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2024.02.20
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覆流年 Lost Track of Time
第29話

穆澤(ムーヅー)は護衛・南星(ナンセイ)から報告を聞いていた。
陸安然(ルーアンラン)は街に出て衣を買ったが、すぐ戻ったという。
「片時も目を離さなかったか?」
「採寸のため奥の部屋に入った時以外は…」
しかし翊(ヨク)王には怪しい動きがあった。
燃灯(ネントウ)大典の準備を任された翊王は灯籠の箱に紛れさせてリン粉を運び込んでいるという。
穆澤は翊王が穆川(ムーチュアン)の暗殺を企んでいると気づき、その周到な計画を逆手に取って利用しようと思いついた。

一方、皇帝は寵愛する穆川と久しぶりに水入らずで夕食を囲んだ。
「緬(メン)国の蜜瓜(ミツウリ)だ、味わってみよ」
「感謝します、父皇」
しかし蜜瓜を一口食べた穆川は怪訝そうな表情を浮かべた。
「どうかしたか?口に合わぬのか?」
穆川は慌てて美味しいと答えたが…。

大晦日、安然が東屋にいると穆澤がやって来た。
穆澤は安然に王府の帳簿を渡し、これからは蕭驚雀(ショウキョウジャク)に代わり管理するよう命じる。
「私は皇宮で年越しするため家族と過ごせぬ」
「…はい」
すると穆澤は安然の寝殿をうさぎの灯籠で飾り付けた。
「安然、どこにも行かないでくれ、平穏で幸せな日々が遠からず訪れる…私を待っていてくれ」



安然は穆澤の様子がどこかおかしいと怪しみながら、早速、帳簿を確認した。
すると半月前に緬国から蜜瓜を10石(セキ)も買っていると知る。
穆澤は倹約家のはず、春節とは言え散財するとは思えなかった。
「金銀ならともかく、なぜ蜜瓜なんか…」
「そう言えば翊王も燃灯大典のために蜜瓜を取り寄せたとか」
衫越(サンエツ)から思わぬ情報を得た安然は不審を抱き、さらに帳簿を調べた。
「…花火100石?」

安然は衫越と一緒に倉庫にある花火を調べた。
すると花火の火薬が全て抜き取られている。
驚いた安然は蕭驚雀に慶王妃の腰牌(ヨウハイ)を貸して欲しいと頼んだ。
「どうかしたの?」
「穆澤が謀反を…」
その頃、大殿では無事に燃灯大典の儀式が終わり、祝宴が始まった。
秦野闊(シンヤカツ)は翊王にそろそろ斉王の身体に毒が回る頃だと耳打ちする。
そうとは知らず、大役を終えた穆川は大臣たちと歓談していた。

穆澤と穆霖(ムーリン)の思惑が交差する大典、その時、ついに灯籠が爆発して火の気が上がった。
臣下たちが逃げ惑う中、穆澤は殿内の騒ぎに紛れて祭壇に仕掛けた火薬に火を入れる。
巻き込まれないよう安全な玉座へ逃げたはずの穆霖だったが、思いがけず巻き添えになった。

穆川は火に包まれた玉座を見て呆然となった。
すると穆澤が穆川の灯した灯籠に翊王が毒薬とリンを仕込んでいたと明かす。
「私が毒を除いておいた」
「全て知っていたのに、なぜ止めなかった?!」
「翊王の計画が実行されなければ父皇と翊王を葬れぬ」
「ならなぜ私を助けた?」
「誓ったからだ、何があってもお前を守ると…」
そこへ慶王軍が雪崩れ込み、臣下たちを包囲した。

穆澤は父皇が事故で亡くなり、新たな君主を立てることが当面の急務だと訴えた。
臣下たちは慶王に従うほかなかったが、突然、羽林軍が現れ、逆に慶王軍が包囲されてしまう。
「さすがは朕の息子だな、慶王殿下」
その声は死んだと思っていた皇帝だった。
「あの日、大殿で殺しておくべきだった」

穆澤は皇帝にすっかり騙された。
激情に駆られた穆澤はこれまでの鬱憤を晴らすように自分を蔑む父皇を非難したが、その時、安然が駆け込んでくる。
「穆川!…穆川!」
しかし安然は穆澤に捕らわれてしまう。

皇帝は2人もろとも誅殺せよと命じた。
驚いた穆川はその場にひざまずいて命乞いし、皇帝はやむなく穆澤を見逃してくれる。
実は皇帝は蜜瓜を食べた穆川の様子をいぶかしみ、密かに検査を命じていた。
調査の結果、蜜瓜には火薬の匂いがついていたと判明、しかも翊王が購入した蜜瓜を慶王が全て交換したという。
その火薬はすでに祭壇の下にあると分かった。

穆澤は蕭驚雀を迎えに王府へ戻った。
しかし驚雀は逆賊として生きるつもりはないと同行を拒否する。
「穆澤、よくも私の人生を台無しに…私のせいで蕭家は全てを失った
 最期にあなたの失態を見られて満足よ、後悔はない」
すると驚雀は自ら首を斬り、自害してしまう。
安然は倒れた驚雀の姿がかつて雪の舞う宮道に倒れ込んだ自分の姿に見えた。
愛する人に嫁ぎ、仲睦まじく暮らせるはずだった安然と驚雀…。
奇しくも2人は異なる時代で子を失う悲劇に見舞われた。



穆澤は別邸に身を隠した。
「陸安然、やはり裏切ったな」
「…あの帳簿は私に気づかせるためだったのね」
穆澤は絹織物店の店主を脅し、あの日、安然と穆川が密会していたと知った。
聡明な安然のこと、帳簿を見れば自分の企みに気づく。
そこで安然が穆川の危機に駆けつけるかどうか賭けたのだ。
「今となっては後悔している、いっそのこと死ぬまで偽りの幸せに浸っている方が良かった
 …なぜ九弟を愛しながら私に嫁いだ?逃げる機会もあっただろう?」
「大事なものを奪われたからよ…」
「その目だ…蘇城で初めて会った時からそんな目をしていたな?何を見ている?!」
「あなたの醜い野望が潰える瞬間よ、あなたは至尊の位にふさわしくない」
すると激情に駆られた穆澤は安然の首に剣を突きつけた。
「ならば穆川ならふさわしいとでも?!」
「穆川は決して私に毒酒を飲ませたりしない」
「仕方がなかった、正々堂々と生きたかったが、何をしても父に疎まれた」
「あなたが選んだ道でしょう?!…あなたは哀れな人よ」
「黙れ!確かに心は手に入らぬが、その身体は私のものだ!」

穆川は慶王府を捜査し、宮中へ戻った。
実は書斎の裏に隠し部屋を発見、ある物を見つけたという。
そこで穆川は穆澤の荷物を運び込んだ。
皇帝は穆澤が掟を破って亡き生母を密かに祭っていたと知り憤慨したが、最後の箱の中身を見て驚愕する。
「二哥の手習いです、評語は父皇の字ですね」
他にも戦場から凱旋した際に父皇から賜った賞状もあった。
皇帝は穆澤が自分からもらった些細な品まで全て大切に保管していると知る。
「…穆澤を呼び戻せ、釈明の機会を与えてやらねばならぬ」
皇帝はようやく穆澤を誤解していたと気づき、涙を流した。



つづく


( ๑≧ꇴ≦)皇帝のせいだったのかーいw





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最終更新日  2024.02.20 21:35:29
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