全4件 (4件中 1-4件目)
1
神経組織は神経細胞が幾つも繋がってできていますが、この繋がり部位で神経細胞同士は接触していません。一つの神経細胞とそれにつながる別の神経細胞の間には微小の隙間があり、ではどうやって神経組織を情報が流れるかというと、その隙間で神経伝達物質が活躍して情報が伝わるのです。この隙間接合部位をシナプスと呼んでいます。2014年ごろですか、自閉症の患者の大脳皮質にはこのシナプスが過剰に存在する、という記事がありました。2歳から20歳までの献体48体の大脳皮質のシナプス数を調べた論文で、うち26体は生前に自閉症と診断され、残りの22体は自閉症ではないものでした。二つのグループの比較でわかったことは、小児期早期には同様だったシナプスの数が、19歳になると自閉症者では16%減少していたのに対して、非自閉症者では41%も減少していたそうです。シナプスが減少する現象は、小児期早期から思春期にかけて起こる正常なプロセスで、シナプスの刈り込み(synaptic pruning)と呼ばれています。自閉症者では、この刈り込みが十分に行われておらず、それにより脳内の電気信号が過剰で、てんかんのリスクが高まる、と研究者は推論していました。ところが今度は、シナプスの刈り込みが過ぎた場合に起きる病気の可能性が指摘されたのです。ここで問題になる病気は統合失調症です、以前は精神分裂病と呼ばれていました。(英語ではいまもschizophrenia(スキゾフレニア)と呼ばれています。)1月27日号のNatureに発表されたSekar A, et al. Schizophrenia risk from complex variation of complement component 4という論文です。統合失調症は免疫機能となんらかの関係があるのではという疑いは、以前から研究者の間にはあったようです。この論文の第一著者であるAswin Sekarは、自分の直感に従って、原因はC4遺伝子に違いない、とこの研究に打ち込みました。免疫システムにはCompliment System(補体)というサブシステムがありますが、そのシステムの構成要素の一つにCompliment Component 4と呼ばれるタンパク質があります。これがC4タンパク質です。C4タンパク質は、免疫細胞によって破壊されるように病原体に印をつける役目をします。C4タンパク質の生成を管理するのがC4遺伝子です。著者たちは、C4遺伝子の特定の変異が統合失調症の発症に密接な相関関係があることを突き止めたのです。この変異のC4遺伝子を持っていると、C4タンパク質の数が多くなることも相関関係で明らかにされました。そして、C4タンパク質は、シナプスの刈り込みで重要な役割を果たしているのです。これらの糸を繋ぐと、C4遺伝子の変異形=>より多数のC4タンパク質=>シナプス刈り込みの増加=>統合失調症、という可能性が出てくるのです。シナプスの刈り込みは思春期までに起き、統合失調症の発症も思春期が多い、というのもこの可能性の傍証になります。このニュースのまとめサイトの一つ(英語)
2016.01.30
コメント(0)
NBAもほぼ前半戦が終了して、西部地区はどうやら昨年の覇者ウォリアーズと名コーチ・パパヴィッチ(Wikipediaではポポヴィッチ)のもとで禅僧のように粛々と勝ち続けるスパーズの争いになることは既定の事実でしょう。これに対して東部地区では、キング・ジェームスことレブロン・ジェームズを擁するクリーブランド・キャバリアーズが勝率7割3分で一応首位に坐していますが、対ウォリアーズでは2戦2敗、しかも1月18日の試合では30点以上も差をつけられたボロ負け、対スパーズでも1戦1敗、いざ最終対決の日には全く分が悪い現状なのです。そこで何とかしなければならないとチームの責任者が選んだのは、コーチの更迭でした(アメリカ時間1月22日)。勝率7割3分を残していながら更迭されるとは、NBAコーチの高給生活も決して楽ではありません。この更迭は早くから予想されていたようです。というのは、今回更迭されたコーチ、デイビッド・ブラットはチーム内の評判が今一だったのです。ブラットは、ヨーロッパでコーチをしていて2014年に引き抜かれた人で、NBAでは選手としてもコーチとしても経験がなかったのです。ブラットのコーチのスタイルは、比較的権威主義的だったようで、それも不興を買ったのでしょう。NBAのコーチがどれほど困難な仕事かについては、あれこれ読んだ記事から推測するのですが、権威を比較的尊重する日本の組織環境に慣れた人間には想像できないものだと思われます。10数人のチームのロースターに並ぶのは、全員激しい競争を勝ち抜いてきたつわもの達、彼らにリスペクトされ受け入れられには、単に戦術にたけているなどの技術面だけでは無理でしょう。NBAで選手として活躍した歴史があるとか、NBAでコーチの経験があり、チームをプレーオフにも導いたことがある、などの要因があれば、選手も耳を傾けるでしょう。更に悪い事には、キャバリアーズにはキング・ジェームスというスーパースターがいるのです。彼に逆らって信頼を失ってはチームを動かすことができません、かといって彼にこびへつらっては他の選手のリスペクトを得ることができません。試合中に選手を交代させようとしてジェームスがそれに異議を唱え撤回せざるを得なかった、というシーンも何度か目撃されています。もはや、コーチであてコーチではない、給料は貰っても威厳は貰えない、腰巾着の状態だったのでしょう。更迭から一夜明けた土曜日の記者会見で、ジェームズは青天の霹靂だった、と言っていますが、このチームは歴然と彼のチームです、事前に彼が知らされていなかったとは考えられません。アメリカ文化は、公式の会見では日本以上に本音と建前をはっきりさせますから、これがジェームズの建前ということでしょう。ちなみに、新コーチのタイロン・ルーは、ジェームスも気に入ってる、とか。
