突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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カテゴリ: カテゴリ未分類
 それにしても、ミラ、お前ってほんとに、人を死ぬほどびっくりさせてくれるやつだよなあ、と、ヴェガは、ケヤキのベッドでぐっすり眠り込んでいるミラの寝顔を見おろしてつぶやいた。 
 ミラの魔力は俺たちの誰よりも桁外れに強い、前々からそう感じていたヴェガの目に狂いはなかったわけだ。 初めて唱える“炎”の呪文で、あろうことかこの森一番の巨木“森の主”を真っ二つに吹っ飛ばしてしまったのだから。 
 あれにはヴェガも腰を抜かすほど驚いた。 いつかプリエールが秘薬“炎の白い粉”を作るための石を掘り出すんだと言って、ヴェガの目の前で大きな岩を粉々に打ち砕いて見せてくれたことがあったが、そしてそのときヴェガは、初めて見る“炎”本来の威力というやつに度肝を抜かれたものだが、今日ミラのやってのけた“炎”は、あれよりはるかに凄まじかった。 “炎”の魔法の、いわばプロフェッショナルの、プリエールよりも、だ。 しかも、初めて試した一発目で、だ。 この先、ミラが練習を重ねて腕を磨いたら、その“炎”は、いったいどういうことになってしまうだろう、と考えると、楽しみでもあり、空恐ろしくもある。

 が、それはともかくとして、迷信深い村人たちが“森の主”と恐れ敬っている樫の巨木が、一瞬にして焼失してしまったのは由々しい事態だ、と思った。 まして子どもには禁断の呪文を授けたとなればヴェガに重い懲罰が課せられるのは避けられない。 さすがのヴェガもそれは困る。 そこで、呼び出しが来る前にこちらから先手を打って長老に詫びを入れてしまおうと考えた。 
 長老には、魔力授けの儀式のときと成人の儀式の時と二回、会ったことがあった。 長老はリシャーナの村のすべての儀式の采配と、掟の裁量を一手に握っている最高権力者、と聞いていたが、会って話をしてみたら、怖い顔をしているわけでもなく威張り散らしているわけでもなく、どこにでもいる普通の、気のいいおっさん、という感じの人だった。 あの人を口先で丸め込むなんてわけもないことだ。 ヴェガは、魔法の腕はまるでだめだが、おしゃべりで人を煙に巻くのは得意なのだ。 ミラにこっそり大人の魔法を授けたことはふせておき、あの“炎”はヴェガのちょっとした失敗、ということにすれば、うまく言い逃れられるだろうと思った。
 そこでヴェガは、ショックのあまりすっかり力のぬけてしまった足腰に鞭打ち、同じくショックのあまり放心状態に陥ったミラを引きずるようにして、村に戻ったのだった。 這う這うの態でたどりついた村の広場では、すでに村人たちが集まって、燃え尽きた樫の木を指差し、いったい何事が起きたのかとざわめいていた。 どの顔も青ざめ、不安そうに曇っていた。
 ミラを引っぱって長老の家へ向かおうとした時、ヴェガの、現在の魔法の師匠、サクレに呼び止められた。
 「ヴェガ、ちょっと私の家へおいで。 ミラは広場で待っててください。 一人でも、村のみんながいるから大丈夫でしょう」
 これはちょうどいい、と思った。

 近くにいた顔見知りの大人にミラを見ててくれるよう頼むと、ヴェガは神妙な顔でサクレの家に入り、考えていた言い逃れを早速口にした。
 「すいません、サクレ。 大切な“森の主”にあんな酷いことをしちまったのは、俺です。 この前プリエールに教わった“炎”を、氷穴のところで練習していたら、急にミラが現れたものだから、俺、“炎”をミラに見せちゃいけねえとあわてて、手もとが狂っちまったんです。 決して、わざと“森の主”を狙ったわけじゃない。 信じてください」 
 だがサクレはこのとき、いつになく厳しい表情でじっとヴェガを見据え、固い声で言った。
 「ヴェガ、嘘をついてはいけない。 あれをやったのは、ミラだろう?」
 嘘じゃありません、と、ヴェガがさらに嘘を重ねようとする前に、サクレがゆっくりと首を横に振り、どこか悲しげな声で言った。
 「ヴェガ、君ももう子どもじゃない。 魔力のほうは子ども以下だとしても、もう立派な大人だと長老に認められた今は、私も、もう君を子ども扱いするのはやめて、打ち明けた話をすることにしようと思う。 君はミラを特別かわいがっているようだし、同じ家に暮らしているのに何も知らずにいては不都合かもしれないからね。 実はヴェガ、ミラは、私たちとは少し違うんだよ。 私たちのように長老から魔力を授かったのではなく、初めから魔力をもって生まれてきた、特殊な魔法使いなんだ。 君は、ミラが君の“炎”を見て覚えてしまったんじゃないかと心配しているようだけれど、そうではないのだ。 ミラが、誰にも教わらず初めから強大な“炎”を飛ばせたとしても、決して不思議なことではないのだよ」
 これは何の話だろう?
 ヴェガはきょとんとして、サクレの難しい表情を見上げた。





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最終更新日  2009.08.21 13:51:27
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