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2023.05.21
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カテゴリ: 愛toちはやふる

ちはやふるにどっぷりはまってから、半年以上経ちますが、
ようやく「百人一首」の歌の使い方まで気にできるようになってきました。
情報が多くて多くて…。

以下、面白いと思った点について、感想です。

ちはやふる 感想-その10
​​ 百人一首と「せをはやみ」の歌について


◆百人一首の概要について

ちはやふるは、各キャラクター、各場面等に、
モチーフとして百人一首が多様されております。

私は、もともと百人一首が一首たりとも頭に入っていない状態で
「ちはやふる」を読み始めた人間です。

感想-その9記事(恋愛とかるたについて)まで一生懸命書いて、
なんとなーく、『ちはやふる』という超大作漫画作品の概要が掴めた気になって、
ようやく ​『百人一首とは?各シーンではどういったモチーフとして使ってたのかな?』​
意識が向くようになりました。

↓そこで、購入した本がこちらです。

​​『小学生のまんが百人一首辞典』​​
体系的に百人一首に向き合うのにぴったりの一冊でした。

​『百人一首解きがたり 藤原定家と障子色紙の中の歌人たち』 ​​
ちはやふる44巻で、詩暢ちゃんが歌と対話する世界が具体的に描写された際に、
参考文献として記載されていた一冊です。

私自身、小学生の頃に、家に漫画百人一首のような本はあったように記憶していて、
読んだ覚えもあるのですが、全く頭に入ってきていませんでした。
「百首の歌」が、何なのかが分からなかった。
歌の内容のランダムさが一番の理由だったと思います。
細切れに一首ずつの解説をされても、 ​「で?」​ ってなってしまい、掴みづらかった。

ちはやふるの本編にも下記の解説が登場していました。
百人一首は、鎌倉時代初期に、 藤原定家 という歌人が、息子の妻の父・宇都宮蓮生の
  別荘の襖に貼る唄の選定 を依頼されて選び、色紙にして貼り付けた。
・並びも工夫しているが、今ではほとんどの人が気にしていない

「へぇ~」とは思いましが、ここまでの情報でもまだ、
腑に落ちるところまで来ていませんでした。

『百人一首解きがたり 藤原定家と障子色紙の中の歌人たち』まで読んで、
ようやく『百人一首』が何なのかが分かった気がしました。
・藤原定家が選定した色紙は、蓮生嵯峨中院山荘の東の対の4部屋に掲げられた。
1枚の襖に歌が2首ずつ 掲げられた。
・蓮生嵯峨中院山荘に、 蓮生・定家の家族や知友たちを集め、
襖を眺めながら談笑することを想定していた と考えられる。
現在の百人一首と並びは異なり 、全部で百三首。
 藤原定家のオリジナルの順番は宮内庁保管の文献『百人秀歌』に見て取れる。
・現在の百人一首は、定家の息子・為家が、
この百三首から三首省き、順番を入れ替えて取りまとめたものと推測される。

ものすごく納得しました。
そうか、だから、百人一首の並びとかよく分からないのか、とか。

百首の歌も、私が聴いて良いと思う歌もありますが、
良さが全く分からない歌も散見され、 それが本当によく分からなかった。
順番で聴いていくと最初のあたりの歌は、
語呂や絵面や、なんとなく面白味を感じられるんですけど、
後半になってくると、正直何が面白いのか掴めない歌が増えてくる印象でした。

百首のうち、特に後半には 定家さんや蓮生さんの意向、
知人・親戚等々の歌も織り込んで来ている ようで、
​本当に身内で集まって談笑するための、
「完全趣味」のための選歌だよ、 と言われると、
ものすごく納得しました。
例えるなら、 現代で作曲家 が「名曲百選」を選べと言われて、
バッハ・ショパンやビートルズの楽曲 のセレクトと、
近年の、 自身の知人(アマチュア作曲家)たちの楽曲
(楽しく談笑するために)セレクトに加えて、一緒に並べている、
というイメージでしょうか。
そりゃ、格の違う楽曲が並ぶことになるよな、 と思います。

