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富士山、みかん収獲とイノシシとの攻防
季節は秋らしくなりました。
10月30日の富士山です。富士山が鮮明に見えるのは、この時期が秋のすんだ、カラッとした大気なことをしめしています。
午前9時57分、小田原厚木道路の平塚から見た富士山です。
みかんが美味しくなるには、この秋の晴れた日和が大切なんです。
みかんの美味しさは、太陽の恵みなんです。
秋の今、今回の小田原行きですが、
それは、小田原・早川の石垣山で、早生みかんを収穫するためです。
早生みかんは、10月の半ばから11月上旬まで、徐々に成熟していきます。
その成熟の進展するのに合わせて、みかん農家は収穫作業をしていきます。
小田原の市街地から、すぐ近くの早川の石垣山のみかん畑ですが、
若者が一人、今週も、みかんを収穫しているのが分かるでしょうか。
これらのみかんを、今収獲すべきか、もう少し待つべきか。
みかんの味の見極めですが、いちいち試食して確かめるわけにはいきません。
そのみかんの果皮の色を見て、その成熟・美味しさを、見極めれるようにならなければなりません。
せっかく、ここまで育てたんですから、一年間丹精してきたんですから、
酸味のなかに甘さが浮き出てくる美味しさ、これが当地のみかんの特徴なんですが、
そのおいしさが浮き出たものを採るか、それともその前に早もぎしてしまうか、
ここが収穫の肝心なところです。
美味しいみかんを消費者に届けたい、そこが生産者のポリシーなんです。
ですから、大まかに色づきさえすれば、ざーっと収穫すればよい、といったものではないんです。また、売れてお金になりさえすればよい、といったものじゃないんです。
なんのために、一年間、これまで苦労してきたのか、その基本が問われてるんです。
この若者ですが、
一生懸命に、このみかんは熟しているかどうか、その色をみて品定めをしています。
農家の家に生まれると、今はそれで安定した生活、まともに家族を養えるなんてことは出来ません。
親としても、子どもにそんな「負けるばくち」のような家業を強いることは出来ませんし、
子どもの側からすれば、小さい時から農家の大変さを見てきたわけですから、そんな家業から離れ、敬遠するようになったとしても、おかしくはないんです。むしろそれが当然なんです。
しかし、この若者は、今年の4月からですが、あの暑い最中に、職場の休日のひと時をつかって、みかん園の草刈りを始めだしたんです。
そして、一番大変な時期に、大変な作業を、やり通したんです。
これって、どういうことかわかりますか。
その作業が十分であるかどうかは別にして、基本的にみかん園の担い手があらわれたということです。
じつは、このみかん園の園主(71歳)が、今年の6月3日に亡くなったんです。友人でした。
その彼は口にはいっさいしませんでしたが、この先、家族やみかん園がどうなっていくか、地域の農家がどうなっていくのか、多分に気をもんでいたと思うんですよ。酒も弱いのに、一日の作業を終えて、コップ一杯のビールを飲むと、壊れたテープレコーダーのように、毎回、毎回、わけのわからない義憤を、語っていたんです。私などとしては「また、言ってらあ」と
聞き流していたんですが。
ところが、その当人が亡くなって、その彼が最後の遺稿としてのこした句集ですが、その「あとがき」にその思いを書いていたんです。それは全国の農家のおかれた多難な状態の中にも、みずからが努力してきた道は、とにかくも間違ってはいなかったし、変化の兆しを感じていると。いわば、安心立命の境地をしたためた一文でした。
おそらく、たいへんに日常のなかにあっても、そのどこかに未来を感じていたんですね。
こうした若者が、今、変化しつつあったことも、また一つの明るさの材料として、感じていたんじゃないでしょうか。
日本の農家というのは、日本中、どこも五十歩百歩でして、みな同じような苦難を強いられてます。
まともな政治の社会的な支援ははかられずに、当事者責任ばかりをしいられて、まったくのほったらかしの事態、逆に首を絞められている事態ですから。
国民生活に欠かせない食を守る、ずーっと農家は歴史的につとめてきた国の宝なんですが、かけがえのないギリギリの努力なんですが、それがそれとしてちっとも評価されていない。
いわば、逆にそれが見殺しにされていて、それを踏み台にして軍事国家に突き進もうとしているのが今の日本です。
それを放置している国民もそうですが、なんとバカなことをしているのか。
それが、ストレートには口にすることは無かったんですが、毎回の彼の思いだったんですね。
「あとがき」には、そうした思いが刻まれていました。
しかし、狂った社会ですが、その中にあっても、この若者の確かな努力がはじまったんです。
難行苦行の草刈りに、逃げたとしても当たり前なのに、真っ向勝負がこのくそ暑い中であったんです。
