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2022.01.20
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上阳赋 The Rebel Princess
第40話「王倩の策略」

皇太后は王倩(オウセン)が永安宮ではなく昭陽殿に助けを求めたと聞いた。
知恵があれば謝氏の宛如(エンジョ)が王氏の女に手を差し伸べるはずないと分かりそうなもの、皇太后は計算高い母親とは似ても似つかぬと漏らす。
「殿下、もし永安宮を訪ねて来たらどうしますか?」
「追い返して」

薛(セツ)夫人は娘が宮中に行ったと聞いて困惑した。
もし間違いを起こしたら取り返しがつかない。
するとちょうど王倩が戻って来た。
安堵した薛夫人は豫章(ヨショウ)王夫妻が必ず助けてくれると慰めたが、王倩は期待できないという。
「皇后の方が頼れるわ」
「皇后?!」
実は宛如は忽蘭(クラン)へ嫁がずに済む方法は豫章王を誘惑するしかないと吹き込み、王倩に媚薬を授けていた。

皇帝・馬子隆(バシリュウ)は謝守正(シャシュセイ)の件で蕭綦(ショウキ)を呼んだ。
証拠の帳簿を見る限り謝守正の死罪は当然だが、水清ければ魚棲まず、このままでは国のために働く者がいなくなってしまう。
「お前は忠臣だ、朕も承知しておる、しかし忠臣がたった1人で一国の朝廷と呼べるか?!」
すると皇帝は調査をここで止めるよう命じた。
「お前が楯つくと殺したくなる…しかしお前まで失ったら本当に孤独になってしまう、分かるな?」
蕭綦は皇帝が投げ捨てた帳簿を黙って拾った。
実は密かに宋懐恩(ソウカイオン)の頁を破り捨てていた蕭綦、そこで帳簿を香炉の中に投げ込んでしまう。
「…分かります」
その頃、安平王・馬子澹(バシタン)は皇帝陵を抜け出し、皇都に向かっていた。

王倩と薛夫人は覚悟を決め、豫章王府を訪ねた。
来訪を知った徐(ジョ)女官は母娘に嫌悪感をあらわにしたが、王儇は2人に会うという。
「私も母親になれば何としても我が子を守りたいと思うはずよ…」
王妃の言葉を聞いた徐女官はそれ以上、何も言えなくなった。

その頃、玉秀(ギョクシュウ)と阿越(アエツ)は回廊でばったり王倩母娘と出くわしていた。
王倩はまだ玉秀への恨みがあったが、薛夫人は下人と言い争えば自分の品格を下げるだけだと嫌味を言う。
すると憤慨した阿越が玉秀に向かって急に拝礼した。
「小姐、数日後には冊封ですね、大王の妹になれば王妃の小姑に、大将軍に嫁げば将軍夫人です
 さあ、衣の仕立てに参りましょう」
こうして阿越は傲慢な王倩をやり込め、玉秀を連れて先を急いだ。

王倩は王儇にすがりつき許しを請うた。
そこで王儇は天子に二言がないため、他の方法を探すとなだめる。
実はすでに賀蘭箴(ガランシン)と面会する約束を取り付けていたが、王倩をぬか喜びさせないよう教えなかった。
落胆した王倩はこれも運命だとあきらめ、もう二度と戻れないと号泣して出て行ってしまう。
薛夫人は大袈裟に倒れて泣き崩れたが、徐女官は耳をつんざくような金切り声にたまりかねた。
「夫人、体調がすぐれない王妃の前で騒がないでください」
「…え?王妃、お加減が?」
「いいえ、寝不足なだけよ」
すると薛夫人は自分たちを憐れむなら豫章王府に住まわせて欲しいと懇願した。
実は皇都に来る前、占い師から″西に福あり東に難あり″と言われ、東にある王氏の屋敷でこの苦難に陥ったという。
「王府は皇都の西にあります、福が訪れる方角なんです!
 希望があるなら妄言にでもすがりたい!王妃~どうか助けてください!」
「もう泣かないで…」
王儇は平伏する叔母に手を差し伸べただけだったが、薛夫人は先走って王妃が自分たちを助けてくれると喜んだ。

忽耶奇(コツヤキ)は主が王妃への情で事を仕損じることを危ぶんだ。
すると賀蘭箴は蕭綦を始末するためにまずは弱点を押さえねばならないという。
しかし忽耶奇は蕭綦の弱点が主の弱点でもあると感じていた。

