全56件 (56件中 1-50件目)

※BGMと共にお楽しみください。「女子供の遊びに、ムキにならないでください。」千がそう言って自分に刃を向けている男を見ると、彼はますます逆上した。「こんガキ、ようも俺を馬鹿にしてくれたな!こん場で叩き斬ってやっ!」(このガキ、よくも俺を馬鹿にしてくれたな!この場で叩き斬ってやる!)『最初から馬鹿にしてきたのはあんただろ?惨めな負け犬が吠えるな。』「二人共やめ給え。ここで言い争っても仕方ないだろう。」「じゃっとん、桂さん・・」「ここはおさえてくれ。」「わかりもした。」男は千を睨みつけた後、どかりと隅の方に腰を下ろした。「そうか。君の占いは当たるのかどうかは知らないが、君の言葉には嘘がないようだね。」「どうも。」千はそう言って、茶屋を後にした。「桂さん、あのガキを信用してもよかですか?」「桂さんに対してあのなめくさった態度・・許せん!」「君達、落ち着け。彼は余りわたし達の事を良く思っていないんだ。」「じゃが・・」「わたしは彼の占いを完全に信じていない。所詮占いは気休め程度に信じればいいのさ。」「桂さん・・」「さて、帰ろうか?」 茶屋から屯所へと戻った千は、風呂に浸かりながら今後の事を考えていた。 桂にああ言ったものの、適当に占っただけだ。(それにしても、薄井さんは新選組内に間者を潜ませているという事か・・気を付けないと。) 千がそう思いながら溜息を吐いていると、風呂場の扉が開いて原田と永倉が入って来た。「千、あまり長風呂しているとのぼせるぞ!」「すいません、すぐに上がります!」 慌てて風呂から上がった千は、部屋へと戻る途中、裏庭で何かが動く気配を感じた。(なに・・?) 恐る恐る彼が裏庭へと向かおうとした時、その気配は消えていた。(何だ、気の所為か・・) 部屋に入って千が布団を敷いていると、福が彼の肩に飛び乗っていた。「今日は疲れたね。」 福と共に布団の中で千が眠っていると、彼の部屋の前に怪しい人影が浮かんだ。―ミツケタこの作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年04月30日
コメント(4)

※BGMと共にお楽しみください。「あ~、忙しい。」「そりゃ引っ越しすんだから当たり前だろ!」 1867(慶応3)年6月、新選組は西本願寺に構えていた屯所を、不動堂村へと移転した。 その為、千達は朝から引っ越し作業で大忙しだった。「何だか、山南さんの葬儀の事を思い出すなぁ。」「確かに。葬儀の後に壬生村から西本願寺の屯所へ引っ越したもんなぁ。」「ま、俺達は今まで借家で暮らしていたから、近藤さん達にとっちゃぁ、今から引っ越す屯所は、はじめての自分達の“城”なんだよなぁ。」「そうでしょうね。」 新しい屯所は、広さは一万平方メートル、土方達幹部らの部屋や平隊士の部屋、三十人が一度入れる大風呂などがある立派な部屋だった。「あ~、疲れた。」 自分に宛がわれた部屋に入って千が荷解きをしていると、そこへ一人の隊士がやって来た。「あの、何か?」「これをお前に必ず渡せとある方から頼まれた。」彼はそう言って千に文を渡すと、そのまま部屋から出て行った。―酉(とり)の刻、こちらの場所に来られたし 文で指定された場所は、通りから少し離れた所にある茶屋だった。(誰なんだろう、こんな所に僕を呼び出したのは?) 千がそう思いながら周りを見渡していると、向こうから一人の男がやって来た。 その男は、桂小五郎だった。「君が、千君だね?確かに、千尋と顔が良く似ているな。」「一体、僕に桂さんが何の用ですか?」「君は、未来を予言する力があるそうだね?」「何処からそんな情報を?」「薄井君からさ。ここに君を呼んだのは、我が藩の命運を占って貰いたいからだ。」「断ったらどうします?」「力ずくでも君を僕達の元へと連れて行く。」「賢い子だね、君は。」 千が桂と共に茶屋の中に入ると、そこには十人ほど男達が集まっていた。「こんガキが、予言者か?」「桂先生ちゅうお人が、女子供の遊びに夢中になるとは!」「君達、静かにしなさい。」桂がそう言って男達を黙らせると、桂は千に花札を渡した。「さぁ、これで占ってくれ給(たま)え。」「わかりました。今後長州藩は新時代を築き上げた立役者としてその功績を人々から讃えられますが、後世では国賊の謗(そし)りを受けます。」「何じゃとぉ!」 千の近くに座っていた男は突然そう叫ぶと刀の鯉口を切った。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年04月30日
コメント(0)
![]()
1980年の韓国。ひょんなことで、ドイツ人記者を光州まで送ることになった主人公。何だか主人公とドイツ人記者の英語のやり取りが面白い。報道の自由とは何かを考えさせられますね。
2020年04月29日
コメント(0)
![]()
油田開発利権争いで起きた射殺事件。鷹野と部下の田岡は、その真相を探っている最中に何者かに拉致される。最初から緊迫した展開の連続で、ページをめくる手が止まりませんでした。吉田修一さんの作品は少しアクが強いですが、それでも難なく読んでしまう魅力に溢れていますね。
2020年04月29日
コメント(0)
![]()
1987年に起きた、ソウル大生拷問致死事件の真相とともに、「民主化闘争」を描いた作品です。時代背景がわからないので、youtubeで韓国民主化運動について調べたら詳しい事が説明されていたので助かりました。後半は拷問描写などが続いて観るのが辛かったですが、これが30年以上前に実際で起きた出来事だという事を初めて知りました。拷問致死を隠蔽しようとする警察、それを暴こうとする検察と記者、国の為に命を賭けて闘う学生たち・・今の韓国を見ると、この人たちがしてきた事は無駄じゃなかったのかなぁと思いました。しかし、韓国の歴代大統領は不正にまみれているのは事実なんですがね・・色々と考えさせられる作品でした。
2020年04月29日
コメント(2)

