すい工房 -ブログー

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2017年01月04日
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「――ってふうに!

 毎朝起こしてくれんのよ、うちのコはっ!

 もう~~~~っ! かわいいったらないわっ!

 そう思わない!?」

 れんげ片手にバンバンバンとカウンター席を叩く山川葵に、同僚である久保 由梨(くぼ ゆり)は「別に」と平静に答える。

 いささかテンションがおかしい葵の言動は、ともすれば気でもふれたかと思われてもしかたない域に達していたのだが、ユリにとってはよくある日常の一コマに過ぎなかった。

 ゆえに動じることなく、おびえおののくことなく、平常通りに対応できる。

 というより、平常仕様でじゅうぶんだ。

 葵に同調すれば無駄な気力を使ってしまう。

 まだ仕事中だ。今は午前の部を終え昼食休憩中だが、午後の部が残っている。

 葵が呈示した「ラーメンみじま」のクーポン券(特典:待ち時間なし)につられて、念願の平日ランチ限定「みじま特性しょうゆラーメン」を食し、至福の時に酔いしれつつ。ユリは葵の対応もそつなくこなした。

「猫より犬派だし。」

「っ! 裏切り者~っ!」

「ってか、知ってるでしょ」

 ため息を落としつつ、ユリは「ほかの人に迷惑だから、食べるのに集中しなさい」と葵を促した。

 当人は不服そうに口を曲げていたが、込み合う店内の状況も理解しているので、しぶしぶながら食を進め――。

 渋面は口にしたひとすくいのスープ、ひとすすりの麺で恍惚とした表情に変化する。

 箸を進める葵と同様、ユリも箸を進めた。

(ラーメンが食べたかったんだか、わが猫自慢がしたかったのか……)

 行列必死、食べるの困難(昼食休憩中)と巷でも話題のラーメン店。

 葵もユリも、休み時間と地理的観点から、平日休みを取る以外、平日ランチ限定ラーメンは食べれないものと思っていた。

 それを葵がどういうツテか、入手困難と言われているクーポンを二枚用意して、今日の昼食をさそったのだ。

 葵とユリは共にラーメン好きというところから仲がよくなった。

 今は所属部署は違うが、こうして食事をともにしたり外出もときどき共にする。

 そうした付き合いの中から見えてきた彼女――葵の好み。

 ラーメンと猫をこよなく愛す。

 どちらの好みも知っているユリに、葵は時折、はじけたようにそれらに関して話てくる。

(……どっちも、かな)

 思いながらスープをすすり「ごちそうさま」と顔の前で両手をあわせるユリの隣で。

 スープを飲み干した葵が「はぁ~~~~っ」と満足げな息をついたところだった。

 ちなみにユリの器にはスープは残っていた。







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最終更新日  2017年01月04日 20時13分40秒
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