やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2005年07月27日
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カテゴリ: 読書感想
前の日記で書いたように島尾敏雄を知らなかったことをいたく反省、お勉強である。

久しぶりに文学の講義を聴いたような感じだ。プロフィールを見ると著者中村氏が大学の教授であるからかもしれない。

「現代の...」といっても中村光夫氏が昭和43年(1968年)に書いたものであるから、もうも37年も経ってしまい、それこそ昭和時代前半の文学論になってしまっていることは否めない。つまり論じられている時代は大正期(1924年)から昭和42年(1967年)だ。

だからこそ、同時代の評論家が論じたものが、もし今に残って読まれている本があれば本物だということになる。島尾敏雄は戦後「第三の新人」として、しかし新人達と一線隔していた作家だそうだ。なるほど。

で、その昭和の前半の小説群だが、年表をみると読んだのもかなりあるが、名を知っていても読んでないのや、全く知らないのも出て来た。当然だが中村光夫という評論家の目を通してリストアップされているので、これがすべてではないし、論評には個性がある。

それを踏まえて私が未読で興味を持った作家は、新感覚派の横光利一、自然主義系統の正宗白鳥、織田作之助、プロレタリア系の宮本百合子。

徳田秋声はもっと読みたい。

武者小路実篤、徳永直、山本有三はなつかしい。

ああ、有島武郎、梶井基次郎、堀辰雄、坂口安吾、太宰治よ。



永井荷風、石川達三、大江健三郎はちょっと縁遠かった。

幸田文、野上弥生子はほんとによく読んだ。

というように自分を振り返りながら読んだ。

「私小説」を脱して客観性のある面白い物語、思想のある小説を猛烈に模索していた時代、した時代とも言えるのではないかと思う。昭和の小説史、なかなか手応えがあった。

この書が取り上げた時代の終わりごろからベストセラーという言葉がはっきりしてきたそうな(1955年)、その辺からマスコミニュケーションが作用する。「百年の誤読」の出番。

『…小説は、見えがたきを見えしめ、曖昧なるものをあきらかにし、限りなき人間の情欲を限りある小冊子のうちに網羅し、これをもてあそべる読者をして自然に反省せしむるものなり。…』

この本の最後に引用してある坪内逍遥「小説真髄」の一節である。果たして?



その後ネットで中村光夫(1911年~1988年)を調べた。1935年東京大学仏文科卒業。「日本の近代小説」他著書多々。評論家小林秀雄の影響。








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最終更新日  2005年07月27日 19時29分40秒
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Re:「日本の現代小説」中村光夫(岩波新書)(07/27)  
alex99  さん
中村光夫は懐かしい名前ですね。

あげられた名前の中で、読んで気に入った作家は

横光利一、徳田秋声、有島武郎、梶井基次郎、堀辰雄、坂口安吾、林芙美子、室生犀星、大岡昇平、田宮寅彦(随筆)、永井荷風、石川達三、大江健三郎・・・。

梶井基次郎、堀辰雄が特に好きなところなど、私もセンチメンタリストですね。

(2005年07月27日 21時01分23秒)

Re:「日本の現代小説」中村光夫(岩波新書)(07/27)  
パティP  さん
うちにある文学全集の世界ですね。
はい、うちのある文学全集その頃出たもののようです。
全部網羅されてます。
ということでどれも読んではいるようですが、忘れているのも多いですね。
メモはしっかり取っておかねばいけないですねー (2005年07月27日 22時43分56秒)

alex99さんへ Re[1]:「日本の現代小説」中村光夫(岩波新書)(07/27)  
ばあチャル  さん
>中村光夫は懐かしい名前ですね。

今では文学や哲学に興味を持っている方か、専攻している学生、研究者しか知らないでしょうね。でも、ネットではHPもあって感心しました。

>あげられた名前の中で、読んで気に入った作家は

>横光利一、徳田秋声、有島武郎、梶井基次郎、堀辰雄、坂口安吾、林芙美子、室生犀星、大岡昇平、田宮寅彦(随筆)、永井荷風、石川達三、大江健三郎・・・。

>梶井基次郎、堀辰雄が特に好きなところなど、私もセンチメンタリストですね。

alexさんのピックアップは興味津々です。

勿論センチメンタルなところがおありですよー。美しいアヴァンチュール(といっていいかどうか)の数々、垣間見えて、その表現の文章がいいですものね。詩心がなければただのエロっぽい話になりますもの。 (2005年07月28日 07時44分50秒)

パティPさんへ Re[1]:「日本の現代小説」中村光夫(岩波新書)(07/27)  
ばあチャル  さん
>うちにある文学全集の世界ですね。
>はい、うちのある文学全集その頃出たもののようです。
>全部網羅されてます。

ふふほ。そのころは全集、豪華本、流行でした。私も結婚の時父から貰ってきました。娯楽費を本につぎ込むいい時代でした。結婚当初も家計費切り詰めて豪華全集を買いまくりました。(たいしたことありませんが)
パティさんのは父上か母上が大事になさってたものでしょうね、きっと。

>ということでどれも読んではいるようですが、忘れているのも多いですね。
>メモはしっかり取っておかねばいけないですねー

それはほんとにこの頃強く思います。このブログが後々宝物になると私の場合思います。パティさんのあらすじもいいですねー、がんばってくださいね。 (2005年07月28日 07時56分47秒)

横光利一  
masakazu さん
何故だか横光利一は読んでるんですよね。「日輪」は面白いです。。う~ん。僕は日本文学のアウトラインをよく知らないので、読みこぼしが多いんですよね~。勉強せねば・・楽しいライフワークにしたいっす(^^)
(2005年07月28日 09時52分13秒)

masakazuさんへ Re:横光利一(07/27)  
ばあチャル  さん
>何故だか横光利一は読んでるんですよね。「日輪」は面白いです。。う~ん。僕は日本文学のアウトラインをよく知らないので、読みこぼしが多いんですよね~。勉強せねば・・楽しいライフワークにしたいっす(^^)

私も横光利一はそんな予感がします。

masakazuさんは思いがけない本を読んでいらっしゃいます。これからきっといい発見があるでしょうね。感想が楽しみです。 (2005年07月28日 12時47分43秒)

Re:「日本の現代小説」中村光夫(岩波新書)(07/27)  
きいぼ  さん
こんにちは。
同じく、読んだものもあれば読んでないものも多々・・・。
読んだ、といっても代表作1作、という感じで
自分の勉強不足に情けない想いをしています。
読みたい作家、いっぱいいるのに、気軽に読める若手ばかりを手にとってしまう。
日本語、というものに、もう少し真摯でなければ、
なんて思ったりしてマス。 (2005年07月28日 16時49分58秒)

きいぼさんへ Re[1]:「日本の現代小説」中村光夫(岩波新書)(07/27)  
ばあチャル  さん
>読みたい作家、いっぱいいるのに、気軽に読める若手ばかりを手にとってしまう。

作家が渾身の力を込めてひとつの小説を書くのは大変なことと思われるのに、作品が次々と世に出てきますね。嬉しいけれど追いつきませんねー。

私も、古い人も新しい人も興味ありますが、読む頭がひとつなもので、あっち行ったりこっち来たりしております。 (2005年07月28日 22時38分29秒)

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