Over The Moon.

Over The Moon.

2006年11月15日
XML
カテゴリ: *趣味の世界*
中国文学講義にて

『課題の漢文をもとに 別の物語を作れ

っていう課題が出たので
以下はオランダ語を休み(おい)3時間でなんとか書き上げて提出した物語。

課題の物語のテーマを言うなら『友情』。
死に際に友人が夢に出て、葬式に出てくれって言われて
王様に頼んで馬を走らせて友人の葬式に出た、っていう場面が印象的だったので
その辺のエッセンスを使いました。

やや長いので、読みたい人だけどうぞ。





“とある2人の物語”


 何年ぶりかに幼馴染を夢に見た。
 何を言ったのかは覚えていない。目が覚めた瞬間忘れてしまった。ただ、夢の中の必死なあいつの形相は覚えている。俺と同じように成長して大学生になっていて、髪も金茶に染めていた。それでもあいつだとすぐに分かるから夢は不思議だ。中学以来会っていないのに。
 時計を見ると朝だった。今日は出るべき講義もないし、いわゆる「朝」という時間帯に起きる必要性はまったくない。だが、目覚めが強烈だったせいか頭と目に二度寝の気配はなく、仕方なくベッドから這い出した。
 カーテンを開けると、昨夜ほどではないがよどみない雨が降り注いでいて、日は昇っているのにずいぶん薄暗かった。俺はその変な夢を昨日の土砂降りのせいにすることにした。昨日は雷も散々鳴って、かなり寝苦しかったのだ。
 俺は期限切れの食パンをかじりながらテレビをつけた。丁度占いがやっていた。俺の星座はまだ出てこない。
 そのとき、突然画面が切り替わった。
『番組の途中ですが、ただいま入ったニュースをお伝えします』
 変なものだ。
 俺はそれが、直感であいつのニュースだと分かった。
 心臓が大きく脈打つのを感じながら、ボリュームを上げた。
『今日8時半頃、××県の××町の××山のふもとで土砂崩れが起きた模様です。数家屋が下敷きになったと見られ、現在確認を急いでいます。繰り返します』
 あまり聞き覚えのない地名だった。しかし俺はパソコンを立ち上げて、その地名を地図で調べた。隣の市まで新幹線が通っていた。俺は自分のいるところからその駅までのダイヤを調べていた。
『ただいま上空のヘリからの映像が届きました』
 顔を上げると、そこには雨にけぶる中に広がる山の地肌が移っていた。ゆっくり移動する画面の中に崩れた木々が見えてきて、茶色い部分も昨日までは緑だったのかもしれないと思うと、無残に思えた。良く見るとその茶色の中に、かすかに瓦のような黒色が見えていた。
『住民の安否が心配されます・・・』
 この15分後には、俺は下宿を出ていた。

 幼馴染のあいつは、さばさばした性格の持ち主で、何かにつけ悩んでしまう俺とは正反対だったように思う。テストの点が悪くても「まぁ次があるしな」と言うし(頭は良かったので、悪いといってもさほど悪くはなかったのだが)、夏休みの最終週に突然一人旅に出ることもあった。広く浅く興味を持っているようにも見え、また結局何も興味がなさそうにも見え、「何とかなるって」が口癖だった。
 そんなやつだから面白がって周囲に色んな奴らが集まったし、俺とあいつは幼馴染だが、あいつの友達が俺の友達とは限らなかった。俺とあいつは違う世界を生きていた。クラスも一ニ度しか同じになったことがないし、いつも一緒にいたわけではない。
 それでも俺の目が節穴じゃなければ、あいつが唯一事務連絡以外で定期的に話しかける人物と言えば、俺ぐらいだっただろう。つるむことはなかったが、すれ違いざまに、トイレで会ったときに、あいつと俺は他愛もない話をした。それだけで変な縁を感じるのはおかしいかもしれないが、俺は不思議な縁を感じていた。それはあいつもそうだろう。

 ××市までは2時間ほどでついた。だがそこから先、災害地への電車は乗り継ぎが悪く、一時間も待たされてしまった。
 その間も、駅の構内ではひっきりなしに人が土砂災害の話題を出していて、テレビは惜しみなく『現在の映像です』を伝え続けていた。そのうちに被害に遭った家屋の情報も流れるようになったが、あいつと関係がありそうな家主の名前は見当たらなかった。
 ふと、俺は何でこんなところに来ているんだと我に返ることがしばしばあった。夢でしかないものを頼りに、学割も使わず新幹線に乗って、持ってきたものと言えば財布と携帯、傘ぐらいだ。災害地に行って俺に何が出来るのだ。何をしようとしているのだ。
 だが俺は、帰ろうとは思わなかった。何かに魅入られたように、テレビに映ったあの土地、雨降りしきり泥流流れるあの場所に行くことしか考えられなかった。
 きっとあいつは、そこにいる。
 電車が来て、それに乗った。二両しかない列車には、安否を気遣う親戚・知人らしき人であふれかえっていた。

