このブレイヤ監督の『A MA SOEUR !』は見たいと思っていた作品なんですが、まさか『処女』なんて題だとは思わず、見落としていました。はる*37さんのブログで知って早速DISCASで借りました。この監督の作品は好き嫌いが別れるタイプなんでしょう。ボクは「好き」とまでは言えないけれど、見るといつも「なかなかの出来」と、無視できない感じ。性描写は必ずしも過激ではなく、だからこの映画でも15歳の少女の初めてのシーンも寝ている妹の肩越しに遠く鏡に映って小さく見える程度で、エロチック/ポルノチックに描かれることはないけれど、でもシーン自体は長いですね(このシーンは姉の初めての経験ではなく、それを見ている妹を描いている)。全体が90分もない作品なのに。そういう意味で性の持つ意味を真面目に考察している映画だと思います。
ラストは唐突なようだけれど、そこに至る前に既に何かが起こりそうだという不安は観客に提示されている。その始まりは母親が妹アナイスにくらわす平手打ち。ここで既に母親は壁か大形トラックに激突するべき方向に走り始めてしまった。実際には事故にはならずその前に母親は休息するわけですが、「もう運転を続けられない」というのは「このままの生き方には先がない」ということの比喩でもあり、結局現実ではない幻想の世界に安住している母と姉は、幻想ではない現実の男にああされるけれど、姉を観察などして自分や男の現実を直視していた妹アナイスの知はああいう形で彼女を救うんですね。母の眠る運転席のドアをロックし、姉にも助手席のドアロックを促すのはアナイスですね。母も姉もそんな現実は気にもとめていないわけです。アナイスの最後のセリフは辛辣です。相手は既成の価値観の象徴とも言える警官で、「私の言うことを信じたくなければ信じなくていいわよ。」というもの。信じ込みの既成の価値観は何の役にもたたなくって、自分は自分の価値観に沿ってすべてを消化するしかない、と言っているようです。映画だから一種の結論をつけねばならず、そして映画ゆえに複数のテーマを同じ作品の中にアマルガムする側面があって、ラストはああなっていますが、あのラストは象徴として捉えることもできる。原題の「soeur」は英語の「sister」と同じで姉だか妹だか明示しない語なわけですが、「To My Sister !」という意味の原題は、「結局こういうことなのよ!、お姉さん」というアナイスのエレナへの(あるいはブレイヤの観客への)言葉なのでしょう。(←ネタバレしないように曖昧な表現を使いました。)