恋涙 ~ renrui ~

恋涙 ~ renrui ~

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2006.06.19
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カテゴリ: 夢物語
働き始めて気付いたことがある、まず紫藤さん以外に従業員がいないこと

「えっ、なら紫藤さんが店長さん?」

驚いて目を丸くする僕に紫藤さんはグラスを拭きながら

「いえ、経営者は別にいて彼は海外に行っているのですよ?僕は留守を
任されているだけです。」

懐かしむように目を細め壁にかけられた青い空の写真を見ていた
その横顔に僕の胸の奥がじりっと焼ける感じがしたのを僕は覚えている

もうひとつは決まった時間に店を訪れるお客達
開店と同時に訪れるのが白髪の初老の男性で奥の壁側の席に座り


初老の男性が帰ると入れ替わりに訪れるのが10代位の女の子とボサボサ
の髪に無精ひげを生やした若い男性
二人は知り合いという訳ではない様子だがいつも時間が被るようだ
女の子はカウンター端に座りミルクティーとクロワッサンを注文すると
古ぼけた表紙の分厚い本を読み始める

男性はといえば欠伸をくり返しながら女の子とは反対の席の椅子に腰を掛け
競馬新聞を片手にぶつぶつ呟きながらアメリカンを飲んでいる
午後になれば会社の昼休みだろうか?スーツに身を包んだいかにも
キャリアウーマンといった感じの女性がパソコン片手にやってきたり
夕方五時を過ぎれば買い物帰りの主婦が目立つ

とにかく小さな人間図鑑を見ている気分だった

名前以外は知らず騒がしい店内でも紫藤さんの周りだけ時間が止まったように
我関せずの表情で物静かに作業をしている

紫藤さんの事を知ろうと思って聞いてみたい気がするが
何か踏み込んではいけない気がして僕は自ら聞くことが出来ずにいた


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最終更新日  2006.11.02 17:03:24
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