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2024年04月17日
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テーマ: 季節の花(41)
カテゴリ: ひとり言



当地北陸富山では、桜の花も散り始めたこの時期、桜に変わって人の目を楽しませるのが梨の花。

ウエブトピックスより
富山)呉羽丘陵で梨の花が満開、授粉作業がピーク


梨の産地富山市呉羽(くれは)丘陵では今が梨の花の盛り。ちなみに富山県では北アルプスの山麓から富山平野に突き出た呉羽丘陵を境に、東側を呉東(ごとう)地方、西側を呉西(ごせい)地方と呼んで区別しています。


さて私は今、同時に配信されている咲き誇る梨の花の写真を見ながら、平安の御世には、梨の花は趣に欠ける花の代表のように言われていたと、高校の古文の時間に習ったことを思い出しています。

枕草子の何段目だったでしょうか。清少納言は「木の花は濃きも薄きも紅梅」と真っ先に書いて、梅を絶賛していたはずですね。この段では桜には一切触れていませんが、桜は言うに及ばずということなのでしょう。

梨の花はというと、「梨の花、世にすさまじきものにして近うもてなさず、はかなき文つけなどだにせず」と散々です。(「すさまじ」という形容詞の意味を問う問題がよく出たものですな・・・苦笑!)

しかし、清少納言の非凡さは、後に続く中国での梨の花の評価を白楽天の長恨歌をひいて、「梨花一枝春雨を帯びたり」というくらいだから、楊貴妃の美しさに喩えるほどに梨の花は美しいと言っているところにあると、古文の先生は熱く語ったのでした。


ところで冒頭私は、「日本ではただ単に花と言えば桜の花を指す」と書きましたが、奈良時代までさかのぼると、花といえば梅のことを指していたということをついこの間知り驚いています。

4月14日(日)の 日本経済新聞に掲載された 今野真二『日本語日記』にこのようなことが書かれていました。


あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり

この日本人なら知らぬ人はいないと思われる有名な和歌に詠まれた花は、桜ではなく梅であったと。『万葉集』には「ウメ」を詠んだ歌が119首、「サクラ」は38首、「ヤマザクラバナ」が2首で、併せて40首。『万葉集』では「サクラ」よりも「ウメ」が多く詠まれている。江戸時代の国学者である本居宣長(1730〜1801年)は、『玉勝間(たまがつま)』という随筆集で「ただ花といひて桜のことにするは、古今集の頃までは、聞えぬ事なり」と述べてると。


平安時代以降今日まで日本人の心に刻まれた花「桜」ですが、よもや「梨」に変わることはないと思うのですが、かの平安の才女が記しているように、梨の花もなかなか捨てがたいものがありますよね。


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この度幻冬舎さんのご協力を得て、拙著『「酒」と「そば」と』を出版しました。このブログの酒とそばについて書いたものを加筆修正したものです。肩肘張らずに気軽にお読みいただけるエッセイ集です。

「酒」と「そば」と


まず「はじめに」から、書店での立ち読み気分をお味わいください。

はじめに

小粋な蕎麦屋に入って、いきなり「天婦羅そばを一つ」なんて注文するのは、いただけませんな。まあ、うどん屋に入ったわけじゃないのだから、蕎麦屋に入ってそばを注文して何が悪いということになるのでしょうけれど。しかし、もしあなたが「そば通」と呼ばれたいのなら、そして真の「酒飲み」と呼ばれたいのなら、カウンターに座ってまずは厨房からこちらの様子を眼光鋭くうかがういかにも頑固そうな店主の視線を浴びながらも、店の雰囲気をしばし味わうようなそぶりを見せてから、おもむろにこのように言ってみたいもの。
「酒を一本つけてください。熱燗がいいでしょう」

そんな古き良き時代の蕎麦屋の流儀なるものについて書かれた本を、書店で目にしたことがありました。私がまだ高校に上がったばかりのころだったでしょうか。
ほぉ~、蕎麦屋とは、まず酒を飲むところだというのか。俺もやがて蕎麦屋へ入ることがあったら、そんなセリフを吐いてみたいものだと思ったものでした。

・・・あれから五十年、何の因果か製麺業を営むことになった私は、その蕎麦屋へそばを納めに行っては、「毎度ありがとうございます。今日から新そばで打ってあります」などと言うことはあっても、「酒を一本つけてください。熱燗がいいでしょう」などと言ったためしが久しくなかったことに今さらながら気づき、失望に打ちひしがれています。

日々仕事に追われながらも、いつかきっとそんな至高の悦楽を味わうことができる日の来ることを夢見て、「酒」と「そば」のうんちくを秘かに温めていると、驚いたことにこれはこれで楽しいではありませんか。
そのささやかな楽しみの一端を披露して、世の酒好き、そば好きといわれる皆さんと喜びを分かち合うことができれば幸せと、ペンを執った次第です。
「酒」と「そば」、二編に分けてご紹介していきましょう。

まずは「酒」編より、人は何故酒を飲むのでしょうか?

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第一部「酒」編
「過ぎたるは及ばざるがごとし」

古来より「酒は百薬の長」といいます。実にいい響きを持ったことばですな。私は常々この心地良い響きを妻に言って聞かせるのですが、妻は私にこう言うではありませんか。

「あら、そういうものですか。では『過ぎたるはなお及ばざるがごとし』って、どのように響きになって?」と。

このほど世界保健機関(WHO)が発表したところによると、2016年に世界で死亡した人のうち約三百万人が、飲酒関連が原因と考えられるということです。「酒は百薬の長」とも語り継がれているのに、これほど多くの人が、飲酒が原因で命を落としているということは、これはやはり飲み過ぎたから、ということになるのでしょうか。

大雑把な計算になりますが、世界の人口を約七十億として、アルコールを摂取する人の数を約半数と考えれば、35億。

3,000,000 ÷ 3,500,000,000 = 0.086% という計算になりますから、なんだ、酒飲みの千人のうちの一人以下じゃないかと胸を撫で下ろした愛飲家の方、多いのではないでしょうか?

しかしながら、どうしても気になるのは、どれだけ飲めば「過ぎたる組」になるのかということ。WHOの定義によれば、大量機会飲酒とは純アルコール換算で60グラム以上の飲酒機会を30日に一回以上持つことと書いてあります。そこで早速調べてみました。エチルアルコールの密度は、0.789g/ml ですから、 60 ÷ 0.789 = 76 ml、ビールのアルコール度数は、概ね5%と考えれば、 76 ÷ 5% = 1,520mlビール大瓶(633ml)二本半という計算になります。同様に清酒のアルコール度数を15%として計算すると、2.8合。

すなわちビールなら三本、清酒なら三合をひと月に一回でも飲む機会があれば、WHOは大量機会飲酒と定めているということになります。

確かにわが国はWHOに加盟しているかもしれないが、私個人はWHOになど加盟していないと主張する人もいるでしょう。見上げた心意気と拍手喝采を送りたいところではありますが、清酒三合以上を飲んだ翌朝のことを常々経験している者からすれば、やはりそうであったかとうなだれるしかありませんね。

あなたはうなだれる口ですか、それとも清酒三合ぐらいではうなだれませんと豪語する口ですか?

う~む、古来より語り継がれてきたことわざ「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」とは、なるほど深い含蓄のあることばだと認めざるを得ません。


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最終更新日  2024年04月17日 12時50分08秒
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