宙で観測されるいくつかのデータから 物理理論的に推理している理論であり将来の観測によって 否定される可能性があるとまで 正直に語られていますなので 私自身はマルチバースに いささか懐疑的ではありますもちろん だからといって 既存の宗教やトンデモ科学に 答えがあるなんて思いませんがただ 気になっているのは 私たちが持っている 知性や意識というものです宇宙物理的にいって 意識ってなんだろ なんて妄想していたらそれこそ トンデモ科学の仲間入りですけど いろんなことが気になる今日この頃ですそして このマルチバースというものがエンタメ界隈(映画や小説やアニメ等)では すっかり受け入れられているのがとても面白い現象ではあります どれだけの物語の主人公が転生しちゃったことかただ それらで描かれているマルチバースは著者も科学的におかしいものが多いと あきれてはいますおそらく 当分の間は 宇宙の真相があきらかになることはないでしょうから楽しむしかないのでしょうかね『多元宇宙論(マルチバース)集中講義』 著 者 野村泰紀 発行所 扶桑社 扶桑社新書479 初 版 2024年3月1日 目 次 第1講 そもそもマルチバースとは何か 第2講 よくできすぎた宇宙の謎 第3講 予言されていたマルチバースの存在 第4講 無数に生まれる泡宇宙たち 第5講 マルチバース宇宙論の現在地 第6講 エンタメの中のマルチバース
May 15, 2024
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ひとことで言ってしまえば 未知のウィルスによる ディストピアSF小説なんですがなんだろう この読後に残った この寂寥感はこのウィルスには SFとしてもかなりユニークな物語が用意されていて 驚かされますがそれらは この作品の あくまで背景にとどまっていて主題は まずウィルスがもたらす悲劇である死であるとともにそんな 死と向き合って生きなければならない世界において人々の喪失感や 家族のありかたの再構築の物語にコロナの悲劇を経験してきた 私たちの胸に迫るものがありました今にいたっても 解決できていない 人が生きて死ぬことの意味を これからの未来にむかってどのように考えればいいのか 問いかけられている そんな作品ではないでしょうか本書を 創元海外SF叢書の一冊ではなく 海外文学セレクションとして出版された意図もそのあたりに あるのでしょうかあまりに重い内容に 受けた感動を言葉にしきれないことが 残念ですが感想は これくらいにしておきます『闇の中をどこまで高く』 HOW HIGH WE GO IN THE DARK (2022) 著 者 セコイア・ナガマツ 訳 者 金子浩 発行所 東京創元社 海外文学セレクション 初 版 2024年3月8日
May 14, 2024
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このところ 宇宙物理とか素粒子とかの本を選ぶことが多くなっているそれは なぜこの宇宙が存在しているのかがなぜ 私のような者が存在しているのかという人生最大の疑問の答えに辿り着きたいからであって学生時代数学や物理が 大の苦手だった私が大人になっても このような本を読むとは自分でも驚きです本書は加速器を使った素粒子原子核研究で 世界的にも最先端の研究機構の先生方が 基本的なことから 最新の研究結果まで とても丁寧に解説されていてもちろん 私などのレベルでは 解りやすくとは言えない部分もありますがとても多くの知見を得ることができた 有意義な読書体験でしたそのなかで もっとも興味深く思ったのはそこから物質が生まれてくる「真空」についての解説でしたもちろん そこはまだまだ未知の領域でありますが結局のところ 宇宙を理解するには 物質だけではなく「真空」や「時空」というものを解き明かすしかないのでしょうねその「真空」から 素粒子が生まれ 素粒子が集まって元素ができ宇宙の進化過程で 水素などの軽い元素から いろいろな重い元素がつくられその 様々な元素が集まって 太陽系が形成されその元素の複雑な組み合わせで 地球上で私が存在しているまるでミステリとしか思えないのは 私だけなのでしょうか『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』 編 者 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所 発行所 講談社 ブルーバックス B-2256 初 版 2024年3月20日 目 次 第1章 宇宙は何でできているのか 第2章 素粒子の標準理論のはじまり 第3章 元素の起源 第4章 質量の起源 第5章 力の起源 第6章 非対称性宇宙の起源 ― 物質・反物質 第7章 宇宙膨張の起源 ― ビッグバンとインフレーション 第8章 宇宙の大規模構造の起源 ― ダークマター・ダークエネルギー 第9章 宇宙進化の起源 第10章 宇宙は安定か?
May 11, 2024
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いよいよ グランドフィナーレが目前に迫った第Ⅸ巻PART1では 前巻からの主要なキャラクターたちの 奮闘が深く掘り下げられたと思ったらそこにとんでもないプレイヤーというか 計算も面倒なほどの規模の軍勢までが参戦してPART2にかけて 手に汗握る ハラハラドキドキのシーンの連続でしたがあれれ 意外とあっさりひとつの決着が などと油断してたらなんだこの最後の最後にあかされた『三体』シリーズさえちっぽけに思える(あくまで 個人の感想です)この大宇宙の騒乱の状況はなんだなんだ 茜華根禍?何者だ?とういう 最終第Ⅹ巻の3冊で待ち受ける 思いもよらなかった展開これだけ 風呂敷広げて ほんとに3冊で終了するのかという期待に溢れた状況は 早急に第Ⅹ巻読むしかないですそして 年表の最後の1行が誤植でないならば大どんでんがえしも 待ち受けているのではないだろうかそれにしても 昨年から集中して読んでいる私でもこれだけ膨大な数の登場人物たちの名前と関係を憶えきれずに 四苦八苦しているけど刊行当時 リアルタイムで追いかけていた読書人のみなさまは7年あまりの時間経過にどのように対処されていたのでしょうほんとうに 尊敬させていただきます私には 絶対無理です 『SFマガジン』の連載小説ですらおぼつかないほどですもの『天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと PART1・2』 著 者 小川一水 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫JA 1213/1231 初 版 PART1 2015年12月25日 PART2 2016年10月25日 目 次 PART1 第一の人々 見えない犬と、しゃべる羊たち 第二の人々 襲い来る女と、身を守る女たち 第三の人々 アーシアンとシーピアン 第四の人々 ミスン族たちと、イスミスン族たち 第五の人々 《海の一統》と《不滅の一統》 断章六 ヒトである既人とまだの機人と PART2 第六の人々 病みゆく人々と癒えゆく人々 最終巻の手前でのあとがき
May 9, 2024
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やはり21世紀のスペースオペラは こうなるのが歴史的な必然性だよねと 納得の一冊でした作者の森岡浩之氏には 正直敬遠していた作家のひとりでした私のSF遍歴の最初期には レンズマンやスカイラークなどのスペオペに熱中していたくせにその後 日本の第一世代や第二世代のSF作家諸氏の作品を 読み続けて生意気にもスペースオペラは もう卒業だなとうそぶいてしまい森岡氏が『星界の紋章』が高く評価された時にも 食指が動くことはなく『突変』が日本SF大賞を受賞されたときには さすがにちょっと気になって購入したものの いまだに本棚で埃をかぶって10余年の積読状況に陥ってましたしかし 最近になっていろいろな出会いと反省があって 読んでこなかった作家さんも新作は読んでみようという路線を維持していて その一環として本書も手に取った次第ですしかし 読み始めて 神に従う天使たちが 迫りくる悪魔と 宇宙空間で戦い始めて・・・これはラノベ的な ファンタジー系の物語なのか ゲームノベルなのかとかなり危惧する状況になり 先行きが不安になったのは事実ですしかし 第二部にいたって 物語の背景があかされるにいたってなるほど これが21世紀のスペースオペラかと 俄然興味がわきあがりその後は 一気にクライマックスまで読み進めることになりましたネタバレになるので 詳しくは書けませんが要するに ポストヒューマン+サイバー+スペオペということで確かに新時代のスペオペの傑作でした今後もこういった路線が続くなら 楽しみでしかありませんし『星界の紋章』はどうだったのかと気になり始めましたし『突変』も早急に読まねばなりませんね まいったな また時間が・・・『プライベートな星間戦争』 著 者 森岡浩之 発行所 星海社 初 版 2023年12月11日 目 次 第一部 憎悪の天使 第二部 孤独な半神 エピローグ マムタの緑の丘
May 6, 2024
