偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2024.08.11
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カテゴリ: 銀輪万葉
(​ 承前 ​)
 前頁からの続きです。
 喜光寺を出て、垂仁天皇陵の前を通過、唐招提寺へと向かいます。
 垂仁天皇陵の写真は今回撮っていないので、下記過去記事をご参照ください。
<参考>​ 大和西大寺駅から矢田寺経由富雄駅まで(その2)  2010.3.6.
第2回ペリカンの家サイクリング下見 ​​​ ​​​​​​​​  2019.8.25.
    ​ 中学時代の恩師のお墓参り ​ 2023.1.8.
​​​​​​​​​​​​​​ ​ 唐招提寺​の門前に着いたのは午後3時少し前。

(唐招提寺・金堂)

(同・境内案内図)

(同・境内略図<パンフレットより>)
 遅い出発となったため、最初の西大寺に着いたのが午後1時を過ぎていたので止むを得ないが、次の薬師寺の入山刻限が午後4時半であるから、どうやら今日は、ここ唐招提寺までで、薬師寺拝観は後日に回すしかなさそうです。

(同・パンフレットから撮影)
​※画像をクリックして大きいサイズの画像でお読みください。​
 今日のテーマは蓮の花であるが、境内の萩の花も撮って置きましょう。

(同・境内の萩の花)
さ男鹿の 朝立つ野辺の 秋萩に 珠と見るまで 置ける白露
                     (大伴家持 万葉集巻8-1598)

​(さ男鹿が朝に立つ野辺の秋萩に、珠かと思われるほどに輝いて置いている白露よ。)​
 まあ、萩は何と言っても万葉を代表する花であるから、目にしたからには撮らざるを得ません(笑)。
 では、金堂の右手にある売店裏手の蓮池の方へと参りますが、その前に金堂脇に置かれた蓮鉢の花であります。

(同・蓮の花<1>)
 蓮池です。
 蓮池という名かどうかは存じ上げぬが、弁天堂の前にある池で、蓮が池全体に繁茂しているから、蓮池でいいのだろう。

(同・蓮池<1>)

(同・蓮池<2>)
 蓮はそこそこに冷房の効いた売店に入る。売店内に置かれた扇風機の風に当たって、暫くの間、火照った身体を冷やします。
 その売店の奥隣に喫煙所がある。扇風機の風は名残惜しいが、タバコも喫いたい(笑)。売店を出て、喫煙所で一服です。
 その喫煙所近くに並んでいた蓮鉢の蓮の花がこれ。

(同・蓮の花<2>)

(同・蓮の花<3>)
 金堂を拝観し、講堂へと回る。
 金堂の裏階段の最上段に上って講堂を撮影しましたが、距離がもう少し必要であったようで、屋根の両サイドが入り切りません。

(同・講堂)
 講堂から開山堂へ。

(同・開山堂前の芭蕉句碑)
 若葉して御目の雫ぬぐはばや (松尾芭蕉 「笈の小文」) ​​​​​​
 この句碑の写真は下記<参考>の過去記事にも掲載済みであるが、今回も撮影したので掲載して置きます。
 芭蕉句碑についての説明も同記事に記載済みなので割愛することとし、ヤカモチも一句仕り候。
 蝉しぐれ額の汗をぬぐはばや  (筆蕪蕉「老いの小文」)
<参考>​ 見まくの欲しき瓊花そして墓参 ​ 2016.5.2.
 開山堂から鑑真和上御廟に向かいます。

(同・鑑真和上御廟の門)
 鑑真和上御廟は境内の北東隅の一番奥まった場所にある。
 上掲写真の門が御廟への入口である。
 門を潜ると、一面の苔。

(同・鑑真和上御廟参道脇の苔)

(同上)
 一面の苔に覆われた木立の中の参道を進むと、正面に和上の御廟。

(同・鑑真和上御廟)

(同上)
 御廟を出て、来た道を引き返すと、目に入ったのは北原白秋の歌碑。
​​ ​​
(同・北原白秋歌碑)
​​
​水楢​ みづなら ​​ の  やは 嫩葉 わかば は み眼にして 花よりもなほや 白う匂はむ (北原白秋) ​​
 白秋は52歳の時に眼底出血を起こし徐々に視力が低下、失明してしまうのであるが、そのような事情もあってか、鑑真和上のことを思って詠んだ歌がいくつかあり、この歌はそんな中の1首である。
 他の関連歌を列記すると以下の通りです。

 目の ( ) ひて  ( かす ) かに ( ) しし  仏像 ( みすがた ) に 日なか風ありて  ( さや ) りつつありき
ひはてて なほし やは らと ます 目見 まみ に  ひじり なにをか 宿したまひし
唐寺 からでら の 日なかの照りに  物思 ものも はず  きほ ひし夏は 眼も みにけり
み眼は閉ぢて おはししかなや  おも もちの なにか たた へて  にほ へる ゑみ