こちらの本は、著者・草野隆さんの研究書・論文のような文献?のようですので、
一般的な通説というわけではないのかもしれませんが、
個人的にはようやく『百人一首』とは何か?が頭に入ってきたという感覚で、
とても嬉しかったです。


ここまで、『百人一首』の概要が落ちてきて、それでいてようやく、
​​1首1首の内容、作者、ちはやふる作中での使われ方まで
面白味が拾えるようになって来ました。



◆ちはやふるにおける、百人一首のモチーフについて

まず、前提としてですが、 ​本作品における百人一首のモチーフは、​
​あくまで ​「演出」「描写としての面白味」​ だと認識しています。 ​​

​​作品自体を回すのは、
あくまで キャラクター自身の感情/意志 です。​​​
キャラクターの意志があって、物語の行く末があって、
​​​その上で、 物語やキャラクターを装飾するモチーフとして、
百人一首を使用している、 という認識です。

キャラクターの感情を追いかける方を重視 して、
その上で物語をより楽しむ 「遊び」的なもの だと思います。​​​

歌のモチーフありきで、キャラクターが歌の内容に沿って動く、
歌人の意図・バックグラウンドがこうだから、キャラクターがそれを踏襲して動く、
という読み方をすると、読み間違えるな、と思っています。


ちはやふるという作品の中で、たくさんの歌がモチーフとして使われていますが、
最も大きな扱いをされたのが、 次の2首 だと思います。

​・ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれないに 水くくるとは 在原業平朝臣​
作中、千早ちゃん自身、もしくは周囲の人たちからも、
「千早ちゃんのアバター」のように取り扱われていました。
また、風景を歌っているように見せて、
「真っ赤な恋の歌」という解釈もできる面白味を秘めています。

​・せをはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思う 崇徳院​
かるた競技という題材で少女漫画を描く、となったときに、
ヒーロー・ヒロインの「ラブストーリーのメインモチーフ」として
真っ先に据えた歌だと思います。
おそらく、末次先生自身が非常に好きな歌なのではないかな、と思います。


本作における百人一首の使用方法について、
真っ先に語りたいのが、 ​『せをはやみ』の歌の取り扱いについて​ です。​
とにかく、一番気を使って取り扱った歌だと思っていますし、
ちはやふるという作品の面白さが、
その取扱いに凝縮されている一首 だと思っています。



◆『せをはやみ』の歌の取り扱いついて

​ちはやふるという作品の中で、この「せ」札は、
作品立ち上げ段階のプロトタイプ1号を象徴する歌 だと思います。​

第1巻・第1話。
新くんの部屋で、千早ちゃんがかるたに初めて出逢うシーンで、
千早ちゃんが新くんから1枚だけ獲った札が、この「せ」札でした。
「かるたをやっていれば、いつか巡り会える」という、
「千早ちゃんと新くんという、名人とクイーンになる2人のラブストーリー」
という概念を集約した1首 …ですね。
この、真っ先にモチーフに据えたであろう重要な和歌について、
ちはやふるという作品は
「ラブストーリーの帰結に選ばない」という選択をします。

​​
おそらくですがコミック2巻前後のあたりで、 ラブストーリーの帰結が、
三角関係をやる間もなく太一くん一択であることが分かった というか。

千早ちゃんにとって「太一くんが、求めるもののすべて」過ぎて、
2巻あたりで、既に千早ちゃんが凄いテンションで叫んだんだと思うんですよ。
​「太一が居ればいい!」「ここ(部室の畳の上)に永住する!」​ って。


ですので、かなり連載初期の段階から、
『せ』札の描かれ方は↓こうなっていると思っています。
​​ ・『せ』札は、ちはやふるという作品の中で、
「最後まで読まれない」札である。


