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『コモンの再生』以来、久々に内田先生の著作を手にしました。 本書は主に2024年に書いた時評的な書きものを集めて 一冊にまとめたものです。(p.2) 本著冒頭、「まえがき」には、このように記されています。 そして、巻末には次のような記載も。 ※本書は「朝日新聞」「中日新聞」「信濃毎日新聞」「山形新聞」「日本農業新聞」 「桐生タイムス」「AERA」「週刊金曜日」「通販生活」「月刊武道」「東洋経済」 「蛍雪時代」等に掲載され、ブログ『内田樹の研究室』に再掲載されたものを 大幅に加筆修正し、新書化したものです。本当に様々なメディアに記事が掲載されていることに驚かされますが、取り敢えず、本著を読めば2024年に内田先生がどんなことを考えていたか分かりそうです。 だが、かなり長いスパンの中において見ないと、出来事の意味というのはわからない。 だから、文脈が示されないままに速報記事をいくら読まされても、 今何が起きているのかはわからない。(中略) おそらくもうずいぶん前から日本のメディアは 「現実を観察し、解釈し、その意味を明らかにし、これから起こることを予測する」 といった一連の知的プロセスを放棄してきたのだと思う。(p.47)タイパタイパと皆がせっかちになり、物事の見方が瞬間的、短絡的なものに陥っている。真偽の定まらない情報に対しても、選択的、感情的に過剰に反応し、それが圧倒的世論として形成されてしまうことも珍しくありません。人心の振れ幅はあまりに大きく、常に気分次第の空気に振り回されることになっています。
2025.11.22
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本書第1部「技術解説編」のポイントは、次の2箇所かと。 大切なのは、話が面白くなるような、本の読み方をすること。 重要なのは、本を読む時の姿勢。 - それは、「ネタを仕込むつもりで本を読む」という姿勢です。(p.9) さて、なにかを読んだ時、それを「ネタ」にするためには、具体的にいうと ①〈比較〉ほかの作品と比べる ②〈抽象〉テーマを言葉にする ③〈発見〉書かれていないものを見つける といったプロセスが必要です。そしてこの①~③ができると、さらなる応用編として ④〈流行〉時代の共通点として語る ⑤〈不易〉普遍的なテーマとして語る ことが可能になるのです。 観たもの読んだものに対して、この①~⑤のどれかの鑑賞・解釈ができるようになると、 人に話すことができる状態になります。(p.26)続く第二部「応用実践編」では、上記①~⑤について、『波』連載「物語のふちでおしゃべり」(2022年4月号~2024年10月号)と、WEBサービス「note」に掲載された著者の記事を例として次々に示していきます。この例示に、本書全体の266頁のうち220頁を費やしているため、本書は『「著者」は何をどう読んでいるのか』を示すことが主たる内容となっています。「著者」が「話が面白い人」かどうかは知りませんが……なお、私は次の箇所に至って、やっと本書の著者が何者であるかを認識したのでした。鈍感にもほどがある…… 最近私は『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』という新刊を刊行した。(p.192)
2025.11.16
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気楽に読み始めようとしたところ、 いきなり躓いてしまいました。 毎月、四字熟語をテーマに話している本だという事を書いて下さいと、 編集の人(長い付き合い)に言われたので、ここにそう示しました。 はい。終わり、お役御免。(p.6) 本書冒頭「はじめに」の最初の部分ですが、一読では何が何やらさっぱり分からない…… 一生懸命、自分なりに考えてみても、やっぱり分からない…… しょうがないので、スルーして読み続けることにしました。 すると、次のような言葉が。 内容としては「毎月、一日。ある四字熟語をテーマに話してもらうだけです」という(p.7) ただ解った上でお読みいただきたいのですが、 この本は、僕が話した言葉を活字化しています。 編集の人(長い付き合い)に聞かれ、答えています。