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言い古された戯言に,「男性が一生に一度に載りたい台が2つある.ひとつは風呂屋の番台,ひとつはオーケストラの指揮台.」というのがありますね.この戯言,誰が言ったのか?...その昔,日曜日の朝にTBSテレビで「オーケストラがやって来た」という番組をやっていて,山本直純さんの名司会が面白かったし,とってもいい番組だったと思うのですが,そのときに直純さんがおっしゃっていたのだったかなぁ.風呂屋の番台はともかく,オーケストラの指揮台も,女性の指揮者もいらして,大相撲の土俵と違って男性専用の台,というものではないですが.一昨日の夜から昨日の明け方にかけて,夢を見ました.その夢,自分がオーケストラの指揮をする本番前というシチュエーションでした.夢の見始まりは本番のコンサートホールに行く最寄の地下鉄駅から地上に出るところ.地上に出ると,歩道があってその周囲は芝生や街路樹が並んでいました.(その景色からすると今住んでいる街にあるコンサートホールではなさそう.どこだろう?...)私はコンサートホールに向かって歩いています,その日の演目はワーグナーの「ニュルンベルグのマイスタージンガー」の第一幕への前奏曲と何か(残りのプロは思い出せない).そのマイスタージンガーの出だしのハ長調の和音をどのように振って始めようかを考えながら...それでコンサートホールについたところで何をしたかの記憶は飛んでいます.次のシーンは,ホールの舞台.開場一時間前で,もうゲネプロもたけなわになっているか,終わっているかでもいいはずの時間なのに,舞台に誰もいない.そこであれ~,と思いながらどこかのドアをあけると楽員がいて,「声をかけていただくのをお待ちしていました...」といって楽員がどやどやと舞台に上がってくる.やれやれ,と思って楽員も配置につきました.手違いなんだか,指示待ちの楽員ばかりじゃ情けないな~などと思いつつ,さて1時間しかないゲネプロをどう組み立てようか,などと思いながら,指揮台に向かうところで...眼が覚めました.あ~あ,どうせなら,マイスタージンガーの最初の8小節でもいいから棒を振って音を出したところで眼が覚めたかったです~.これが初夢じゃなくてよかった...映画監督の大林宣彦さんの著書のどれかに書いてあった気がするのですが,「人が見る夢はつじつまの合わない夢,映画はつじつまのあった夢,どちらも暗闇の中で見るのは共通」,という一節があったような記憶があります.確かにそうですね.上にご紹介した夢も実につじつまがあっていませんね.そういえば大林さんの著書の「夢の色,めまいの時」にもありますが,人が見る夢自体はモノクロなんだそうです.確かに,いつも夢はモノクロかもしれませんね.色がついていたと思えるのは,眼が覚めたあとでそこに色をつける意識が働いてのこと,というようなことも書いてありました.先ほどまで,NHK FM でバイロイト音楽祭のライブ録音を放送していました.今晩は「タンホイザー」でした.聴きながらブログを書いていました.バイロイトライブを聴くようになると暮れもつごもりを思います.みなさま,よいお正月をお迎えくださいませ.