※BGMと共にお楽しみください。「千、居るか!?」「どうしたんですか、皆さん?」 部屋に入って来たのは、中村五郎、茨木司、富川十郎、佐野七五三之助の四人だった。「千、お前占いが出来るんだってな?」「えぇ、そうですけれど・・」「俺達の未来を、占ってくれないか?」「へ?」 驚きの余り、千は声が裏返ってしまった。 この世人は新選組から脱退し、伊東の元へ逝こうとしたが拒絶され、自害したのではなかったか。 前回、現代から幕末へ戻った時、現代で治った筈の総司の肺結核は再発した。“人の死は何者にも変える事はない”―千は総司の肺結核再発で、そう思ったのだった。(適当に占おう。) 現代に居た時、学校帰りによく立ち寄った商業施設で、“よく当たる占い”という看板を掲げた占い屋があったが、蓋を開けてみれば霊感商法まがいの事などをしている詐欺師だった。 結局その店はオープンで一ヶ月足らずで潰れたが、騙される人は騙されるものなんだなと店の跡地を見た千はそう思った。「・・わかりました。」 あの店を訪れた時は一度きりだったが、その占い師のやり方を真似てみる事にした。「このカードの中から一人ずつ、一枚選んで下さい。」「わかった・・」 適当にシャッフルしたタロットカードを中村達に選ばさせた千は、そのカードを一枚ずつめくった後こう言った。「あなた達の未来に、暗雲が見えます。もしかしてあなた達、伊東先生の所へ行こうと思っていますね?」「なんでそれを・・」「このカードが示すあなた達の未来は、死です。避けられない未来です。その未来から遠ざかる一つの方法は、今動かない事、それだけです。」「本当に、お前の占いは当たるのか?」「僕のカードは嘘を吐きません。」中村達を占った後、千は深い溜息を吐いた。(あの四人の未来が変わる事はないけれど、出来る限りの事はした。) 千が四人を占ってから暫く経った後、彼らが新選組を脱退した事を知った。「あいつら、どうなるんだ?」「さぁ、今土方さんが会津中将様の所へ行っているから・・」「みんな、大変だ!」「どうしたんだ、そんなに血相を変えて・・」「中村達が・・会津中将様の所で、自害した!」その知らせを聞いた千は、溜息を吐いた。「それは本当か?」「はい。間違いありません。」この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年04月27日
コメント(2)
「どうした?」「いいえ、何でもありません・・」千はそう言って死神のカードを隠そうとしたが、呆気なくそれを歳三に取り上げられてしまった。「これは、何だ?」「それは・・」「薄井か?このカードを俺に送って来たのは?」「はい・・」「そうか。」「このカード、どうしましょうか?捨てましょうか?」「いや、取っておけ。後で何かに使えるだろう。」「そうですね。」「折角だから、占ってみたらどうや?」「何を、ですか?」「そうやなぁ、新選組の未来とか。」 山崎の言葉を聞いた千の顔が、少し蒼褪めた事に歳三は気づいた。「千、俺達に秘密はなしだ、わかったな?」「はい。」千は歳三の言葉を聞いた後、死神のカードを握った。(たとえどんな運命が待っていようと、僕はそれに抗ってやる!) 千はタロットカードで、新選組の未来を占った。「どうだ?」「この先、新選組は険しい茨の道を歩む事になるでしょう。しかし、新選組の功績は後世にまで語り継がれる事でしょう。」「それ以上、詳しい事はわからへんのか?」「はい。」 これ以上、詳しい事を言わないようにしろ―千はその心の声に従った。「“険しい茨の道を歩む事になる”か・・幕臣に取り立てられたからって浮かれるなって事だな。」「はい、そうです。土方さん、昔読んだ本には、“人生の頂点を極めた時こそ、魔物に気をつけろ”と書いてありました。」「そうか、わかった。」「千、こんな所に居たのか!総司が呼んでいるぞ!」「わかりました、すぐ行きます!」千は歳三と山崎に一礼すると、総司の部屋へと向かった。「沖田さん、千です。」「千君、忙しいのに呼んでしまって済まないですね。」そう言って布団から起き上がった総司の身体は、以前よりもひとまわり小さくなっていた。「福ちゃんとさっきまで遊んでいたんですよ。」 千が屯所の厨房で命を救った名済みは福と名付けられ、隊士達から可愛がられていた。 福は、飼い主の千よりも総司によく懐いていた。「ねぇ千君、福ちゃんとお散歩できるようなものを作ってくれませんか?」「リードのような物ですか?」「えぇ。ずっと家の中に閉じ込めていたら可哀想だし、たまには福ちゃんを中庭で散歩させたいなぁって思って・・」「わかりました、作ってみます。」「ありがとう、千君!」 千が福のお出掛け用のリードを作っていると、廊下の方から数人分の慌しい足音が聞こえて来た。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年04月27日
コメント(0)

画像はコチラからお借りいたしました。「薔薇王の葬列」二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「あ~、忙しいったらありゃしない!」「なんなのよ、連日宴ばかり開いて、準備するこっちの身にもなれっての!」「あなた達、口よりも手を動かしなさい!」 水刺間では、連日宴の準備に追われて、水刺間の女官達が互いに愚痴り合いながら仕事をしていると、そこへ王妃がやって来た。「お、王妃様・・」「皆、仕事を続けよ。」「は、はい!」「そなた達も連日の宴の準備で疲れていると思うが、わたし達はそなた達に心から感謝しておる。」王妃はそう言うと、女官達に菓子を振る舞った。「これを食べて精をつけるがよい。」「王妃様、よろしいのですか?あれは、大妃(テビ)様から頂いた高価なもので・・」「あんな物、わたしの好みではない。」 大妃―マーガレットは、そう言うと水刺間を後にした。「昭媛様、大妃様がお呼びです。」「わかりました、すぐに行きます。」 リチャードが大妃の元へと向かうと、そこには見知らぬ女の姿があった。「お初にお目にかかります、大妃様。」「そなたが、リチャードか?