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ドラマで、6月25日に放送された第25章「材木を抱いて飛べ」から、 8月27日に放送された第35章「蘇えりし者たち」までを掲載。 第一刷発行が6月30日なので、 放送より随分先の展開まで、この本で読むことが出来たんですね。 もちろん、私は後追いで読んだので(読むことになった理由はこちら)、 テレビのシーンを思い出しながら、今回も読みました。 そして、放送前から大きな話題となった「嫌われ政次の一生」が、 このノベライズ本の展開を、一部改変していたことを知りました。展開としては、このノベライズのままの方が、スムーズな気はしますが、ドラマを見る人たちにとっては、やはりあの磔のシーンは衝撃で、心に深く残るものになったと思います。演出としては、大成功だったのではないでしょうか。さて、第2巻でも、政次の義妹・なつについて触れましたが、この第3巻でも、彼女に触れないわけにはいきません。 次の手を考えていると、なつが入ってきた。 「関口様は、床に就かれたか」 「はい」 が、なつは部屋を去らず、なぜか政次のそばに来ると、いきなり抱きついてきた。 「義兄上、しばしこのままで。 これならば、見られたところで疑いはされませぬ」 驚いている政次に、小声でささやく。 「関口様の目があり、身動きが取れぬのでございましょう。 私が殿にお使いをいたします」(p.21)なかなか大胆ななつですが、政次はこの申し出を断ります。そして、なおも碁盤に向き合う政次に、直虎への思いの強さを感じるのでした。けれど、「嫌われ政次の一生」では、遂に政次がなつに膝枕。そして、なつの袖の中から出てきた碁石を政次が手にしたとき なつは、石を隠すようにその手を自分の手で包み込んだ。 「……今はなしです。今だけは……」 「……はい」(p.210)この部分の余韻を残すためには、磔シーンは、なかった方が良かったかもしれませんね。
2017.09.24
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『銀翼のイカロス』より5日早い発行。 ただし、あちらは単行本として2014年7月に発行されたもので、 初出は「週刊ダイヤモンド」の2013年5月号から翌年4月号。 こちらは「読売新聞」に2016年1月から10月まで掲載され、今回文庫で発行。 それにしても、ドラマはすべて見ていた私なのですが、 そこに描かれていた時期が、世紀末の頃であり、 彼女が働いていたのが東京第一銀行で、のちに産業中央銀行と合併し、 東京中央銀行になるところだとは、全く気付いていませんでした。そして、今回のお話は、その合併前夜のお話ということで、産業中央銀行の半沢直樹が登場します。若き日の半沢は、既に重要な役割を果たしており、カッコいい!しかし、それにも増して、花咲舞のストレートな生き方も、カッコいいのです。さらに、今回のお話には、東京第一銀行の紀本が登場します。『銀翼のイカロス』では、腹黒いだけの完全な悪役でしたが、このお話では、そこ引きずり込まれていく経緯が描かれており、ある意味、サラリーマンの悲哀を感じさせられます。そして一話一話は、いつもの「花咲舞」テイストに満ち溢れたものの集まりですが、全体としては、「半沢直樹」テイストを盛り込んだ、壮大なお話になっています。『銀翼のイカロス』もとてもいい作品で楽しめましたが、私は、こちらのお話の方が好きで、池井戸さんの成長も感じます。
2017.09.24
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『ロスジェネの逆襲』を読んでから、既に4年。 今回は、文庫化されてから読むことになったので、 こんなに間が空いてしまいましたが、 まさに、半沢直樹でした! 東京中央銀行に戻って来た半沢は、営業第二部次長。 本来なら審査部が行うべき仕事を、中野渡頭取の意向で引き継ぐことに。 それは、帝国航空の修正再建案をフォローし、 信用できる形でまとめること。今回のお話は「JAL再生タスクフォース」を念頭に書かれたものですが、その経緯は、現実のものとは随分違ったものとなっていきます。ただ、次の部分については、かなり違和感を覚えました。いくら何でも、これは無理がありすぎるのでは? 「帝国航空さんの錯誤で、 再建案がまとまる前の素案を頂戴したということに していただけないでしょうか」(p.179) 正直なところ、曾根崎は帝国航空という会社を甘く見ていた。 これだけの業績悪化企業である。 銀行支援がなければ立ちゆかないのだから、 「書け」といえば書類のひとつやふたつ、 簡単に書いてくれるとタカを括っていたのだ。(p.184) 紀本は、ずいっと体を前のめりにすると山久をぐっと見据えた。 「本日、お時間をいただいたのは、私からひとつお願いがあってのことです。 昨日、曾根崎からもお願いに上がった件だがー 御社に悪者になっていただきたい」(p.191)「冗談ですか?」っていう感じですが、逆に、現実でもこんなことがありうるものなのかと、考えさせられてしまいました。あと、岐阜県生まれの池井戸さんが書く大阪弁にも、所々に違和感を覚える部分が……例えば 「なんや、乃原。ほんとのことやないか」(p.223)「なんや」まで、口に出てしまったら、もう次は「ほんとの」には、絶対にならないでしょう。どうしたって「ほんまの」になってしまうのが、自然な流れかと。まぁ、私が個人的にそう感じただけです。とにかく、債権放棄についての決着は、JALの時とは随分違うものへとなっていきます。半沢はもちろん、開発投資銀行の谷川や、金融庁の黒崎の活躍も見逃せないものです。そして、お話の冒頭で提示された遺書は、このお話だけでなく、別の作品にも大きく関わっていくことになるのです。
