突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.07.30
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 パンセの家は、村の南の入り口の、大きな椎の木の下に建っている。

 自慢じゃないけどシリウスは、身軽なリシャーナ族の中でも特に身軽なほうだと思う。 いくら急いで走ったって、草に足をとられて転んだなんてことは、これまでに一度もなかった。
 ちぇっ、この忙しい時に、なんで今日に限って草に躓いて転ぶんだ?
 起き上がってそのいまいましい草を蹴っ飛ばし、シリウスはまた、パンセの椎の木に向かって駆け出した。
 が、どうしたことだろう、いくら走ってもパンセの椎の木に近づかないのだ。 いや、近づくどころか椎の木は、むしろ逃げていくような気がする。
 シリウスは足を止め、はあはあと息を切らしながらあたりを見回した。
別に変わったことはない。 ここはいつも通る見慣れたリシャーナの小径だし、パンセの椎の木もいつもと変わらず立っている。 右のほうを見れば、プロキオンがねぐらにしているユキヤナギの茂み。 左のほうには、ずっと向こうに、シリウスのねぐらの目印、ムクの木が見える。 いつものとおりだ。 どこもおかしくない。
 シリウスはちょっと首をかしげ、それからまた、パンセの椎の木目指して走り始めた。

 シリウスはなんだか怖くなって立ち止まり、くるりと身を翻して泉のほうに引き返し始めた。 遠くに、泉の目印になっている大きなユーカリ樹が見える。 それを見ながら走り始めて、シリウスはまたすぐに足を止めた。
 今度はユーカリ樹が逃げて行く! 
 ほとんどパニック状態に陥って、シリウスはがむしゃらに走り出した。 だが一生懸命は知れば走るほど、ユーカリ樹も一生懸命逃げて行くのでぜんぜん追いつかない。 というよりますます遠ざかっているみたいだ。
 どうしていいかわからなくなって、シリウスはとうとう地面にぺたりと座り込んだ。
 そのとき不意に、頭の上のユズリハの木の上から、げらげらけたたましい笑い声が聞こえてきた。
 あっ、あのマヌケな声は!!
 目をつりあげて木の上を見上げると、やっぱりだ。 ジョジョが枝につかまって笑い転げていた。 今のは全部、このジョジョのいたずらだったのだ。
 ジョジョは大変ないたずらっ子だ。 この森に住んでいる動物やリシャーナはもちろんのこと、狩りに来たバルドーラたちも、きのこ狩りや薬草採りのパピトたちも、この森に足を踏み入れたやつでジョジョにいたずらされてないやつはいないんじゃないかというくらいだ。
 シリウスは真っ赤になって立ち上がりながらジョジョを怒鳴りつけた。
 「こらっ! ジョジョ、つまらないいたずらはバルドーラ相手にでもやってろ! 俺は今忙しいんだ!」
 ジョジョがげらげら笑いながら木から飛び降りてきた。

 「だっ、黙れ、このジョリジョリ頭!」
 ジョジョはリシャーナ族には珍しく髪の毛が縮れていて、その縮れ毛はけっこうかわいいんだけど、自分ではそれをいやがって気にしているものだから、これを言ってやると一番こたえるのだ。
 案の定、ジョジョは真っ赤になって怒り出した。
 「ななな、なんだと! この、トカゲよろいの、どぶねずみ!」
 今度はシリウスがカチンと来た。 

 「どっどっどぶねずみだと!? 言ったな、この、ジョリジョリ頭の、ぼろぼろの雀の巣!」
 「すっすっ雀の巣!? 何だこの、どぶねずみのおやだまの大どぶねずみが!」
 「どっどぶねずみのおっおっおやだまの、おっおっ・・・!」
 二人とも真っ赤になって言い合っているうちについに言葉に詰まって、しまいには目をつりあげてのにらめっこになった。
 が、二人ともあんまりぎろぎろ相手をにらみつけたので、5分もしないうちに目が痛くなり、同時にそっぽを向いてごしごし目をこすりはじめた。
 「なんて腹の立つやつだ!」
 「おまえこそ!」
 二人はまた黙り込んで、しばらく目をこすっていたが、やがて、同時に口を開きかけた。
 「忙しい、って、どこへ行こうとして・・・?」
 「さっきの魔法はいったい・・・?」
 顔を見合わせて、二人はまた同時にぷいとそっぽを向いた。 それからまたしばらくして、ジョジョがぶすっと言った。
 「お前から先に言えよ。 聞いてやるよ」





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最終更新日  2009.07.30 17:10:32
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