美しい瞳をしておるな。」「ありがたきお言葉にございます。」「そなた、瑠璃楼の妓生だったようだな?」「はい。」「王妃が認めても、妾はそなたを認めぬぞ。」大妃はそう言うと、リチャードを睨みつけた。「そなたに、これを贈ろう。」「はい・・」 大妃がリチャードに渡したものは、ノリゲだった。「これは?」「これは、王の母が死に間際に握っていたものだ。」「何故、そのような物をわたくしに?」「もし王様の身に何かあったら、命を絶ちなさい。それが、そなたの役目です。」「わかりました、大妃様。」 大妃殿から出たリチャードは、暫く震えが止まらなかった。「おや、昭媛様はどちらに?」「昭媛様ならば、先程体調を崩されて、今宵の宴に出席できませんと・・」「そうか。」 大妃はそう言うと、ほくそ笑んだ。「大妃様、少しお話が・・」「おや、王妃がわたくしの元に訪れるなど珍しい。」「大妃様、昭媛様にノリゲを贈られたとか・・王様の母の形見のノリゲを・・」「わたくしは、あの女を認めておらぬ。」「どういう意味です?」「その言葉通りだ。」 何処からか、雷鳴が轟いた。 「クソッ、もう降り出したか。」 商店の軒先で雲の様子を見ていたバッキンガムは、雨が降り出した事に気づいて舌打ちした。 なるべく濡れないように黒笠(フンニプ)を被った彼は、屋敷へ戻る途中、瑠璃楼の跡地へと立ち寄った。 かつて隆盛を極めた妓楼は、荒れ果てた廃墟と化していた。(気味が悪いな・・) バッキンガムが瑠璃楼の跡地から出ようとした時、何かがさっと横切る気配がした。(何だ、今のは?) バッキンガムが影の後を追うと、塀の近くには白いものが丸まっていた。 それは、白い猪だった。 猪は寒さに震えながら、じっと自分を見ていた。 殺すのが惜しいと思っていたバッキンガムは、その猪を家まで連れ帰った。「まぁ坊ちゃま、こんなに濡れては風邪をひきます!」「こいつを俺の部屋へ入れておけ。」「こいつをですか?」「あぁ、そうだ。」「・・わかりました。」 使用人は少し戸惑いながらも、白い猪をバッキンガムの部屋に入れた。「大丈夫ですか、リチャード様?」「あぁ・・」 ヘンリーと愛し合った後、リチャードは最近体調を崩し、一日の大半を床に臥せっている状態だった。水とケイツビーが作った粥以外、リチャードは何も食べられなくなってしまった。「リチャード様、薬師を呼んで参ります。」「悪いな・・」 リチャードの部屋に薬師が入っていくのを見た大妃付きの女官は、慌てて主の元へと向かった。「昭媛が体調不良だと?それは本当か?」「はい・・」「そうか、昭媛の容態がわかり次第、わたくしに伝えなさい、いいですね?」「はい、大妃様。」 リチャードは薬師の診察を受けた後、信じられない言葉を聞いた。「今、なんと・・」「昭媛様はご懐妊なさっておられます。」「それは、確かなのですか?」「はい、おめでとうございます。」(わたしが、王様の子を・・) リチャードはそっと、まだ目立たない下腹を撫でた。にほんブログ村
2020年04月26日
コメント(0)
![]()
全てを失われた兄弟の復讐劇。その結末を知りたくて、ページを捲る手が止まりませんでしたが、作者が急逝して未完のまま終わってしまったのが残念でなりませんでした。
2020年04月26日
コメント(0)

※BGMと共にお楽しみください。「ねぇ見てよ、はじめ。」「どうした、総司?」 稽古の後、汗を斎藤が井戸で水浴びをしていると、突然総司が彼に話しかけて来た。「あれだよ、ほら。」 総司が指し示す方を斎藤が見ると、そこには縁側で仲良く茶を飲んでいる勇と歳三の姿があった。「最近、二人なんだか仲良くなってない?」「そうか?」「ねぇ、伊東さんが僕達に隠れて長州の志士と密会しているって噂、知ってる?」「いや・・はじめて聞いた。それは、確かなのか?」「あくまで噂だよ。まぁ、あの人は尊王攘夷思想がある人だし、あの清河と同じだね。」「そうか・・」「はじめは、伊東さんの事どう思っているの?」「俺は、政治の事は何もわからぬが、伊東さんとは余り親しくしたいとは思わない。」「良かった、僕と同じ考えで。」総司はそう言って斎藤を見て微笑んだ後、井戸から去っていった。「おい勝っちゃん、これは近過ぎだろ?」「そ、そうか?」「二人共、何しているんですか?」「総司、丁度いいところに来た!」 勇はそう言うと、副長室に入って来た総司にあるものを見せた。「何ですか、それ?」「お前の新しい羽織だ。俺が縫おうと思ったんだが、針仕事は苦手でな・・」「そんなの、別にいいのに・・」「何言っていやがる、総司。お前ぇの冬用の羽織、綿があちこち出てきてボロボロじゃねぇか?」「僕は、物を大事にするんです。」 総司はそう歳三に向かって憎まれ口を叩いたが、その顔は何処か嬉しそうだった。「何だか二人でそんな風に寄り添っている姿を見ると、夫婦みたいですね。」「そ、そうか?総司からそう言われると、何だか照れるなぁ・・」「よせよ、勝っちゃん・・」(見せつけてくれるよねぇ・・) 目の前でためらいもなく仲良く、もといイチャついている勇と歳三の姿を見ても、何故か総司はイライラしなかった。 以前は理由もなくこんな二人の姿を見ていた時はイライラとしていたのに。(あぁ、僕は知らない間に土方さんに嫉妬していたけれど、それは土方さんに近藤さんを取られるかもしれないって、勝手に思っていたからなんだ。でも、二人は僕の事をちゃんと考えてくれている・・)「どうした、総司?」「いいえ、何でもないです。」「年が明ける前には羽織を完成させてやるから、待ってろよ。」「はい、楽しみに待っています。」(伊庭さん、あなたが言っていた事は間違っていませんでしたよ。) 総司がそんな事を思いながら巡察していると、彼は一人の男とぶつかりそうになった。「ちょっと、何処見ているのさ!」「ご、ごめんなさい・・」 総司が自分にぶつかって来た男をにらみつけると、彼は昔、練武館の門下生だと総司は気づいた。「あれぇ、君確か練武館の門下生だったよね?何で京に居るの?」「ぼ、僕の事、覚えていてくださったんですか!?」