サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.03.30
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 最後は内大臣の登場となって、この一連の「ヲコ」話は終りです。

― おとゞ、この望みを聞き給ひて、いと花やかに、うち笑ひ給ひて、女御の御かたへ参り給へるついでに、
「いづら、この近江の君。こなたに」
と、召せば、「を」と、いと、けざやかに聞えて、出で来たり。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 内大臣は、この(近江の君の)願いをお聞きになると、たいそう高らかに、お笑いになって、女御のもとへ参上されるついでに、
 「出てらっしゃい、そこの近江の君。こちらへ」
と、お召しになると、(近江の君は)「おう」と、ずいぶん、ハッキリした返事をして、出て来る。

 ここの、― 「を」と、いと、けざやかに聞えて、― の語感が、「ハイ」とか「ハッ」とかでなく、何となく内大臣家の闊達な空気を感じるので、男言葉なのですが、「おう」と読みたい気分に駆られます。何だか今どきの女子運動部で聞かれるような返事ですね。

― 「いと、つかへたる御けはひ、おほやけ人にて、げに、いかにあひたらむ。内侍のかみのことは、などか、おのれに、とくは物せざりし」
と、いとまめやかにて、のたまへば、「いと嬉う」と、思ひて、
 「さも、御気色賜はらまほしう侍りしかど、「この女御殿など、おのづから、つたへ聞こえさせ給ひてむ」と、頼みふくれてなむ、侍らひつるを。なるべき人、物し給ふやうに、聞き給ふれば、夢に富したる心地し侍りてなむ。胸に手を置きたるやうに侍る」
と、申し給ふ。舌ぶり、いと、物さはやかなり。 ― (山岸徳平校注、岩波文庫)

 「ずいぶん、(熱心に女御に)伺候しているご様子(を見れば)、公の(宮仕え)人としても、まったく、どうしてふさわしくないことが(あろう)。(そなたが望んでいる、という)尚侍の件は、どうして、私に、サッサと申さなかったのか」
と、たいそうマジメそうに、おっしゃるので、(近江の君は、たちまち)「まあ嬉しいこと」と、思って、
 「そのようにも、ご内意をいただきたく思っておりましたが、『この(弘徽殿の)女御殿などから、自然に、伝え聞きなさるだろう』と、すっかり当てにして、おったのですが。(ところが、尚侍に)なるらしい方が、(他に)いらっしゃるように、お伺いしたので、(何だか)夢で金持ちになったような気が致しまして。(今では)悪い夢でも見ているような次第でございます」
と、お答え申上げる。話し振りは、(相変わらず)たいそう、滑らかである。

 内大臣は、もちろん最初から、まともに応対する気などなくて、要は日頃のウサ晴らしで近江の君をからかいたくなったのでした。

― つづく ―





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Last updated  2010.03.30 11:35:26
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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