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宮内悠介氏は 2012年のデビュー作『盤上の夜』と 翌年の『ヨハネスブルグの天使たち』を刊行当時に読みましたが 当時の私にはどうにも難解で惨敗しその後 様々な文学賞を受賞したとのニュースに接してもどうせ私なんかには手に負えない 高級な文学作品だろうなと 読みたい気はおきませんでしたしかし 『NOVA』シリーズに掲載されていた 『スペース金融道』シリーズ読んでえ!? こんな作品も書くんだと驚かされそして 今年になって直木賞の候補に選ばれたという報道には あれ芥川賞じゃないのとなんだか気になり始めていたところで昨年から 今まで敬遠していた作家さんの作品にも再挑戦しようなどと 無謀な試みも始めていてとうとう 新刊で発売されたばかりの本書に手を出した次第ですと 意気込んでみたものの 事前情報なしでこのタイトルは難しそうだなとかなり ビビリながら読み始めましたところが 最初の『ジャンク』を読んで いきなり共感してしまい収録された バラエティ豊かな13の短編すべて 面白く読んでしまいました作者ご自身の経験をもとにしたであろう 自伝的な作品あり生まれたときからビデオゲームが存在していた デジタル時代の若者の心理を描いた作品あり昭和時代にSNSが存在していた 歴史改変SFあり通り魔事件ならぬ 料理魔?事件の顛末を描いたミステリありほんとうに 時代も2016年から2020年に様々な媒体で発表された 様々な作品が並びますが作者のあとがきを読んでいると これらの作品から作者ご自身の その時代の心の流れが立ち昇ってくるような気がして トータルで ひとつの私小説だったのかもしれません私は作家ではありませんからわかりませんが小説には書き手の心模様が封じ込められるものなのでしょうかさてさて 毎度のことですが 未読の宮内悠介氏の諸作品 読むことになりそうですはたして その時間があるかどうか それが問題です『国歌を作った男』 著 者 宮内悠介 発行所 講談社 初 版 2024年2月13日 収録作品 『ジャンク』 『料理魔事件』 『PS41』 『パニック ― 一九六五年のSNS』 『国歌を作った男』 『死と割り算』 『国境の子』 『南極に咲く花へ』 『夢・を・殺す』 『三つの月』 『囲いを越えろ』 『最後の役』 『十九路の地図』
May 4, 2024
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宇宙論の書物が好物で 新刊についつい手が出てしまいますしかし 本書については このオビを見ただけでガチガチでハードな宇宙物理の解説書ではないだろうなと予想はできたのですがまったく違った意味で とても面白かったです「ぼくはなぜ今ここに存在しているのだろう?」(P23)という物心ついたころからの疑問を 求め続けてきたという須藤先生の人生や 考え方や 発想について もう共感しまくりだったからですなぜなら 今も私の心の中心にあるのは まったく同じ疑問だからですそれにしても 感覚が同じだなと思って 著者略歴を拝見したら なんと同年齢!もちろん 学歴は天と地ほどの違いはありますが育ってくる過程で 見聞きしたことも共通であったでしょうから シンパシーを感じました先生には 一緒にするなと言われそうですけどねということで 本書は科学本というよりもエッセイ本ですでも そこかしこに宇宙物理の重要な話がおりこまれ物理学者としての 思考過程が詳しく述べられているので軽い読み物としてのエッセイではありませんでしたが牛などの反芻する動物が南北を向く確立が高いなどというまったく初見の研究が紹介されていたりモンティ・ホール問題のように 私なんかの能力ではわかったようなわからなかったテーマがあったり平行宇宙が存在するという考え方は 私には違和感があるなとおもってみたりスポーツと病気の話しかしない同世代とは違う こんな話題に包まれることが幸せでしたもちろん まえがきで紹介された 某植物学者さんのように同じ研究者であっても考えがまったく異なったりするでしょうからこの共感は 須藤先生のお考えに限定的なのかもしれませんが・・・とりあえず 先生の未読の既刊の書籍にも 挑戦しなければならないようです『宇宙する頭脳 物理学者は世界をどう眺めているのか?』 著 者 須藤靖 発行所 朝日新聞出版 朝日新書 949 初 版 2024年3月30日 目 次 序 今ここにある宇宙とぼくの起源について 第1部 物理学者、この不思議な生き物 人生で大切なことはすべて相対論から学んだ 大学教授をめぐる三つの誤解 物理学者は所構わず数式を書きなぐるか? 第2部 正解のない宇宙の謎を考える この宇宙は偶然か、必然か ― 宇宙原理と人間原理 「宇宙は点から始まった」の真偽 アインシュタインと歴史のいたずら 宇宙の5W1H ― いつどこで誰が何をなぜどうやって 第3部 物理学者は世界をどう眺めているのか? 世界の退屈さをなくす「対称性の自発的破れ」 物理学者は世界をどう眺めているのか? 人生に悩んだらモンティ・ホール問題に学べ 日常から始める科学的思考法のレッスン 第4部 常識を超える真面目な宇宙論 この宇宙のはるか先どこかに平行宇宙はあるのか? 宇宙に思考が誕生する確率 この私に自由意志があると信じる(信じたい)理由
May 3, 2024
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今の日本SFを知るためには この「創元日本SF叢書」シリーズは必読だなと昨年気付いて2022年以降に発刊された作品は読んできましたもともと 10年以上前に 宮内悠介氏の『盤上の夜』と 酉島伝法氏の『皆勤の徒』は 読んだのでその時点で気付くべきでしたが その後 個人的に読書冬の時代に入ってしまい多数の名作を見逃してきているので 遡って読まなければと思ってはいるのですが・・・なかなかね・・・という理由で まったく未知の作者さんの本書も読んだのですが いやあ大当たりでした創元SF短編賞を受賞されているのですから 当然の話なのですが本書は その受賞作を表題として 四つの短編を掲載する短編集です四作品とも ファンタジー風味の装いでしたが『影たちのいたところ』以外は ガチガチのSF設定があるのですしかし 昔誰かが言っていたように テクノロジーが究極の進化を遂げるとそこは 夢と魔法のファンタジーワールドのようになるのかもしれませんねそして 4作品とも 主要な登場人物が少年少女ということもあってかなり甘酸っぽく ノスタルジックで 感傷的な雰囲気ですがその背後に潜んでいるのは 残酷なリアルであり絶望なのかもしれませんというところで 収録4作品の ショートショートな感想です『射手座の香る夏』この作品のようなテクノロジーについて 私は懐疑的なのですが意識とか知性とか 心とか魂とか 脳と身体とか 興味は尽きません『十五までは神のうち』ユニークなタイムマシンと それが実現させた恐ろしい社会甘い思い出と悲しい事実 島の風景が見えるようで印象的な作品でした『さよなら、スチールヘッド』ゾンビの秘密に 脱帽でした『影たちのいたところ』SF設定こそありませんが ではファンタジーなのか今のヨーロッパ社会の リアルな問題が投射されていて 現実的な読後感でした以上 新たな才能との出会いに感謝でした 今後のご活躍を楽しみにしています『射手座の香る夏』 Good-by,Our Perfect Summer 著 者 松樹凛 発行所 東京創元社 創元日本SF叢書23 初 版 2024年2月29日
Apr 30, 2024
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それこそ 一昔前のシリーズ第一作『新宿鮫』から マイペースではありますが読み続けてきたこの新宿鮫シリーズも とうとう既刊分としては最後の一冊を読み終えたのは 感慨深いですこのシリーズの魅力は 新宿鮫こと鮫島のキャラクターそのものですエリートであるキャリアでありながら 本書でもたびたび語られた犯罪者がのうのうと贅沢な暮らしをしているのを許せないという 正義感だけで一匹狼として悪に立ち向う その姿が清々しく 応援するかのように読んできましたはたして この先 鮫島に再び出会えるのでしょうか大沢先生にがんばっていただきたいですさて本書は前作の『暗約領域 新宿鮫XI』の続編といえる内容で前作の登場人物や出来事と関連して 事件が発生しますいつもなら 記憶力弱者である私には困ったことなのですがマイペース読みのおかげで 前作を読んでから まだ4ヶ月でしたのでなんとか 脳味噌の片隅に記憶の残滓が残っていたようで すんなりと物語に入れましたそして いつもと同じ 恐ろしい犯罪の入り組んだ背景と 強力な殺人犯の謎に向き合わされついつい先を急いでしまう 興奮の読書時間をいただきましたしかし これで最後かと思うと 読み終わるのが惜しくて勿体ないという思いも出てきて途中で頁を閉じてしまったほどでした前作で登場した二人も 鮫島は少しずつですが 受け入れ始めたようで鑑識の藪との関係も 新たなステージに進んだようでこの4人の次なる活躍を期待してしまいますでもでも 晶ちゃんは あれからどうしてるのかな?『黒 ヘイシ 石 新宿鮫XII』 著 者 大沢在昌 発行所 光文社 初 版 2022年11月30日
Apr 28, 2024
