“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2019.07.26
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共感したお客様の声は実は自分の心
 お手伝いしている蕎麦屋の担当者から、私のお手伝いの“痕跡のようなメニュー”の大根そばについて、次のような質問がありました。
これは、ヒット商品をつくる上で大切なことで、共有したいと思います。

「お客様からの声として、大根をおろすのが面倒と、現場で言われているようなのですが、キッチンの方ですりおろしての提供しても良いですか」

私は、こう答えました。

「おろしたてのおいしさがないと、この商品の良さは消えます。
ご要望のある人はおろしてさしあげるのでいかがでしょう。
ただ、今のおろし金はおろしにくいですね。こないだ食べてそう思いました。あと、やや大根が小さいかなとも思いました。
大根そばは瀬谷そばをご覧になり判断ください」

ところが意に反して、こんな答えが返ってきました。

「大根はお客様に確認してからこちらでおろすか、お客様がおろすかを判断しましょう。

キッチンから大根そば注文があると意思表示をしてもらい、ホールがお客様の元に行き、当店の大根そばは、お客様が大根をおろす楽しみがあります!

が、店側ですりおろして提供する事も出来ますが、いかが致しましょう?と質問する!」

 なぜ、意に反するかというと、「 面倒くさいという声に感じた人 」が尋ねてしまうと、ほとんど人がおろしてくれと言うことが予想されるからです。

 本事例のお客様を考えると、お客様には、面倒くさい人・どうでもよい人・自分やりたい人がいます。おそらく1割・8割・1割でしょう。

 ところが、「 面倒くさいという声に感じた人 」が尋ねてしまうと、このどうでもいい人(正確には知らなければどうでも良い人)が「それなら」と「 面倒くさいという声に感じた人 」の心に反応してしまうのです。

 つまり、共鳴した「お客様の声」というのは、その人の心なのです。
逆に、素晴らしい指摘があったとして、スルーしてしまう従業員がいるしましょう。
こちらも、そのスルーした従業員の心が原因であるのです。

 そもそも論で、大根が感動するに値する状態で提供されているか、面倒くさい原因がおろし金でないのか、などなど、目を向けるべきことはあるはずです。

 ちなみに、友人であり師匠であります石丸祐嗣氏の言葉を借りれば、サービスには、サビタリティ・サービスとホスピタリティ・サービスの二種類があり、このどちらかに偏ると言います。

 「サビタリティ」の語源は、隷属という意味です。
したがって、規則にしたがって、相手にしたがって、相手が満足するサービス――換言すると、お客様にとって便利で都合のよい奴隷になるサービスを意味します。
今回の「面倒くさい人」にあわせるなどは典型です。

 「ホスピタリティ」の語源は、一般的にどの本にホスピスと書いてありますが、実はHostiteで、”敵”を意味します。
つまり、”何を言い出すかわからない敵”。

 この“何を言い出すかわからない敵”であっても幸せな状態をつくり、
最終的に“敵であるという関係性が変わり”、敵でない状態をつくることがホスピタリティなのです。

 ホスピタリティというと必ず例示されます茶の湯。
戦国時代のが茶の湯はまさにこの状態でした。

 ホスピタリティ・サービスを実現するには、下記の条件を満たさなければなりません。
1.相手以上に相手を考える技術がある
2.人が人として人の幸せと豊かさに貢献できる状態
3.自立的な”逆問題思考”

 自立的な”逆問題思考”について説明しておきましょう。
「こういう時はこうするとうまく」という私のようなコンサルタントにありがちな、セオリー思考ではなく、
「なぜ、それは発生したか、うまくいくようにするにはどうしたら良いか」ということを、常に個別に考えてることを意味します。

 私は、最近、“所得の再分配”というミッションで働いています。
商流を変えて、地方の会社に、あるいは生産者さん個々人に大きな分配がなされることを意味します。従業員への分配もその一環にあります。

 例えば、私は、関わった塾生の社員さんの所得を実質賃金を月額40万円以上にしたいと考えています。
週休二日週40時間有休消化などはその半分くらいの給料ならそんなに難しくないでしょう。
しかし、月給40万円となると、サビタリティ・サービスが基軸ではできないと考えています。

 どんなお客様でもファンにしてしまう社員さん、アルバイトさん。
つまりホスピタリティ・サービスできる個々人をつくるしかないのです。

 まあ、40万円も週休二日の職場も本人は「いらない」と思います。
そういう状態になったこともないでしょうから。
でも、そうなったときに、予想を上回る選択肢が生まれるでしょう。
そんなものだと思います。

 余談ですが、先日、幸運にも渋谷のオーブシアターでやってる「王様と私」を観に行ってきました。


大好きなケリー・オーハラの歌がすばらしかったのですが、そのケリー・オーハラの

I'm not a servant!
I'm employee.

という言葉が印象に残りました。


参考:​ 入れ忘れたとんかつの学び





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Last updated  2019.07.26 08:30:38
[“経営思想家”大久保一彦の次の世代への哲学] カテゴリの最新記事


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