 この歌碑は御影堂の前にあるが、御影堂は非公開にて門前から望見するのみである。
 御影堂の供華園には瓊花の木がある。春の終わり頃から初夏にかけて、この木はガクアジサイに似た白い花を咲かせる。その供華園は瓊花の咲く時期限定で毎年一般公開されるようだが、以前一度だけその瓊花を見に入山したことがある。
 瓊花は鑑真和上の故郷、中国揚州の花である。
 昭和38年(1963年)に、和上1200年忌を記念して中国仏教協会から唐招提寺に贈られたものであるという。
 御影堂から少し西へ行ったところの僧房か何かの建物の庭に立ち入り、日陰になっている石に腰掛けて暫しの休憩、水分補給であります。立ち入ってもよいのか定かではなかったが、立ち入り禁止の結界もなく、蓮鉢が並べられていたから、多分大丈夫なんだろうと思った次第。

(同・会津八一歌碑)
おほてらの まろきはしらの つきかげを
          つちにふみつつ ものをこそおもへ 

​​​​  この歌碑は下記<参考>記事にも掲載していますので、再掲載ということになります。

<参考>
青雲塾第2回万葉ウオーク ​ 2011.6.5.
 唐招提寺を退出したのは午後4時頃。​
 南門の道路向かいの駐車場に駐輪して置いたトレンクルへと向かうが、その敷地内にあった土産物店兼喫茶店に入る。かき氷を注文する。店内でも食べることができるというので、閉店時刻の午後4時半まで余り時間もないのであるが、冷房のきいた店内の喫茶コーナーで食べさせていただく。
 店の営業時間は、唐招提寺の入山受付時間である午前8時~午後4時半というのに合わせているようだ。
 20分ほどで店を出て、トレンクルに乗車。駐車場出口の脇には栗の木があって、早くもイガグリの実が沢山なっているのが見られました。
 トレンクルで秋篠川自転車道に向かう。
 これを北に向かって走る。
 自転車道に入ってスグのところにある大伴旅人の万葉歌碑を見て行く。

(大伴旅人万葉歌碑)
沫雪の ほどろほどろに 降りしけば 奈良の都し 思ほゆるかも 

                       (大伴旅人 万葉集巻 8-1639

​​​ ​(泡のような雪がはらはらと降り続くと奈良の都のことが思い出される。)​

​​​  この歌碑は、秋篠川沿いの自転車道を走る際には何度となく目にして居り、この歌碑の前で歌を解説したという記憶も一度ならずあるのだが、そういう際の記事写真としての掲載は見当たらず、意外にも下記の<参考>記事の写真としての掲載があるのみでありました。
<参考>​ 若草読書会・万葉集から聞こえて来る音 ​ 2019.2.4.
 秋篠川自転車道から平城宮趾公園を縦断。
 大極殿の門である大極門の前を抜けて、朱雀門へと向かう。

(大極門)
 上の写真は今回撮影のものではなく、2022年3月に撮影したものであるが、この前を通り抜けたので、この写真を貼って置きます。
 朱雀門へ向かうには、公園内を通っている近鉄奈良線の踏切を渡らなければならないのであるが、この踏切は午後5時を以って通行止めとなり、踏切手前の柵が閉じられてしまう。
 やって来たのは丁度5時になる頃。係員の人が早く来いと手招きして下さり、ギリギリで通過。無事踏切を渡れました。
 これが閉鎖されると、西側か東側の一般道路に出て、そこの踏切を利用しなければならないので、少し遠回りしなければならないことになる。
 朱雀門から大宮通りに出て、これを左折、東へと走る。
 新大宮駅の少し手前に奈良市役所庁舎があるのだが、道路を走りながら眺めると、庁舎の前に何やら歌碑らしきものが見える。近づいてみると、果たして万葉歌碑でありました。

(遣新羅使人万葉歌碑)
あをによし 奈良の都に たなびける 天の白雲 見れど飽かぬかも
                               (万葉集巻 15-3602

(<あをによし>奈良の都にたなびいている天の白雲は、見ても見飽きないものだなあ。)

 万葉集巻15の冒頭145首は遣新羅使一行の人々が詠んだ歌である。
 その中の1首がこの歌碑の歌という訳である。
 天平8年(736年)6月に新羅へ派遣された遣新羅使であるが、暴風に遭って漂流したり、疫病のため使人が死去したり、と苦難の旅であったことが万葉集の歌からうかがい知れる。
 この使節はその前年の735年に来朝した新羅使節団を追い返したことから、その外交的影響について相手方に探りを入れるというものであったようだが、今度は新羅の方が相手にしなかったもののようで、交渉には失敗、これといった外交的成果もなく、翌年(737年)1月に帰京している。
 午後5時20分頃に近鉄奈良駅前に到着。
 この日拝観できなかった薬師寺は翌日に訪ねることとし、この日の銀輪散歩はひとまず終了です。(​ つづく ​)

<参考> ​​銀輪万葉・奈良県篇の過去記事は下記をご覧ください。
    ​ 銀輪万葉・奈良県篇
    ​ 銀輪万葉・奈良県篇(その2)






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最終更新日  2024.08.13 08:38:01
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