男―加納英吉はそう叫ぶと総司に抱きついた。「ちょっと離してよ、気持ち悪いなぁ!」「沖田組長、その方はお知り合いですか?」「知り合いも何も、こんな気持ち悪い男と知り合いになりたくないね!」「ねぇお願いだよ、僕をあの人の元へ連れて行っておくれ!」「どうします?」「あぁもう、面倒臭いなぁ・・」総司は自分にしがみついて離れようとしない英吉を連れ、そのまま屯所へと戻った。「おい総司、そいつは何だ?」「助けてくださいよ、左之さん。こいつ、土方さんに会わせろって言って僕にしがみついて離れようとしないんです!」「へぇ、そりゃぁ災難だな。」「笑ってないで何とかして下さいよ!」「総司、どうした?何の騒ぎだ?」「あ、土方さん、いいところに。」 総司が英吉を必死に自分から引き剥がそうとしていると、そこへ歳三が偶然通りかかった。「やっと会えた、僕の“マリア様”!」 英吉はそう叫ぶと、総司を突き飛ばして今度は歳三に抱きついた。「こいつ、誰だ?」「あぁ・・昔伊庭さんの道場の門下生だった人ですよ。」歳三の脳裏に、江戸に居た頃自分を試衛館の前で待ち伏せしていた男の顔が浮かんだ。「あぁ、あの時の・・」「やっと思い出してくれたんだ、嬉しいよ!」「それで?一体俺に何の用だ?」「き、君の傍に居たいんだ・・」「なぁんだ、入隊希望者か。じゃぁ、試験を受けさせないとね。」総司はそう言うと、口端を上げて笑った。「今すぐという訳にはいかねぇだろう、総司。日を改めてやろうか。」「その方がいいですね。」「では、明後日に午の刻(午前11時頃)にこちらへ来て試験を受けるように。」「わかったよ!」 上機嫌な英吉を屯所の正門まで送った歳三は、溜息を吐いて屯所の中へと戻った。「どうするんです、土方さん?あいつ、何とかしないと・・」「今あいつをどうするのかは、考えているさ。それよりも勝っちゃん・・近藤さんは何処だ?」「近藤さんなら、島原で会合ですよ。」「そうか。勝っちゃん、いつも酒に弱い癖に飲まされるから、今のうちに酔いざましでも作っておくか。」歳三はそう呟くと、厨房へと消えていった。「‥何だか最近、土方さんは近藤さんの女房みてぇだなぁ。」「そりゃぁ、江戸に居た頃から色々と土方さんは近藤さんの世話を焼いていたもんなぁ。今じゃすっかり近藤さんの女房だな。」「まぁ、あの二人が仲良かったら安心するな。」「そうだな。」にほんブログ村
2020年04月26日
コメント(0)
![]()
父親の死に隠された出生の秘密。 タイトルの意味が読みおわってわかったような気がします。
2020年04月25日
コメント(0)
![]()
「駅」シリーズ第一弾。東京駅を舞台にした殺人事件の真相を十津川警部が解く。何だか、虚しい結末を迎えましたね。
2020年04月23日
コメント(0)
![]()
親子とは何かを考えさせられる作品でした。最初から最後まで夢中になって一気読みしました。
2020年04月23日
コメント(0)

※BGMと共にお楽しみください。「少しからかったのに、殴る事ないじゃないか!」「うるせぇ!」「どうした、トシ?」 歳三と伊庭が屯所の中庭で口論していると、そこへ近藤がやって来た。「勇さん、聞いてくれよ!」「伊庭八に門下生だった奴の事を聞いていただけだ。」「いやぁ、トシさんに勇さんと何処まで進んだのかを聞いたら、いきなり殴られちゃってさぁ。」「いやぁ、そんな事を聞いてトシが照れるのは当たり前だろう?」「へぇ~、その様子だと二人共、もう・・」「馬鹿野郎、俺はまだ勝っちゃんに抱かれてねぇ!」「え、土方さん、近藤さんにまだ抱かれていないって事は、“処女”ですか?」「あ・・」 勢いにまかせて歳三は、自ら口にした言葉で墓穴を掘っている事に気づいたが、もう遅かった。「あ、俺急用を思い出したからこれで帰るわ。」「僕も巡察の時間だから失礼しま~す!」「おい、てめぇら・・」 伊庭と総司のいらぬ気遣いで突然二人きりにされた歳三と勇との間に、暫く気まずい空気が流れた。「勝っちゃん、さっきのは忘れてくれ・・」「トシ、今まで俺はお前の気持ちに気づいてやれなかった・・いや、気づいてやろうとしなかったんだな・・」「そんな、あんたが謝るような事じゃ・・」歳三がそう言って勇を見ると、彼は真っ直ぐな瞳で自分を見つめていた。「今夜、お前の部屋に行くから、待ってろ。」「あぁ、わかった・・」「ねぇ、あの二人あれからどうなったのかな?」「さぁね。でもあんたも憎いねぇ。わざと気を利かせてトシさんと勇さんを二人きりにさせるなんて・・」「それは伊庭血さんだって同じでしょ?あの時、わざと土方さんを怒らせて本音を出させたよね?策士だね。」「はは、バレたか。」「近藤さんは伊庭さんにとって恋敵でしょう?何で敵に塩を送るような真似を?」「恋敵なんておこがましい。俺はいつだってトシさんの幸せを願っているだけさ。」「ふぅん。」総司は伊庭の言葉を聞いて少しつまらなさそうにそう言った後、少し冷めた茶を飲んだ。「まぁ僕も、土方さんの事は嫌いだけれど、近藤さんには幸せになって欲しいだけです。」「あんたは昔から勇さんが好きだったから、トシさんに勇さんを取られちまったみたいで面白くねぇんだろう?」「いやだなぁ、そんな事ありませんよ。」「まぁ、後はあの二人が上手くいってくれるように願うだけだな。」「そうですね。」そんな総司と伊庭の話を、密かにある男が聞いていた。「桂先生、こんな所に居たんですか、探しましたよ!」「済まない、喉が少し渇いていたから茶店に寄っていたんだ。」「すぐ勝手に居なくならないで下さいよ!」「あぁ、わかっているよ。」 男―桂小五郎はそう言って茶店を後にした。「桂先生、最近京で“マリア様”を見かけたという噂を聞きました。」「“マリア様”ね・・」「桂先生、ご存知なんですか?」「まぁね・・」 桂の脳裏に、江戸で“マリア様”と呼ばれていた歳三の姿が浮かんだ。「桂先生?」「いや、何でもない・・戻ろうか。」「はい。」 桂が長州藩邸に戻ると、そこには珍しい客人の姿があった。「おや珍しい、あなたの方からこちらを訪ねて来るなんて・・」「おや、いけませんか?」