Over The Moon.

Over The Moon.

2005年11月11日
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カテゴリ: *能関係の日記*
わが宝生会では
「本番より緊張する」ことで名高い
辰巳師稽古というのがあります。

猫さん(仮名) 「各自忘れ物ありませんか。
         扇と足袋、綺麗なやつ!」

辰巳家は関西の宝生流を牛耳る(?)お宅でありまして
我々宝生会も大変お世話になってます。

亀さん(仮名) 「び、ビデオはどうします」
猫さん「当然持ってきます。 犬くん(仮名) は? まだ?」

そのお宅にお邪魔して稽古をつけていただくのが年1、2回。
申し合わせと同じで、 、もしくは 舞囃子 が出るときのみつけていただきます。

犬さん「(ばたん)すいません遅れました」

・・・いつもの稽古と何が違うかって

猫さん「はい、じゃあ行きますよ」

・・・雰囲気が違うんですよねー。もう。



電車に乗り、一路大阪の能楽堂へ。
全員スーツなのは言わずもがな。
向かうのは 先代の葬儀 以来になります。


師匠「どうもお疲れ様。早くあがって準備して」
能楽堂ではいつもの師匠が待っていてくださった。
楽屋入り口から中に入り、
足袋を履いて、ビデオカメラを設置して、扇を手に舞台へあがる。


橋掛かりで犬さんが最後の確認。
私たち 地謡 は、定位置で正座して待つ。
薄暗い観客席が見える。誰もいない。

――お囃子は?何流? ・・・あ、そう。

切戸の奥で
辰巳師の声。

緊張と言うよりは
ぴしっとしてないと、という意識のほうが強い。
つばを飲み込む音すらもはばかられる気がする。
・・・


視界の隅で切戸が開いて

ぬっ

って感じ辰巳師が入ってこられる。
・・・恐ろしいまでの存在感。


「・・・はい。
 じゃあいきますか」


舞台に軽く手をつく。

「「「お願いします」」」



「いよーっ」



能楽堂に師の声が響く。
お囃子方の代わり、台を叩くハリ扇の音が鳴る。

幕の向こうからシテが出てきて
ゆっくり運び、舞台のほうへと向かってくる。

「♪来る年の矢の生田川・・・」

地謡の出番まではシテ中心。
最初だからあまり型がない分だけ、

「引き音! 短いんだよ!」

容赦なく謡を指導される。
・・・それを聞きながらじっと待つ。

ワキ「箙の~梅の~」
シテ「い~ま~ま~でも~」

地謡「♪名をとめし~」


地謡の出番。
地頭 である猫さんの声に合わせて、稽古どおりに謡う。
それに合わせてシテの犬さんが舞う。
度々パンパンと扇が鳴って

「そこ、もっと運べ」
猫さん「はい」

謡が止まり、やり直し。
それを何度か繰り返し、
繰り返し、
繰り返し・・・


「・・・はい」

「「「ありがとうございました」」」


約1時間半の稽古が終了する。

「えーと、舞台はいつだっけ。あ、来週。そう。
 追い込みだね」

厳しかった師の顔が豪勢な笑いに変わり

「まー頑張ってください」

私たちは再び手をついて

「「「ありがとうございました」」」

と言う。



私「どうだった、初辰巳師稽古は」
鹿くん(仮名) 「足がしびれました」
あははそりゃそうだ。
鹿くん「でもあの、
    流石格好いいですね」

やっぱり本場の能楽師と言うか。
こんなに密の濃い稽古はなかなか出来ないものだし。

亀さん「・・・らら来年が怖いなー」

もし亀さんが来年能を出すとしたら
今日、犬さんがいた場に立つのは亀さん。
・・・いやまあ
その前に舞囃子があるんですけどね。
・・・私の。


・・・
ひー



泣いても笑ってもあと1週間。
出来ることをして
悔いのないように
いい舞台にしたいと思います。





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Last updated  2005年11月12日 10時48分13秒
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