HANNAのファンタジー気分

HANNAのファンタジー気分

February 21, 2026
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テーマ: 中国旅行記(191)
第14回は旅の4日め、1986年1月3日(金) 黄浦江 遊覧つづきです。 『南京路に花吹雪』 森川久美 )を、当時私たちが呼んでいたように 『南京ロード』 と表記しています。記述や画像は当時の私たちの記憶であり、何かの正確な記録や証拠ではありません。写真は汚れなどを修正しています。

Uターンした船は、 蘇州河 を過ぎ、黄浦江北岸へ。 国際客運埠頭 を過ぎる。ここは上海の海の玄関口、昔も船が着いた 楊樹浦(やんじっぽ) である。なんと 鍳真(がんじん)号 が停泊中だった(左写真の右側)。この年の夏、我々はこの船で上海を再訪することとなる。
浦東 の工場群や倉庫の列を見ながら、船は広々とした港湾風景の中をゆっくりと進み、黄浦江を北へと下る。船室では背広姿のマジシャンが手品を見せていたが、私たちはお茶のサービスをしてくれた服務員のお姉さん達と、ろくに通じないおしゃべりを楽しんだ。たいへんおいしいお茶だった。それぞれ自分の名前の中国読みを教えてもらう。私のはサン・クヮオ・フォア。


*楊樹浦  黄浦江の北岸。租界時代には船着き場や倉庫、日本の綿紡績工場があった所。 『蘇州夜曲』 に出てくる「 淮山(わいざん)埠頭 」(=匯山埠頭)とはこの辺り(楊樹浦路18号)にあった日本郵船淮山埠頭のことで 、金子光晴『どくろ杯』 によると、長崎からの連絡船「上海丸」(または「長崎丸」)が着く所だった。上海丸は当時、26時間の航海の後、午後4時にこの埠頭に着いたそうだ。なお『蘇州夜曲』にはルビが「えいざんふとう」となっているが、誤りだと思う。日本語読みをすれば「かいざん」である。

「長崎から船で一日半/きのうの夜着いて酒場へ直行」(『蘇州夜曲』)
 「淮山埠頭の対岸ですよ/取引の場所は」(同)


*浦東  この頃の浦東はまだ開発前で高層建築もなく、地図によると黄浦江沿岸に工場と住宅団地があった。

船は平らな水の上をゆき、長江(揚子江)に出た。黄浦江でさえ広いのに、視界の果てまで水が広がり、まるで海だ。しかし曇天の下でも水が褐色でなるほど河と知れる。世界的大河。本当の海まではまだまだ遠いのだ。
 長江との合流地点( 呉淞口 )でUターンして戻る。戻りには空がやや晴れて、また写真をたくさん撮る。右写真は国際客運埠頭とさらに北東の岸壁で、「浙温?」(浙江省と温州のことか)などと書かれた何かの運搬船が横を通った。左奥にたぶん 旧日本領事館 があるはずなのだが。
 往復3時間の船旅は、ほっと一息つくと同時に、中国の広さを実感するひとときでもあった。

 遊覧船から下りると、私たちはすぐ近くにある 友誼商店 (左は旅行パンフレットより)へ向かった。 兌換(だかん)券 を使う海外旅行者向けに、お土産をわんさか売っている所で、英語は通じるが日本語はあまり通じない。私たちの第一目的はカメラのフィルムを買うことだった。空港の手荷物検査でフィルムが感光してしまうだとか、そういう噂があったため、最低限しか持ってこなかったのである。


*兌換券  外国通貨と交換可能なお金(右写真)。絵柄も美しい自然風景など。中国人の使う紙幣(人民元)やコインは別にあり、出国時に両替できない。こちらの紙幣には労働者たちやダムなどの絵柄がついていて興味深い。

さっそく6.1元でFujiのフィルムを買う。支払いは手書きの伝票を切り、計算はそろばんで行う。中国のそろばんは珠の数が日本とは違う。梁と呼ばれる仕切りの横棒の上に2つ、下に5つの珠がある。珠もまん丸ででかい。これは日本のそろばんのルーツらしい。
 さて、あとは好きなものやお土産を買い回った。3人おそろいで買った蝶のブローチ(「銀蝶針」10元、左写真)の他、私が買ったのは普洱(プーアル)茶(1.6元)、絵はがき(2.4元)。そしてたくさん居る中から表情をえり抜いて買った野性的な馬の人形(12元)。汗血馬だろうか、ポージングも決まっている。
 この馬は、リアル動物好きな私の心をつかんだのだが、面白いのは、馬の鼻部分に固い黒いプラスチックがはめられていることだ。よく、クマのぬいぐるみでは鼻先だけ黒いプラスチックだったりするが、馬でしかも鼻と口全体を覆うプラスチックとは初めて見た。そのため鼻がとても目立って見え、NかMかが、 『南京ロード』 の台詞を引いて、「鼻がこーんな…」と言った。敵方のかぎ鼻の西洋人カルロのことである。


「どんな男だ?」「グレーの髪で 大男で 鼻がこんな…」
  「カルロか!? ジョーの部下の…!?」 (『南京ロード』3巻)』


大いにウケた我々は、この馬にカルローズという名前をつけてしまった(なぜズがついたのかは不明)。帰国後も長いこと、この馬は「鼻がこーんなカルローズ」と呼ばれた。左写真は鼻の方から写したカルローズ(鼻が強調されている。本物はもっとスリムでかっこいい)とそのレシート(「馬」の字がなんだか疾駆しているようで良い)。このレシートの日付の欄には「1月」と書いてあるが、「元月」と書く店員さんもいた。

 友誼商店は広く、紫檀や螺鈿の家具だの玉(ぎょく)の彫刻だの大きなもの、高価なものを売る上階エリアは、人も少なく独特の香りに満ちていた。そんな一角で、私は刺繍をたっぷりほどこしたチャイナ服(「旗袍」右写真、一部)を見つけ、『蘇州夜曲』の上海リリーとばかりに思い切って買い求めた。今回の旅行でも71元は破格の高値である。サイズが合うかどうか、売り子のお姉さんに身振りで訊くと、大丈夫とのことだったが、ホテルに戻って着てみると、ボディコンシャスな形のため、あちこち相当キツい。特にカラー(立ち襟)のところは苦しくてホックがはまらない。上海リリーになるのは並大抵ではない。ちなみに、私よりはるかに細身のMが試着したらちゃんと着られて、すっきりと美しかった。


この日はまだつづく!





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Last updated  February 23, 2026 10:49:29 PM
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