やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2005年04月07日
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カテゴリ: 名作の散歩道
いまさらいうのもなんだが、三島由紀夫は日本の大作家である。堪能した。

三島由紀夫の作品中での位置づけはどうなのだろう、精緻な構想といい、ひねり方といい、技巧に長けていて、うまいストーリーではある。もっと早く読めばよかった。

或る時代(1954年ころ、朝鮮戦争後の退廃した世代相)の中で悩む青年たちを描き出している。

いつの時代だとて青年は懊悩するものだ。
この時代はこんなに退廃の気分がしていたのか?中学生になったばかりの私にわかろうはずが無いが、こんなデカダンスの世だったのだろうか、ことさら作者が借りているのか、さておいて。

四人の個性的な青年のストイシズム追求の物語が、解説者(田中西二郎)言うところの「メリ・ゴオ・ランド方式」でぐるぐるまわる。
エリート社員杉本清一郎(会社で出世するタイプの)、大学のボクシングの選手深井峻吉(後にプロ入り)、日本画家の山形夏雄(美的感覚が天才的な)、俳優舟木収(美貌だが配役をもらえない)ら四人が、鏡子というマダムのサロンを中心にして桜の季節から2年後の桜の季節までの、浮き沈みの物語。

ストーリを追う小説でないことは確かで、それぞれの美意識を四人の青年がストイックに追求した結果が果たしていかなるや?いや、鏡の役割の鏡子も含めて五つの唯美意識のゆくえがテーマである。

それは三島由紀夫の芸術の唯美家としての姿でもある。凡庸な私がどれほど理解できたかは別として、追体験の芸術的苦悩は味わうに興ありである。







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最終更新日  2005年04月07日 17時06分19秒
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Re:「鏡子の家」三島由紀夫(新潮文庫)(04/07)  
msk222  さん
なんということか、僕の少年時代生の三島由紀夫と何度か会ったことがあります。しかも裸で…。

楯の会とか、ちょっとへんな方で賑やかだったものであまり深入りしませんでしたが、不思議なオジサンでした。
(2005年04月08日 00時32分28秒)

msk222さんへ Re[1]:「鏡子の家」三島由紀夫(新潮文庫)(04/07)  
ばあチャル  さん
>なんということか、僕の少年時代生の三島由紀夫と何度か会ったことがあります。しかも裸で…。

それはそれは!歴史に交錯ですね。

>楯の会とか、ちょっとへんな方で賑やかだったものであまり深入りしませんでしたが、不思議なオジサンでした。

私は「潮騒」も青春の書でしたから、その後の氏の行動は遠いものであって理解は出来ず、自殺にいたってはますます遠いものになりました。長い間読む気がしなかったのも事実、しかし、ふたたび手にとってみるとその文学的芸術は天才的です。

この「鏡子の家」を読むと、氏の自殺がご自身の芸術をなぞったのではないかなどと思えるのでした。それをどう思うかは別として。凡人にはわかりません…。 (2005年04月08日 08時06分10秒)

Re:「鏡子の家」三島由紀夫(新潮文庫)(04/07)  
るり4241  さん
 三島由紀夫さんていろいろな意味で強烈です。

 子供の頃、彼の自殺にびっくりし、それ以来おっかなびっくりの人ですが、独自の美学を持った方なんですね。未読なのを恥ずかしく思いました。
(2005年04月08日 13時16分22秒)

るり4241さんへ Re[1]:「鏡子の家」三島由紀夫(新潮文庫)(04/07)  
ばあチャル  さん
> 三島由紀夫さんていろいろな意味で強烈です。

芥川龍之介、川端康成、太宰治さんら、文学界にも自殺した作家は多いですね。そこのところはわからないのですが、作品はいいものが多い、というか私は惹かれますねー。

(2005年04月08日 14時04分18秒)

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