私など思うに、ここに早川のみかん園の未来がかかっているわけです。
私などは、たまたま縁あって、真鶴・小田原のみかん栽培にかかわっている年寄りですが、思うんです。
この歳をとったものの役割というのは、そこで得たみかん栽培のワザと感覚ですが、まったくの素人の手探りなんですが、それでもそれをすこしでも役立つというなら、それをこうした若者に引き継がせてゆく。していは、それが巡りめぐって国民生活の全体土台になる、すべてはこの一点にあるわけです。
それが、一足先にたびだっていった知人の思いであり、あとに残された私などの余生の仕事なんですね。
さて、今回もみかん園に援農者がきてくれました
私の若者の収穫作業をともにした時間は、ほんのわずかなひと時でしたが。
今回の基本作業は、みかんの収穫とともに、みかん園の周辺の草刈りでしたが。
今回も、この難行苦行の草刈りに、忙しい中を援農者が来てくれました。
次の写真は、今回の草刈り作業です。
ここはもとはみかん畑なんですよ。
働き手の高齢化によって、農家のその手の及ばなくなった畑には、クズや竹、アメリカセンダングサやセイダカアワダチソウが押し寄せて来て、すっかりみかんの木を覆っちゃっているんです。
たった一年というか、そうじゃなくて今年の6月頃にここも一度は綺麗に草刈りしたところなんですよ。
それでも、ご覧の通りです。自然の豊かさというのは、恐るべき力なんです。
もしも、今回我々が手を出さなかったとしたら、ここにあるみかんの木は雑草に覆われて、この半年で消失したんじゃないでしょうか。数本の木を除いて、すでにほとんどは枯れていました。
今回、クズやヤブカラシの蔓の巻きつを取り除いたら、その下からみかんがをつけた木がでてきました。
みかんの木も、必死になって頑張っていたんですね。その発見は、作業者はくたびれていても、もうひと仕事せざるを得なくなるんですね。
それらの雑草の繁茂してくるのを押し返して、みかん畑を復活させる努力が、
それが、この草刈りをしている汗であり、その姿なんです。
一人でこの仕事にあたっていたんでは、まったくの絶望的な仕事なんです。
今回もこの援農者があったからこそ、
「よしっ!いっちょう、やったるか」と挑戦する気になった次第です。
それにしても、自然の力はすごいものです。人間の努力なんて微々たるものです。
この様子は、いかにみかん園を維持するのが大変か。
自然で当たり前のみかん畑が、日本の自然の力のすごさを相手にして、農家の人たちの草刈り作業をはじめ、目には映らず、社会的にも知られてない中で、どんな苦労によりささえられていいるのか。それがいかに大変な仕事かが、それが知られてないかがわかる、そうした一枚の写真じゃないでしょうか。
今回、この草刈りをしていて、この援農者は一つの発見をしてくれました。
みかんを守るために、みかん園を鉄柵で囲っているんですが、鉄柵の一か所に、イノシシが穴をあけていたんです。
柵の下に穴を掘って、20-30センチの通路がつくられていたんです。
イノシシはみかんが大好物ですから、みかんが熟してくると、みかん園に侵入してきます。
この通路は去年のものですが、間もなくみかんが熟すると、またやってきます。
地面から1メートルくらいの高さまで、美味しく熟したみかんを食い荒らしていくんです。
木全体の収穫の半分くらいのみかんを食べちゃうんじゃないでしょうか。
だから、このイノシシの道の発見は大事だったんです。
今回の草刈りに臨んだからこそ、その出入り口を見つけれたんです。
クズやヤブカラシの雑草に覆われていた状態では、まったくわかりようのなかった通路です。
そこで、今回、イノシシがはいって来れないように、
しっかりと鉄柵をたし、真ん中に主柱もたてて柵を補強し、通路の穴をふさぎました。
これで、このみかん園ですか、少なくともこの通路は塞ぎました。
その様子からすると、穴は乾いていますから、まだ今年はこの通路は使われてないようです。
しかし、まもなくみかんが成熟してくると、必ずここが獣道として使われるはずです。
だから、しっかりと塞ぎました。
このみかん園の園主さんは言っています。
この時期、「朝一番の仕事は、みかん園周辺の鉄柵の見回りだ」と。
柵に穴があけられてないか、毎朝見回っている、と。
みかんをめぐるイノシシとの攻防ですが、これから日に日に激しくなっていきます。
人の手あてが弱いところを、イノシシは敏感に感じ取るんですね。
向こうも必死です。なんとかみかん園への獣道をつくろうと、執拗に狙っています。
日に日にその攻防戦が、繰り返されているんですよ。
少なくとも今回は、草刈りをすることで、イノシシの通路を発見し、その一つを塞ぎました。
しかし、これからが本番です。
みかんの成熟しい来る12月の末まで、美味しいみかんをどちらが採るか、
人かイノシシか、
みかん園では、どっちが採るか、その攻防戦がはじまっています。
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