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2021.05.03
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三千鸦杀 Love of Thousand Years
第20話「作戦決行の日」

左紫辰(サシシン)は宮廷で屈辱を強いられる玄珠(ゲンシュ)に心を痛めた。
「玄珠、とにかく太子には嫁ぐな、幸せになどなれない」
「幸せ?幸せって何?それって美味しいの?」
もちろん好きな人と添い遂げたいと願って来た玄珠、しかしこれまでの努力は全て無駄だった。
そこで玄珠は紫辰の手をにぎりしめ、最後にもう一度だけ、その心に自分の居場所があるのか尋ねる。
しかし紫辰は嘘をつけず、黙っていた。
玄珠はそれが答えだと悟り、これで終わりにすると決める。
「左詹事(センジ)、これからの私の人生はあなたと関係ない
 これから私ががどんな目に遭おうが心配無用よ…」
すると紫辰はそんな玄珠を見放せず、思わず後ろから抱きしめた。
「2人だけでここを離れよう…玄珠、もう意地を張らないでくれ、太子には嫁がせない!」
紫辰は全てを忘れ、玄珠と2人で生きると約束した。



傅九雲(フキュウウン)は丸一日、寝込んだが、ようやく床を離れた。
眉山(ビザン)君は九雲がこれほど弱ったことに驚き、封印を解いたこと後悔する。
すると覃川(タンセン)に投げ捨てられたせいで頭を打った白(ハク)公子が痛くて眠れなかったと憤慨した。
「あいつのせいだ!あのバカな小川が…」
その時、九雲が思わず扇子で机を叩き、驚いた小白は口をつぐんだ。

その夜、屋敷に戻った玄珠は荷物をまとめた。
何も知らない秋華(シュウカ)夫人は娘が皇太子妃に決まったようなものだと夢見心地になっている。
「私は無理だったけれど、あなたなら皇后になれるわ」
玄珠は黙ってうなずき、後は全て紫辰に任せることにした。

天原国太子・靂渊(レキエン)はついに玄珠を太子妃にすると決意、皇帝に許しをもらった。
そこで紫辰に宣旨(センジ)を務めるよう命じる。
「もうすぐ中元節だ、玄珠姑娘(グーニャン)は太子妃として皇室のしきたりに従い、宮中で祈祷する
 宣旨のあと、宮中に迎えろ」

翌朝、紫辰は宣旨として玄珠を迎えにやって来た。
すっかり舞い上がっている母を横目に動揺を隠せない玄珠、しかし紫辰が帰り際に密かに声をかける。
「落ち着け、ひとまず宮中に入るんだ、時を見て連れ出す…信じてくれ」

主衣(シュイ)局の侍女に紛れ込んだ覃川は喪服を届ける道すがら、入宮した玄珠を見かけた。
まさか天原国の皇太子に嫁ぐとは…。
覃川はやるせない思いを抱えながら仕事へ戻ったが、回廊で運悪く紫辰に見咎められてしまう。
「…燕燕(エンエン)、私の父はすでに報いを受けた、復讐はここまでにするんだ」
「死んだら全ての罪が消せるとでも?私も驪(リ)国の民も永遠に許さない」
「分かっているが私だってそなたを許せない!私の父だぞ?!私が…」
しかし覃川が話を遮った。
「好きだったわ、あなたに嫁ぎたかった…本心よ、でも全て変わってしまった
 あなたが好きだった燕燕は死んだの、私が好きだった紫辰ももういない、だから…構わないで」
紫辰は愛する燕燕の無念の思いを初めて知り、何も言えなくなってしまう。
すると覃川は最後に警告した。
「…中元節の日は靂渊に近づかないで、父親の敵ならすぐ討てるわ」


( ;∀;)燕燕…切ない

靂渊は今年の中元節は正妃となる玄珠と2人で祈祷したいと言い出した。
そこで紫辰に婚儀と併せて祈祷についても取り仕切ってほしいと頼む。
驚いた玄珠は恐れ多いと辞退したが、なぜか紫辰は皇太子の気持ちを受けるべきだと勧めた。
こうして中元節の前日、覃川は紙人形を密かに隠し持ち、主衣局へ向かう。
一方、玄珠はちょうど身支度を整えたところだった。
そこへ紫辰が現れ、皇太子から伝言があると嘘をつく。
玄珠は侍女たちを下げると、紫辰がこっそり令牌(レイハイ)を渡した。
「今夜、皇族が一斉に祈祷する、戌(イヌ)の刻は警備が手薄だ
 祈祷が終わったら、これを使って南門から出ろ、門衛には話を通した、馬車も用意してある」
すると紫辰は最後の仕事を終えたら合流すると言った。
「玄珠、必ず皇宮から出るんだ、私が遅れても待たなくていい…分かったな?無事でいてくれ」