(p.8)なるほど、この本は、ニノが手ずから書いたものではなく、ニノが話した言葉を、誰かが文字起こししたものということですね。ただ、「はじめに」については、話したものではなく、書かれたものということですね。やっと、この本のコンセプトが見えてきました。ということで、第1章から第10章まで、「心機一転」「適材適所」「温故知新」「喜怒哀楽」「一心同体」「魑魅魍魎」「輪廻転生あるいは永劫回帰」「猪突猛進」「花鳥風月」「二宮和也」について、編集の人(長い付き合い)が投げかける100の問いに、ニノが答えていった言葉たちが活字となって記されていきます。実はこの手法、今回が初めてではなかった模様。本書の発行に向け動き始めた時、もう1冊別の単行本が同時並行で制作されることになりました。それは『二宮和也のIt(一途)』で、544頁の大ボリューム、定価は4,400円。内容は、2009年から2019年までの10年間、123回に渡って雑誌『MORE』に連載された「二宮和也のIt(一途)」を一冊にまとめたもの。この連載をベースに本書が作られたと、本書巻末「編集者によるあとがき」に記されています。本書タイトルについても「あとがき」で触れられていますが、『高邁と偏見』とは何の関係もないようです……多分
2025.11.15
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『あきない世傳金と銀』シリーズの特別巻全2巻の下巻。 前巻同様、今巻もシリーズに登場したキャラクターたちを主役とする4編。 各話の主役は、五鈴屋八代目徳兵衛の周助、小間物商「菊栄」店主・菊栄、 重追放・闕所を言い渡された音羽屋忠兵衛の妻で、元日本橋音羽屋店主・結、 そしてシリーズの主役でもある五鈴屋七代目で元江戸本店店主・幸。「第1話 暖簾」は、八代目を継いで17年、54歳になった周助が2つの大きな問題に直面。 一つ目は、九代目となる賢輔と幸の結婚を、83歳の治兵衛と95歳の孫六にどう伝えるか、 二つ目は、心斎橋紙屋・伊吹屋からもたらされた智蔵と銀駒の一粒種・貫太への対応。 これらを解決した周助は五鈴屋を去り、太物商として「桔梗屋」の暖簾を再び掲げる。「第2話 菊日和」では、明和11(1774)年に大川橋が完成、幸とお竹は江戸を離れ、 菊栄は次に商う品について考え続けた末、紅掛空色の根掛に辿り着き大評判となる。 井筒屋三代目保晴から菊見の宴に誘われ、分散した紅屋を取り戻す意志を確かめられるが、 きっぱりと否定、その場に現れた女中の丈長をヒントに新たな商いを思いつく。「第3話 行合の空」は、安永6(1777)年、播磨国で忠兵衛と旅籠「千種屋」を営む結が、 桂(10)と茜(7)の二人の娘のうち桂の姿に自身の姉・幸を想起させられ疎ましく思う。 結は現状を打破すべく、件の型紙を手に紙紅をくれた仲買人・源蔵に会いに行くが失笑される。 その後、二人の娘が麻疹に罹患、その際の茜に対する桂の言動にこれまでの考えを改める。「第4話 幾世の鈴」は、天明5(1785)年、五鈴屋九代目徳兵衛を継いで10年の賢輔は54歳、 幸は還暦を迎え、誰に十代目を任すか、五鈴屋の商を後世にどう伝えるかに知恵を絞る。 御用金の下命があった際には、金500両を承わるが相対貸しの相手を尼崎藩としたいと回答、 その後御用金は打ち切りとなるも、尼崎藩への貸し付けはそのまま行うことに。 暖簾を託す者を決めた賢輔と幸は、二人で伊勢に詣で五十鈴川の流れを眺めるのだった。 *** 「あんさんと幸、ええ取り合わせだすなぁ。 商才は五分五分やが、面白さに於いては、あんさんの方が格段に上やよって」(p.98) 「もと嫁ばかりか、あんさんまでが、商い戦国時代の立派な武将だすなぁ。 そらもう、大したもんだす」(p.156)惣次が菊栄に投げかける言葉には、どれもこれも深い思いがこもっています。二人の関係性は、常に絶妙なバランスを保っていて、双方とも「らしさ」が溢れています。このお話に登場するキャラクターたちの中で、私が初期からイチオシしてきた菊栄ですが、ドラマでは、シーズン2まで扱いが軽めで、重要エピソードも度々スルーされてきました。さて、シーズン3ではどんな風に描いてもらえるのでしょうか?そして、第13巻では実は終わっていなかった幸のお話は、特別巻で、大河ドラマでも描かれた田沼失脚の時期までを描き、今度こそ本当に完結。今後は、巻末「作者より御礼」にあった五鈴屋の後継者たちの物語を楽しみに待ちましょう。
2025.11.15