「いいえ。しかし、わたしとあなたとの関係が知られたら、彼らが放っておかないと思うのですかねぇ―伊東さん。」「構いません。いずれ時が来たら、わたいは彼らの元を離れるつもりですから。」そう言った伊東は、口元に笑みを浮かべた。「伊東さんは、土方歳三の事をどうお思いで?」「土方君とは、相性が合いません。彼はやけにわたしにつっかかってくるし・・」「そうか。わたしも余り彼の事を好きになれないね。価値観が違い過ぎる。」「どうしてそんな事を?」「興味本位で聞いてみただけです、お気になさらず。」「は、はぁ・・」「先生、お茶が入りました。」「ありがとう。」 歳三は、副長室で勇が来るのを待っていた。 今夜、彼に抱かれるのだと思うと、歳三は急に緊張してきた。「トシ、入るぞ?」「お、おぅ!」 緊張の余り、声が裏返ってしまった事に気づいた歳三は、頬を羞恥心で赤く染めた。「どうした、トシ?顔が赤いが、熱でもあるのか?」「いや・・今夜あんたに抱かれると思ったら、緊張しちまっただけだ・・」「そ、そうなのか・・」 歳三が俯いていた顔を上げて勇の顔を見ると、彼は自分と同じように頬を赤く染めていた。「勝っちゃん・・」「トシ、ずっとお前を抱きたかった・・」「俺だって、ずっとあんたに抱かれたかった。」歳三はそう言って、勇に抱きついた。「トシ、愛している・・」「俺もだ、勝っちゃん・・」 月明かりが、徐々に重なり合う二人の影を優しく照らした。 歳三が翌朝目を覚ますと、隣に寝ていた筈の勇の姿はそこにはなかった。「トシ、朝餉を持って来たぞ。」「済まねぇな、勝っちゃん。」「身体、辛くないか?昨夜はその、お前に無理をさせてしまったから・・」「だ、大丈夫だ・・」歳三はそう言って朝餉を受け取ると、赤くなって俯いた。 その時、彼の白い首筋に散らばる赤い痕に気づいた勇は、思わず息を呑んだ後、頬を赤く染めて俯いた。にほんブログ村
2020年04月23日
コメント(2)

※BGMと共にお楽しみください。「やったなぁ、勝っちゃん!俺達の夢が漸く叶ったぜ!」「あぁ、トシ、お前のお蔭だ。」 歳三と勇は、『武士になる』という長年の夢を叶え、感慨無量であった。「これでもう、馬鹿にされずに済むぜ。」「あぁ・・」歳三のそんな姿を見ながら、千は少し複雑な思いを抱いていた。この後、新選組を待っているのは過酷な運命しかない。そしてそれを、誰にも変える事は出来ない。(このまま僕は、黙って見ているしかないのかな・・)「どうした、千?何処か具合でも悪いのか?」「いいえ。」「千、丁度えぇ所に居ったわ。少し、手伝って貰えへんか?」「は、はい・・」 山崎に急に呼び出され、千は彼の部屋へと向かった。「お邪魔します・・」「千、さっきどこか浮かない顔しとったな?何か悩みでもあるんか?」「いいえ、別に。」「最近、荻野にしごかれているやろう?同じ顔していても、性格は全く違うなぁ。」「確かに・・」「そういや、最近千も少しずつあいつに似てきたな。」「え、何処がですか?」「・・お前、ちょっと着物脱いでみ?」「へ?」「えぇから。」 山崎はそう言うなり、千の着物を脱がし始めた。「ちょっと、何を・・」「やっぱり身体つきが少し変わっとるなぁ。」「身体つき、ですか?」「そうや。お前、前はこんなに筋肉ついてなかったやろ?」 山崎は千の腹斜筋を少し触りながら彼を見ていると、そこへ歳三が入って来た。「てめぇら、一体何を・・」「土方さん、これは決して嫌らしい事では・・」「千の腹斜筋を確めていただけです。」「そうか。それよりも山崎、先程こんな包が俺宛に届いた。」「差出人の名前が書いていませんね。」「俺が開けます。」 山崎が土方宛に届いた包を開けると、そこにはタロットカードが何枚か入っていた。「これは?」「西洋の占いの道具です。」千がそう言いながらタロットカードを一枚ずつ見ていると、あるカードの裏にメッセージが書かれている事に気づいた。“このカードで君達の運命を占ってみたらどうだ?”そのカードは、“The Death”―死神だった。そのカードを見た時、千は誰がこのカードを歳三に送ったのかわかった。(薄井さん、一体何を考えて・・)この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年04月23日
コメント(0)
![]()
人の業が良く描かれた作品でした。
2020年04月20日
コメント(0)
![]()
息をつかせぬ展開が続いた後に衝撃的なラスト。この人の作品は男女の心の機微を描くのが上手いですね。
2020年04月20日
コメント(0)
![]()
話題のエッセイ。セクシュアリティや人種差別について、子供ながらのめせんで描かれており、ブレイディみかこさんの息子が日本で受けた差別についても書かれており、セクシュアリティとは、多様性とはなにかを考えさせてくれる作品でした。
2020年04月20日
コメント(0)
「降って来たわね。」「えぇ、そうね。酷くならない内に狩りを切り上げましょう。」 雨が降りしきる中、ルチア達は森の中を馬で駆けていった。 だが、狩りの効果は散々なものとなった。「もう切り上げましょう。」「そうですね。」 ルチアは角笛で狩りの終了を告げるよう係に命じたが、彼は突然暴れ出した馬を押さえるに必死でそれどころではなかった。「どう、どう!」「一体どうしたの?」「わかりません、急に暴れ出してしまったので・・」「ルチア様、向こうに休める場所があります!」「そこで休みましょう。」 一行は、森の向こうにある狩猟小屋へと向かった。「ここなら当分、雨風をしのげそうね。」「はい、ルチア様。」ルチア達は、嵐が過ぎ去るまで狩猟小屋に避難する事になった。「何か食べられる物を持って来ます。」「わたしも行こう。」「二人とも、気をつけてね。」 ルチアはそう言って厨房へと向かうアンダルスとガブリエルを見送った後、窓の外を見た。 嵐は、まだ止みそうになかった。 一方、森の中では嵐を避ける為、木の洞穴に避難している民族衣装の男達は、向こうから“魔物”がやって来る気配を察知した。