ラッコの映画生活

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2008.04.25
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カテゴリ: フランス映画
GROSSE FATIGUE
Michel Blanc
84min
(所有VHS)

grosse1.jpg

昨日の日記の 『他人のそら似』 なんですが、ちょっと加筆します。まだ見てない方にはネタバレしない方が良いことが多くてあまり書けなかったので、ここでは 完全ネタバレ で面白かったことなど書かせていただきます。一応背景と似た文字色にして読みにくくしてありますので、選択反転して見て下さい。

以下完全ネタバレ


本物ミッシェルは知らない人のいない人気喜劇俳優なのだけれど、偽者はスーパーでのイヴェントなんかの営業を勝手にやったりしている。そんな会場に本物は行くのだけれど、だからそこで本物の自分をも公衆の目に偽者と同時にさらしてしまえば、「何だ?、何だ?」ということになって、本物ミッシェルにとっては誤解も解けて一件落着するはず。でもそれをしてしまっては偽者パトリックを罪に落しめ、母親や彼の故郷の人たちを悲しませることになるとキャロルが止める。

そして偽者と本物の対決になったときに、偽者は本物の心をくすぐるような提案をする。わずらわしい営業活動やCM出演や金のための出たくもない駄作映画は自分が引き受けるから、本物は価値の高い映画製作や出演をして、分業しようというのだ。これは喜劇上の物語の話なのだけれど、実は昨日のレビュー本文にも書いたようにこの映画は最後である枠にはめられた物語であることが明かされる。そうするとすべて比喩としてとれるようになっている。

偽者の甘い誘いに乗って本物は提案を受け入れるのだけれど、実は一種の罠だったんですね。偽者が本物に成り代わってしまう。つまり本物であるはずのミッシェルが、偽者パトリックにされてしまう。それで本物は騒動を起こすけれど、偽者としか思われない。映画冒頭であった本物の知らない自分のやったとされる不祥事は偽者がいてやったことだとわかるのは良いけれど、本物はその偽者にされてしまったわけです。それで本物が偽者として、と言っても最後の騒動は信じてもらえない本物がやっているわけだけれど、刑務所に入れられてしまう。

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出所してきて途方に暮れる本物は名優フィリップ・ノワレのそっくりさんに出会う。そしてそのそっくりさんは、自分も同じで、偽者に本物の立場を奪われてしまった本物のノワレだけれだと言う。んん~、なかなかの作りと思っていたら、大きな落ちとして「枠」があった。早朝に二人はパリのシャンゼリゼを歩くのだけれど、ノワレが言う。「ここは昔映画館があったけれど、今はない。ここも映画館だった。」今でもまだ映画館があるじゃないかと反論するミッシェルにノワレは、アメリカ映画の汚い英語のセリフを真似して、そしてバキューン、バキューンとピストルが乱射されるのを真似た後、「こればかりじゃないか!。」そして凱旋門まで来たところで無名戦士の墓を指差しながら、「フランス映画はこれだよ。死んだ今は眠るかつての勇敢な戦士だ」と。

ここでこの映画の枠である比喩の構造がはじめてわかる。本物のミッシェル・ブランやフィリップ・ノワレとはフランス映画のことであり、彼らを乗っ取った偽者とはアメリカ映画のことだ、と。原題は「大きな疲れ」という意味で、もちろん偽者に悩まされ、最後には入れ代られてしまう主人公の疲れのことだけれど、低迷していてパッとしないフランス映画界の疲れのことなんですね。そんな二人は「エキストラでも良いから」と映画出演の仕事を探すのだけれど、ポランスキーのオーディション受けて、カフェ(有名なル・フーケッツがロケ地)のボーイというちょい役で出演することになる。ここに込められているのは、フランス映画のことで、小さなことから再スタートしようではないか、という希望なのだと思います。


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Last updated  2008.04.30 01:31:17
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