恋涙 ~ renrui ~

恋涙 ~ renrui ~

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2006.11.19
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今でもはっきり覚えている、君が俺の前に舞い降りた日
薄桃の花弁が舞い散る季節、あの頃から俺の中に君が居る
報われない想いだったとしても手放せなかった。
誰よりも近くて誰よりも遠い存在の君への想い


いつからだったのか母親の腹部が膨らみ始めたのは、
俺は子供心に母親が重い病気にかかって死んでしまうので
はないかと泣いてしまった。
そんな俺を父も母も笑いながら俺の頭を撫でてくれた、
母も父も嬉しそうに幸せそうな顔をしている


「冰翠もお兄さんになるのよ」

当たられた腹部からはドクンドクンと小さな微かな音が聞こえる
命の鼓動がそこに響いている、俺は耳を離し嬉しそうに母に問う

「お兄さん!?本当に?」

俺は素直に嬉しかった、《兄》というこの言葉が
後に俺を苦しめることになるとは知らずに
気付けば冬の気配が其処まで来ていた。
俺はこの頃、見えない命に嫉妬心を持っていた。
父も母もそして親戚達も
近々生まれてくる小さな命の為に忙しく動き回っており次第に
俺は蔑ろにされてる気がして俺は寂しくて悲しくて



俺はある日、意を決して家を飛び出した。
小さな荷物を片手に家出をした、ここではない
何処かに行きたかった訳ではない。ただ心配させたかっただけで
ただ俺の存在を子供心に思い出してほしかったのだ。
それでも所詮は三歳の子供の家出、場所は近所の公園で

出し寂しさを紛らわしていた。

「ママもパパも心配すればいいんだ」

俺は独り言のように呟いてみせる、昼間ということもあり
恐怖心のカケラもなかったが
夕暮れ時にになると心細さが波紋のように広がる。
俺は心細さはあったものの意地があり帰ろうとはしなかった
小春めいた冷たい風が俺の躰を吹き抜けている、
俺は小さくぶるりと躰を震わせ身を小さくさせる

「・・・寒い。パパ・・・ママ」

自然と呼んでしまう幼心、俺の瞳からは寂しさが雫となって溢れ落ちる



sakurapk.jpg 二話『新しい命との出逢い』





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最終更新日  2006.11.21 12:46:37
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