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彼女の死から**年が過ぎた。
しかし思い出は色あせることなく鮮烈に蘇る
**回忌の法要が菩提寺で営まれた。
旧住所を引き払い、新しく一人でマンション住まいを始めた
彼女の夫から、法要の招待状が来て、行くことにした。
何も変わらなかった。
彼女の夫は、私の出席に丁寧に謝意を示し、
彼女の両親と兄弟たちは、私の手を取り
懐かしいとまで言って喜んでくれた。
今となっては不思議な関係だったなと思う。
あんなに家庭を顧みないで愛し合ったのに
この関係者みんなの静かな対応は何なのだろう。
彼女が生前仕立てたという着物を着こなして
男は、施主として落ち着き立派に振る舞っている。
回覧された彼女の写真を友人たちが
歓声を上げて、見入っている。
わたしも、それを見た。そして懐かしさがこみ上げてくるのを
感じながらも、冷静に対応した。
こんなに時の流れは、人々のシチュエーションを変化させるのだろうか。
帰りの車中で、今もメモリーに残る携帯の中の彼女の
笑顔のアップに、わたしは、失ったものの計り知れない重さを感じる。
その時、黒いアゲハ蝶が2匹
絡まりあいながら、空を上昇していった。
おもわず私は、車を止めて振り返り
天空に蝶を探したが
どこに消えたか、見つけることは出来なかった。