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2015年06月11日
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カテゴリ: 漫画・アニメ





電子書籍無料版およびレンタルにて、既刊11巻 読了。


沖田総司や近藤勇ら、いわゆる 「新撰組」 のメンバーを中心に、その出会いや活躍を描く群像劇。


最初にハッキリ言っておくと、私は新撰組に特別な興味はない。初めて読んだ幕末ものの小説が 『竜馬がゆく』 (司馬遼太郎) だったせいか、そもそも新撰組に対する印象も決して良くはない。


今となっては、坂本龍馬もかなり 「盛られてる」 と思っているが、幕末浪士らの動向が日本の歴史を変える一要因になったことは認めても、それはあくまで結果論であり、新撰組だろうが尊皇攘夷だろうが、佐幕だろうが倒幕だろうが、志士と呼ばれる人々のうちの多くは、思想の乏しい愚連隊と大差なかったのだろう …という認識だ。

大体、ヒマな男が徒党を組むとロクなことにならないってのが常道。 マフィアやらヤクザやら宗教的過激派やらも、起源は自称 「自警団」 のチンピラ集団であることが多く、彼らの掲げる立派な 「大義名分」 は、後付けの 「暴れる口実」 に過ぎなかったりする。

鎖国経済の行き詰まった社会で、プライドだけは一人前以上の浪士たちに不満が溜まるのも必然。 失業状態でムダに剣の腕ばかり磨き、中途半端に学はある (日本人は識字率だけは昔から高い) 浪士が、一部の口のうまい輩に扇動されて殺人を犯す構造は、現代の狂信的テロ集団とさして変わらないだろう。


だから、新撰組含め、幕末浪人を、余りにも英雄視したり美化したりするような著作は、フィクションと分かっていても 冷めた目で見てしまうのだが、この作品については、フィクションと割り切れる部分が多いせいか、素直に面白い。

「フィクションと割り切れる」 …と言うのは、新撰組の詳しいことまでよく知らない私でも、「かなり作ってる (盛ってる) だろ」 と分かるエピソードが多い、という意味だが、細かい人間 (行動) 描写は、ヘンに美化せず、普遍的なリアリティがあるので、キャラクターにもストーリーにも すんなり感情移入ができた。


まずは作画がいい。 人物の全身像や背景などは劇画調だが、顔の表情は適度に漫画的で、何とも言えない味がある。

作者が意識して描いているかどうかは分からないが、人を斬ることに躊躇しないキャラの微妙な目つきが、個々の性格設定に説得力を与えている。同じ 「人殺し」の目でも、 「狂信」 か 「無心」 か、或いは 「快楽」かで、描き分けているように見える。


沖田総司に関して言えば、 「美少年剣士」 的な理想像を描いているファンがどう思うかは分からないが、「不遜で間抜けな現代っ子」 風に描きつつも、全てをさらけ出すことは避け、何を考えているか分からない部分を残しているので興味が尽きない。

同様に、近藤にしろ土方にしろ、主要キャラほど、説明的なセリフや、内面を明かすようなモノローグを少なくし、表情やちょっとした言動によって、読者の想像力を掻き立て、魅力を引き出すことに成功しているように思う。


また、作品通しての最大の魅力は、人間の言動や反応の中に見えるユーモアだ。

人を斬るシーンなど、目を背けたくなるような、残忍でシリアスな描写も多い中、人物同士の日常のやり取りは、ついつい吹き出してしまうような 「可笑しさ」 が散りばめられている。 それも、如何にもふざけて発せられるセリフではなく、本人らは 「大真面目」 な言動であるからこそ、余計に笑える。

特に、相対する人物のトンチンカンな言動に対して繰り返される、 「はあーーー?」 という心の叫びは、本音を余り言葉に出さない日本人の特性やら、上下関係の不条理やら、この時代の支離滅裂な思想の横行やら、様々を物語っているようで、ただのギャグでは片付けられない可笑しさがある。


ただ、これまでも何度か指摘しているが、実在の人物を描く歴史フィクションは、結末が ある程度分かっているだけに、読み進めるほどに、だんだん憂鬱になってくる。

生い立ちや出会いのエピソードは、史実もハッキリしない分、のびのび自由に描かれていてワクワクするが、浪士組結成後 (8巻~) は、過去の著作や研究に縛られることが増えてくるのは やむを得まい (史実と言われていることも、必ずしも正しいとは限らないのだが)。


特に、新撰組のように、こだわりのファンが多い人物たちを、新しい魅力で描き切れるかどうかは、これから (11巻現在、まだ新選組は結成されていない) が正念場だろう。




<関連日記>
2013.8.20. 歴史フィクションの限界 ・・・ 上田倫子 『 リョウ 』











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最終更新日  2016年10月10日 23時05分39秒
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