December 29, 2005

グールドの話を先日書いたので,こんなお話をご紹介しましょう.私の知人のIさんは,よくCDを聴きこなしていろいろ名盤を教えてくれます.ずいぶん前にそのIさんから,ヴァルハがチェンバロで演奏したバッハのゴールドベルク変奏曲がオーソドックスでいい感じなのだ,と紹介をいただきました.それを十分聴いた上で,グールドのを聴いてごらん,といわれて,実は私はグールドの演奏をCDで聴くにいたったわけです.ところで,もうずいぶん前になりますが,その話を聞いてヴァルハやグールドのCDを買おうと思ってCD店に行った時,そのお目当てのCDがなくて,目に留まったのが,「ゴールドベルク変奏曲」弦楽三重奏曲版(PHCF-5317 あるいは C138 851A)でした.実はこれ,ヴァイオリン:ドミトリ・シトコヴェツキー,ヴィオラ:ジェラール・コセ,チェロ:ミッシャ・マイスキーという組み合わせで録音されており,編曲がヴァイオリンのシトコヴェツキーなんです.これはこれで面白いのでは,と思って買って聴いてみましたが,これが大当たり!3つのパートが思い思いに響き合って,さすがにそれぞれソロ活動もする実力派3人の非常に心地よいアンサンブルが聴こえてきます.バッハが最初からこの編成で作曲したといわれたら,信じてしまうくらいのものです.どの変奏も面白いと思いますが,特に第30変奏がお気に入りです.変奏曲の最後をかざるスケール感があります.この変奏はドイツ民謡とイタリアから伝わった俗謡の2つの旋律が各変奏にほぼ共通の低音進行の上にクォドリベートという唱法で組み立てられているのだそうですが,このスケール感はそんなところから来ているのでしょうか...この三重奏版のCDは1985年に出ています.その後シトコヴェツキーは,新ヨーロッパ室内オーケストラと,今度は弦楽合奏版で1992年に録音しています(WPCS-10568).この弦楽合奏版も聴いていみましたが,今度はスケールが大きくなって,こんな編曲でも楽しめるんだ,との思いを持ちました.ただ個人的には三重奏の方が原曲のチェンバロやピアノでの演奏の味と弦楽アンサンブルの味がうまくブレンドして聴こえて,好きですね.ところで興味深いのは,シトコヴェツキーが,この弦楽三重奏編曲の楽譜にわざわざ "Diese Transkription ist dem Andenken von Glenn Gould (1932-1982) gewidmet"(訳に誤りがなければ「この編曲をグレン・グールドの思い出に捧ぐ」でしょうか...)と記していることです.(ちなみにこの楽譜は銀座のヤマハに在庫していて購入できました,10年位前ですが.)弦楽合奏版のCDのライナーノートによると,実は,シトコヴェツキーは旧ソ連の1954年バクーに生まれ,彼の父親はヴァイオリニストでオイストラフやロストロポービッチとお仲間,母親は第4回ショパンコンクールの1位受賞者なのだそうです.そのご両親は1955年にグールドがこのゴールドベルクを録音したレコードをラジオ放送で聴いて感銘を受け,57年にグールドがモスクワで演奏した際には,母のほうが国側関係者としてグールドのお世話をした由.そのように幼少のときからグールドの話を聴かされてきたのでしょう.もちろんグールドのレコードも何度も聴いたのでしょう.その後1983年に彼が「グールド・ヴァリエーションズ」という本を読み,その音楽的解釈に共感して楽譜を研究するにいたった,とあります.そうして編曲され,録音と楽譜が1985年に出版されたのが,その弦楽三重奏版であった,というわけです.グールドが世を去ったのが82年ですから,その3年後ですね.そのCDを私がたまたま見つけて,お目当てのヴァルハやグールドの演奏CDよりも先に聴いてしまった,という顛末でありました.〔写真〕シトコヴェツキー編曲「ゴールドベルク変奏曲」弦楽三重奏版の楽譜のカバー表紙.右下はシトコヴェツキー氏から頂いた直筆サイン(2000年4月14日東京文化会館にて).
