やっぱり読書  おいのこぶみ

やっぱり読書 おいのこぶみ

2025年07月16日
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カテゴリ: 本の話題
短編集の次に手に取ったのは、中里恒子の『時雨の記』

何気なく本棚から選んだのだけど、解説に中里さんはキャサリン・マンスフィールドがお好きだったとあります、偶然シンクロして。

ストーリをすっかり忘れていますが、前に感想を書いてます。
その自分の感想は後にして読みました。

1970年代昭和、熟年の恋物語。一人暮らしの女性40過ぎと妻子ある男性50過ぎとの秘められた恋です。
古めかしいようで、今なら60~70と70~80の感じがします。

ぐいぐい引っ張って行く男性像も昭和感どっぷり、けれども、一歩下がった感の女性は芯のところで強い様子。

ネタバレですが、一緒に暮らす前に男が死んでしまうストーリーも、そうでなければ女性の魅力が生きない、そこを描きたかったのだと思い、16年前の感想はどうだったのか

「凛として個」(2009年8月29日)

知らなかったなー、40年ちかくも前にベストセラーになっていたこの本!

中里恒子『時雨の記』

でもね、そのころ読んでいたとしても今ほど共感したかどうかね?つまり中里さんが、今のわたしの年齢でお書きになったからなのではないのかな。

おいらくの恋、とひとくちに言ってもさまざま。なまなましいのやら、枯淡のやら。

でもこの小説の年齢設定は40代女性と50代の男性。そこにわたしはうーむと思う。

プラトニックなのだ。なのだけれども、しかるべくしてプラトニックなのではないところにいろけがある。

なぜ60代も後半に書いた作者が作品の年齢を若くしたか?
いまでは実年齢が年より若くなったという、うがったことではないと思う。
(少々ややこしい言いかただが)

いろけがあるけれどもこの小説の神髄はちがうところにある。そこがシンクロする。

精神の奥底で恋愛するには、「個」の魅力を輝き出しあっていなければならない。個の魅力には年齢がない。

でも、いろけがなければ恋愛はなりたたない。

この小説の魅力は中里恒子の凛とした個性のたまものだ。



ところで、中里恒子の初期作品『乗合馬車』などを読みたく、図書館では「昭和文学全集」に収録されたもののみで、それが「三段組活字」の19巻(小学館)。

「乗合馬車」「日光室」
さすがは女流作家初の芥川賞受賞作品、瑞々しい感性豊かな、のちの作家思想をかたち作る短編と思いました。

 他に 「墓地の春」「此の世」「隠れ蓑」「裾野」「歌枕」「わが庵」「朧草子」「誰袖草」「百万」「家の中」「飛鳥」 など中短編が収録されていますが、これらの作品から『時雨の記』で集大成されたのではと、跡をたどれたのがいい。

ちなみにこの「昭和文学全集」19巻(小学館)には、中里恒子ほか大原富江、大庭みな子、芝木好子、河野多恵子らが収録されている。

1088ページの 分厚い重たい 、もろ昭和の全集本、懐かしいけど、いくら目がよくなっても、続けて読むにはもう無理筋ですよねぇ。






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最終更新日  2025年07月17日 14時31分20秒
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