恋涙 ~ renrui ~

恋涙 ~ renrui ~

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2006.06.12
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カテゴリ: 夢物語



蝉の鳴き声が遠くに感じる
サワサワと風が木々を揺らす傍には青い青い海が広がる
彼は此処に眠っている

《月島 狼(つきしま ろう)》

彼の墓石に花を手向け手を合わせる。。彼を失ってから3年
季節は春の衣を脱ぎ捨て夏の色に染まる
今日は夏至・・彼の命日

彼との出逢いは高校生の頃・・こんな暑い夏の日
美術部に所属する私は夏のコンクールに向け夏休み返上の日々を過ごしていた
私の名前は《結城 智里(ゆうき ちさと)》
高等部3年、長い黒髪と黒い瞳色白っといった容姿と恵まれた財力
そして恵まれた頭脳
いわゆる【優等生】
先生も親も自慢するほど、後輩達や先輩達にも慕われ私の日常は
・・・充実・・・している筈だった

狼は美術部顧問兼美術教師。スーツをいつも着崩しており
教師とは思えない言動、いわゆる【不良教師】
私とは真逆の存在
私にとってはいち教師にしかすぎなかった・・あの日までは


それは夏休みが始まって一週間ほど過ぎた日もっとも暑い日だった
いつものように美術室でキャンパスに向かい筆を走らせていると
閉めきっていた扉が乱暴に開き風が舞い込む

視線を流すと紺のシャツのボタンを二つ外し緩めたネクタイをぶら下げ
長い銀髪を後ろで結わえた狼の姿があり狼は私に気付き目線を合わせる
私は会釈するとすぐさまその視線を外しキャンパスに戻す

狼はクォーターのせいか長髪に近い銀色の髪、切れ長の目といった容貌で
ミーハーな女子が騒ぐのが頷ける。それでも私は苦手だった
関わり合いにはなりたくない相手

そんなことを考えるとふと背後から低めの声が耳元にかかるように
聞こえた

「つまんない絵・・・結城の癖だな」

その声にビクッと視線を辿ると狼がいつの間にか私の背後に
立っており私は驚きながらも否定されたことにむっとし口を開く

「コンクールの評価に関係ないと思います。現に私は数々の名誉
ある評価を受けていますから」

少し嫌味を込めながら視線をキャンパスにもどしつつ様子を伺う
狼は怒るわけでもなく鼻で笑い

「コンクールなんてイイコの結城ちゃんらしいなぁ」

すっと私から離れ窓際まで行き胸元から煙草の箱と取り火をつける
狼の口から吐き出された煙が空を舞い流れるように外にだされた

私はかぁあと感情を高ぶらせいきり立つ様に筆を置くとガタンと音を立て
ツカツカと狼に近づき見上げると

「貴方に関係ない・・人生の脱落者の癖に」

私の事を何も知らないくせに馬鹿にした態度に腹が立った
狼は持っていた煙草をギュッと壁に押し付け消すと私の顎に指を伸ばし
添えながら顔を近づけると

「つまんないってお前の顔には書いてある。結城智里・・さらってやろうか?
退屈な日常から」

スッと見据え不適な笑みを浮かべた。





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最終更新日  2006.11.02 16:47:52
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