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焼野まで 村田喜代子 朝日新聞出版 子宮体がんを患った早瀬和子は、南の街にあるオンコロジー・センターで四次元放射線治療を始める。ウイークリーマンションを借り、夫を残して一人で。センターで出会ったガン仲間との交流。日に日にぼろ人形のようになっていく自分の姿におののいて、扉を開けた美容院での出会い。手術をせず、新しい治療法を選択した母を怒る看護師の娘。放射線治療の宿酔に悩みながら、焼島の噴火で火山灰が絶えず降る南の街で早瀬和子は生きる。元同僚の八鳥もまたガン仲間で肺を病んでいた。彼は入院していて、不定期に電話をかけてくる。放射線治療後に宿酔に侵食された身体を横たえた時に見る祖父母たちのリアルな夢。 その年の三月、北の街を大地震が襲い、原子力発電所が爆発した。放射能が溢れ出てきたのだ。そして自分は南の街で放射線治療をする。自身の内に出来たガン細胞を放射線で攻撃する。 読むほどに、主人公の宿酔がこちらにまで移ってきたような感覚を覚える。その中で生まれる、出会った人々との触れ合いが、微かな温もりとなって、身体を照らす。夢の中の祖母とのやり取りで、自分だけでない家族の歴史を垣間見る。生きることは淡々としている。生者と死者との境目は何か。焼島から見た人の小ささを思う。いや、宇宙から見た人は小さいというレベルではない。そこでなぜ煩悩に包まれて生きるのか。 早瀬和子との共通点から読み始めたが、最初の段階で彼女と道が外れた自分。 その有り難さを忘れかけ、再び不要な煩悩に包まれようとしていた私を揺さぶって目覚まそうとしてくれた作品。
2016/06/05
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ユートピア 湊かなえ 集英社 湊かなえの最新作は、「告白」のような読み終わった後に救いのない話でもなく、また「山女日記」「物語のおわり」「絶唱」のような心地良いラストでもない。湊作品の新たなパターンなのだろうか。(と言えるほど、彼女の作品を全て読んでいる訳ではないけれど) 花に溢れ景色の素晴らしい鼻崎町で繰り広げられた菜々子、すみれ、光稀の「クララの翼」プロジェクト。陶芸家のすみれが作った翼のキーホルダーを足の不自由な人が翼を持つことが出来るようにという思いを込めて販売すると、人気に火がついた。菜々子の娘 久美子は足が不自由で車椅子で生活している。車椅子と仲が良い光稀の娘 彩也子が久美子のことを思って書いた作文が功を奏したのだ。 人々の本音と建前。その言動を間に受けていては、見抜けない。本当の気持ち。本当の望み。それは本人にしかわからないのだろう。もしかしたら、本人もわからないのかも。 自分にないものを持つ相手に対する羨みと嫉妬。しかしそれは相手から見れば、また違うものになる。つくづく人間とは不自由なものだと思う。
2016/06/01
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