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日本庭園が好きで 本書で紹介されている平等院など 京都のお庭も何箇所か訪ねていますがまだ訪れていない名庭もたくさん残っているので また庭園めぐりに行きたいと思っていますそんな折に書店で見つけたのが本書でした 本は可能な限り事前情報なしで読みたいので本書も ジャケ買いならぬ 書名買いでしたなので 京都の名庭の美しさの解説のような 観光ガイド的なものを想像していたのですがこれがまったくの大ハズレ しかし そこで想像もしていなかったお宝に出会ってしまいました事前情報なしの書名買いでは しばしばこういうことがあるので やめられないのですもちろん 寺社仏閣とその庭園の美しさについての解説も多少はあるのですが著者の視点は それらの庭園が造られた背景に向けられていますそれは 仏教に基づく平安貴族たちの死生観であり権力を失いつつあった足利将軍達の 無念の思いであったり本書で紹介されている 技術者集団の出自だったかもしれないという豊臣秀吉の庭園へのこだわりであったり豊臣家と徳川家の 徹底的な対立構造であったり豊臣家滅亡後も その影響を恐れていたとしか思えない 徳川幕府の恐怖であったり徳川幕府の朝廷への締め付けであったりとにかく 美しい庭園の姿の向うには 怨念が渦巻いているのではないかと思うほどです雅な古都である京都は 同時に怨嗟や血潮を吸い込んできた魔都であるのかもしれませんそれと 日本の伝統的な日本庭園といいながら戦国時代に来日した西欧の宣教師から伝えられたヨーロッパのルネサンス・バロック庭園の様式を当時の権力者達と 作庭の第一人者であった小堀遠州らが積極的に取り入れていたという事実もとても興味深かったです 『京都名庭を歩く』 著 者 宮元健次 発行所 光文社 光文社新書 174 初 版 2004年10月20日 目 次 プロローグ 第一章 日本庭園の原形 1 西芳寺 2 天龍寺 第二章 あの世を再現する 1 平等院 2 浄瑠璃寺 第三章 勝者と敗者のモニュメント 1 鹿苑寺(金閣寺) 2 慈照寺(銀閣寺) 第四章 一期一会の空間 1 妙喜庵待庵 2 三千家の露地 第五章 普請狂・豊臣秀吉の死期と庭 1 醍醐寺三宝院 2 西本願寺 第六章 秀吉神格化の阻止と徳川家康 1 西本願寺と秀吉の神格化 2 秀吉神格化の阻止 第七章 王権としての庭 1 神泉苑 2 二条城 第八章 日本庭園の否定 1 西欧文化を学んだ男 2 仙洞御所 第九章 石庭のエキスパート 1 大徳寺 2 南禅寺 第十章 庭園史最大の謎を推理する 1 龍安寺 2 高台寺傘亭、時雨亭 第十一章 作者と創建年代の謎 1 桂離宮 2 遠州作の真偽 3 曼珠院 ― 桂離宮との類似性 第十二章 反骨の天皇の内なる声 1 修学院離宮 2 円通寺 3 詩仙堂 エピローグ
Apr 27, 2024
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やっぱり 量子は解らないどこかで 光は粒子であり波なんですと 教えられて ふーんそうなんだと憶えましたけどそれが どういうことなのかは 皆目解ってはいない高等数学を駆使して 量子力学を研究している科学者さんとは 頭の出来が違うのでしょうねそんな風に卑下していますが(実際大学入試の結果が物語っているように・・・)しかし 本書を読んで 量子のことを完全に理解している人は世界中の どこにもいないということが分かって 少しばかり安心しました量子の奇妙なふるまいについて 様々な実験があきらかにしてきましたが数学的や確率論的に それについて語ることはなされていてもなぜそうなのかという 量子の正体は いまだに解明されていないのですねつまり この宇宙のことを この時空のことを この世界のことを皆目分かっていないのが現実であり 私にとっては絶望的な状況なのですそんななかで 本書p170の以下の記述が特に気になりました 「今や研究者によっては、時空は実際に量子もつれによってつくられた相互のつながりでできている のではないか、あるいは量子もつれを超える何かがあるのではないか、と考えている。」結局のところ 量子についてだけではなく ビッグバンで始まったという宇宙についてもこの時空というものを理解しないでは 真実にたどり着けないのではないのでしょうかあるいは 生命ということさら特殊な 物理化学現象に関しても時空とその背後に広がるものの理解が必要かもなんて 妄想してしまうのが 私の悪い癖なのですが・・・以上 なんとも刺激的な一冊ではありました とってもとっても難しかったけどそして 量子コンピューターが 危ういテクノロジーであることも・・・『量子力学は。本当は量子の噺ではない 「奇妙な」解釈からの脱却を探る』 Beyond Weird Why everything you thought you knew abaut quantum physics is different (2018) 著 者 フィリップ・ポール 訳 者 松井信彦 発行所 化学同人 初 版 2023年12月8日 目 次 第1章 量子力学が何を意味しているかを言える者はいない(これが本書の主張である) 第2章 量子力学は、本当は量子の話ではない 第3章 量子物体は波動でも粒子でもない(が、そのようなこともある) 第4章 量子粒子は一度に二つの状態にはない(が、そのようなこともある) 第5章 何が「起こる」かは、それについて何を見出すかによる 第6章 量子論の解釈の仕方にもいろいろある(そして、どれもどうも意味をなさない) 第7章 どのような問いも、答えは「イエス」だ(「ノー」でない限り) 第8章 すべてを一度に知ることはできない 第9章 量子物体の性質がその物体だけに収まっている必要はない 第10章 「不気味な遠隔作用」はない 第11章 日常世界は量子世界の人間スケールにおける現れである 第12章 経験するすべてはそれを引き起こしている何かの(部分的な)複製である 第13章 シュレーディンガーの猫には子がいる 第14章 量子力学はテクノロジーに活かせる 第15章 量子コンピューターが「多くの計算を一度に」実行するとは限らない 第16章 「量子」あなたはほかにいない 第17章 物事はさらにいっそう「量子的」になりえた(ならば、なぜそうではないのか?) 第18章 量子力学の基本法則は思ったよりシンプルかもしれない 第19章 底へはたどりつけるのか?
Apr 25, 2024
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最初に衝撃を受けたのは300年!ということでしたなんとなくⅦの続きがあるものと思っていたので たしかに続きではありますけど・・・しかし 300年でこれほど自分たちの住んでいる世界の認識が失われるのでしょうかよほど過酷な歴史が この300年に人々を苦しめてきたのでしょうかこのシリーズを読み始めて14ヶ月経過して ようやくⅧ巻にまで辿り着きましたがもっと集中的に読むべきだったと 後悔しておりますなにしろ 時間も空間も壮大な この人類の未来史においてこれまでも多くのイベントが たんなる説明ではなく 濃密な物語として語られそれぞれの巻に登場する人物も 厖大な数になってきてもともと 乏しい私の記憶リソースは とっくに容量をオーバーしてしまっていて読んでる最中に何度も何度も 巻末に掲載の資料を開かなくてはならない情けなさましてや 冒頭と末尾に置かれている断章にいたっては お手上げですⅠ巻の『メニー・メニー・シープ』で描かれた未来に これからどう繋がっていくのかまったく想像も予断もできない現状 今後の展開に期待するしかありませんこれは Ⅸ巻とⅩ巻の残り5冊は 早急に読まねばなりますまいSFの新刊も続々出版されてはおりますが・・・ところでPART2の第十四章で 唐突に描かれたあのシーン強靭な硬殻に包まれた最強のイサリが もとは可愛い少女だったことを思い出してキュンでした『天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク PART1・PART2』 著 者 小川一水 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫JA 1159/1169 初 版 PART1 2014年5月25日 PART2 2014年12月25日 目 次 PART1 断章八九 「岸無し川」にて 第一部 咀嚼者、矢広勇理 第一章(B) 石模様の怪物 第二章(B) 警邏艦の襲撃 第三章(B) 恋人たち 第四章(B) 衝突 第五章(B) 昏き過去より 第六章(B) 欠けゆく夏 第七章(B) 混迷と彷徨 第八章(B) 臨界の一撃 第九章(B) 史乗の底より PART2 第九章(B) 史乗の底より(承前) 第二部 セレス・シティ探訪 西暦二八〇四年 第十章 冬霧の中で 第十一章 世界天井へ 第十二章 炎の道 第十三章 墳墓制御室 第十四章 ジャイアント・アーク 第九章(C)史乗の底より 断章九〇 川のほとりの《海の一統》
Apr 23, 2024