December 25, 2005

バッハ作曲の「イタリア協奏曲」はこのブログですでに取り上げましたが,知り合いのTさんから,Tさんはグレン・グールドのこの演奏がお気に入りというお話を伺いました.私はすでにバッハの「ゴールドベルク変奏曲」で録音年代の違うグールドの演奏を何枚か持っていましたので,なるほどグールドのイタリア協奏曲はどんな演奏なのか,と興味を持ちました.Tさんいわく,グールドの演奏は「3倍くらい速いですよ...」と.へぇ~,3倍!それで早速グールドのCD(SICC326)を入手して聴いてみました.グールドは1955年5月からCBSレコードの専属になっています.「イタリア協奏曲」は1959年のステレオ録音です.このCDは最近出たもので,当時のアナログマスターテープから最新の方法でデジタル録音にオーサリングしているらしく,46年も前の録音とは思えないくらい生々しいいい音です.さて,聴いてみて...まず,どの楽章も一音一音の音の粒がはっきりしています.それでいて,それぞれの声部の横のつながりも明確で旋律線が分断されることもありません.演奏の速さという意味では,1楽章,2楽章は,まあそれほど速いというわけではありませんでしたが,圧巻は3楽章のプレストでした.これまでよく聴いてきたリヒテルの演奏で3楽章の演奏時間が4分20秒ですが,グールドのは3分2秒です.3倍は大げさですが,この楽章は確かに速いですねぇ.それですごいと思うのは,これだけの速さで弾いても,タッチは正確だし,声部のつながりも明確でそれぞれがちゃんと聴こえてくる,という事実です.いや~恐れ入りました.何回か聴きかえしてみて,ピアニストのTさんがこの演奏に一目置いているという理由がなんとなくわかる気がしました.ところでこの演奏を聴きながら,CD棚からグールド物を全部引っ張り出してきたら,直輸入版で「グールドの遺産2」というタイトルのCD(CXCO-1029)が出てきました.このなかにも「イタリア協奏曲」が入っていました.これは1952年の録音.CBSの専属になる前ですね.モノラル録音ですが,カナダのCBC放送でラジオ生放送をしたときのものをアセテート盤というものに放送と同時に記録したものをCD化したものだそうです.正直音質はあまりよくありません.ですが,グールドの熱さは伝わってきますし,上で書いた特徴はすでに聴こえてくる気がします.終楽章の速さは同じですが,しかし印象としては,59年のもののほうが,やはりこなれた感じがしました.世界の人々がグールドの演奏を知るにいたって熱狂したのはCBSがグールドを発掘してレコードを世に出し,世界的な演奏活動を始めてからです.しかし,カナダの人々(彼はトロント生まれのカナダ人)は,そのように有名になる前から,放送を通じてグールドの存在を知っていた,ということがちょっと面白いと思いました.それと有名な話ですが,グールドは1964年以降,ライブでの演奏活動はやめ,もっぱらスタジオにこもってレコード録音しかしなくなりました.このイタリア協奏曲は,まだスタジオにこもる前の,ライブをやっていた頃の演奏なわけですね...以前にこの曲のことを書いたときに,いくつかの演奏者のCDを持っているとご紹介しました.第3楽章にしぼって改めて聴きなおして見ました.アンドラーシュ・シッフやファジル・サイの演奏は,こうして聴いてみるとモダンな感じで旋律をかなり歌ってしまっています.平板ではなくちゃんと音楽が聴こえていながら一直線なグールドの演奏を聴いた後では,こういうモダンな演奏はなんとなく気持ち悪い感じもしてきました.それにくらべるとリヒテルの演奏はそういう歌い方はなく,バッハがもともとチェンバロで演奏することを念頭に書いた曲であることが伝わる演奏ではあります.コープマンとヴァルハのはチェンバロによる演奏の録音ですが,3楽章はむしろしっかりしたテンポでどちらも4分20秒前後でした.このグールドの「イタリア協奏曲」に,しばらくはまってしまうかも...〔写真〕再びローマ楽器博物館にて.「ピアノフォルテ」の写真.歴史的には現代ピアノとチェンバロの中間に位置する楽器...のはず.~ん?ハンマー・クラビアとの関係は???
