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私は星が好き、季節・・・日毎移り変わる空の宝石
私の瞳に映る星はもう宇宙に存在しないのかもしれない
私、月村セイラ。二十歳の大学生、イギリス生まれの父と日本生まれの
母の間に産まれた。遺伝なのか銀に近い髪は嫌でも目立つ
私は四年もの間、ある約束を交わした彼を待ち続けていた
『今年は会いに来てくれるの?・・・冬牙』
一週間後のその日、私は約束の日を迎える
そもそものきっかけのは四年前に遡る、私にはお気に入りの場所が
あった。少し高台になっていて街が一望でき星がよく見えるその場所
誰も知らない私だけの場所思っていた場所に彼がいた。
『こんばんは』
「こんばんは・・・」
言葉少なに交わし私は彼と少し離れた場所に天体望遠鏡を置いた
夜にも関わらず月明かりに照らされた彼の姿ははっきり見えた
青みに近い髪色の長髪を一つに結んで女の子に見間違う位綺麗な顔立ち
をしている
「あのさ・・・ここよく来る?」
見とれていると突然声をかけられ焦った私は声が上ずる
『うっうん、お気に入りだから。貴方は初めて?』
私の反応にクスクスと声を殺して笑う彼を見て私は恥ずかしさで俯いてしまう
「初めて、でもいい場所だよな。君のお気に入りにはいって悪かったかな」
彼の問いに私は勢いよく顔をあげ手を振る
「そんなことない、大体ここは市の私有地だし。私のじゃないしさ」
彼は確かにと頷いてまた笑った、これが私と冬牙との最初にして
最後に逢った日。
「この写真は連写で撮ったの、こっちはね・・・」
最初の緊張が嘘のように私達は意気投合した、星の話を中心に距離が縮まる
彼は私の知らない星の話をよく知っていて話聞かせてくれた
私は夢中で彼の話に聞き入ってしまう、二人並んで望遠鏡を覗いていると
彼が急に声をあげる
驚いた私は彼を見ながら
「どうしたの?」
彼は望遠鏡から視線を外し手招きしながら私を呼び
「覗いてみて」
私は彼に言われるままに望遠鏡を覗いてみるとそこに飛び込んできたのは
赤い光を放つ小さな星だった
「見えた?珍しい星だよな」
彼は少し興奮気味に私を見ながら言葉を紡ぐと私もつられて気持ちが
高ぶる
「うん、あんな星初めてみたよ」
だよなと頷いた彼は閃いたとばかりに手を打ち
「あの星に名前をつけよう?」
私も同じ考えだったから嬉しかった、頷こうとしたその時・・彼の携帯の電子音が
鳴り響き私の声を遮る
「やべっ、もう帰らないと」
彼はポケットから携帯を取り出しため息混じりに口にした言葉と共に
表情は寂しげに見えた
「そう、なら明日もこの場所で会おうよ」
私の言葉に彼の表情は益々曇る
彼は機材を片付けながら重たい口を開く
「明日、この街引っ越すから・・だから」
私は彼の言葉に周りの温度が下がる感覚に襲われる、胸に走る痛みに
私は言葉を失う
「約束しよう、来年の今日。この場所にまたくるから、そしたらあの星に
名前をつけよう」
私のそんな様子に彼がこんな提案を持ちかける、彼は私に近づき
私の額にそっと口付けを落とし微笑む
「うん、約束」
私達は小指を絡め強く握る、一瞬の触れ合いに彼は私に熱を残していく
帰り際に彼が振り向き大きな声で叫ぶ
「なぁ!!名前・・・なんて言うの?」
私は彼の言葉に思わず吹き出して笑ってしまう
「セイラ、月村セイラ」
「俺は卯月冬牙。じゃあな、セイラ・・一年後この場所で
やくそくだからな」
彼は大きく手を振り自転車で丘をくだって行った
私達はあんなに長く居たのにお互いの名前を聞くのを忘れていた
なんて間抜けな話。
それから四年の月日が流れた、冬牙・・・約束忘れたの?
私は姿見えぬ冬牙に問いかける
普通に考えてたった一度あっただけの男を四年も待つ私は馬鹿だろう
それでも冬牙を忘れることはできなかった。ベットを軋ませ横になり一枚の写真
を見詰める、あの日撮った名もない赤い星の写真。
二人で一枚ずつ持ち帰った絆
「携帯番号、聞いとくべきだった」
約束の日まであと6日
秋の香り 2009.10.26
更新履歴。 2008.04.26
交差点 ~ Chase The Chance:答えはいつ… 2008.03.21
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