2017.09.24
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3年ほど前に出版された一冊ですが、 カスタマーレビューの評価は、すこぶる高いものです。 ここまでのもの(低評価も少ない)は、そうそうありません。 それ故、今回手に取った次第。 読み始めてすぐに、著者がどういう立ち位置の方かは分かります。 なので、ちゃんとその辺は踏まえた上で、読み進めることが出来ました。 また、本著に頻繁に登場する『戦後史の正体』も、 既読でしたので、その辺も読み進めるうえで、助けとなりました。 *** つまり、「国際連合(国連)」と「連合国」をちがう言葉で訳している。 これは私が知るかぎり、世界では日本と韓国だけです。 英語ではもちろんどちらも”United Nations"、(中略) つまりそもそも国連の本質は「第二次世界大戦の戦勝国連合」であり、 冷戦下においてもその枠組みは維持された。(中略) 一方、そうした戦後の国際秩序(国際法)のなかでは、 日本は現在も「敵国」という最下層国に位置づけられたままだということ。 これは日本以外の国では周知の事実です。(p.193)この部分に関しては、韓国がなぜそうなっているのかが分かりませんでした。日本については……日本国内でも周知の事実です。 アメリカに従属していれば、その保護のもとで 「世界第三位の経済大国」という夢を見ていられます。 しかし、ひとたびアメリカから離れて自立しようとすれば、 世界で一番下の法的ポジションから、 周辺国に頭を下げてやり直さなければならない。 それはまさに戦後の西ドイツが歩んできた苦難の道そのものです。 いまさらそんな大変なことはやりたくないし、そもそもどうやっていいかわからない。 だから外務省が中心になって、米軍の駐留継続をみずから希望し、 ありもしない「アジアでの冷戦構造」という虚構を無理矢理維持しようとしている。 それが現在の「戦後日本(安保村)の正体」なのです。(p.242)この部分には、著者の考えがよく表れていると思います。まぁ、ドイツと日本とでは、欧米諸国も中国も、見る眼も態度も違うと思いますが。 しかし、9条2項の具体的な条文については、自説を強く主張するつもりはありません。 そこは徹底的に議論すればいいでしょう。 とにかく国連憲章本来の精神にもとづき、 専守防衛のしばりをかけた最低限の防衛力をもつことを決めて、 それを憲法に反映させる。 なにより重要なのは、その時同時に、今後は国内に外国軍基地をおかないこと、 つまり米軍を撤退させることを必ず憲法に明記し、 過去の米軍関係の密約をすべて無効にするということです。(p.274)ここが、本著において、著者が最も述べたかったことだと思います。生き延びるため、いかに行動すべきか。戦後70年を経た今もなお、日本の立ち位置はそう変わりません。周辺を強国に囲まれた井伊家と似ているような気もします。
2017.09.03
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ドラマの方は、先々週の政次の壮絶な最期に続き、 先週は龍雲丸が瀕死状態に。 直虎を支えた二人が、立て続けにこんなことになろうとは…… まぁ、本日放映される第35回のタイトルは「蘇えり者たち」なんですけれど。 さて本巻は、そんな二人について、たっぷりと記述されています。 ドラマをいい加減に見ていた私には、 「へぇ~、そうだったんだ」という箇所が満載。 やっと、頭の中でお話が繋がってきました。まずは、龍雲丸との出会い。彼は正真正銘、完全なる盗賊団の頭ですよね。まぁ、最初の遭遇時に、彼の言葉が「人集め」のヒントになったとはいえ、城主である直虎が、乙女心をこれほどまでにときめかせていたとは……そして、政次については、その真の思いが、やっと直虎にも分かる日がやってきました。その鍵を握っていたのが、政次の義妹・なつ。このドラマの中でも、好感度が最高レベルに高いキャラクターなのでは? そのころ、井伊谷の龍澤寺には、なつが南渓を訪ねてきていた。 「政次のことー?」 どれだけ皆に字を教えたのか、南渓の手足は墨で真っ黒になっている。 「はい。どうしても一つ、解せぬことがございまして」 ずっと持ち続けてきた違和感。 それが先日、政次の様子を見て、ある答えにたどりついた。 「義兄上には子がありませぬ。 井伊の後見に収まり、手に入れたところで、先のないことと申しますか…… にもかかわらず、それほどにこだわるのは、もしやー 井伊を今川から守る盾になろうとしているのではないかと」 南渓はしばし黙した。(p.65)沈着冷静、頭脳明晰。姉・しのとは大違いです。 あちらにつきこちらにつき、 やじろべえのようにゆらゆらといながら、井伊家中の橋渡しをする -それが己の役目、先々代の殿・直盛から与えられた使命だと、なつは思っている。 「これよりはさらにきつくなるかもしれぬ」 「では、お役目も励みがいがあるというものでございますね」 なつはにっこり笑うと、「では」と一礼して、サッと下がっていった。 井伊のため、覚悟を決めている姿は、すがすがしくさえある。 ……似ておらぬ姉妹じゃの。 政次は胸の中で思わずつぶやいていた。(p.86)政次も、こんななつの姿に、自分と重なる部分を見出し、己の進むべき道を見失うことなく、突き進んでいけたのでは?そして、これらのシーンの末に辿り着いたのが、第18回「あるいは裏切りという名の鶴」です。 「直虎様。 お立場として義兄と相いれぬことは致し方ござりませぬ。 なれど、どうかそれが義兄のすべてとは思わないでくださいませ」(p.143)あぁ~っ、もうちょっとちゃんと見ておけばよかった!!
2017.09.03
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