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この「共立スマートセレクション」というシリーズは 初めて読みましたてか 共立出版さんの出版物を読むのが たぶん初めてだと思います巻末の「スマートセレクション」の既刊リスト眺めたら面白そうなタイトルが並んでいて 今まで知らなかったことが残念です本書もタイトルの惹かれて手に取ったのですがなかなか高度な内容が わかり易く書かれていて 満足できる一冊でしたただ このシリーズには著者のほかに コーディネーターさんが存在するようでその役割が何なのか 気になっていますが・・・さて 本書を読もうと思ったのは タイトルに「古細菌」と謳われていたからです最近 進化生物学の書物を読んでいて進化の系統樹が 昔習ったころとは変わっていることに気付いていたからです以前は 核を持たない「元核生物」と核を持つ「真核生物」の 大きな2つの流れしかなかったのに最近では そこに「古細菌」というカテゴリが新規参入しており「細菌(真正細菌)」「古細菌」「真核生物」という 3つの枝葉が系統樹に存在するように 書き換えられているのですしかも「古細菌」という名のわりに 「真核生物」はその「古細菌」から枝分かれしているのです残念ながら 今まで読んだ書物では この「古細菌」の説明がなかったので本書において 1977年に発表されたひとつの論文を端緒にこの「古細菌」の研究が 50年近くの年月で どれほど発展してきたか知れてよかったですもっとも私自身は ネオ・ダーウィニズム懐疑論者なのでその古細菌が 他の細菌との共成関係の結果 真核生物に進化したという結論には賛同できないのですけどねこのあたりの話は 別の機会に譲りますけど・・・とはいえ あらためて この地球という星の主役はせっかく知能を持っているのに 地球環境を破壊し 自らの首を絞めてしまっている人類ではなく海洋底の奥底にも 火山や温泉地帯にも 私たちの周囲の土壌にもいや それどころか 私たちの体内にも 生活の場を持って環境に順応して 生き続けている 細菌や古細菌であることを 賞賛するばかりですそして 最後に日本の研究所が この分野の研究に 画期的な貢献をしたことも知り日本の研究者の皆さんの 地道な努力にも 賛辞を送りたいです『われら古細菌の末裔 微生物から見た生物の進化』 著 者 二井一禎 コーディネーター 左子芳彦 発行所 共立出版 共立スマートセレクション38 初 版 2023年2月25日 目 次 ① 全ては3ページの論文から始まった 1.1 1つの表が意味すること 1.2 ウーズの辿った道 1.3 「分子時計」という概念との遭遇 1.4 分子系統解析法の確立 1.5 隣の研究室はメタン菌の研究をしていた 1.6 成果の発表と学会の冷たい反応 1.7 3ドメイン説の提起(ウーズらによる1990年の論文) 1.8 3ドメイン説に対するマイヤーの批判 1.9 マイヤーの批判に対するウーズの回答 1.10 3つのドメインの系統樹上における関係 ② 初期生命としての微生物 2.1 生命は自然に発生するのか 2.2 生命は物質から:化学進化説を唱えた2人の巨人 2.3 化学進化を実証しようとした最初の実験 2.4 ミラーの実験に先立つ実験、続く実験 2.5 マーチソン隕石 2.6 有機物の生成から生命の誕生へ 2.7 原始生命を育んだ温度環境 2.8 原始生命の姿 2.9 生命の痕跡 ③ 大気環境を変えた微生物たち 3.1 原始大気の変遷 3.2 海洋の誕生、二酸化炭素濃度の低下、地球の冷却 3.3 嫌気環境下における微生物の代謝 3.4 光合成の起源は深海で 3.5 光合成系の進化 3.6 酸素発生型の光合成の起源 3.7 ストロマトライトが語るもの 3.8 大酸化イベント 3.9 スノーボールアース仮説 3.10 酸素濃度の上昇と真核生物の誕生 ④ 真核生物への進化 4.1 真核生物の誕生をもたらしたメカニズム:細胞内共生 4.2 真核生物の特徴:複雑な細胞構造 4.3 真核生物はいつ誕生したのか:化石による証拠 ⑤ われら古細菌の末裔 5.1 培養せずに微生物を検出する新しい方法:メタゲノム解析法 5.2 新たな古細菌の探索レース 5.3 真核生物に固有のタンパク質(ESPs)による系統解析 5.4 アスガルド上門:真核生物の先祖か? 5.5 ロキアーキオータの形態から導かれた新しい真核生物誕生モデル
Apr 19, 2024
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『最強の恐竜』と聞いて まず「最強のアイドルさま」のフレーズが頭に浮かんでしまったのは なんとも情けない話ですがかつて この地球上で反映した恐竜への興味は 子供の時から変わらず持ち続けていますしかし 本書は想像していたのとは違って 恐竜研究の最前線を網羅する内容ではありませんでしたでも 作者の恐竜研究者としての 世界各地でのフィールドワークを含めた日常は興味深かったです経済中心の現代日本では 直接的な技術革新や利益をもたらしそうにないこんな古生物学の研究環境は けっして恵まれたものではないと想像できますそれでも 情熱を失うことなく 研究に邁進されている 田中康平先生や世界各国の研究者の皆さんには 頭が下がる思いです彼らの働きがなかったとしたら 私が抱いている疑問の答えはけっして得られないでしょうモンゴルの砂漠で 這いつくばって化石を探すお姿が とても羨ましく感じましたこんな生活 こんな人生を送れたら と しみじみ感じてしまいましたそれにしても 恐竜の研究といっても歯の化石ひとつや 足跡の化石 たまごの化石 ウンチの化石の研究など様々なアプローチがなされているのですね なんだかすごいですそういった研究から 失われてしまった 恐竜という存在が少しづつではありますが あきらかにされつつあることに 何だか興奮してしまいましたやっぱり 恐竜は特別な存在なんですね『最強の恐竜』 著 者 田中康平 発行所 新潮社 新潮新書 1027 初 版 2024年1月20日 目 次 プロローグ 最強の恐竜は何か 1章 「化石がある」ならウズベキスタンへも 2章 史上最も大きな恐竜は? 3章 一番足が速い恐竜は? 4章 噛む力が一番強い恐竜は? 5章 恐竜の一番大きなウンコ化石は? 6章 一番賢い恐竜は? 7章 恐竜の一番大きな卵化石は? エピローグ 結局、最強の恐竜はナニ?
Apr 15, 2024
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表紙を見て いかにもおどろおどろしい ホラーSFの予感でしたが実際は 正統的な 宇宙怪物との ファーストコンタクトSFでしたね主人公たちが ある殖民惑星に送り込まれるが 実は隠されたミッションがあったとか映画『エイリアン』シリーズを想起させる内容でしたがその怪物というのが 従来のSFで描かれてきたような 生物学的な存在ではないのがいかにも21世紀のSFという 斬新な存在で主人公たちが その未知の「感染体」との 戦いの渦中に投げ込まれますがとにかく謎から謎の まったく先の読めない展開にただただ 謎の答えを知りたい渇望のなかで 上下巻1,000ページを読み進めさせられました著者は初読みの作家さんなのですが そのあたりのテクニックはかなりのものだと感じましたそして ようやくラストまでたどり着いたのですが なんだこれは!ほんと 唖然呆然というしかない エンディングまいったね『妄想感染体(上・下)』 PARADISE-1 (2023) 著 者 デイヴィッド・ウェリントン 訳 者 中原尚哉 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫SF 2430・2431 初 版 2024年1月15日
Apr 14, 2024
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いやいや 手強い作品でしたそもそも 酉島伝法氏は デビュー作の『皆勤の徒』で出会ったものの当時の私は その奇怪な世界に馴染めず 円城塔氏とともに 苦手作家と位置づけその後 二度も日本SF大賞を受賞されたことも知っていながら手を出してこなかったどころか お名前を見かけても 頭の中で「にしじま」と読む始末苦手意識は なかなか抜けるものではありませんでしたしかし このところ読書世界が拡大しつつありますので この新作に恐る恐る手をだしましたところが 読み始めてすぐに 氏特有のアナグラムのような漢字の造語が創りあげる謎の世界になかなか溶け込めず やはり自分には無理かなと 諦めの気持ちも湧き上がりましたでも そこをなんとか乗り越えていくなかで人類の末裔なのか そうでないのかも不明な人々の暮らすまるで神話のような 斬新な世界の構造と 住人たちの奇妙な生態が少しづつ解き解されていくにつれてこの世界で懸命に生きる人々に仮託された 世界の枠組みと歴史に拘泥された社会でのある家族が辿った歴史物語に心動かされましたそれにしても これほど壮大な世界を創造し そこに生きる人々を書き分け描写できる酉島伝法という作家は 天才なのでしょうね『奏で手のヌフレツン』 著 者 酉島伝法 発行所 河出書房新社 初 版 2023年11月30日 目 次 序 第一部 解き手のジラァンゼ 第二部 奏で手のヌフレツン 起
Apr 10, 2024
