家族ってなんだろうという疑問を個々の魂のありかた、ゆくえから見つめている作品。
といって、難しい言葉が並べてあるのではなく、日常の生活を描き積み重ねてあるのですっとはいってくるのだ。
父親と母親と二人の年頃の娘、時代は昭和30年代なかば 生活は上等の部類。
なに悩むことあろうと思うのだが、父はなぜだか心ここにあらず(これが物語の芯)、母は不治の病、長女は母の看病で家にしばられ鬱屈したよう、妹はひとり楽しげな大学生生活を送っているようで家族てんでばらばら。
現代の複雑なストレスのたまる家族たちと変わりないではないか。だから古いものがたりだけれど今読める。
ちなみにわたしの娘時代と一致するが、わたし及び家族がこんなにも悩まなかったので、当時に読んでもきっとシンクロしなかったと思うのは、しあわせだったのか、おきらくだったのか。それなりにいろいろあったような気がするんだけれど、もう忘れたほど単純だった。
「現代のストレスのたまる家族たち」と書いたけれど、ほんとこのごろはくたびれることが多い。 「愛」などと意識しなくてもよかった時代がなつかしい。
どうしてこうなっちゃったんだろと今の自分の身にふりかえて考えさせられ、読ませられた。と、こう身につまされる、しかし構成がすばらしい、薫りたつ文芸作品だった。
新潮文庫の復刻版で楽天ブックは品切れだったけど画像はあった。印象的なカバー。
『影法師』百田尚樹 2016年12月11日
悲しみよ こんにちわ 2010年08月25日 コメント(9)
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