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悲劇しか産まないであろう。わたしの意識は金属光沢に紛れて銃弾に宿った。 悲劇の幕が開くのに、後1秒もない。もっとも、瞬間を生きているから銃弾に時間は意味を持たない。 飛翔する直前の緊張は歓喜に近く、力が凝縮されてわたしを満たした。極度に高いエネルギーがわたしをつき抜け頭がくらくらした。それは禁じられたことが、例えば、人を殺めることとかが、しばしば人々を魅了するときの感覚に近い。 わたしという銃弾は宙を前進する以外にないのだが、数メートルでも数センチでもより遠くにいく可能性に賭けたいと思った。 空気を切り裂いた先にあるもの。その行く手は大地かもしれないし、大海かもしれない。 大地ならば、巨岩に食い込み、傷つけ、周囲に石の細かい破片を吹き飛ばすだろう。大海ならば、空気を巻き込んで白い航跡を残しながら水中を突き進み、やがては金属の重みに身を任せて何千メーターも下の海底の砂に埋もれる。 しかし、未来を夢見て大根の葉の柔らかい部分を食していた蛾の幼虫のぶよぶよした胴体にわたしは到達し、幼虫がまったく気づかないうちにその幼虫の将来を潰してしまう。もしくは、海水に突入するや、その際に生じた細かい空気の泡が消える間もなく銀色に輝く魚体の鱗とその裏側の心臓を貫通してしまう。 それは必然である。待ち受けるのは破壊と殺戮だけである。わたしを気楽にさせるのは、そこには後悔というものがないことである。 物理現象に従えばよい。わたしもずたずたに傷つき、終焉は静止である。だからこそ、そこに至るまでの暴力的な瞬間をわたしはあこがれる。 ただ、わたしを誤解してはいけない。わたしが望んでいるのは、わたしの外側の環境が破壊されること、殺戮されることではなく、わたし自体が消滅することだ。瞬間に生きて、絶えることだ。 あまりに銃弾の金属光沢がまぶしい。
Mar 27, 2011
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起死回生の一打として、赤字が続いている米国の航空会社が人に麻酔をかけて輸送する方式を研究しているようである。 全身麻酔をかけてから、航空機内に設置した寝台に横たえて運び、到着したら麻酔を醒ますのである。航空機の格納スペースいっぱいにたくさんの寝台を組み上げるので、試算では通常の3倍から4倍は人を運べることになる。 運賃を半額にしても、需要を増やせば、利益を出すことができる。飛行中は運ばれる人々は寝ているだけなので、人件費の高い客室乗務員は不要となる。乗る側の人々にしても、長い飛行時間を持て余すという感覚はなくなるし、現地に着いたらすぐに働かなければいけないのに時差の関係で寝れなくて困るという苦痛も解消される。 近い将来、成田空港の待合室にいたのに、ふと気づくとニューヨークの空港の待合室にいるという旅行が可能になるかもしれない。(航空医学の夢 1997)
Mar 20, 2011
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砂浜の海岸に、それも波打ち際に沢山の人々が横たわっている。手足をぱたんと砂地に置いたままで、笑顔で何かを話し合っている。 「そのうちに満ち潮になりますよ。」わたしの忠告は聞こえなかったのか、わたしに耳を傾ける人はいない。 もう一度わたしは、今度は先ほどよりは少し大きな声で話しかけた。それはさすがに何人かの人々に伝わったようだ。ざわめきが起きたが、よく聞くとそれは笑い声のようであった。 でもそれはわたしへの儀礼的なものだったようだ。彼らの話題はすぐに戻っていく。 「指にできたイボをナイフで切り落としたことがあるんだ。何回切ってもまた生えてくる。」 ああ、「再生」について話しあっているのか。わたしには少し意外な感がした。 潮は引いていく。でも安心してはいけない。必ず潮は満ちてくる。わたしはその海岸に累々とあたかも海洋生物のように横たわる人々を見て涙した。手や足を何かで押さえつけられているように見えた。 ざわめきのような笑い声がまた聞こえてきた。人々が口をゆがめるようにして笑っている。わたしはその場にいたたまれなくなって立ち去るしかないと思った。海を見て、無数の横たわる人々を見て、陸地の方に視線を移して、歩きはじめようと思った。 しかし、足が重くて持ち上がらない。一歩も前に動けない。しばらくすると、足だけではない。手もだるくなり、重くなる。頭すらも重くなってきて、それを支えるのもつらくなる。だから人々は横になっていたのだと気づいたときには、わたしも既に横になっていた。 ぐっと腹がくびれてわたしは嘔吐した。米のとぎ汁のような白い液を吐いた。 口だけが自分の意思で動くようだった。吐いた液の一部が口の中に残り気持ちが悪かったが、わたしは必死になってうめくように笑った。周囲の人々が、何かの貴重な情報を得たかのようにどよめいた。 わたしはこれで彼らと一緒になったと思った。
Mar 13, 2011
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棺おけのふたが開いていたからと言って見ることが許されていたわけではなかったが。私は予感した、急がないと彼が眼を開きにやりと笑うと。そうでなければつじつまがあわないぐらいに彼はその箱の中で存在していた。私は彼のようなものにささやいた、存在を願ってはいけないと。もはや彼ではないのだから。#195
Mar 6, 2011
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