February 18, 2009
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前回に続き、今回も食物アレルギー研究会に参加したまとめです。今回の内容は食物アレルギーにおける現在の課題や研究段階での話が中心なので、これからどう改善されたり、発展するのか期待したいところです。

1.アレルギー物質の原材料表示について
昨年、アレルギー物質の表示義務は5品目にくわえ、エビとカニが表示推奨から義務に変更されて、2年間の猶予期間後7品目となります。国内のアレルゲン物質検知法は、ELISA法(タンパクレベル)で16品目、PCR法(遺伝子レベル)で15品目が検出することが可能で、世界でもトップクラスだそうです。

アレルギー表示に関する課題は色々あるそうです。例えば、 厚労省アレルギー物質を含む食品に関する表示のF-13 にある推奨表示の鮭ですが、海のもの(シロザケ、ベニザケ、ギンザケ、マスノスケ、サクラマス等)のみ表示推奨で、陸風性(イワナ、ヤマメ、ニジマス、ヒメマス等)は表示推奨外だそうです。しかし、ヒメマス(表示推奨外)とベニザケ(表示推奨)のタンパクをELISA法やイムノブロット法で調べると、ほぼ同じアレルゲン活性とほぼ同じアレルゲンタンパクを含むというデータが得られ、表示に対しては矛盾が出ることになるのが、これからの課題だそうです。

昨年表示義務になったエビですが、PCR法で調べると、すりみやシラスなどに陽性と検出されたそうです 。「食品原材料中に含まれる「えび」、「かに」等の甲殻類のたんぱく質の実態調査」 厚労省アレルギー物質を含む食品に関する表示のB-6-(3) が参考になりますが、すり身にする魚がエビを捕食していて、その消化器官まで完全に除去できず流出することやシラスなどはエビの幼生も一緒に漁猟してしまうことなどが原因だそうです。エビと魚を捕獲時や加工時に分別することは難しいそうです。

表示義務の7品目については、コンタミネーションでも、タンパクレベルで10μg/g以上の含有があった場合のみ表示されますが、上記の問題は鮭アレルギーの場合やエビの微量混入でも影響のある方にとっては、問題の1つになると思いました。


2.加工食品の原材料表示について
現在の表示方法では、アレルゲンの含有量まで記載されていないため、少量食べられる患者さんにとっては微量しか含まれていない加工食品を食べられるかどうかの判断がしづらいという問題に直面しています。そのため、アレルギー物質含有量に基づいた加工食品交換表の作成を試みている研究報告がありました。




3.急速経口減感作療法(経口免疫療法)について
現在の治療はアレルゲンを除去、成長とともに緩和するのを待つが基本です。しかし、耐性をなかなか獲得できない年長児の患者(6~7歳以降)が増えていること、重篤なアレルギーの緩和の治療に関しては、待つのみではなく、積極的な治療法の導入を試みるようになりました。まだまだ研究段階のようですが、この治療法の導入には、強い全身症状が出る可能性なども含めて、アレルゲンの閾値の決定、微量負荷の方法、負荷の継続期間、体調による負荷の継続・量の増減・中止のタイミングの見極めなどの判断ができる専門医と、安全管理体制が整った設備のある医療機関のもとで行なうことが必須になります。医師と保護者のコミュニケーションも重要になるし、まだまだ症例数が少ないので、この治療法の有用性と安全性を充分に検証するために、これからの臨床研究に期待したいと思います。


4.保育園・幼稚園、学校での給食対応
給食対応は地域によって様々です。給食対応を実施している施設でも、多くの悩みを抱えている実情を伺うことができました。例えば、アレルギーの原因となる食物の多様化、対象者の増加、施設・設備の不備、調理員の人員不足、診断の曖昧さ(治療する医師により指示が異なる、指示書がなく保護者の申告のみ等)などです。そのため、園や学校、医療機関、保護者の連携はとても重要であることも実感しました。

昨年、 学校のアレルギー疾患に対する取組みガイドライン が発刊され、各学校に2冊ずつ配布されたようですが、教職員全体までの周知には時間がかかることと、その中の 学校生活管理指導表 も積極的に利用して欲しいそうですが、色々と課題はあるので、全国で普及するには時間がかかるだろうなという印象を受けました。研究会でガイドラインの購入をしたので、じっくりと読んでみようと思います。





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Last updated  February 18, 2009 09:27:46 PM
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