December 22, 2005

このブログをご覧になると,空から撮った写真が多いことにお気づきのことと存じます.仕事柄,さまざまな事柄を広く見渡して考えをめぐらし,ひとつにまとめてゆくという作業が多いからなのかどうか,空から大地を眺めることが大好きです.だから,飛行機に乗るときはできるだけ翼の上は避けて窓側に座れるように予約を心がけ,そして搭乗当日はお天気がよいことを神様にお願いします.そうして,あ,ここは,と思う景色があればカメラに景色を収めます.そんな大空を飛ぶ浮遊感を描く天才作家といえば,やはり宮崎駿監督ですね.宮崎アニメ,いいですねぇ.宮崎さんのアニメ映画にはいつもメッセージがありますが,人間と自然の共存,あるいは自然というものに対して畏怖の念を忘れてはならない,というのが根底にあるように思います.それを高いところから眺め,忘れないように,ということなのか,空を飛ぶシーンがかならず描かれます.新作が出るたびに,こんどはどんな風に描かれるのだろうとワクワクしますよね.私には,やはり「風の谷のナウシカ」がそのようなメッセージ性をもつ作品の原点として強く印象に残っています.この映画以降,劇伴音楽は久石譲が担当していますが,その音楽がまたいいですね.特にナウシカでは,「鳥の人」という題名のついた曲の中のひとつのフレーズが,メーべで大空を舞うシーンに恐ろしくぴったりで大好きなんです.映画のはじめのほうで,ユパ様の危機をナウシカが救ったすぐあとで,「ユパ様,これ運んでくださらない?気流が乱れてうまく飛べないの」と言って,メーベに飛び乗り谷に向かって舞うシーンで流れる音楽です.視覚的イメージを音にする,うまいものですねぇ.ところで鳥になった気分というところでは,日本列島に大寒波が襲ったこの12月18日,私は出張先の熊本から飛行機で羽田に飛んでいました.空気が澄んでいたので,雲もそれなりに多かったのですが,1時間10分のフライトで空からの眺めを満喫しました.その一端,ご紹介いたします...熊本を飛び立ち東に向かって阿蘇を越えると,別府,大分を眺めて九州とお別れです.上の写真で別府や大分の上空,別府湾,佐賀関半島,白杵湾がよく見えます.その後,宇和海をこえ四国の上空を飛び,窓からは瀬戸内海沿岸がよく見えます.上の写真の真ん中に瀬戸大橋が写っています.その後高松市街や小豆島を眺め,淡路島の上を飛ぶと大阪湾,関空や建設中の神戸空港などを視認すると,上の景色が見えます.大阪圏,大きいですね.写真の左下が関空のあるあたり,大阪湾沿いに,大阪から神戸まで写っています.その後奈良の上空を越えると,伊勢湾です.上の写真,伊勢湾の左側が松坂市や津市,その上の平野が白いのは雪.写真の上側の雲の下には名古屋市内があるはずです.そう,この12月18日は名古屋が大雪でしたね.その雪雲が写っています.伊勢湾,三河湾を越えると浜名湖,静岡市街などがよく見えました.そして,上の写真は三保の松原です.するともう駿河湾上空.となると,このとおり,富士山が見えて,伊豆半島や大島の上空を経由して,程なく羽田です.名古屋や北陸が大雪だった割には,富士山はまだ白くありませんでした.出張帰りとはいえ,日本列島を眺めてみて,鳥の気分に満足した日曜日でもありました.と,いうわけで,今日は「音楽的とは限りらない」雑談でした!
December 18, 2005

すばらしいチェロ演奏でした! 情感込めた歌いあげが最高でした.12月13日午後7時紀尾井ホールにて,「趙静(チェロ)&大萩康司(ギター)が贈るクリスマス『アルぺジョーネ・ソナタ』」というコンサートを聴きました.実は12日の夕方,私にメイルが届き,とある筋からこのコンサートにご招待いただけるという話が舞い込みました.「おっ!13日午後は飯田橋に出張の予定だ...ならば!」というわけでこのお誘いに乗らせていただくことにしました.それと,もうひとつ,私の知り合いのピアニストの方から,趙静さんが,若手ながらとてもすばらしいチェリストであるといお話をしばらく前に伺っていました.だから,あ,そのチェリストなら早く一度聴いてみたい,と思っていたことも手伝ってのことでした.プログラムは バッハ 無伴奏チェロ組曲第4番(チェロソロ), シューベルト アルぺジョーネ・ソナタ(チェロ+ギター), -休憩- ヴィラ・ロボス 5つのプレリュード(ギターソロ), D.ボグダノヴィチ 4つの内なる小品(チェロ+ギター), ニャタリ チェロとギターのためのソナタ(チェロ+ギター),というものでした.最後の2曲は現代曲で,チェロとギターが対等に渡り合う曲,一方,アルぺジョーネは有名な曲ですね.普通はピアノ伴奏なのでしょうが,その伴奏がギターになるよう編曲された版です.最初のバッハは,コンサートのはじめということもあって,ちょっと硬くなっていた印象.アルぺジョーネの2楽章あたりから,趙静さんの本来の調子が出てきた感じで,メロディーを本当に情熱的に歌い上げる感じで素晴らしかったです.まだお若いのですが,これだけ弾いてしまうのですから,これは大物だぁ~と思ったのは私だけではないようです.チェロとギターの伴奏というのも,よく音が溶け合う組み合わせでちょっと新しい発見でした.もっとも,それは最後の2曲に顕著でありまして,アルぺジョーネはピアノ伴奏の演奏も聴きなれているので,ピアノ伴奏で左手が下までおりたときの低弦の響きとギターを比べてしまうと,ちょっと物足りなさを感じなくもありませんでした.でも,演奏のご本人たちは,この組み合わせの発見に満足しているようです.大萩さんのギターもなかなかいいです.実はこのお二人のコンビで,このアルぺジョーネの入った新譜CDが出たところなのですね.もちろん,このCD会場で買ってしまいました.終演後のサイン会でサインもしっかり頂いちゃいました...このコンサート,NHKのテレビカメラが入っていましたので,演奏会の様子は近いうちに放送されると思います.番組表,要チェックです!紀尾井ホールは音が暖かく,包み込むような残響があるので,このような演奏会にはもってこいのところですね.そういう音もあいまって,十分に満足して帰路に着いたのでした.お目当てのアルぺジョーネに趙さんの大いなる歌を聴いた,ということで,当夜はA面的発見の時でした...!〔写真〕終演後のサイン会にて.お二人とも笑顔が素敵~.