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昨年読んだ 第12回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作の 『そして、よみがえる世界。』が面白かったので 調子にのって いつもなら読まないこの賞の受賞作なのですが第13回優秀賞受賞作の本書を読んでみましたそして やっぱり ミステリは 私にはむいてないという 結論に回帰してしまいましたタイトルから かってに 中世ヨーロッパを舞台にした 幻想的な物語をイメージしていましたが高野史緒さんの『ムジカ・マキーナ』を読んだ直後で その舞台背景が薄く感じてしまいまた 主人公のテオを初めとする3兄弟が 現代のアニメの主人公のように 明るく元気で逆に存在感をあまり感じることができませんでしたたぶん ラノベをよく読まれている読者さんには 違和感がないのかもしれませんねそして なにより タイトルで「永久機関」を謳ってしまっているのが永久機関はありえないという常識の前では ハードルが高かったのではないでしょうか謎解きが トリックの種明かしになってしまって もうひとつ面白みにかけている気がしますまた ラストの大ネタばらしも 唖然としてしまいましたこの流れ 必要だったのでしょうか以上 適当なことを書いてきましたがミステリ音痴の戯言として ご容赦くださいませ『機工審査官テオ・アルベールと永久機関の夢』 著 者 小塚原旬 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫JA 1563 初 版 2023年12月25日 目 次 1 機工審査官テオ・アルベールの裁決 2 ドンブレソンの永久機関 3 かつて「疾風の狼」と謳われた騎士イザーク・アルベールと、その妻クロエ 4 異端的な異端審問官 5 機工審査官 対 異端審問官 6 教皇猊下のマルチーズ 7 純白の追撃隊 8 論難不可能な永久機関 9 堕罪を招く修道士 10 ヴァランガンの永久機関 11 魔都プラハのジークフリート 12 グスタフ・マイスリンガーという男 13 ヴァランガン修道院の老師 14 黒い審問官 対 純白の追撃隊 15 処刑台にて 16 機工審査官テオ・アルベールと永久機関の夢
Apr 4, 2024
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K-POPのガールズグループが好きで(少女時代から New Jeansまで はばひろく)韓流ドラマや映画が好きで 韓国SF小説が好きになってその流れで 韓国の文藝作品にまで 辿りついた次第です本書を選んだのは理由は特になく韓国文学セレクションというシリーズの一冊ということで手に取りましたがかなり衝撃的な内容で 読んでる最中は心穏やかではいられませんでした学校内のイジメや 家庭何のDVの被害者 あるいは社会になじめない人々が感じる生き辛さそれらは 日本とも変わらない問題ですが本書では 韓国において 歴史上の悲惨な荒波で 国境を越えざるをえなかった人々とその子孫に降りかかる問題も描かれ それは日本人の想像がおよばない大きな問題ですそういった不幸を抱える主人公たちの 慟哭とも言える心の叫びは読んでいる間中 心に突き刺さってきました作者はそれらの人々によりそいますが そこに救いや光明を見出すことは難しくただただ やるせなさに打ちのめされた気分でしたこの世界を照らす光は どこにあるのでしょうか『天使たちの都市』(2008) 著 者 チョ・ヘジン 訳 者 呉華順 発行所 新泉社 初 版 2022年12月15日 収録作品 『天使たちの都市』 『そして、一週間』 『インタビュー』 『消えた影』 『背後に』 『記念写真』 『女に道を訊く』
Apr 2, 2024
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昨年『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』を読んで高野史緒さんが好きだ~ってなってしまったのですが考えたら SFマガジン等に掲載された短編ぐらいしか読んでなくてどっちかというと 中世とか近代のヨーロッパのお話か とか 芸術のお話なのちょっと苦手かもと 以前の私は 敬遠していたのが 正直なお話ですしかし こんなことではいけないと考え直してまずデビュー作である本書を読みました そして やっぱり高野史緒さんが好きだ~となりましたたしかに カタカナの登場人物しか出てこない近世ヨーロッパの物語でしたし登場人物たちの会話は クラシック音楽をめぐる音楽論でしたがミステリアスな展開にひきこまれ 音楽と言ってもDJとかスピーカーシステムとか当時ではありえなかった ギミックが紛れ込む 謎の改変歴史SFに発展しそう しっかりガチなSFになって 驚愕のエンディングまで読むのを止めることができませんでした解説の巽孝之氏は 「彼女は「音楽SF」というジャンルを決定的に成立させ」と述べていますが私にとっても 新鮮なジャンルSFでしたそして 生年と発表年代からすると まだ20代のうちにこれだけの作品を書き上げたその才能に驚き べつに私は作家志望ではありませんが 嫉妬心すら覚えましたということで 私の高野史緒推しは 決定的なものになってしまい残っている作品を これから読むことができるという 喜びがあふれていますし高野氏ご自身のXをフォローさせていただいているので近々新作の発売が予定されているという情報も得ていますのでいやいや お楽しみはこれからです『ムジカ・マキーナ』 著 者 高野史緒 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫JA 693 初 版 2002年5月15日 ※原著 新潮社 1995年7月刊 目 次 ex machina・・・ 第一楽章 ウィーン 奏楽天使 第七番 第二楽章 悦びの殿堂 天体の音楽 第二楽章 ロンドン キサナドゥ 追跡者のためのソネット バーツ 破壊神 第三楽章 サンルイ ex machina・・・
Apr 1, 2024
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先日読んだ『ミステリ・ハンドブック』に続いて本棚の奥で埃をかぶっていて 最近は開くこともないし 読んでないパートのほうが多いよねということで 終活の一環という意味でも まるっと読んでみました刊行は1990年なので 30年以上の歳月が経過していますにもかかわらず 「オールタイム・ベスト」に選ばれている10作品のうち読めているのは わずか4作品にすぎないという惨状ましてや 「編集部のおすすめ作品」など 次々と紹介される作品群についてはタイトル知ってる作品も多いのに どれだけ読んでないことか・・・しかし おすすめ作品に上げられている『闇の左手』は 最近読んで感激したばかり30年前に紹介されている 古典ともいえる作品だけど傑作の価値はけっして下がってはいないということなのでしょうねあらためて 新作だけでなく 本書で紹介されている作品も読まないままでは 死ぬに死ねないなんて 大げさなこと 思ってしまったしだいですでも 巻末のハヤカワ文庫SFの刊行リストを見たら 全部は無理かな やっぱりそして 30年あまりの時の流れを感じることもまず 矢野徹氏や 野田元帥など かつて親しんだ執筆者のなかにすでに亡くなられた方もおられるという 寂しさそして「用語小事典」の科学分野の解説では 古くなってしまったことも・・・ハッブル宇宙望遠鏡は 本書刊行の直前に打ち上げられていますが まだ運用は始まっていないしジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げは 遥か未来のおはなしマーズファインダーやガリレオなどの 太陽系探査も始まっておらずそれら探査衛星のもたらした 写真やデータが 数々のSFに影響をあたえたこともこれからのお話ですからそのほか 『ニューロマンサー』は 紹介されているもののそれ以降の ITテクノロジーの驚異的な進歩また ヒトゲノム計画も 本書の発刊の年にはじまったばかりこの30年度の 科学やテクノロジーの発展は すごかったというしかないですねそして その30年のSF作品の 進化と深化を思いました『SFハンドブック』 編 者 早川書房編集部 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫SF 875 初 版 1990年7月15日 目 次 オールタイムベスト 対談「SFの魅力、どこから読むか」川又千秋 高橋良平 編集部のおすすめ作品●第一部 マイ・ベストSF●第一部 年代別SF史 講座PART1 対談「文庫がすべてを変えた」野田昌宏 高千穂遥 編集部のおすすめ作品●第二部 講座PART2 マイ・ベストSF●第二部 用語小事典
Apr 1, 2024
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気象学という学問の書物は 初めて読ませていただきました日頃テレビの天気予報のコーナーで解説されている気象に関するお話は興味をもって聞いてはいるのですが本書では 非常に広範囲に しかも かなり高度な解説がされていて正直 化学や物理に関係する説明などは私には難しかったですしかし 全地球的な観点から 様々な気象現象が説明されていたのは興味深かったです地球の自転や地形 大陸と海洋 などの 諸条件が気象にもたらす影響ってすごいな とかバタフライ効果って こんなことから言われるようになったんだ とかコリオリの力って何なんだ? などなど かなり楽しい経験でしたそして それでもなお 地球の気象が複雑すぎてカオスだということもなるほど スーパーコンピュータの利用が進んでもなお 完全な天気予報は困難だというのも無理はないなと・・・この気象学という分野の書物を これからも読んで 知識と理解を深めたいですね『地球規模の気象学 大気の大循環から理解する新しい気象学』 著 者 保坂直紀 発行所 講談社 ブルーバックス B-2245 初 版 2023年11月20日 目 次 第1章 大循環はパーツに分かれている 第2章 暖まった空気は上昇する ― 熱の話 第3章 隣どうしの空気は押し合う ― 気圧の話 第4章 地球は丸くて自転している ― コリオリの力 第5章 偏西風が多彩な天気を作る ― ロスビー波 第6章 地球には山もあれば海もある
Mar 30, 2024
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書き下ろし日本SFコレクションNOVA 第1期全10巻やっとこ読了しました1巻2巻を読んだのは 10年以上前なのですがサイエンス派・ハードSF派である私には 文学派や幻想派だったりする変格派SFが当時は苦手でしたので それ以降の巻に手を出すことなく放置していたのですしかし SFに対する意識改革もあって 昨年初めに第3巻を読みやっと 区切りである第10巻に到達した次第ですとはいえ 巻末の1巻から10巻までの広告に掲載されていた 収録作品リストを眺めてもほとんどの作品の内容を思い出せない・・・というのが私の記憶力問題事情なのですがまちがいなく このシリーズで 多くの未知だった作家諸氏の作品に出会えたことは幸せでしたなかには これがきっかけで 別の作品を読んだ作家さんもいて現代に至る SF作家さんの現状を知る手がかりにもなりましたそして NOVAシリーズはこのあとも継続して出版されていますがあとがきでも触れられているように このころから日本SFアンソロジーが大量に出版されていますのでできれば 時系列にそって アンソロジー楽しんで読んでいきたいと想ってますさてさてということで 本書収録12作品の感想(のようなもの)を 書いておきます『妄想少女』菅浩江 『博物館惑星』シリーズで知っている菅浩江さんの作風とは かなり違ったアクション満載の まるでゲームの世界のようなですが これもポストヒューマンの未来を描写する ある種のディストピア小説なのかもしれません『メルボルンの思い出』柴崎友香 柴崎友香さんは初読み 謎のゼッケンを付けた集団とともにメルボルンの街に閉じ込められた 主人公の心象風景が 不思議な印象を残しました『味噌樽の中のカブト虫』北野勇作 このNOVAシリーズでは 謎に満ちたサラリーマンたちを描いた 作品群が記憶に残っていますが 本作も 頭の中にカブト虫がいると診断されたサラリーマンの幻想譚 作者の発想自体がミステリアスです『ライフ・オブザリビングデッド』片瀬二郎 理由も無く会社勤めを続けているゾンビが主人公の ゾンビ小説の超変奏曲 私はゾンビ好きではないのですが なぜゾンビ物語がこれほど多く製作されているのが謎過ぎます『地獄八景』山野浩一 なんと山野浩一氏の33年ぶりの新作とのこと それだけでも驚きなのに なんですかこの死後の世界地獄の いろんな意味でハチャメチャな物語は 笑って読めばいいのか それとも・・・『大正航時機綺譚』山本弘 タイムトラベル詐欺小説って ほぼ落語ですよね しかもオチがそれ!? しかし 山本弘氏の作品は いつも感性がぴったりきて 面白いです『かみ☆ふぁみ!』伴名練 すでにベテランのSF作家として名作短編を残している作者の かなり初期の作品 ラノベテイストですが しっかり高度なSFになってるところがさすがの面白さ しかし読書メーターの感想では 瀬名秀明さんや円城塔さんの力作を押さえて 人気ナンバー1というのは それが現代の読書シーンなのかな『百合君と百合ちゃん』森奈津子 満28歳までに結婚することが義務化された未来 相手を見つけられなかった者は 役所が選んだ相手と結婚させられるが・・・ 森奈津子さんらしく ジェンダー問題を真正面からではなく描いた怪作で傑作でした『トーキョーを食べて育った』倉田タカシ 文明が崩壊した未来を描くディストピア小説なんだけど なぜか明るく元気なのが作者の持ち味かな 探していたのがアレなんて 可笑しくて悲しい物語でした『ぼくとわらう』木本雅彦 未来に生きるダウン症の主人公の物語ですけど 日頃から深く考えることをさけてしまう ダウン症を初めとする障碍者のことを 深く考えさせられた作品でした『 (Atlas)3 』円城塔 円城塔作品は 私なんかの頭脳なんかでは 難解すぎて苦手なのですが 本作は ミステリというかハードボイルドとして すんなり(比較的)読めました ということは 円城塔作のサイバーパンクだったのか(な?)『ミッシェル ― 小松左京氏に捧げる』瀬名秀明 とにかく小松左京チルドレンの私には たまらない作品でした 永遠の未完となった『虚無回廊』からのオマージュだけでなく 『果てしなき流れの果てに』などの 他の小松左京作品まで絡んでくるとは 感涙ものです 死ぬまでに 小松左京作品を全作再読したくなってしまいました 無理ですけど『書き下ろし日本SFコレクションNOVA10』 編 者 大森望 発行所 河出書房新社 河出文庫 お 20-10 初 版 2013年7月20日
Mar 26, 2024
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最新の遺伝子研究の成果をもとに 生命の謎に迫ろうとする一冊ですしかし 私には遺伝子というものにこだわって展開される 著者の説にはかなり違和感を抱きましたまず 最初の生命は RNAから始まったという説たしかに DNAが先か蛋白質が先かという問いには 答えがでそうにありませんがだからといって RNA? RNAには生理機能があり 複製するから?そもそも RNAの生理機能て何なのでしょういや それ以前に核酸が偶然に生成され 集合してつながり 生命となる?DNAと蛋白質のペアより単純で 可能性が高いというだけではないのかな?そこから始まり 進化の道筋を 遺伝子中心に考察していますがやはり 従来のネオダーウィニズムの主張と 大きく異なるものではないように感じました著者は 自信たっぷりに自説を展開しておられますから素人の知識もない私のような者が 反論するすべなどありませんからこれ以上の感想を書くことは 遠慮しておきます『「生命の40億年」に何が起きたのか 生物・ゲノム・ヒトの謎を解く旅』 著 者 林純一 発行所 光文社 光文社新書 1291 初 版 2024年1月30日 目 次 第1部 生命の再定義 第1章 生き物とは何か 第2章 自己複製する核酸の正体 第3章 遺伝子とは何か 第2部 ゲノムの表現 第4章 個体形成 第5章 個体老化 第6章 子孫形成 第3部 ゲノムの創造 第7章 ヒトゲノム創造までの40億年 第8章 ヒトたらしめるもの
Mar 22, 2024
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今まで 地球の歴史や 地球の構造に関する本は かなり読んできましたが本書は「化学」という切り口で 地球史や地球の構造を解説しているのが新鮮で新たな知見を数多くいただきましたといっても「化学」は 学生時代に数学と並んで絶望的なほど苦手な科目でしたのではたして どこまで理解することができたのか そして記憶することができたのか正直 心もとなく感じてはいますけど・・・「化学」といえば 試験管やフラスコで実験しているイメージなのでそれによって この巨大な惑星「地球」を どうして解き明かすことが可能なのかかなり疑問を抱きながら読み進めたのですがマントル 地殻 海洋 大気を 循環する 様々な物質の化学作用が現在の地球の構造をかたちづくり 変化させてきたかまた その過程で生物が作り出した物質が どれほど重要な役割を担ってきたか地球物理や地質学だけでは知りえなかったことを 沢山知ることができましたそして こうした物質の大循環をなしえたのは 太陽系の惑星では地球だけだというあらたな 奇跡の物語 面白かったです『地球46億年 物質大循環 地球は巨大な熱機関である』 著 者 月村勝宏 発行所 講談社 ブルーバックス B-2251 初 版 2024年1月20日 目 次 第1章 太陽系にある元素と揮発性物質 地球を構成する物質 1-1 太陽系の元素 1-2 揮発性物質 1-3 水:最も重要な揮発性物質 第2章 太陽系惑星と原始の地球 地球はどのようにできたのか 2-1 太陽系惑星のでき方 2-2 熱かった時代の地球の変化 2-3 熱い地球から冷たい地球へ 第3章 地球の物質循環 地球の物質循環とは何か 3-1 プレートテクトニクスの発見 3-2 地球の3つの物質循環 3-3 高温でできた鉱物と低温でできた鉱物 3-4 地球での反応をエントロピーで理解しよう 第4章 ゆっくり変化した地球 変化する地球 4-1 消えた二酸化炭素 4-2 成長を続けた大陸地殻 4-3 縞状鉄鉱床 第5章 物質循環の中の生命の誕生 生命はどのように誕生したのか? 5-1 初期地球に有機物ができた謎 5-2 初期生物のエネルギー源の謎 第6章 二酸化炭素と大陸地殻 6-1 二酸化炭素と大陸地殻の循環反応モデル 6-2 大陸地殻表面での二酸化炭素と鉱物の反応 6-3 海での炭酸塩鉱物の沈殿 第7章 粘土:冷たい環境でできた物質 粘土とは何か 7-1 粘土が低温でできる理由 7-2 非晶質ナノ粒子が決める粘土の性質 7-3 粘土鉱床のでき方 第8章 親銅元素とウランの循環 親銅元素とウラン 8-1 親銅元素と花崗岩 8-2 親銅元素の循環 8-3 ウランの循環 第9章 熱機関である地球 地球とはどんな惑星か?