2016.01.24
コメント(0)
現在旅枕の暮らしゆえ、全豪オープンのサイトでハイライト・ビデオを見るくらいしかできない状況ですが、幾人か強い印象を残す選手を目にしました。その一人、大坂なおみ(19歳)、土居美咲と日比万葉が一回戦で、奈良くるみが二回戦で姿を消した後、唯一三回戦に進んだ日本人女子選手です。大坂なおみ、二回戦での相手はウクライナのElina Svitolina、全豪オープンでは第18シード、現在のランキングは21位ですから、相当に格上の相手です。ハイライトで見る限り、パワーも脚力も全く引けを取らない出来でした。大坂は、ハイチ出身のアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれたハーフで、国籍はどちらを選ぶことも可能だったはずですが、お父さんの意向で日本を選んだそうです。ユーチューブで、大坂のインタビューを見ましたが、最初は日本語で始めたものの、大坂は英語の方が自由に話せるようで、英語でもいいかと尋ねていました。その理由は、彼女が3歳の時に一家でアメリカに移住し、彼女はフロリダでテニスに励んでいるからです。オーストラリアのニュースサイトで彼女についての記事がありましたが、いかにもアメリカ育ちのティーンという印象です。大坂は試合中にあまり感情をあらわにしないんだそうで、そのことについて記者が質問すると、「遺伝子的にただそう作られてるんでしょ、ごめんなさい」とか、感情を出さないのは実際にそれだけ気持ちが落ち着いているということ?という質問には、「違うわ、頭の中ではほとんどいつも“オーマイガッド、なんで”という状態よ」だそうです。普通のプロ選手とは違った一風変わった率直な発言をしているので、結構ファンがついているんだそうです。身長180センチから放つサーブは強烈で、女王セリーナも一目置いてるとか。三回戦の相手は、元チャンピオンで第14シードのヴァイカことアザレンカ、これを突破する可能性はほぼないでしょうが、一セット取れれば大したものです。
2016.01.21
コメント(2)
権力争いの敗者に残された道は、組織を去るか組織にとどまり窓際に追いやられるか、二つに一つしかないでしょう。権力が集中している非民主的な組織の場合には、組織にとどまり不平を言い続けるという方法は、ほぼ無意味ですから。さて、この敗者の中にどうしても組織に残して置きたい人たちが数名いるとします。経済的な理由からかもしれません、組織のドル箱であるとか。倫理的な理由もあるでしょう、この数人を追い出すあるいは窓際に追いやることは組織外からの倫理的な批判を受け組織の繁栄に危機をもたらす、というような。あるいは、超組織の政治的なプレッシャーもあるかもですね、大衆のような政治力を持たない人々ではなく当該組織の外の政治家達や企業組織とかです。こうした何らかの動機で数名を残しておきたいとすると、一人をスケープゴートにして追放し、残る数名には謝罪をさせ以前とほぼ同じ待遇で残すことになります。映画などでもよく見られる、首謀者だけが斬首されて残ったものは生存を許される、というパターンの変種です。外部からのプレッシャーが相当ある場合には、この方法を使って組織の倫理的・経済的勢力を維持しようとするでしょう。この場合、あるストーリーをでっちあげてすべてを正当化することが必要です。そのストーリーの流布にはマスコミ・メディアの助けが必要で、それを担当してくれるメディアには貸借関係が生まれることになります。あの時助けてもらったお礼に、これこれの情報をあげます、というように、今後そのメディアは特ダネをもらえる立場になるでしょう。組織に歯向かった一人の人間が抹殺され数名のメンバーはプライドを傷つけられる、組織優先のこんな茶番劇が生まれる大きな原因は、当該組織が独裁的な権力を持ち過ぎているばかりか、市場を寡占若しくは独占していることです。組織を離れる自由がない、あるいは組織を離れたら生活していくことができない(干される)、という状況があるから、こんなバカげたことが起きるのです。クーデターの首謀者が、数名の信奉者と円満に組織を離れることができるような、仕組みが存在すればよかったのです。こんな独裁的な組織がメンバーの離脱に対してパワハラをするようなことがあれば、ほんとは独占禁止法などの法律的手段で取り締まるべきです。例えば、アメリカのプロスポーツのように、時間的な制限の中でチーム間の移動が非常に自由な状況、これは個人の経済的利益を押し上げます。それによって、エンターテインメントとしての価値は上がり、観衆はより楽しめるでしょう。しかし、この新自由主義的な仕組みにも弊害はあります。一握りの特に有能な選手とそれ以外の選手との報酬の差が大きくなるのです。いわば、貧富の差が広がる、ということでしょうか。ですから、組織間移動の緩やかな自由というのが理想的かもしれません。その点、日本のプロ野球の場合ですと、倫理的な枷がかかっていますから、組織間移動は比較的穏やかです。芸能界でも、これに似た状況づくりをすることが望ましい、と思います。(注) タイトルにある「芸能人はなぜ干されるのか?」というのは、星野陽平の著書で2014年に鹿砦社から出版されています。
2016.01.19
コメント(5)
全4件 (4件中 1-4件目)
1