やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2004年12月21日
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カテゴリ: 読書感想
久しぶりに泣いた。
ほとんどを電車の中で読んでいたので恥ずかしかったのだが…。

117回直木賞の短編集。
いつもの通り遅れて読む。映画になったりして有名だったよね。

この文庫本のための浅田さんのあとがき「奇蹟の一巻」がまた、いい。

私は「蒼穹の昴」を読みたくて、初浅田さんなので「鉄道員」から始めようとした。初短編集なのはそうなのだが、この短編の数々は「蒼穹の昴」を書き終わってから書いたのだそうだ。そうして、作家として花開く奇蹟を起こす結果となったのであったというから、すごい!

「ぽっぽや(鉄道員)」
「ラブ・レター」
「悪魔」

「伽羅」
「うらぼんえ」
「らくでなしのサンタ」
「オリヲン座からの招待状」

みんないいが、私は「うらぼんえ」一段と好き。

男性作家が描き上げるひたむきな女性に、いつも私は嘘っぽさを感じてしまうが、浅田さんはちがう。

別離の悲しみ中から立ちあがる姿がいい。
遠ざかる精霊流しを見、

『くるぶしまで波につかりながら、ちえ子は突然、子供を産みたいと思った。』

『……、まるで胸の奥からの炎の吹き上がるように、そう思った。』

ただただ、泣いてはいない、強く、力が湧いて立ち直る姿こそ無理がないのだ。そして、そここそが読んでいるものが涙してしまうのだ。


とくにこの一節、におやかな美しい女主人「立花静」のブティックの部屋に

『時を倦むようなチェロの音が、しっめやかに流れていた。』

は秀逸と思う。ありがちなシチュエーションを軽い描写にしていないではないか。

さらなる作品を読もうと思うが、「あとがき」で浅田さんもおっしゃっているが、俳優が舞台で死にたいように作品を死ぬまで書き尽されるだろう、私も本を読み尽くしたいと思ってしまった。。





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最終更新日  2004年12月21日 19時00分05秒
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Re:「鉄道員(ぽっぽや)」浅田次郎(12/21)  
志穂音  さん
わたしも泣きましたよ。
大好きな本、そして作家の一人です。そして浅田さんの大好物だというユーハイムのシュトレーぜ「ケーキ」まで好きになってしまいました。わたしはラブレターが次に好きかな。これも泣かされる一冊ですよ。
映画化して主人公を演じていた中井貴一がまだ上手い演技で最高でした。ぜひビデオででも見てくださいね。
お勧めします。エッセイも好きです。女性では唯川恵さん、男性では浅田次郎さんが好きな作家の一人なんです (2004年12月21日 20時58分12秒)

Re:「鉄道員(ぽっぽや)」浅田次郎(12/21)  
alex99  さん
考えてみたら、フィクション・小説というものは事実や現実ではなく、小説家が自分たちの脳内で紡ぎ上げたヴァーチャルな世界ですよね。
そんな世界に泣かされるのはくやしい、しゃくだという思いが、私の心のどこかにあります。

(2004年12月21日 21時12分26秒)

志穂音さんへRe[1]:「鉄道員(ぽっぽや)」浅田次郎(12/21)  
ばあチャル  さん
>わたしも泣きましたよ。
>大好きな本、そして作家の一人です。そして浅田さんの大好物だというユーハイムのシュトレーぜ「ケーキ」まで好きになってしまいました。

食べてみますね♪

>わたしはラブレターが次に好きかな。これも泣かされる一冊ですよ。
>映画化して主人公を演じていた中井貴一がまだ上手い演技で最高でした。ぜひビデオででも見てくださいね。
>お勧めします。

「ラブレター」も高野吾郎の人となりが素晴らしく良く描けてますね。人生の道筋でどんな経験をすればいいのか、好きに選べない、自分のことのようになぞってみれば、そこに感動と納得が得られますね。

>エッセイも好きです。女性では唯川恵さん、男性では浅田次郎さんが好きな作家の一人なんです

うーん、エッセイも興味あります。「王妃の館」は軽そうです。 (2004年12月22日 09時48分18秒)

alex99さんへRe[1]:「鉄道員(ぽっぽや)」浅田次郎(12/21)  
ばあチャル  さん
>考えてみたら、フィクション・小説というものは事実や現実ではなく、小説家が自分たちの脳内で紡ぎ上げたヴァーチャルな世界ですよね。

だから、好きなんですよ。
「事実は小説より奇なり」で現実は複雑で、どうしようもない運命で矛盾だらけ、退屈で営々と築いていくものでもあります。

作家の脳内の資質で、いかようにも作れる世界、どっぷりと楽しみたいのです。私とシンクロしたらもっけの幸い、のめりこんで感涙にむせぶなり、喜悦に浸るなり、好きに出来るではありませんか。
ちょっと危ない?(笑)

>そんな世界に泣かされるのはくやしい、しゃくだという思いが、私の心のどこかにあります。

それはalexさんが純粋だから。てれやでいらっしゃいますよ。 (2004年12月22日 10時03分37秒)

Re:「鉄道員(ぽっぽや)」浅田次郎(12/21)  
☆かよ  さん
私の大好きな作家さん”浅田次郎さん”を読まれたのですね~。
どれも何か、いじらしく切なくなるような心にしみるものが有りますよね。
是非、”蒼穹の昴”も。。。。 (2004年12月22日 12時08分51秒)

☆かよさんへRe[1]:「鉄道員(ぽっぽや)」浅田次郎(12/21)  
ばあチャル  さん
>私の大好きな作家さん”浅田次郎さん”を読まれたのですね~。
>どれも何か、いじらしく切なくなるような心にしみるものが有りますよね。

そうなんですよ、かよさんのお奨めでぜひ読みたいと思って。「王妃の館」も楽しく進行中ですよ。

>是非、”蒼穹の昴”も。。。。

もちろん♪ (2004年12月22日 13時53分09秒)

Re:☆かよさんへRe[1]:「鉄道員(ぽっぽや)」浅田次郎(12/21)  
☆かよ  さん
ばあチャルさんへ
>「王妃の館」も楽しく進行中ですよ。
>是非、”蒼穹の昴”も。。。。
>もちろん♪
-----
「王妃の館」は楽しい本ですよね、ちょっと切ない部分も有るけど・・・すぅ~っと読めると思います。
「蒼穹の昴」は、西太后の時代の中国だから漢字が多くて読むスピード鈍るかもしれませんが・・
(2004年12月22日 19時18分03秒)

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