 高校に入りあいつとはまったく会わなくなったが、風のうわさであいつは高校を中退し、親の承諾を得てヨーロッパに単独留学をしたらしいと聞いた。そんなことが出来る高校生は、あいつ以外には存在しない。大学に入ってからのあいつの情報は、まず帰省したときの「隣のてっちゃんも大検受かって大学行くらしいよ」といううちの母親からのものである。そこで俺が思ったのは、あいつが大学でじっとしてる玉か、ということだった。成人式では思ったとおり、あいつは大学にはほとんど行かずに全国を放浪しているという話を同じ大学に行っているというやつに聞いた。勿論、成人式には来ていなかった。
 ただ俺がちょっとがっかりしたのは、あいつと大人になったら酒を飲もうと行っていた約束が果たせなかったことだった。中学卒業間近のときの口約束だし、来るはずがないと思っていたが、実際来ないと思ったよりショックだったことに気づいた。
 ところが家に帰ってみると、あいつから、小包が送られてきていた。消印は全然聞いたことのない、北のほうの町からだった。
『飲め。』
 中には半分あいたラベルのない日本酒と、杯が入っていた。

 駅から災害地近くまではバスを利用した。雨は若干弱まったものの、やむ気配は微塵もなかった。バスもやはり、同じ時刻の電車に乗った人がごっそり同じ顔ぶれだった。
 バスは山間を通り、終点ふたつ手前のバス停に止まった。道沿いを行った先には、黄色いテープや電飾ロープ、ヘルメットをかぶったおじさんたちが雨の中作業をしているのが見えた。奥のカーブを回ればおそらく災害地だろう。ほとんどの人が、なだれの様にこのバス停で降りた。
 足場の悪い道を集団で歩いていくと、赤いライトセイバーみたいなのを持ったおじさんたちが、目ざとくこちらに向かって走って来た。
「この先危ないですから、先の集落へはいけません。引き返してください」
 それに対してこちら側からの怒号が鳴り響いた。それはないだろう通せよ、親の無事を確認したい、おばあちゃんが、電話が、土砂で云々。
 閉口した作業員の向こうから、ちょっと偉い方と思われる人物がやってきて、何か言った。結局、奥のカーブを曲がってしばらく行ったところの黄色いテープまでは行かせてもらえた。
 そこは、テレビで見たとおりの光景が広がっていた。どこもかしこも茶色かったし、灰色に汚れていた。幾つか見える家屋は、二階部分だけがのぞいているか、見えてもぽっかりと穴をあけていた。テレビカメラが何台も来ていて様子を映す中、おじさんたちが大声を上げながら、土砂を掘り起こしていた。

 思い出した。
 成人式の日に送られてきた、あの小包。
 あれはこの町から送られてきていたのだ。

 どれだけそこにいたかは分からないが、しばらくして、負傷者がこちら側に運ばれてきた。悲鳴にも似た声が辺りを包んで、前のほうにいた俺は押し出されそうになった。救急車はテープの向こう側にあって、この位置からは誰なのかさっぱり分からなかったが、1人を皮切りに何人も何人も運ばれてきた。そのたびにテープ越しに、人々は知り合いかどうかを確認していた。
 そのうち、ヘルメットのおじさんが1人、こちらにやってきた。手でメガホンを作り、こちらに向かって叫んだ。
「ただいま、意識不明の70代ぐらいの男性が発見されました。この中でお心当たりのある方はいらっしゃいませんか」
 意識不明で本人確認が出来ないのだろう。先ほどより強い力で押され、数名がテープをくぐって走っていった。何名かはほっとしたような不安なような表情で戻ってきて、50代ぐらいの夫婦が2人、そのまま救急車の後ろに乗り込んだ。
 そんなことが何度か繰り返された後、
「意識不明の、20代ほどの」
叫ぶ人の肩越しに、担架と、金茶の髪が見えた。
 俺はテープをくぐった。


+++ 了 +++


・・・毎回こんなレポートばっかりなら楽しいのに・・・。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006年11月16日 10時25分33秒
コメント(3) | コメントを書く
[*趣味の世界*] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: