或る日の“ことのは”2

或る日の“ことのは”2

2011.07.03
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カテゴリ: 独り言



そのひとは、

ホームに駆け上がるなり、

駅に入ってきた快速電車の前に身を躍らせた・・・。




不思議と

大きな音はしなかった。

悲鳴もなかった。



レスキュー車のけたたましいサイレンが、

何重にもなって鼓膜に届いた。



何も見たくも、知りたくもなかった。

だから直ぐに踵を返した。



ホームには、日常とそう変わらない・・・

女子高生がケータイを触り、男性がメールを打つ、

そんな光景が、普通にあったそうだ。



到着したレスキュー車は、直ぐに引き返すことになった。

・・・必要とされなかったからだ。



ひとは、

『そうだ、死のう』と、思いつきで死んだりはしない・・・きっとしない。

ホームに駆け上がるまで、

彼の人の心を占めていたのはなんだったのか。

心が肉体を離れる今わの際に、

一体、何を思ったのだろうか。




私は分からなくなる。




つい、3ヶ月前に起こった東北の大震災では、

大勢の尊い命が喪われた。

あの惨い光景を見て、涙しなかった人はいない筈だ。


だのに

目の前で轢死したひとを、人は野次馬根性で見おろすのか。




命を捨てたものへの、・・・それが懲罰なのか。



そうではない、というのなら。


他人の死へ、それほど意識が希薄なら、

我々の社会は、もっと違った形態になりうるはずではないのか。





***





仕事を終えて、電車に乗った。

混乱していたダイヤは、もう正常化していて、

特に事故の痕跡を示すものは何もなかった。




・・・フェンスに結ばれた、

赤い紐を除いては。










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最終更新日  2011.07.04 15:50:54
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