「どうしたの?」「何か良くないものが来る。」「わたしに任せて!」 男の隣に居た腕に入れ墨を彫った女が、背負っていた矢筒から一本矢を抜き、弓を引き絞った後それを“魔物”に向けて放った。「当たったわ!今の内に逃げましょう!」「あぁ・・」 男達は洞穴から出ると、“魔物”から逃れるように、ルチア達が居る狩猟小屋へと向かった。 その厨房では、アンダルスとガブリエルが運良く食糧庫の中に保存されていた、腐っていない食べ物を見つけて歓声を上げた。「早くルチア様にこの事を知らせないと!」「君はここに居ろ。わたしがルチア様に伝えて来る。」「わかった。」 ガブリエルがルチア達が居る居間へと向かったのを見送ったアンダルスは、外から誰かが扉を激しく叩く音がしたので、火掻き棒を掴んで彼は恐る恐る勝手口の扉を開けた。「やっと会えた、姫様。」「あなた達、どうしてここに?」「アムリカ、ここなら安全だ!」 女の背後から厨房に入って来たのは、あの民族衣装の男だった。「ねぇ、あなた達は何者なの?」「わたし達は森と共に生きる、アウルの民です。」「アウルの民?」「エルムントから、あなた様のお話を良く聞いておりました。」「お師匠様を知っているの?」「知っているも何も、エルムントは我ら民族の末裔です。彼は音楽の女神と森の精に愛された逸材でした。自己紹介が遅れました、わたしはアムルと申します。」「アムル、何故僕を“姫様”と?」「それは・・」にほんブログ村
2020年04月20日
コメント(0)
![]()
キアヌ・リーブスとモーガン・フリーマンの、サスペンス映画。水素エネルギー装置を巡る財団の陰謀に巻き込まれるキアヌ様。モーガン・フリーマンが事件の黒幕かとおもっていましたが、彼は最後まで味方でしたね。最初から最後まで飽きさせない展開でした。これが24年前の作品なんて信じられないです。
2020年04月20日
コメント(0)
龍馬が昨夜千の部屋に闖入してきた事は、瞬く間に新選組内に広まった。「よぉ千、お前昨夜男に夜這いかけられたんだってな!」 翌朝、千が隊士達と共に朝餉を取っていると、そこへ原田左之助がそう言いながら彼の肩をバシンと叩いた。「よ、夜這いって・・」「お前も隅に置けねぇなぁ!まぁ、お前も可愛い顔をしているからなぁ・・」「は、はぁ・・」 女を満足に遊郭で抱けない平隊士の間で暖色が一時期流行っていたと聞いていたが、原田の口ぶりから察するに、“それ”は未だに流行っているようだった。「あの、荻野さんはどちらに?」「あいつならさっき土方さんに呼ばれて副長室に行ったぜ。」「そうですか、ありがとうございます。」朝餉を食べた後、千が副長室へ向かうと、中から歳三と千尋の話し声が聞こえた。「土佐の坂本とお前は親しいのか?」「いいえ。一方的にあちらが絡んでくるだけです。」「そうか。それよりも、お前ぇの父方の親族から、昨夜こんな文が届いた。」「そうですか・・」 千尋は歳三から自分宛の手紙を受け取り、それに目を通した。「・・文には何と書いてある?」「わたくしの遺産相続の件について、近々あちらで家族会議が開かれるそうです。」「そうか。」「家族会議とは名ばかりの、無益な話し合いです。」「無益な話し合いじゃねぇだろう。お前ぇの一生に関わるものなんだから・・」「ですが・・」「それよりも、いつまでそこに居るつもりですか?入って来なさい。」「は、はい・・」 千が副長室に入ると、千尋が渋面を浮かべながら千を見ていた。「丁度いい所へ来ましたね。」「え?」 千尋が千に話したのは、レイノルズ家との関係の事と、千が彼に成り代わるという話だった。「どうして僕が・・」「あなたにしか頼めないからです。まぁ、向こうを欺く為には、完璧にわたくしになって頂かないといけませんね。」「そんなの無理です!」「無理だとか出来ないとか言う前に、やりなさい!逃げ癖など身に着けてはなりません!」「は、はい・・」 こうして、千は戸惑いながらも、突然千尋から武道や華道・茶道・芸事等を全て厳しく叩きこまれる日々を送る事になった。「あ~、疲れた。」 千が疲弊した身体を引き摺りながら道場から出ると、急に母屋の方から雄叫びのようなものが聞こえて来た。(何?)この日―1868(慶応3)年6月10日、新選組は会津藩預かりから隊士全員が幕臣となったのだった。この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年04月20日
コメント(0)

加納英吉が歳三と初めて会ったのは、江戸・御徒町の心形刀流の道場・練武館の門下生だった頃の事だった。 そこには、天賦の剣の才能を持った“伊庭の小天狗”こと伊庭八郎が居た。 英吉は旗本の三男坊で、家督を継げぬかわりに、剣の腕を磨こうと練武館の門を叩ものの、連日の厳しい稽古についていくのがやっとという有様だった。 そんな中、練武館に天然理心流の者達が稽古をしにやって来た。「天然理心流四代目宗家・近藤勇と申す。」「トシさんからあなたの話は聞いていますよ。今日、トシさんは?」「あぁ、トシなら、今日は所用があるとかで少し遅れて来るそうです。」「そうですか、それは少し残念だなぁ。」伊庭八郎はそう言って溜息を吐くと、岩のように厳つい顔の男と話していた。 同じ剣術といっても、天然理心流は実践を重んじる“喧嘩剣法”で、木刀を稽古で使用し、剣術だけではなく柔術や棒術などをあわせ持ったものだった。 田舎剣法とはじめ馬鹿にしていた英吉達門下生は、ことごとく近藤達によって倒された。(強い、こんなに強いなんて・・) 英吉はただただ、近藤達の強さに圧倒されていた。「すまん、遅れた!」 その時、英吉に運命の人が現れた。「遅かったじゃないか、トシ。」「悪ぃな、用事を少し済ますつもりが、遅くなっちまった。」「トシさん、用事って何ですか?もしかしてまた別れ話・・」「そんな訳ねぇだろ、バカ!」 夜の闇を全て集めたかのような艶やかな黒髪、雪のような白い肌、そして美しく澄んだ蒼い瞳―英吉はたちまち、“彼”の美しさに魅了された。「あれが、“バラガキのトシ”か・・」「彼を知っているのか?」