Over The Moon.

Over The Moon.

2006年03月12日
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カテゴリ: *能関係の日記*
合宿最終の夜。

下の広間には、いつもの静かな飲み風景。


亀さん(仮名) 「ついであげる」

ビールを貰い受ける。
私は隣に居る 雉ちゃん(仮名) のグラスを満たす。

亀さん「じゃあ合宿お疲れ様でした」

3人でグラスを鳴らす。

OGさん「今回の合宿で最初からいたのはこのメンバー?」

私「そうです」


そうです。
今回の合宿は当初
参加者3人から始まったのです。


4回生が抜けると、残った現役は全部で7人。
そのうち 鴨くん(仮名) は海外旅行中で、参加できないのは分かっていた。

が。


鹿くん(仮名) 「すいません
     39度5分の熱が出たので初日はいけそうにありません」

鹿くん、最初の数日復活できず。

鶴さん(仮名) 「なにやら
     食あたりに当たったようでちょっと無理です」

鶴さん、実習の合間に来るはずが来られず。

寅くん(仮名) 「すいません
     仮眠取りすぎました・・・」

寅くん普通に初日寝坊。

・・・なので基本は
私と亀さん、雉ちゃんの3人だったのです。



鴨くん「・・・大変でしたね」

でも
話はそれだけに留まらなかった。

4日目の午前中に
寅くんのお父様が倒れたとの一報が入り
寅くんは急遽、実家に帰ることになったのだ。

だから最終日、残った現役は
3人と復活した鹿くん、帰ってきた鴨くんを入れて5人。



亀さん「・・・やっぱりあらかじめ
    話はしておかなきゃいけなかったなぁ」

亀さんが言う『話』とは
今年の宝生会について。
つまり を出すのか、出さないのかということだ。

おととし8年ぶりに、うちの宝生会に復活した能。
去年も引き続き『箙』の舞台を出した。
今年はどうするのか。
残された現役で、そんな大きな舞台を出せるのか。

亀さん「僕はね
    能を出したい」

今年4回生で、出すならシテを務める亀さんは言う。

亀さん「やっぱり能やらなきゃ能楽部じゃないよ。
    今人数少ないけど
    やって出来ないことはないと思う」

能を出したくて能楽部に来たという亀さん。
その気持ちはよく分かる。
面つけて、装束つけて
シテとして舞台に立ちたいんだろうなぁ。

亀さん「他の人は、どう?」

うながされて

私「私はやってもいいとは思います。でも」

口を開く。

私「今の私たちのレベルじゃ、どうしてもクオリティは下がってしまいます。
  稽古すればそれなりになるとは思いますが
  どうしても限界はある。
  それにもし、もし寅くんが家の都合で出られなくなったとしたら
  地は4人しかいないんですよ?」

能地、能に出るための地謡は
少なくとも8人は必要だ。
鶴さんは忙しくて出られないと分かっているし
寅くんはどうなるか分からない。
とすると残るのは4人。
1回生が入ると考えても、半数が1回生となると
正直、地として成り立つ謡ではなくなってしまう。

亀さん「稽古すれば大丈夫だよ」

私「でも・・・」

どんなに頑張っても
1回生は2回生に敵わないし
3回生は4回生に敵わない。
唯一の4回生である亀さんがシテならば
地頭は自動的に、私か鴨くんになるわけだ。
3回生の。

私「確かに・・・出来なくはないですけど
  難しいと思います」

出来なくはない。でも難しい。
それが、正直なところ。


亀さん「・・・そう。
    他の人は?」

鹿くん「僕は、何かやるならば
    頑張って稽古します。
    それが能であっても」

亀さん「雉さんは?」

雉ちゃん「私は・・・その・・・
     私がもし地謡の戦力と考えられているんなら
     難しいと、思います」

亀さん「考えられないわけないから。2回生だし」

雉ちゃん「あの、だから
     難しいと思うんです」

雉ちゃんが目を伏せる。
おとなしくて、物静かで
声を大きく出せないとか、音程が取れないとかで悩んでいる雉ちゃん。

雉ちゃん「能は・・・やりたくないわけじゃなくて
     やる気がないわけでもなくて・・・
     私は、自信がないんです」

・・・その気持ちはよく分かるよ。


亀さん「・・・。
    鴨くんは」


今まで押し黙っていた鴨くんが
顔を上げて亀さんを見る。


鴨くん「僕は反対です」


ぴしりと
空気が


亀さん「・・・反対?」


張り詰める感じ。


亀さん「それは何、難しいとかじゃなくて?」

鴨くん「ええ。
    僕は何が何でも反対します。
    今年絶対能を出すべきじゃありません」


半円になって座る中
向かい合う2人の時期上回生が対峙する様相。



・・・アクシデント続きのこの合宿は
最後の夜に、静かにもうひと騒動巻き起こりそうな予感。
ここまできておきながら。
どうなるんだ、ほんとに。

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Last updated  2010年11月21日 18時44分02秒
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