Mar 21, 2024
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私にとっては未知の作家さんで 事前情報もまったくなかったのですがタイトルの「パラレル」という言葉に 私のアンテナが反応してしまい版元が河出書房新社ということもあり ひょっとしたらSFかな・・・なんて軽い気持ちで読んだのですが・・・これが なかなかの正解でありました著者略歴を見ると かなりベテランの実力派の脚本家さんということでなるほど ストーリー展開が こなれていて 章立てはテレビドラマの毎回分のようで次回への期待と興味が かきたてられるような印象ですSFとしては パラレルワールドの取っ付き易い部分だけを上手に使ったなという感じパラレルワールドの科学的説明や はったり解説には踏み込まずに さらっと流して主人公の行動や心理面に重心を置いていて 物語性を重視されたのだなと最後まで 意外な展開もあって 楽しめました が私は エピローグで 迷いの森に入り込んでしまいましたこの人が この時点で きっとまた会う・・・って どういうこと???私は 何かを読み落としてしまったのか それとも誤解や誤読していたのか???あわてて ページを元に戻ることになったけど「何か大事なことを忘れている」って そういうことなのかななんだか 確証がなくて・・・それ以外にも いくつかのエピソードが そのひとことで終わらせちゃったの?などという 思いは多少残っていますけどこれ ドラマとして 見てみたいなとも 思っております『パラレル・パスポート』 著 者 尾崎将也 発行所 河出書房新社 初 版 2024年1月30日
Mar 16, 2024
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最初 手にとってパラパラ開いた時には ページ数も少なく 文字も詰まってないのでイージーに書かれた入門書なのかと すこし残念な印象でしたしかし 読み進めていくと 確かに入門書ではあるのですが最新の宇宙論がきっちり網羅されているしなにより それらの難解な理論を著者が 完全に理解し租借し吸収したうえでご自身の納得している平易な言葉で とても上手く説明されているということに気付かされるとともに 尊敬の念を抱きましたこのようなことは 本当の意味で 頭のいい方にしかできないことだと思います松原先生は そういう意味で 頭がよく賢い方なのでしょう 間違いなく宇宙論には興味があるが なかなか難しくてとお考えの方に読んで頂きたい良書だと感じました本書を読み進めるなかで すでに知っていると思っていたことがなるほど そういうことなのかと 再発見させていただくことも数多くありましたそして 最後の最後に 松原先生の書かれた7行の短い文はそんな私のもやもやしていた思いを まとめていただいたようで 深く心に染みましたしまた 最先端の研究者である松原先生の 謙虚な姿勢もうかがえて 感銘しました私自身の覚書として ここに引用させていただきたいと思います宇宙とは、時間と空間である。では、時間と空間とは何か。実はよくわかっていない。宇宙とは何か。それは、人類に残された問いだ。宗教でも、哲学でもなく、科学が答えを与える日が待たれる。『宇宙とは何か』 著 者 松原隆彦 発行所 SBクリエイティブ SB新書 640 初 版 2024年1月15日 目 次 はじめに 「宇宙とは何か」の旅へ 第1講 宇宙像の広がり 第2講 宇宙の地平 第3講 ミクロの世界へ 第4講 マルチバース 第5講 微調整問題と人間原理 第6講 時間と空間
Mar 14, 2024
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本書は 2014年2月に読んでいるのですがこのところイーガン完全読破計画のなかでもう一度読みたくなったのですしかし 再読といいましても 10年もたっていますし私の記憶力の無さのおかげで 初読みと変わることなく楽しめましたそれが いいことなのかは別問題ですが 楽しい読書のために記憶力不足は役立ってますとはいえ イーガン・ハードSFの最高峰と称される本書初読みとかわらず かなりハードな読みごたえでしたなにしろ おなじみである物理学を 一から異なった文化や言語で語るのですからもともと 物理の素養に欠しい者にとっては しばしば置いてきぼりをくらっちゃいましたまた 本書の特徴は 奇数章と偶数章で まったく異なる物語が語られることでしょうね奇数章では 遥か未来の アップデートされた人類の子孫が主人公ですが偶数章では 謎の異星生命体が 謎の場所で生活しているのですまあ常識的な読書人としては この二つの物語が最後には合流して・・・なんて流れを 思い浮かべるに違いありませんがさすがイーガン先生は この二つの物語で とんでもない世界を構築しちゃいますやはり イーガンは スペシャルなSF作家さんですもし10年後に 本書を再再読するとしたら私の知識はこの物語を楽々と理解できるレベルに到達しているでしょうかもしまだ生きていたら 挑戦してみようかな・・・『白熱光』 INCANDESCENCE (2008) 著 者 グレッグ・イーガン 訳 者 山岸真 発行所 早川書房 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5012 初 版 2013年12月15日
Mar 12, 2024
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非常に刺激的で 面白い本でしたこのところ 宇宙論の本をいろいろと読んできましたがどうも ダークマターとダークエネルギーの存在が 巨大な壁となって立ち塞がり肝心な部分を 越えられなくて すっきりと謎に届きそうのない印象ですそれに対して 私って何?という もうひとつの究極の疑問についても意識や知能の出所である 脳について 研究がなかなか進まないのでしょうか宇宙論に比べて 脳科学を解説した書物の 出版数も少ない気がしますしタイトルで 脳科学の文字が使われていてもまた ※※したら 脳のこの部分が活性化して ※※になる なんていう解説があっても心理学に過ぎない内容だったりして がっかりすることもしばしばです本書では 知能の根源を求めてきた 著者の研究の路程が まず語られます彼が 注目したのは 新皮質という 哺乳類にしかない脳の組織ですその新皮質を構成するニューロン(脳細胞)の構造とネットワークを調べあげそれが 知能にとって どのような働きをしているのか追求します詳細な内容を書くのは このブログの目的ではないので これ以上は書きませんが以上の第1部で記述された 脳の働きの精密さに 驚くばかりでしたそして 第2部では その第1部で得られた知見をもとにAIや機械知能という存在について 切り込んでいきさらに 第3部では SFではすっかりキーアイテムになっているマインドアップロードや 脳とコンピュータの接続 マン=マシン・インターフェイスについて問題点や可能性を考察していきます(批判的にですが)さらにさらに その上で 著者は 滅ぶことが避けられない人類の知性と膨大な知識の集積を 未来永劫に残すことまで 考えを広げていきます正直言えば 著者はかなりの自信家のようであり えっと感じることもあり第1部の新皮質の仕組みや働きについても 完全に解明されたとは思えないのですがその説については 興味深かったですし 新たな知見を得られたと思います脳という 謎に満ちた宇宙を もっと知りたいです『脳は世界をどう見ているのか 知能の謎を解く「1000の脳」理論』 A THOUSAND BRAINS A New Theory of Inteligence 著 者 ジェフ・ホーキンス 訳 者 大田直子 発行所 早川書房 初 版 2022年4月25日 目 次 序文 リチャード・ドーキンス 第1部 脳についての新しい理解 第1章 古い脳と新しい脳 第2章 ヴァーノン・マウントキャッスルのすばらしい発想 第3章 頭の中の世界モデル 第4章 脳がその秘密を明かす 第5章 脳のなかの地図 第6章 概念、言語、高度な思考 第7章 知能の1000の脳理論 第2部 機械の知能 第8章 なぜAIに「I」はないのか 第9章 機械に意識があるのはどういうときか 第10章 機械知能の未来 第11章 機械知能による人類存亡のリスク 第3部 人間の知能 第12章 誤った信念 第13章 人間の知能による人類存亡のリスク 第14章 脳と機械の融合 第15章 人類の遺産計画 第16章 遺伝子vs.知識
Mar 8, 2024
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この2‐3年 SF中心に読んでいるのですが昔は ミステリも 主にハードボイルドですが けっこう読んでいましたそんななかでも この「隠蔽捜査」シリーズは 時間があきながらも 大切に読み続けていますといっても 今年1月に『一夜 隠蔽捜査10』が出版されたのであらら置いてかれると思って あわてて本書を読んだ次第です私がこのシリーズを気に入ってる理由は なんといっても 主人公竜崎伸也の人間性ですキャリア官僚としては まわりから浮いている「変人」なんですがとにかく 職務に対する実直な姿勢は なにがあってもぶれることがありませんそんな 竜崎が周りの官僚や 部下の警察官を巻き込んで なおその道を堅持するその姿に なんだか勇気すら貰っているような気がしますそして その竜崎と 登場人物たちの会話劇が やたら面白いです竜崎を見下したり 反発していた人物が やがて竜崎に巻き込まれ感化されていくのも爽快ですもちろん 警察小説ですから 次々に犯罪が発生しますその犯罪捜査の過程も興味深いですし 竜崎が部下の捜査員たちから上がってくる報告を聞いてアームチェアデテクティブならぬ 署長室探偵としての名推理も冴え渡りますしかし 作者のテーマは 謎解きではなく 竜崎を中心とする群像劇の人間達を描くことなのだろうと そして 謎解き推理の本格派が苦手な私がこのシリーズに惹かれる理由も そこにあるのだろうと 思います『凄月 隠蔽捜査7』 著 者 今野敏 発行所 新潮社 初 版 2018年1月20日
