恋涙 ~ renrui ~

恋涙 ~ renrui ~

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2006.09.20
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カテゴリ: 夢物語
目を閉じる息を殺す身を固くして耳を塞ぐ
塞いでも手を通り越してパパの怒鳴り声、ママのヒステリーの声が
脳内を貫く、物が壊れる音が部屋中に響き渡る
怖い怖い、恐怖心が私の心を覆う

毎日くり返されるこの現実、いつも私は逃げるように
テーブルの下に潜り込んで小さなオルゴールの箱を
抱えて嵐が過ぎるのを待つ

《望月羽矢《もちづき はや》9歳。小学三年の女の子
ふわふわの猫のような黒髪、桃色が強い唇を持つ女の子》



私が潜り込んでいるテーブルの上をバンと大きな音を立て
パパが手を付き玄関から外へ出て行く。ビクッと身を縮めホッとして
床に膝をついて四つん這いになりながらテーブルの下から出ると
とたんに私は顔を引きつらせた

私の目に飛び込んできたのは涙で頬を濡らしパパに殴られた
頬を撫でているママの姿。私の心に危険を知らせるサイレンが
鳴り響く、テーブルから完全に出ると手をついて立ち上がり
膝についた埃を払うとすぐさまママに左手の手首を掴まれる

「何であんたはそうなの!!何でママを守らないの!!」

手首をキツク掴まれ鬼のように目を釣りあがらせたママの姿に
私は怖くなって涙が自然と溢れた



「ママがパパに殴られても羽矢は平気なの?羽矢はママが
どうなってもいいの」

謝る私の声が届いていないかのようにママの甲高い声が
ギリギリと私を攻め立て掴まれた手首の力も強まる

「違っ・・・痛、ママ」


食い込み血が滲む、痛い痛い、今にも叫び出しそうな声を唇を噛み
我慢しているとママの携帯が運よく鳴りママは私から突き飛ばすよう
離れると携帯を手に取り私を睨みつけ

「早く外で遊んできなさい、目障りなのよ」

低く冷たいその声で言い切ると携帯の通話ボタンを押し私に
向けた声とは違い優しい穏やかな声を電話の相手に向ける
私は突き飛ばされた拍子に尻餅を着きそんなママの様子を涙
いっぱい溜めた瞳で見詰め服の袖で拭うと後手で立ち上がり
オルゴールを抱え部屋を飛び出し乱雑に散らかる玄関から自分の靴
を探し履いて逃げるように外へと出た。


banner0.jpg 二話です。





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最終更新日  2006.09.20 12:37:40
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