かるた競技は、どんなに最後まで接戦でもつれこんでも、
読手さんが99枚目を読んだ瞬間に、勝者と敗者が決します。
​100枚目の札は、読まれずに残ります。​
(一部の人はこれを「ババ」と呼ぶ、と作中で説明もありました。)
​​​​
『せ』札は、連載初期から既に、
ちはやふるという作品における「最後まで読まれない札」という
重要な位置づけの札と定義されている と思います。

​​​​
​かるた競技の、興味深い独特なルールの一つが、 『運命戦』 です。​
最後、競技者がお互いに1枚ずつの札を持ち合う、最終段階まで試合がもつれ込んだ場合。
自陣の札の方がお互いに手を伸ばしやすいため、
読手が先に読む札を持っている方が勝利する可能性が非常に高い。
運命に勝敗を委ねた状態になるから、『運命戦』。
(もちろん、敵陣が先に読まれたとしても、敵陣の札を抜くことが出来れば、
運命を変えることが出来ます。)

私はこのルール、独特で面白いなぁ~と思って読みましたし、
本作においても、面白く使い倒したシチュエーション でした。


​​ 太一くんのキャラクター描写 ですが、かるたに嫌われている…というか、​
出札が悪く、 「運がない」 と周囲にもさんざん言われ、
実力がありながら、高校2年生の夏までA級昇格が叶いません。

​この子の「運の悪さ」を象徴しているのが、
​『運命戦で自陣の札が読まれない』を延々と繰り返す描写​ です。​

太一くんの運命戦で自陣札が読まれることは、
2年生の団体戦決勝戦を除いて、最終回まで他に一度もありませんでした。

本当に面白いのですが、 この↑運命戦に滅法弱い太一くんが、
作中で描写された個人戦におけるほとんどの運命戦で
自陣の手元に置いていた札が、『せ』札でした。



太一くんの運命戦(&『せ』札との絡み) について、書き出すと下記の通りです。

・6巻、 かるた大会のB級決勝戦・太一くんvs肉まんくんの対戦。
ここで、本作で初めて「運命戦」が展開され、
最終的に肉まんくんの自陣の札が先に読まれ、太一くんが負ける、という決着をします。
この時の太一くんの自陣の最後の1枚が、『せ』札です。
→『せ』札は読まれなかった。

・11巻、 東京都地区予選(団体戦)の決勝戦・vs北央。4-4の運命戦。
実はここでは、太一君が自陣に置いていた『あさぼらけ あ』が最後に読まれていますが、
団体戦としては2-3で北央に敗れています。
(太一君自身は、ヒョロくんのお手付きを誘って、先に勝利を決めていた)

・15巻、 高校選手権全国大会団体戦決勝。2-2の運命戦。
作中で唯一、太一くんの自陣が読まれて、勝利した。
自陣の札は『ゆらのとを』。

・19巻、 吉野会大会準々決勝。vs須藤さん。
最後の運命戦で、真島陣に残ったのは『せ』札。
太一くんは自陣が読まれないと踏み、(音を聞かないタイミングで)敵陣を攻めて勝利。
→『せ』札は読まれなかった。

・21巻、 名人戦予選。vs小石川くん。
太一くん陣『みかきもり』。小石川陣『めぐりあひて』が先に読まれて敗北。
※『めぐりあひて』も、作中で千早ちゃん&新くんの関係性のモチーフとして使われている。

・38巻・ 第197首の表紙絵で、太一くんが『せ』札を差し出して来ているイラスト。

・39巻 ・東西戦予選 vs新くんの第2戦
最後の運命戦。太一くん陣『せ』札、新くん陣『ちぎりき』。
『ちぎりき』が読まれたが、試合前に、第1戦目のやり取りのハンデとして、
「運命戦になったら(太一くんに)譲る」約束をしていたため、
新くんが太一くんに札を獲らせた。
→『せ』札は読まれなかった。
かなりトリッキーな展開をしたこの東西戦の1戦は、
『ちはやふる』の物語の、恋愛面の帰結について
確定演出と受け取れる札モチーフのオンパレード となっており、
「とっておき」を詰め込んだ渾身の1戦だと思っています。