祈祷が終わり、靂渊は着替えを待ちながら15歳の時にできた指の傷跡を眺めていた。
そこへ主衣局が喪服を持ってやって来る。
覃川は皇太子の身支度を始めたが、そこへ紫辰が現れた。
覃川の姿に気づいて内心、動揺する紫辰、その時、覃川が密かに靂渊の背中に紙人形を貼り付けてから外衣を羽織らせる。
しかし安心したのも束の間、目覚めた紙人形が勝手に床へ降りて来た。
焦った覃川は靂渊の気をそらすため、思わず声をかける。
「殿下っ!寸法はいかがでしょうか?」
「よい、下がれ」
すると紫辰は靂渊が覃川の方を見ている間に紙人形を踏みつけ、下がる際に隙を見て拾っておいた。


( ๑≧ꇴ≦)紙人形~驚いて変な声、出ちゃったわw

玄珠は予定通り馬車に乗って待っていたが、紫辰は間に合わなかった。
仕方なく先に城門を出ることにしたが、ふと紫辰との会話を思い出し胸騒ぎを覚える。
あの時、紫辰は無事でいてくれと言って玄珠の頬に触れた。
まるでこれが最後の別れだというように…。
「待って!」

その頃、紫辰は覃川を連れて詹事房にいた。
覃川は紙人形を返すよう頼んだが、紫辰は厳戒態勢の東宮に行けば死ぬと止める。
そもそも心臓を射られても傷ひとつない靂渊に何ができるというのか。
そこで覃川はその理由を説明し、返してもらえなくてもまた作ると譲らなかった。
「燕燕、なぜ聞いてくれないんだ!」
そんな2人の会話を引き返して来た玄珠が聞いてしまう。
…燕燕と呼んだ?彼女のためだったのね、覃川、なぜいつも現れるの?…
「止められないなら紙人形は私がつけるよ、靂渊に近づけるのは私しかいない、そなたへの償いだ」
…彼女に命で償うつもりなの?!なら私は?私にはどう償ってくれるの?!…
「だめよ!」
覃川が紫辰を引き止めたその時、突然、玄珠が入って来た。

覃川は玄珠に誤解しないよう訴えた。
しかし玄珠は外で一言一句もらさず話を聞いたという。
まさか最後の仕事というのが覃川のことだったとは…。
覃川に父親を殺されたと知りながら、それでもまだ助けるというのか。
「分かってたわ、詹事になったのは彼女のためだと…でも私と逃げるという言葉を信じてしまった
 やっと分かったの、彼女のために私を追いやったのね?!」
「玄珠、私と紫辰は今日、会ったばかりよ?」
「燕燕、過去を引きずって生きているのはあなたの方よ?このままでは私たちは自由になれない」
「悪いと思ってるわ…」
玄珠は紙人形を渡せと言った。
復讐が終わらねば自分たちの苦しみも終わらない。
すると紫辰は玄珠の手を取り、自分の胸に当てた。
「紙人形はここだ、だが行けばそなたも死ぬ」
「今は死ぬより、生きる方が辛いの」
その時、宦官の声が聞こえた。
「詹事?殿下が姑娘を東宮へお連れしろと…」
「分かった、すぐ行く」

覃川は紫辰を連れて第二皇子・亭渊(テイエン)と合流した。
経緯を聞いた亭渊は玄珠では心許ないと動揺したが、覃川は玄珠がやると言ったやるという。
「心配ないわ」
その頃、玄珠は靂渊と一緒に地下の密室へ続く階段を降りていた。
隙を見て背中に紙人形を貼り付けた玄珠、すると靂渊が急に自分を陥れようとする者がいたらどうするか尋ねる。
玄珠は命をかけて皇太子を守ると言ったが、靂渊は失笑した。

覃川はじっと地図を眺めていた。
するとついに地図に青い光が灯る。
「来たわ!…東宮じゃない」
「やはり思った通りだ」
亭渊は北三所の昊天(コウテン)殿だと教えた。
昊天殿はかつての書院で廃太子を幽閉していたが、ここで死んでしまったという。
「それからは使われていない…行こう!」

一方、張(チョウ)太尉に化けた眉山はそれらしく禁軍に指示を出していた。
すると1人になったところで九雲が現れ、必ず覃川を守るよう釘を刺しておく。
「九雲、気をつけろよ」
九雲は笑顔で煙消すると、昊天殿へ到着した。
物陰から様子をうかがう九雲、殿前には侍衛たちの目をかいくぐってやって来た覃川たち3人の姿があった。

つづく





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最終更新日  2021.05.03 10:00:09
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