December 14, 2005

ある曲が好きになる,あるいはその曲を知るにいたる,そういうきっかけはどういうときかな,と考えてみました.いや,特別なことはなく,だれでもこんなきっかけなんだろう,と思いますが,一応このブログのカテゴリとして分類をつけてあるので,整理してみました.まずよくあるのは,「この曲いいよ」,とか,「この演奏者の演奏が面白いんだ」などとご紹介いただくケース.自分の見聞を広げるためにも知人の輪を広げておくことはとっても大事ですね.このケースには,『知人に薦められて紹介されて』というカテゴリ名をつけました.つけっぱなしのラジオなどから流している音が,それまでも聞こえていたはずなのに,突然それが意識にのぼり注意が行くことってありますよね.それで耳を澄ます感じになります.こんなケースに『聞き耳をそばだてると』というカテゴリ名をつけました.昔のシングルレコードは,表(A面)にメインの曲,裏(B面)にカップリング曲を入れて,売られていました.ごくたまに,A面の曲ではなくて,B面の曲がヒットする場合もありましたね.シングル盤を買うのはこのA面の曲をお目当てで買うわけですが,そうして買ったシングル盤のB面の曲の方が気に入ってしまったら,なにか目的と実質がずれてしまった感じで面白いですよね.こんなケースに『B面的発見』と名づけてみました.今後,また別のケースを思いついたら,また追加します...
December 11, 2005

エミリー・バイノンは,現在アムステルダム・ロイヤル・コンセルトへボー管弦楽団の主席フルート奏者です.10月にNHKのBSやFM放送で,妹のハーピスト,キャサリンとの来日デュオの演奏会の模様が放送されましたので,ご存知の方も多いかと思います.知り合いのフルーティストWさんから今年の春に,エミリーのことを教えていただきました.私も趣味でフルートをたしなむといっても,長いことブランクがあり,最近ご活躍のフルーティストにはあまり明るくなかったのですが,Wさんとエミリーとはお知り合いで,そのエミリーの音楽と音色の抜群の良さを熱っぽく語ってくださったのでした.でもそのときは,まだ私にはあまりピンと来なかったのでしたが...ただこの夏に,フランス近現代もののアルバムが出るというお話は頭の隅に引っかかっていたのでした.そして夏の盛りを過ぎたある日,別のCDを探しにCD屋さんに行ったら,目に飛び込んだのがエミリーの「FANTASIE」というアルバム(OVCC-00014,TGCS-2713)でした.「あ,これか」.そこでこのCDも買ってきて聴いてみたのでした.いや~,これいいですね~.フルートの音色も実は演奏者によってかなり違うのですが,エミリーの演奏は,フルートの低音から中音域にかけて,なんというか癒されるというか,非常に心地よい独特の音色を持っています.たとえるなら,これはビロードのような音です.このCDのライナー・ノートには「低音域の鳴らし方は明らかに英国風のカラー(頭部管をかなり抜いて吹き,響きの『容積感』をたっぷり保つタイプの音)」と表現しています.ちなみに彼女は英国生まれで,音楽は英国とフランスで勉強しています.私はどちらかというと,フランス物よりはドイツ物の方をより多く聴くのですが,このCDはこのビロードサウンドを堪能できるという意味で,お気に入りのものになりました.このアルバムの中では,特にケックランの「フルートとピアノのための14の小品」のなかの後半の数曲が好きになりました.今度楽譜を探してみようかしらん...ところで,フルートは,演奏者と楽器とが一体になって音が出るので,その音色は,演奏者と楽器の幸運な出会いとその後の精進の賜物なんだと思いますが,Wさんに教えていただいた興味深い記事が,彼女のWeb頁にありました.この頁のGoing Dutchのところをみると,興味深い話が2つあります.ひとつは「コンセルトへボウのホールの管楽器セクションのすぐ後ろにオルガンのパイプがそびえているので,演奏する場所が音的に弱くなってしまう場所,ということで,腹筋の支えを強くして,楽器に息を吹き込む唇の穴を大きめにして吹くようにした」というお話,そしてもうひとつは「楽器メーカーに,純度の高い銀の楽器と,年代物の楽器の組成を真似た不純物がいろいろ入った楽器を作ってもらった」というお話です.