サカナ男爵の本とゲームにおぼれて

サカナ男爵の本とゲームにおぼれて

PR

Profile

サカナ男爵

サカナ男爵

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

源氏物語〔2帖帚木 … New! Photo USMさん

もうじき4590日目。 New! unity0094808さん

それでもなお・・・ New! ナイト1960さん

クリスマスが来なく… New! hoshiochiさん

おはよう地球 サプ… び〜あらいぶさん

★ 真夜中の独り言 ★ LAME39さん
株式会社SEES.ii 株式会社SEES.iiさん
ボーカロイドの歌姫… レジミクさん
おでかけたびろぐ アユイチコーポレーションさん
SPACE TRAVEL 優樹4840さん

Comments

aki@ Re:MEGザ・モンスターズ2(01/21) この様な書込大変失礼致します。日本も当…
サカナ男爵 @ Re[1]:銃器職人デイブ(01/01) Photo USMさんへ お世話になります。 今…
Photo USM @ Re:銃器職人デイブ(01/01) 謹賀新年 令和5年 あけましておめでとう…
サカナ男爵 @ Re[1]:狩猟日記 ~狩猟解禁~(03/28) Photo USMさんへ こんばんは。 我が家の…
Photo USM @ Re:狩猟日記 ~狩猟解禁~(03/28) こんにちは(USM) 「もも」は枯葉の絨毯…

Free Space






PVアクセスランキング にほんブログ村




面白いなと思ったら、読者登録お願いします。
登録はこちら↓
サカナ男爵の本とゲームにおぼれて - にほんブログ村




2018.08.16
XML
カテゴリ: 小説・ノベル
復讐をテーマにした作品は、作者のカラーが出やすいような気がします。
果たして復讐は人に救いをもたらすのでしょうか。



【中古】 腐指 /Saori【著】 【中古】afb



【あらすじ】
桐生愁真(きりゅう しゅうま)は父親と二人、支えあって暮らしていました。
尊敬する父は会社から横領の濡れ衣を着せられ、自ら命を絶ってしまいます。

悲しみに暮れる愁真に「褐色の本」が語りかけてきます。
本が伝えたのは、呪い。自らの指を生贄にして、憎い相手を生きたまま腐らせる呪い。

愁真は呪いに手を染め、父を陥れた者たちを次々に腐らせて行きます。
そんなある日、愁真の前に柚姫(ゆずき)という女性が現れます。
彼女は愁真が腐らせた社長の娘。つまり憎き復讐相手の娘だったのです。

世間知らずで危なっかしい柚姫に惹かれていく愁真。
心を呪いに蝕まれていく愁真は、せめて柚姫には幸せになって欲しいと願うのですが……





【復讐の先に何を見る】※ネタバレあり。
呪いの力によって憎い相手を腐らせ、愁真は割と早く復讐を達成します。
柚姫の登場により、自分が被害者から加害者になってしまったことに気づかされます。
家族を失う辛さを知っているはずなのに、柚姫にも同じ思いをさせてしまい罪悪感にさいなまれます。
いっそ柚姫が悪人ならば気も楽なのでしょうが、親に似ず素直で無邪気なその姿はいっそう哀れを感じさせます。



そして、呪いを使うたびに心を浸食されていく愁真の描写が生々しかったです。
中盤に、物心つく前に家を出ていった母親が登場します。
金目当てで近づいてきたのかと激昂した愁真は、母親を呪います。

また柚姫が幼い時から仕え、柚姫も祖父のように慕っていた山下という男も呪います。
山下は柚姫が社長になった途端、彼女を会社から追い出すよう画策したからです。

ですがその2人については、愁真の誤解でした。
事情があって家を出たものの、母親はずっと愁真のことを気にかけていた様子でした。
山下も会社のしがらみに囚われずに愁真と結ばれるように、あえて会社から追い出すようなことをしたのでした。

動き始めた呪いは止められず、2人は腐り落ちてしまいます。
通常ならばここで後悔するところですが、この時すでに愁真は何も感じなくなっていました。
そのうえ足の指を使えばまだたくさん呪えるではないかと考えてしまいます。
この辺のだんだん感覚が正常でなくなっていく感じが、激しい描写こそないものの薄気味悪さを感じさせました。


本作では一人腐らせるごとに、インターミッションのように小さな章が入ります。
それは夢のようなシーンで、愁真が幼い自分と対峙し、やがて彼を殺してしまうというものです。
幼い愁真は彼の人間らしい心で、一人腐らせるごとにそれが失われていく様子を表しているのかと思います。
この演出は丹念にされていて技巧を感じました。




呪いに浸食されていく愁真。そんな中でも柚姫といる間だけは、人間らしい感覚を思い出すことができました。
まるでリミッターのように、柚姫という存在が愁真の心をつなぎとめていたのです。

ですが柚姫は今や社長。その地位や財産を狙う輩はいくらでもいました。
愁真は残った指を使って柚姫を苦しめる者たちを腐らせていきます。
そして彼女を婚約者に託すと姿を消し、自ら命を絶ちます。
闇に飲まれた自分はいずれ柚姫を苦しめるだろうから。そして柚姫を苦しめる者はすべて殺すと誓ったから……





【復讐ものについて考える】
復讐譚は報われない話が多いように思います。
理由はあれど行っていることはネガティブな行為ですし、すでに復讐の動機となるような喪失を体験しているので、復讐を果たしたところで何も残らないからだと思います。
復讐が終わった後に新しい生き方を見つけられればいいのかもしれませんが、すでに咎人となった復讐者に平穏はないのかもしれません。



愁真は救われたのか? 吾輩は「まだ、ましな方」だったと思います。
彼は父親への愛が深いゆえに呪いに手を染め、後戻りできない道を選んでしまいました。
ですが呪われた力であっても、最後は自分のためではなく他人の幸せのために力を使いました。
闇に心を蝕まれても、最期に他人の幸せを願うことができました。
それがせめてもの救いだったのではと思います。



復讐ものはいろいろな作品がありますが、本作は仇の側の人間も登場し、そちらの事情も描きつつ絆を結んでいくという展開が一風変わっていて面白かったです。
人を愛しているがゆえに人を恨む。恨みから生まれた関係が愛を育てる。
そんな揺れ動く人間の様子をよく描いた作品であると思います。



【中古】 腐指 /Saori【著】 【中古】afb




【関連作品】
作者Saoriさんの代表作、呪い遊びシリーズ三部作です。
本作でも登場した褐色の本についてはこちらで語られています。



【中古】単行本(小説・エッセイ) 呪い遊び / Saori【中古】afb

1作め呪い遊びです。
紹介記事は こちら。






【中古】 死の薬 /Saori【著】 【中古】afb

2作目死の薬です。
紹介記事は こちら。






【中古】 まじない /Saori【著】 【中古】afb

3作目まじないです。
紹介記事は こちら。





よかったらクリックお願いします。

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2018.08.16 21:46:17
コメント(0) | コメントを書く
[小説・ノベル] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

© Rakuten Group, Inc.
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: