突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2010.09.20
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 「へ? 鏡の奥? プール? どこよ、どこどこ? 俺にはそんなもの見えないけど?」
 ヴェガはびっくりして正面の大きな鏡のあちこちに目を走らせたが、鏡に映っているのは、炎の間に続くこの扉と、そこから顔をのぞかせたヴェガとアルクトゥールスの姿だけだ。 アルクトゥールスの言うようなものはどこにも見当たらない。

 「アルクトゥールス、おまえ大丈夫か? キマイラの爪の毒が回って、頭までおかしくなっちまったんじゃねえだろうな?」
 アルクトゥールスの頭を小突きながら鏡の表面をざっと見渡したところで、ヴェガの視線は再び、クロゼットの奥の小テーブルの上できらきら光っているものに吸い寄せられた。

 あれは何だろう。
 そばに行って、触ってみたい!

 我知らずふらりと一歩、足を踏み出しそうになったとき、鏡に映ったふたりの後ろに、アンタレスも顔を覗かせ、正面の大鏡とアルクトゥールスとを不審げに見比べた。
 「俺にもそんなものは見えないぞ、アルクトゥールス。 鏡の奥にうっすら透けて見えるのは、白っぽい色の、大きな扉だ。 扉に、何か像が掘ってある。 あの像、どこかで見たな。 ヴェガ、あれは、何だっけ?」

 突然問いかけられて、ヴェガははっと我に帰り、鏡の中のアンタレスに視線を戻した。


 もういちど鏡のあちこちに目を走らせる。 
が、見えるのはやっぱり、ただの大きな鏡だ。 炎の間の扉と、心細げなでこぼこ3人組の姿が、小さく映っている以外、何も見えない。

 鏡の向こうで、アンタレスが小さく頭を振り、炎の広間のほうに引き返して行った。
 「ああ、気分が悪い。 あの鏡を見ていると気分が悪くなってくる。 こんなところに長くいると、本当に頭がおかしくなりそうだ。 ヴェガ、アルクトゥールス、もう帰るぞ」

 アルクトゥールスも、足を引きずりながらアンタレスの後を追う。
 「賛成。 俺も足が痛いから早く帰りたい。 ヴェガ、行くぞ」

 アルクトゥールスの姿も、鏡の中から消えた。
 だがヴェガの目は、クロゼットの奥のテーブルで光っている、正体不明の飾り物に惹きつけられたまま、てこでも動かなくなっていた。

 どうしてもあれが欲しい。
 のどから手が出るほど欲しい。

 激しい渇望に、とうとう自制がきかなくなった。


 ヴェガの後ろでアルクトゥールスが、素っ頓狂な声をあげる。
 「あっ! こら、ヴェガ、どこへ行くんだよ! ・・・アンタレス! ヴェガが、ひとりで『大鏡の間』へ入って行っちゃった! どうしよう!」

 その声を聞くや否や、ヴェガは猛ダッシュでクロゼットに突進し、目にもとまらぬ速さでテーブルの上の金色をかっさらい、品物を確かめもせずふところの中に突っ込むと、また、猛ダッシュで一気に炎の広間へと駆け戻ってきた。

 緊張のあまり、激しく胸がどきどきしていたが、変わったことは何も起きなかった。
 ただ、アルクトゥールスが、目を丸くしてヴェガをこうたしなめただけだった。


 ――― 後でふところから出してみたら、それはヴェガの見立てたとおり、金色に輝く猫目石でできた、きれいな髪飾りだった。

 それを見たとき、ヴェガの頭の中に突然、ふっ、と、プロキオンの天真爛漫な笑顔が浮かんだ。
 あ、これはプロキオンの使う髪飾りだ!
 何の脈絡もなく、そう思った。
 必ずプロキオンに渡さなければいけない、と。

 いつものように、まっすぐマルシリオの店に駆け込んで換金しようなんてことは、このときヴェガには露ほども思い浮かばなかった。





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最終更新日  2010.09.20 07:48:02
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