「あぁ、知っているも何も、あんな役者みてぇなツラして、触れると血が出ちまうほど茨のように気性が荒いんだと。だから、“バラガキのトシ”と呼ばれてんのさ。」 その日から、英吉は只管歳三の姿を見たいがために多摩まで足繫く通った。―一度だけいい、自分に歳三が笑いかけてくれたら、どんなに幸せだろう・・ そんな事を思いながら英吉は多摩まで行っては、試衛館の前で歳三が通りかかるのを待つ事しか出来なかった。 しかし、そんな彼に運命の女神が漸く微笑んでくれた。「あなた、誰ですか?いつもここに来ていますよね?」 英吉がいつものように試衛館の前で歳三が通りかかるのを待っていると、そこへ一人の少年が現れた。「え~と、そのぉ・・」「何も用がないならここに来ないでくれます?はっきり言って迷惑なんですけど。」少年はそう言うと、蔑みを含んだ翡翠の瞳で英吉を見た。「ぼ、僕は・・」「おい総司、そんな所で何してんだ?」 背後から声を掛けられ、英吉が振り向くと、そこには彼が恋焦がれている相手が立っていた。「この人、毎日試衛館の前で誰かを待ち伏せしているようなんですよ。」「お前ぇの知り合いか?」「こんな気色の悪い奴、知りませんよ。」「そうか。」「あ、あの、お久しぶりです・・土方さん。」「あぁ、どうも。」 英吉に掛けられた言葉は、素気ないたった一言のものだったが、それだけでも英吉の気持ちは天にも昇るようなものだった。「あ、あのぉ・・」「土方さんの知り合いですか?」「さぁな。」 頬を紅潮させながら歳三に話しかけようとした英吉だったが、そんな彼を無視して歳三と少年は彼の脇を通り過ぎていった。「最近来てなかったじゃないですか。土方さん、また女の人との別れ話がこじれたんですか?」「おい、人を女たらしみてぇに言うんじゃねぇ!」「事実じゃないですかぁ。」「トシ、来たのか!」「勝っちゃん、久しぶり!」 英吉は、歳三が近藤と楽しそうに話しているのを見て、肩を落としながら試衛館を後にした。 それから彼は、二度と多摩を訪れなかった。 歳三たちが上洛したと英吉が知ったのは、それからすぐの事だった。(僕の恋は、あの時終わったと思ったよ・・でも、僕が父上に命じられて上洛するなんて、思いもしなかったよ!)「若様?」「ねぇ・・あの人は京で何をしているの?」「何でも、土方達は壬生浪士組という組織に入ったそうです。ですが会津藩から『新選組』という名を賜ったようです。」「そう・・」(まるで夢みたいだ、僕の手の届く所に君が居るなんて!)「トシさん、久しぶり!」「おぅ、誰かと思ったら伊庭八じゃねぇか。お前ぇも京に来ていたのか?」「はい。トシさん、それは?」「先程、俺宛に届いた文だ。なぁ伊庭八、加納英吉って奴知ってるか?」「あぁ、うちの門下生だった奴ですよ。何だかトシさんに気があるようだったなぁ。」「は、俺に?気色悪い事言うな!」歳三はそう言うと、自分宛の文の中身も見ずに破り捨てた。「ところでトシさん、勇さんとはあれからどうなっているんですか?」「馬鹿野郎、いきなり何言いやがる!」「その反応だと、もう勇さんに抱かれたね、トシさん?」 伊庭がニヤニヤしながらそう言った後、彼の顔に歳三の拳がめり込んだ。にほんブログ村
2020年04月19日
コメント(0)
![]()
それぞれ、家族に悩む人達を取り上げた短編集でしたが、どの話も救いのあるラストで良かったです。
2020年04月17日
コメント(2)
![]()
何だか衝撃的な展開が続いて息をつかせぬほどの韓流サスペンス映画でした。未成年が行方不明になったというのに、父親が捜索に無関心で、それを選挙に利用しようとするところが怪しいし、娘の担任教師がやけに協力的なのも怪しい。…真相がわかって驚きましたが、やはりなぁと思ってしまいました。後味が悪いですが、主人公が夫と不倫相手に復讐するシーンにはスカッとしましたね。娘は死んでしまいましたが、主人公の前に幽霊として現れてくれて良かった。韓国映画は、結構報われない結末や展開ばかりを描いていますが、観始めると止まらないですね。
2020年04月17日
コメント(0)
![]()
ある日、猫のタロのもとに、ハムスターのムー君がやってきた。はじめは意地悪をしていたけれど、ムー君とともだちになったタロ。でも、ムー君との別れは突然やってきて・・タロとムー君の別れのシーンは、読んでいて自然に涙が出ました。昔飼っていたハムスター達を見送った時のことを思い出し、二匹のお墓をつくってやれなかったことを今更ながらに後悔しています。動物は人より先に死ぬので、家族同然だったペットを亡くすのは辛いです。しかし、わたしは彼らと過ごした時間をいつまでも忘れません。
2020年04月17日
コメント(2)
天童が自害し、御陵衛士達の間に動揺が走った。「伊東先生、わたし達は大丈夫なのですか?」「大丈夫だ。落ち着きたまえ。」「ですが、天童の自害は、新選組の仕業だという噂が・・」「それは嘘だ。天童は自らの名誉を守る為に自害したのだ。君達も、土方の拷問がどんなものなのか知っているだろう?」「そ、それは・・」「生きて虜囚の辱めを受けるよりも、天童は潔く死を選んだのだ。諸君、今宵は天童の為に弔いの宴を開こうではないか!」「そうだ、そうだ!」「天童を称えよう!」 天童を弔う為に開かれた酒宴には、藤堂と斎藤の姿はなかった。「なぁ、土方さんが天童を・・」「それはない。」「どうしてそう言い切れるの?」「土方さんは、慎重深い人だ。隊内に敵の間者が潜んでいると知ったら、すぐには殺さず、相手を泳がせる。殺すとしたら、相手から徹底的に情報を引き出した後でだ。」「確かに。」「しかし、伊東は天童の死を利用している・・いや、利用しようとしている。」「何で、そんな事・・」「恐らく、新選組に対する憎しみを植え付ける為だろう。」「伊東さんが、どうして・・」「彼にとって、新選組は目の上のたんこぶのようなものなんだ。」「これから、俺達はどうなるんだろう?」「・・それは誰にもわからない。」斎藤はそう言うと、溜息を吐いた。 