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2023.08.17
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カテゴリ: 映画➕アルファ


2023/08/17/木曜日/朝から灼熱






8/16  久しぶりに映画館に出かけた。 キングダム とどちらにするか迷いつつも、 宮崎駿 を選択した。


構造的には 『千と千尋の神隠し』 に似ている。

別次元の世界で濃密な時間と体験を過ごし、何かを克服してこちら世界へ戻るとき、子どもはどんな成長を成したか。

この内的成長は、その後世の中で彼、彼女が何を大切に世の中に具体的に関わるのか決定的な要因になるだろう。

昔話や児童文学が多くこのことを扱っている。


長谷川摂子 『おっきょちゃんとカッパ』 のような
エンデの 『ネバーエンディングストーリ』 でもあり
ピアスの 『トムは真夜中の庭で』 でもあるような

いわゆるファンタジーは特に。


宮崎駿が良質な児童文学から汲み上げたスピリッツのカクテルのような味わいの映画だ。


母を空襲の火事で亡くした、 牧 眞人 は10歳くらいか。その後間も無く母の実家に疎開するが、そこには父の再婚相手である母の妹、夏子伯母が待っていた。

しかもおめでたなのである。胎動を眞人の手を取り触らせるのである。これは強烈だ。

母を亡くしてまだ2年ほどなのに。

父はどうやら戦争で儲かる事業経営者である。おそらく戦後は戦後で物資不足の中で富を得る、凡庸な俗物だが家族を思う気持ちは強い。

息子の眞人はその間合いに屈託している。

その事実において、眞人は凡庸な俗物ではない。いや子どもとはみなそういう存在かもしれない。

その屈託が要因として物語の顛末がある。結果の自傷は自分の悪意によることを、もう一つの世界で眞人ははっきりと自覚する。

自覚を促したのは、大叔父の、世界を均衡させる積み石だ。

世界を統べる後継者になれ、と大叔父に求められるが、それを作用させる積み石に悪意があるから、僕はつがないときっぱり拒絶する眞人。


ここには世界は刻々生成する丸ごとの生命なのだ、手のひらの中で知的に弄ぶゲームではないのだ、という声が聞こえるようだ。


さて悪意、である。それがテーマかもしれない。

顕在化した時、眞人の悪意は克服されたが、未だ潜在する悪意が眞人を襲う。


黄泉平坂の地下世界にお籠もりした、身籠る夏子の呪いの言葉〈あんたなんか大っ嫌い〉で悪意が最高潮に至ったとき、その世界の住人である母ヒサコ=火水ヒミによって焼き清められる悪意。

いや、 火水ヒミの炎を燃え上がらせたのは、眞人が夏子をお母さんと呼んだ、その嘘偽りのない哀れむ心=愛、真心、の言葉が誘導したのだ。


真心のこもった言葉が救いなのだ。
人を殺すも生かすも言葉なのだ。


私たちは道の別れ目で選択を迫られた時、どちらを選ぶか。果たしてそれが悪意による選択でないと言えるか。生き延びるにはそれしか選びようがないとしたらどうするか。


『君たちはどう生きるか』。

生きるとは選択の連続なのだ。

何かに悩むとき、相談する友だちが現実世界に見出せないとき、例えば コペルくん と共に悩んでみないか。この本の扉のアオサギが道案内するだろう。


宮崎駿が12歳になって、塔の老人にもなって、12歳の自分と君に伝えている。







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最終更新日  2023.08.18 09:09:46
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