・残り4枚の段階で、太一くんが『ちは』札に執着を見せ、
敵陣(新くん陣)から抜くシーン。
ここまでも、太一くんvs新くんの試合では、
お互いに『ちは』札を意識的に取り合う描写がされており、
ちはやふる本編中で一番分かりやすい「確定演出」と言えるシーンだと思っています。

また、 運命戦の描写…
・『せ』札が読まれず、本来は太一くんが敗北するところを、
新くんが『ちぎりき』を太一くんに獲らせる

→『ちぎりき』は、過去に愛を誓った女性の心変わりをなじる男性歌人(清原元輔)の歌、
とのことですので、
「ちはやふる」という作品が、連載立ち上げ当初に据えた
『せ』札モチーフのラブストーリーから心変わりしたことを暗示し、
それを太一くんに獲らせて勝たせる、という概念で構成されている、
かなりメタ的なユーモアを含めたシーンだと認識しています。


・47巻、 名人・クイーン戦の第4戦目で突然、
「『せ』札は太一の得意札」という千早ちゃんの回想 が挿入されます。​
回想の中で、太一くんは「単なる『好きな札』」と返しています。
『せ』札は千早ちゃんと新くんのラブストーリーのモチーフですので、
ここで太一くんが札と繋がるのが一見唐突に思える情報提示です。

…が、感想記事その8で書いた通り、私は、 本編中通してずっと、
『せ』札の表す「千早ちゃんと新くんのラブストーリー」を
強力に推進しようと立ち回っていたのが、実は太一くんだった
​​ 「『せ』札は太一くんの推し札」という提示は、
非常に納得できるもの
です。

また、前述したとおり、『せ』札は、
初期から、太一くんが運命戦でかなりの確率で自陣に抱え込んでおり、
作中ずっと、基本的に「運命戦で読まれない札」として描写されていました。
​(太一くんは、 運命戦描写の6戦中3戦、
団体戦描写を除けば、実に4戦中3戦で『せ』を抱え込んでいる。
​はっきり言語化されたのは47巻が初めてなのだと思いますが、
太一くんの意図と、
運命戦モチーフと、

「『せ』札が最後まで読まれない札」という概念 に関しては、
おそらく6巻頃の時点では、作品の帰結地点のとっておき描写として
出来上がっていたのではないかな、 と想像しています。
​お…オモシロい…!​

また、太一くんのみならず、 それ以外の選手たちの試合 においても、
作中の重要な運命戦では、高確率で『せ』札が登場してきます。

・29巻、 太一くんの居ない地区予選大会(団体戦) 決勝戦 vs北央。
肉まんくん・机くんが最後札合わせをした、2-2の運命戦。
→北央陣にあった『せ』札が読まれて、瑞沢高校が1-4で敗北。
​『せ 』札が読まれた。​
※ただし、3校が1勝2敗で並び、将順の勝ち数で全国大会へは出場できることになった。
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​→千早ちゃんが、太一くんに 「最後に読まれた札は『せ』だったよ」 とメール。
おそらく、「いつか再び巡り逢いたい」という、この時点の千早ちゃんの思いを
乗せたメッセージだと受け取っています。


・41巻、 新くんと詩暢ちゃんのYoutube対決
詩暢ちゃん『せ』、新くん『みち』を持っての運命戦。
「せ」が読まれ、詩暢ちゃんが初めて新くんに勝利。
​『せ 』札が読まれた。​
詩暢ちゃんは、50巻の運命戦の時に
「うちやったら『せ』を自陣に残す」と思っていましたが、
詩暢ちゃんにとっても、やはりすごく特別視している札なのだと思います。