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『あきない世傳金と銀』シリーズの特別巻全2巻の上巻。 シリーズに登場したキャラクターたちのラブ・ロマンス4編。 各話の主役は、五鈴屋五代目徳兵衛で後に井筒屋三代目保晴となった惣次、 五鈴屋江戸本店支配人・佐助、五鈴屋江戸本店小頭役・お竹、 そして「五鈴屋の要石」と呼ばれた元番頭・治兵衛の一人息子で 江戸本店手代相談役頭となる賢輔というお馴染みの面々。 「第1話 風を抱く」は、五鈴屋を出奔した惣次が江戸の両替商・井筒屋店頭で揉め事を解決、 店主から娘雪乃の婿養子にと請われ銭両替の仕事を習得、地廻り酒の酒元への貸付で大成功。 三代目保晴となってからは、明樽問屋とも繋がって、本両替商として新店を開くまでに。 再会した幸には要所で助言、自身も義父や妻に家族の絆を感じる迄に変貌を遂げていきます。 「第2話 はた結び」は、佐助が男女御奉公口入所で出会ったのは、あのさよの妹たち。 近江屋にいた佐助と逢瀬を重ねていたさよは、17年前突如姿を消し10年前には亡き人に。 佐助は、五鈴屋江戸本店に女衆奉公することになった末妹・ちかにさよとの思い出を語る。 丸屋店主からの縁談を断った佐助は幸に、ちかはお竹に背中を押され互いに思いを伝えあう。 「第3話 百代の過客」は、江戸に移り住んで18年間一度も大坂に帰っていなかったお竹が、 古希を迎え隠居仕舞登りする近江屋支配人・久助から、往路を一緒に旅しないかと誘われる。 一方、幸は、お竹が世話になった医師・白鳳に手代・大七を預け医者の道を歩ませることに。 お竹は、大坂には戻らず寿命の尽きるまで傍で五鈴屋の商いの役に立ちたいと幸に申し出る。 「第4話 契り橋」では、40歳になる賢輔が、いよいよ九代目店主にとの話が持ち上がる中、 結婚を控えた同年齢の型彫師・誠二から、自分の気持ちを封じたままで良いのかと問われる。 下野国の白生地を巡る白子組、大伝馬町組への対応が迫られる中、嵐で東本願寺御堂が倒壊。 巻き込まれた賢輔は、生死の淵を彷徨うが生還、幸に九代目就任の決意を伝え求婚する。 ***第1話は、延享2(1745)年から、江戸本店が仲間外れとなった翌年の宝暦6(1756)年までを、第2話は、浅草寺雷門が焼失した翌年の明和5(1768)年卯月から霜月までを、第3話は、五鈴屋江戸本店開業から18年の明和6(1769)年睦月から長月までを、第4話は、明和8(1771)年睦月から神無月までを描いています。第13巻は、明和4(1767)年師走14日、江戸本店創業から丸16年目を迎えた日まででしたから、第2話からは、ほぼほぼ第14巻に当たる続編のお話ということになります。第13巻では、まだ準備段階だった孫六織も、本著のお話の中で商いの道筋がつきました。そして、第13巻では、幸の賢輔に対する感情は次のように記されていました。 かつて、夫だった惣次の怒りを買い、殴られたことがある。 その時、身を挺して幸を守ろうとしたのは、幼い賢輔だった。 小さな身体で惣次に挑み、蔵の壁や扉に叩きつけられても、 惣次の腕にしがみ付いて離れなかった。 師走の暴風が放った青竹の矢から、幸を守ったのも、やはり賢輔だった。 主筋ゆえに守られている - そう思っていた。 否、思おうとしていたのかも知れない。 どうなるものでもないことを、幸自身がよくわかっている。(第13巻p.350)そして、賢輔の方については、 「『賢輔は銀になり、どないなことがあったかて金の傍を離れず、 命がけで金を生かす努力をせぇ』 - 父は私に、強う言い聞かせました。(中略) せやさかい、私は何があったかて、ご寮さんのお傍を離れしません。 生涯をかけて、金を生かす銀となります」(第13巻p.351)それが、本著では次のように記されることになります。 幸と出会った時、賢輔は7つ。 14歳の幸が、賢輔の袖口の綻びを繕ってくれたことを、よく覚えている。 - 本当はね、着たまま針を使うのは駄目なの。でも今だけね 繕い終えて、歯で糸を切った幸。 あの頃から、賢輔にとって、幸は誰よりも尊いひとだった。(p.274)そして、遂に二人は互いの思いを伝えあうことになったわけですが、事はそう簡単にはいきそうもありません……そのあたりは、次巻でということになるのでしょう。
2025.11.08
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