このCDでの演奏は,どちらの楽器で演奏しているのでしょうね.ホールでの吹き方の工夫や楽器の特性とあいまって,あの独特の音色が出ているのかしらん,と思いながら聴いています...[写真]一昨年の3月にアムステルダムに滞在しました.そのときにコンセルトへボウの前で撮った写真です.そういえばと思って探して,ここに貼ってみました.あいにく,その日のコンサートは売り切れ.確かシッフがピアノコンチェルトを弾く日だった記憶があります.このイマージュは私の持っているフルート.ちょっと画像処理をかけてみました...
December 10, 2005

この曲との出会いは,まさしく"Earth"というタイトルのCDを買ったことに始まります.このCDは,現在活発にご活躍中のフルーティスト高木綾子のアルバムです(2003年 COCO83680).高木さんは,この夏の神戸国際フルートコンクールで第3位,この秋のランパルコンクールでも第3位をとられ,活発に演奏活動を展開されていますね.私の住んでいる街にあるホールで,今年2005年の2月に曽根麻矢子(チェンバロ)・高木綾子(フルート)・古部賢一(オーボエ)のトリオの演奏会がありました.そのプログラムの中で,高木さんがバッハの無伴奏フルート・ソナタ(パルティータ)を演奏したのですが,その演奏にすっかり魅了されてしまったのですね.音色といいその演奏の雰囲気といい,とにかくよかったんです.それで,会場で販売されていたCDで高木さんのを,と求めたのがこのCDでした.このCDには,"Earth"のほかには,カザルスの鳥の歌,ドップラーのハンガリー田園幻想曲,バルトークのハンガリー農民組曲,ドビュッシーの牧神の午後への前奏曲,ボルヌのカルメン幻想曲が入っており,フルートのクラシックの名曲ずらり(鳥の歌はカザルス先生ご本人のチェロでの演奏が有名ですね),というCDです.でもそのアルバムの最後にアルバムタイトルの"Earth"が収録されています.初めてこのCDを聴いたときに,ふむふむ...と聴きすすめて最後のトラックに着いたとき,またもや聴き耳をそばだてたのでした.聴きおわってもう一度このトラックだけ聴き直しました.そう,この曲も一聴き惚れでした.実はこの曲Earthは村松崇継さんという若い作曲家に委嘱された新作です.出だしはフルートのソロで始まり,そのソロがいったん終結すると,ピアノの伴奏がバロック的なパッセージを奏でながら始まります.森に湧き水があり,そこから透明な美しい水が滴る,そんな感じで始まります.そうしてだんだんスケール感が豊かになって展開します.途中で,森の小鳥や小さな動物たちが輪になって踊っているようなイメージの中間部分があって,調を変えた最初のモチーフが出てきて終わります.旋律を奏でるフルートだけでなく,伴奏のピアノもとってもいい,と私は思っています.Earthというタイトルがついているからか,何度も聴いていると,緑の大陸とか,森林のなかにある澄んだ湖水をたたえた湖とか,みどりの雄大な山々とか,そこに住む生き物たちとか,そんなイメージが次々に浮かぶ曲で,すっかり好きになった一曲です.でも聴いてみて思ったのは,この曲を書かれた村松さんのすごさです.フルートという楽器の特性を知り尽くしておられるように思えてなりません.この楽器の魅力をある意味でとってもよく引き出しているし,それでいて演奏に大きな無理がない曲作りだと思います.単に旋律が親しみやすいだけでなく,そんな曲作りにも関心をもって聴いてしまった,この一曲でした.フルートを演奏するアマチュアの皆さんのなかで,高木さんのファンの方々には絶大な人気があるそうで,待望の楽譜も今年出版されました.かく言う私も...この楽譜,買いました...[写真]成田からヨーロッパ行きの直行便に乗ると新潟からほぼ真北に飛んで日本海を渡ります.日本海を渡ってまた陸地が見えると,ユーラシア大陸の入り口ですね.この写真はちょうどその入り口あたりで旅客機の上から撮りました.このあとひたすらシベリア上空を飛んで,ヨーロッパへ.Earthをお感じになりませんか?