・45巻、 クイーン戦第3戦。
最後、残り数枚になった段階で、千早ちゃんが詩暢ちゃんに
一字で獲れる希少な「せ」札を送っている。
ここは、千早ちゃんが「『せ』札を敵陣から抜きたかったから」という解釈も出来ますが、
一方、千早ちゃんに「『せ』札は読まれない札」という直感があった、
とも受け取れるような描き方になっていると思います。
→結局、この第3戦については運命戦にはならず、
また、 「せ」は読まれずに試合終了​ しました。


そして、言わずもがなですが、 『せ』札描写の集大成が、ラスト
・50巻、名人・クイーン戦第5戦目の最終場面、
2戦ともに、同じ札を持ち合っての運命戦 です。

「せ」札と「たち」札の2枚を自陣に置いていた千早ちゃんと新くんが、
送り札を選ぶ場面で、太一くんが浦安の間に現れ、
それを見た二人が、 ​「たち」を自陣に残し、「せ」を相手に送ります。​

このシーンの、2人の札のセレクトについては、
意味合いが大きく3通りある と思っています。

​A:「たち」=太一くん を自陣に置く。​
観戦していた肉まんくんが、千早ちゃん・新くんの2人のセレクトについて
「チームちはやふるの札合わせ」 と解釈しました。
もちろんこれが、2人共通の最重要ファクターです。

B:「せ」は最後まで読まれない札だから。
これは新くんの試合中の直感に寄るものです。
試合中、新くんが一度「せ」札を周防さんに送るシーンがあります。
「せ」は一字決まりの札ですので、絶対的な「感じの良さ」を持つ周防さんには
普通は送らない札なのだと思います。
ただし、「最後まで読まれない札」なのであれば、送るべきです。
周防さんは、新くんの直感を感じ取って、新くんの方に「せ」札を送り返しましたが、
運命戦で再び送られることになりました。
​「綿谷くんはやっぱり思ってる 「読まれない札」は『せ』だと」​ という
周防さんのモノローグもありました。
これは、新くんの競技者としての直感が冴え渡っていることの証明です。

ただ、この 「直感」に引っ掛けた暗喩 が、以下だと思っています。
​「恋愛面の決着が、『せ』札のモチーフに帰結しない」と新くんが感じていること。​

新くんの意識の中で、「せ」札は千早ちゃんとの出逢いの思い出の1枚です。
「ちはやふる」という作品全体において、
「せ」札が読まれないことを正確に捉えた解釈は、このBだろうな、と思います。

C:「せ」は流れに身を任せる歌、
「たち」は能動的に逢うことを求める歌。
これは、千早ちゃんの意志によるものです。

立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば いま帰り来む 中納言行平
遠方の赴任地へ向かう人が、
「あなたが私を待っていると聞いたら、すぐに帰って来る」と言っている歌です。

千早ちゃんの意識の中で、「せ」札は
「新くんとの想い出の札」ではなく、 「太一くんの推し札」 です。
「せ」も「たち」も、どちらも太一くんを連想させる札です。
そこで、 歌の意味合い が重要になってきます。
千早ちゃんが、太一くんと一緒に居られる未来を望むのに、
「流れに身を任せる」か、「能動的に求める」か。
太一くんが千早ちゃんから離れようとしている現状で、
千早ちゃんは前者のスタンスでは、望む未来に向かうことは出来ません。


新くんにとって、送り札のセレクトの理由はA+B、
千早ちゃんにとっては、A+C。

この、既に3~4つのモチーフ・概念が入り乱れているところに、
最後の最後、
​「詩暢ちゃんの世界」としてクイーン戦で丁寧に描写して来た ​『小倉山荘』​ …​
「『ちは』と『たち』が1枚の襖に並んだ絵面」を、
詩暢ちゃんの想起として、強烈にぶち込んで来る わけです。

*百人一首の順番では、「たち」が16番、「ちは」が17番です。
偶数+奇数ですので、2枚ずつ襖に歌を貼り付けた時に、
対になるのかと疑問に思いましたが、
『百人一首解きがたり 藤原定家と障子色紙の中の歌人たち』 の本の中で、
その理由がばっちり説明されていました。
定家さんの元の並び順では、「たち」が9番、「ちは」が10番。
南東の部屋の北の障子に一対として並んでいたという説が記載されており、
とても納得しました。

本当にとんでもない…
​​幾重もの概念で彩りまくった、恐ろしい名シーン​
だと思っています!!