蕭綦は正堂で腹心たちと夕食を囲んだ。
すると胡光烈(ココウレツ)が寧朔(ネイサク)から来た兵士の話によると、賀蘭箴は賀蘭拓(ガランタク)の罠にはまって皇都に来る羽目になったという。
蕭綦は賀蘭拓が国境に軍を派遣し続け多くの兵力を失ったことから、賀蘭箴の方が冷静だと評価した。
しかし戦場で生きてきた胡光烈はふと和親がまとまり戦がなくなったら、何をすればいいのか分からないと戸惑う。
蕭綦は笑いながら、戦と戦の間隔を長くするのが自分たちの仕事だと言った。

そんなある日、江南が水害に見舞われた。
しかし大臣たちは私腹を肥やすばかりで国庫はひっ迫、そこで丞相・温宗慎(オンシュウシン)は莫大な軍事費から捻出してはどうかと進言する。
和親を結べば平和が訪れ、北の国境の軍事費を削減しても問題はないはずだ。
「10万の兵を故郷へ帰せば田畑を耕す者が増え、軍事費は減るのです
 支出は減り、収入は倍になる、一石二鳥でしょう」
その時、黙って聞いていた蕭綦が口を開いた。
「温丞相、1つ伺いたいことがあります
 もし忽蘭が同盟を反故にし、北の国境に攻め入れば確実に私たちは負けるでしょう
 その時は温丞相が責任をお取りになりますか?」
温宗慎は言葉につまったが、中書・顧閔汶(コビンムン)がその心配はないと助け舟を出した。
忽蘭に嫁ぐのは王氏の女人、いずれ王后となり、大成の血筋である王子が生まれれば両国の絆が深まるという。
「…一理ある、だがそれでは答えになっていません、もう一度お聞きします
 仮に戦が起こったとして責任は誰が取るのですか?所在を明らかにしていただきたい」
蕭綦はもし責任をとってくれるなら軍の指揮権も爵位も全て譲ると断言した。
豫章王の言葉に静まり返る朝堂、すると皇帝は忠臣たちの言い争いにへき易し、退朝を命じて帰ってしまう。

蕭綦は温宗慎が多数の声を代弁していると分かっていた。
しかも力を増す温宗慎に盾つく者はいない。
「我々の味方はいない…」
宋懐恩(ソウカイオン)は大王が兵権を持つ以上、朝廷は何もできないと安心させたが、大臣たちは今や軍の縮小を掲げ始めた。
蕭綦は権力争いしか興味のない重臣たちに嫌気が差して寧朔に帰ろうと笑ったが、懐恩は困惑する。
「王妃はどうするのです?」
「お前は皇都に慣れて帰りたくないのだな…それとも玉秀のためか?」
しかし懐恩が言い訳する前に皇太后の使いが豫章王を呼びに来た。

皇太后は江南の水害の件で豫章王に相談を持ちかけた。
実はこの件を王夙(オウシュク)に任せたいという。
蕭綦は治水がとても危険な任務だと難色を示したが、皇太后は王氏の世子として王夙が先頭を立って出て行くべきだと言った。
「…はい、仰せの通りに」
「危険を防ぐための策は講じてある」
皇太后は王夙を守るため宋将軍を貸して欲しいと頼んだ。
こうして蕭綦は朝廷で孤立を深めるだけでなく、右腕である懐恩まで奪われてしまう。

王儇は宿舎にいる賀蘭箴を訪ねた。
「和親の公主を替えて欲しいの」
「予想通りだ…そう言うとは思っていたが、俺に替える義務はない」
王儇は叔母の悲しみを訴えたが、賀蘭箴は身代わりになる娘のことはどうでもいいのかと呆れた。
「私は聖人じゃないの、従妹を助けたいだけ」
「それが本音か?…ならば俺も本音を言おう
 俺は国のために女を選んだが、実のところ俺の女ではないゆえ誰でもいいのだ
 王倩に決めたのはただの気まぐれだ」
「ただの気まぐれで王倩の人生を壊すの?」



一方、忽耶奇は階下で待っている王妃の侍女に声をかけた。
「錦児(キンジ)か?…王妃がそう呼んでいた、ついて来い」
忽耶奇は皇后から仰せつかったとかまをかけてみた。
すると侍女が黙ってついて来る。
そこで忽耶奇は回廊を曲がったところでいきなり錦児の口をふさいだ。
「お前が豫章王の屋敷に送られた皇后の間者だな?」
錦児は忽耶奇の言葉に呆然となった。
まさか皇后が裏で忽蘭の王子と手を結んでいたとは…。
「いいか、よく聞け?今日から屋敷で起こる出来事は逐一、報告しろ」

つづく


( ˙꒳​˙ )え?アウォの着物が…🌀





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最終更新日  2022.01.20 21:48:35
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