December 9, 2005

お目当ての曲が聴きたくてCDを買ってみると,意外とそこに入っているお目当て以外の曲が気に入ってしまうことがありますね.今日はそうやって見つけた名曲をご紹介します.リヒャルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲,これは本当に隠れた名曲だと思います.あるときCD屋さんでCDを物色していました.新譜で,水戸室内管弦楽団,小澤征爾指揮で,モーツアルトのフルート協奏曲第1番ト長調,というのが目について買い求めたのがそのCD(SRCR 2412)です.このCDには,同じくモーツァルトのファゴット協奏曲,そして,このシュトラウスのオーボエ協奏曲が入っていたのです.リヒャルト・シュトラウスというと,「英雄の生涯」や「ツァラストラはかく語りき」などの交響詩や「薔薇の騎士」のようなオペラが有名です.どちらかというと,こってりとした音作りが耳に浮かびます.そんな音作りに好き嫌いもありますね.私は,これらシュトラウスの代表的作品も好きですが,そんなイメージからすると,シュトラウスがこんな曲も作っていたのか~!と思わずうなってしまうのがこのオーボエ協奏曲です.このCDで聴くまでこの曲は知らなかったのですが,木の葉が風に揺られてこすれあうような感じの弦の短いモチーフのあと,オーボエが優美な旋律を奏でて始まります.CDをかけていて,この曲が始まったとき,本当に聴き耳をそばだててしまいました.そうして徐々に盛り上がってTuttiになって,第1楽章のモチーフの全体像がはっきりしてきます.この盛り上げ方,本当に憎いばかり...この曲の第2楽章は,そう,天使が空から舞い降りてきて,まわりをゆっくりと飛び回っているような感じです.それに比べると第3楽章は,快活で諧謔味あふれる元気な曲になっています.全体に,オーボエが持てる演奏技巧のすべてをちりばめた感じの曲ですが,とにかくきれい...すっかりこの曲のファンになりました.このCD,宮本文昭さんのオーボエがとてもいいですね.実は私,フルートをちょっとだけ吹くので,この曲をフルートでまねてみたらと思い立ち楽譜を買ってみました.聴いていると楽に吹けそうな旋律が...実はとっても難しい,降参!でした.それと,フルートとオーボエでは息の消費量が違うのです.この協奏曲,どこで息を取るんだい!というくらいフルートで吹くと苦しいということがわかりました.やはり,オーボエ曲はオーボエで吹かなくてはいけませんねぇ.ちなみに,この曲は1945年に作曲されています.シュトラウスは1949年没なので,晩年の曲であり,また第2次世界大戦の降伏直後に書かれています.この前後になると,シュトラウスは管楽器を主役にした曲を多数書いているそうです.そうした曲も聴いてみたいものですね.[写真] ローマ国立楽器博物館所蔵のリコーダーです.オーボエももちろんあったのですが,フルートやリコーダーを趣味とする私は,フルートやトラベルソ,リコーダーばかり写真に撮り,あるはずと思って探したオーボエの写真はありませんでした...というわけでやむなくリコーダーの写真をここに...
December 2, 2005
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