Mar 6, 2024
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「SFマガジン」2023年12月号掲載の短編『母と皮膚』が印象的だったのでこの作者の存在が気になっていて 本書を手に取りましたもともと 同タイトルで 2020年4月に単行本として出版されたものに出版後に「SFマガジン」2021年2月号に掲載された作品を加えて 文庫化されたものだそうですもし単行本読んでいて こういう形で文庫化されたら商売上手なんでしょうけど かなり悔しくて 再度購入するかどうか 迷いますよね今回は 元本読んでないから こっちがお得ということですけど どうなんでしょうね?そうして読んだ本書 かなり衝撃的でした収録の6作品 それぞれ遠未来だったり 近未来だったり ディストピア小説だったりしてSF短編小説の体裁をとっているのですが・・・そこで提起されてしるのは 歴史的であったり リアルであったりする性問題や 女性問題 LGBTQのジェンダー問題でありそれを 鋭い筆致で読者に 突きつけてくるものでした本来 この地球上で生物が よりよい遺伝子を残し存続させていくための「性」というシステムがなまじ知性を持っているために 人間社会で多くの問題を孕んでしまい数々の悲劇を生み出してきた歴史を考えさせられましたそして 現在も続く抑圧と差別と暴力が生み出している悲劇をも・・・『ピュア』 著 者 小野美由紀 発行所 早川書房 ハヤカワ文庫JA 1562 初 版 2023年11月25日 収録作品 『ピュア』 『バースデー』 『To the Moon』 『幻胎』 『エイジ』 『身体を売ること』
Mar 4, 2024
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私には 一般相対性理論って わかったような わからないような 微妙な存在なんですけど本書を読んで 科学者の皆さんも そのアインシュタイン方程式を100年たっても 研究し続けておられると知って なんだか安心してしまいましたそんな一般相対性理論から 導かれたのは まずブラックホール本書で そのブラックホールについて もっとも印象的だったのは高次元ブラックホールという概念でした類書でもあまり扱われていない気がしますが 数学的にあまりにも高度すぎて私なんかには イメージすることもできませんが 面白いこと限りなし私たちが理解できる三次元空間に 時間という次元を加えた四次元ですら難解なのに超弦理論から導かれる 11次元とか10次元って 何なんだそういえば『三体Ⅲ』でも そんな高次元のことが描かれていたけどこの世界って この時空って いったいどんなものなのか 不思議でしかないですそして 一般相対性理論から導かれるのが この宇宙の始まりだれも見ていなかったのに 数学が解き明かして予想しあとから 宇宙背景放射が発見されて 証明されるとか これまた不思議でしかないですそして 本書の後半で 著者が重要視しているのが一般相対性理論から予想された 重力波の存在ですじつは 本書の執筆時には まだ重力波の観測には成功されておらず世界各国で 重力波観測のための設備が構築され 努力が続けられているので近い将来 必ず重力波の観測に成功するでしょうと 著者は期待をこめてのべておられますがなんと本書の奥付の 初版1刷発行日 2015年9月20日のわずか6日前9月14日に 重力波が観測されていたのです検証と確認され発表されたのが 翌年だったので著者のもとにはその知らせが届いていなかったのでしょうがなんだか 著者の研究に対する熱意が導いた 奇跡のような出来事だったのですねとにもかくにも 示唆にとんだ学ぶことの多い一冊でしたまた 研究者のみなさんの 成功や失敗のエピソードの数々も面白かったです とても『ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開』 著 者 真貝寿明 発行所 光文社 光文社新書 774 初 版 2015年9月20日 目 次 第1章 アインシュタインとその時代 第2章 特殊相対性理論 光速に近付くときの物理法則 第3章 一般相対性理論 強い重力がはたらく世界の物理法則 第4章 ブラックホールで見る100年 第5章 宇宙論で見る100年 第6章 重力波で見る100年
Mar 3, 2024
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私 映画が好きなんです学生時代 よく授業さぼって 名画座とか二番館の暗闇で 一日過ごしたりしたものですしかし 最近はほとんど見なくなってしまいました原因としては 完全入れ替え制のシネコンになじめないこと何回も連続で鑑賞したいのに 追い出されてしまうのが さみしいのですそれで レンタルしたDVDで鑑賞するようになったのですがなんと 最寄の駅前にあって 毎日仕事帰りに寄っていた TUTAYAさんが 弊店してしまったのですネット配信に押されてなのかな でも私にとっては映画は大画面で鑑賞するものPCやスマホの ちっぽけな画面ではだめなんですなどという つまらない理由で 映画から遠ざかってしまったのですがそれでも 近頃の映画ってなんだかおかしいなと思っていたのです興行収入の上位をアニメや テレビドラマの続編映画が占めてるしスマホで映画見るのに 早送りで見ていたり なにそれと思うことばかりということで 現代の映画が置かれている状況を知りたくて 本書を手に取りましたしかし さすがゲンロン叢書 私の乏しい教養知識では しょうしょう手に余る内容でしたそもそも 取り上げられている作品のうち 鑑賞していたのは『シン・ゴジラ』と『ゼロ・グラビティ』ぐらいの低落では お話にもならないのですがそこは なんとか想像力を駆使して くらいついていきましたそして 何とか理解できたのは 撮影技術の驚異的な進化や映像技術における デジタル化がもたらした 映画製作過程のとんでもない変貌でしたそのうえ 様々なネット上の動画を見慣れてしまったりネットに流れる情報で 流行っているものばかり見ようとしている観客のニーズの変化に 製作サイドも流されて21世紀の映画が 得体の知れないものに なってしまったという個人的な印象を持ちました私には 芸術的・哲学的な認識をもっての 映画評論などは不可能ですがとりあえず 私なりの古めかしいであろう感覚で 映画を楽しみたいですねヒットしなかった作品のなかにも 現代でも名画だと感じることのできる素敵な作品が存在することを信じて・・・『新映画論 ポストシネマ』 著 者 渡邉大輔 発行所 ゲンロン ゲンロン叢書 010 初 版 2022年2月1日 目 次 第1部 変容する映画 カメラアイ・リアリティ・受容 第1章 カメラアイの変容 多視点的転回 第2章 リアリティの変容 デョキュメンタリー的なもののゆくえ 第3章 受容の変容 平面・クローズアップ・リズム 第2部 絶滅に向かう映画 映画のポストヒューマン的転回 第4章 オブジェクト指向のイメージ文化 ヒト=観客なき世界 第5章 映画の多自然主義 ヒト=観客とモノ 第6章 「映画以後」の慣習と信仰 ポストシネフィリーの可能性 第3部 新たな平面へ 幽霊化するイメージ環境 第7章 アニメーション的平面 「空洞化」するリアリティ 第8章 インターフェイス的平面 「表象」から遠く離れて 第9章 準ー客体たちの平面 インターフェイスとイメージの幽霊性 おわりに ポストシネマのアナクロニズム
Mar 2, 2024
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いつものことですが まったく事前情報無で しかも完全に未知なる作家さんの作品でしたが「SFマガジン」連載作品というキーワードが 私のセンサーに引掛かり入手しかし 手に取り装丁を見たときに まるで絵本のような表紙に当惑してしまったのはまったくのファンタジーだったら困ったなという思いからでした最近 幻想文学には手を伸ばし始めていますが やっぱりファンタジーは遠慮してますので・・・ということで読みはじめたのですが なんとかSFだったのにひと安心災害と世界大戦によって住めなくなった地球をはなれて人類は月を初めとする太陽系のあちこちや 住居可能な系外惑星を目指して旅立ったりしてますもちろん 論理や理屈大好きなハードSF派としては 突込みどころ満載ですが最近は年のせいか 過激さは引っ込みつつありますので そこは大目にみますが出てくるのが お化けや付喪神が憑依した○ー○ル・サ○○ース人形が出てきたりしてやっぱり 半分ファンタージーなのですねしかし なんでしょう この読後感は感動? たしかに涙ぐんでしまう場面もありましたただただ 心を穏やかにしていただいた ということかもしれません銀河連邦の宇宙人が物語の舞台である月の都市に駐在していて本来 問題多発になりそうな ニュースペースオペラなみの設定なのにその宇宙人は心優しくて 銀河連邦と地球文明はなかよくやっているという暖かなハートウォーミングなSFなのでしたそして なにより 作者の村山早紀さんが 心優しい方で 愛というものを信じておられ物語が好きで 本が好きで ネコが好きで そして SFが好きだってことがすっごく伝わってくる 素敵なステキな物語でしたそして 本書の執筆にいたった Twitterのエピソードも またステキな物語でした『さやかに星はきらめき』 著 者 村山早紀 発行所 早川書房 初 版 2023年11月25日 目 次 第一章 守護天使 ☆守護天使 第二章 虹色の翼 ☆魔法の船 第三章 White Christmas ☆White Christomas 第四章 星から来た魔女 ☆ある魔女の物語 最終章 さやかに星はきらめき ☆幽霊船
Feb 28, 2024
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