◆『せをはやみ』の歌が読まれない意義について

「ちはやふる」と言う作品にとって、「せ」札を読まないことは、
作品の企画・立ち上げ段階で据えた道筋よりも、
千早ちゃんの意志、キャラクターの生命力を優先させた結果だ、
と認識しています。

「千早ちゃんと新くんのラブストーリー」のモチーフとして
「せ」札があったとすれば、
「千早ちゃんと太一くんのラブストーリー」のモチーフに、
百人一首の歌モチーフはありませんでした。

3首、
・26巻以降の展開のモチーフとしては、「逢ひみての」の歌 が、
・恋愛面の心理的障壁のモチーフとして、「かぜをいたみ」の歌 が、
・最終回、一気に激情が鮮やかになる演出のモチーフとしては、「ちはやふる」の歌 が、
それぞれ敷かれていたのかな、とは想像していますが、
ただ、 作品を通して千早ちゃんの心の内に存在する、餓鬼のような感情
千早ちゃんの、「太一くんを求める」テンション・激情
言い表す歌の描写はなかったな、と思っています。

言い換えると、
千早ちゃんの、「太一くんを求める」テンション・激情に、
百人一首がついて来れなかった。表現し切れなかった。

だから最終回、千早ちゃんの告白は、「百人一首」では例えることをせず、
「百人一首」を突き抜けて、古今和歌集…
「歌とは?」という概念まで行きつき、
​​「私の気持ちを伝えられるのは私だけ」​ と、
はっきり千早ちゃんのモノローグとしても出て来ていました。


繰り返しになりますが、
「『せ』札が読まれないこと」…これこそ、 予定調和ではなく、
​各キャラクターが自身の意志を持ち、勝手に動き、未来を紡ぎ出す…

ちはやふるという作品のパワフルさの源泉がよくよく見て取れる部分
だと思っています。​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​
​​​​​​​​​​
だからこそ、 「『せ』札が読まれないこと」は、
最後の最後まで引っ張り、一番面白く魅せられるとっておきの形で、
これほど壮大に演出されたのだ と思っています。



元々この「せをはやみ」和歌には、 望むような生き方の出来なかった歌人 の、
願いなのか、呪いや哀愁なのか、分からない感情 が渦巻いているのだと思います。
それが、この和歌の何よりの魅力です。

この和歌の持つ魔力…歌の内容の特殊性故なのかもしれませんが、
​ちはやふるという作品においては、「最後まで読まれない」札となった…​
「『流れに身を任す』…それではダメだ」と、
主人公である千早ちゃん自身が、否定することになりました。

最終50巻、名人・クイーン戦終了後。
最後、 この歌の「分からなさ」については、
作中三角関係とは外れた場所にいた ​詩暢ちゃんに委ねる​ …というか、
詩暢ちゃんが、今後一生かけて寄り添っていく、向き合っていくんだな、
…という締めに持って行っていました。
​最後まで、この「せ」札の取り扱いは、
本当に特別に気を使って描かれていたな、
​​
と思っています。



作中の『せ』札描写、運命戦描写について、
拾い漏れているシーンも諸々あるかもしれませんが…
とにかく!『せ』札の描写・演出は、いちいち意味深で超オモシロいので!
ちはやふるを読む際は、是非注目してみてください!
ということが語りたい記事でした。

いやぁ…オモシロい!本当に語りがいがある!!

by姉 ​​​​​​​​​​





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最終更新日  2023.10.08 08:39:09
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