一方、西本願寺の新選組屯所内の一室で千が眠っていると、誰かが部屋に入ってくる気配がした。 そのまま気づかぬ振りをしていると、相手は大胆にも布団の中に潜り込んで来た。「何すんだ、この変態!」 千がそう叫びながら自分の布団に潜り込んで来た相手の顔を拳で殴ると、微かに手応えがあった。「おい千、どうした!?」「僕の部屋に変態が・・」「わしゃぁ変態じゃないき、信じてくれ!」 千が蝋燭で闖入者の顔を照らすと、その人は坂本龍馬だった。「さ、坂本さん、一体こんな夜中に何の用ですか?」「それはのぅ、ちぃっと訳があるがじゃ・・」「その訳、とは?」「おんしが首に提げているその装身具、ちぃっと見せてくれんかのう?」「は?嫌に決まっているじゃないですか、そんなの。」「・・邪魔したのう。」」(変な人・・)この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年04月17日
コメント(0)

長崎で、真紀とあいりが龍馬の下で砲術の稽古を受けるようになったからはやひと月が過ぎた。 はじめはただ銃声に驚いていた二人だったが、今や弾の発射後の装填も滞りなく出来るようになった。「二人とも、偉い成長したのぅ。流石、若い者は呑み込みが早いのう。」「何をおっしゃる、坂本殿もお若いではありませんか?」「はは、そうじゃのぅ!」 稽古の後、龍馬は昼食を取りながら、抜けるような青空を見ながら、歳三の美しい青い瞳に想いを馳せた。「坂本殿、箸の手が止まっておりますぞ。」「いやぁ、済まんのぉ。ちょっと想い人の事を考えとった。」「まぁ、坂本はんにもそないな人が?」「わしにも想い人の一人や二人位いるぜよ!」「どんな方なのですか?」「そうじゃのぅ、髪は艶のある黒髪で、肌は雪のように白い。そして瞳は美しい蒼をしとる。じゃが、美人だというのに気が強い。この前尻を挨拶代わりに撫でていると、頬を張られたじゃ。」「それは当然でしょう。」「もしかして、その御方は“マリア様”どすか?」「“マリア様”?」「へぇ、うちらキリシタンの間では、黒髪に蒼い瞳の“マリア様”に会うと、幸せになれるという伝説があるんどす。」「ほぅ、そうかえ。あいりは、その“マリア様”と会うたことがあるがか?」「一度だけ、京で会いました。」「そうかえ。わしも一度だけでいいから、その“マリア様”に会うてみたいのぅ。」 その“マリア様”こと、新選組副長・土方歳三は、伊東が入隊して以来、いつもイライラしていた。 そしてそのイライラは、平隊士達に向かっていた。「そこ、声が小せぇ!」「腰がひけてるぞ!」 その日の朝稽古、平隊士達は鬼副長から厳しい“洗礼”を受け、次々と倒れていった。「土方さん、平隊士達に八つ当たりしないで下さいよ。」「うるせぇ。」「僕だって、伊東(あいつ)の事嫌いですよ。何だか近藤さんの事軽んじているし、お高くとまっているし・・」「お前ぇとは妙に気が合いそうだな。」「まぁね。土方さん、僕はあなたの事が嫌いです。でも、心の底からあなたの事を嫌っている訳じゃないですよ。」「わかっているよ、そんな事ぁ。」歳三はそう言って総司の頭を撫でようとしたが、彼によってその手を邪険に払いのけた。「やめて下さい、もう子どもじゃないんですよ。」「済まねぇ。」歳三がそう言って笑った後、道場に勇が現れた。「二人共どうした?こんな所に居るなんて珍しいな?」「あれ、近藤さん、今日は黒谷に用事があるんじゃないですか?」「そうだが、少し時間があってな。それまで三人で甘味でも食べようと思ってな・・」「わぁ、大福だ!僕ここのお店の大福大好きなんですよ!」「そうか、トシもどうだ?」「いらねぇ。」「土方さん、甘い物を食べて気分を落ち着かせましょうよ。」「わかったよ・・」「美味しいなぁ、この大福!」「そうか。総司が喜ぶ顔を見られて良かった。」「近藤さん、珍しいですね。僕だけならともかく、土方さんに甘味を買って来るなんて・・」「あぁ、ちょっとな・・」「あ、僕これから巡察だった!」総司は突然そう叫ぶと、副長室から飛び出した。「何だ、あいつ・・」「トシ、伊東さんの事で、お前がイライラしている事を、総司から聞いたよ。」「総司の奴、余計な事を・・」歳三がそう言って舌打ちすると、勇はそっと歳三の頭を撫でた。「勝っちゃん、俺はガキじゃねぇ!」「トシ、伊東さんは魅力的な人だが、俺がこの世で愛するのはお前ただ一人だけだよ。」「勝っちゃん・・」「だから、機嫌を直してくれないか、トシ?」「馬鹿野郎・・」そう勇に言って俯いた歳三の顔は、耳元まで赤く染まっていた。「・・ねぇ、本当なの?」「はい。確かに見ました。」「そう・・こんなに近くに居るなんて、思いもしなかったよ!」 薄暗い部屋の中で、男の欲望に滾った目だけがギラギラと輝いていた。(ねぇ、君は覚えていないだろうけれど、僕は君と会った日の事を覚えているよ・・) 男―加納英吉は、歳三と初めて会った日の事を思い出していた。にほんブログ村
2020年04月16日
コメント(0)
「お母様、お目覚めになられたのね?」「ルチア、わたくしはどうして寝室に?」「急に倒れられたから、びっくりしたわ。」 ルチアはそう言ってリリアの手を握った。「侍医は貧血を起こしていると言っていたわ。」「そう・・ルチア、一番大事な時期なのに心配をかけてしまってごめんなさいね。」「謝らないで、お母様。」「ルチア、アレクサンドリア様と幸せにおなりなさい。」「はい、お母様・・」 アレクサンドリアとは本当は結婚したくないが、母を安心させたくてルチアは嘘を吐いた。 彼は傲慢で、ルチアとは全く違った価値観を持っている。政略結婚とはいえ、ルチアはアレクサンドリアの元へ嫁ぐ日の事を考えると憂鬱な気持ちになった。 そんな中、週末を迎えたルチアは、予定通りに狐狩りを開催した。「良かったわ、いいお天気で。」「最高の狩り日和ね。」貴族達がそんな事を言いながら馬で移動していると、そこへガブリエルとアンダルスがやって来た。―見て、ガブリエル様よ・・―相変わらずお美しいわね。―お隣の方は、あのアンダルス様ね。―お二人共、お似合いのカップルではない事?―でも、ねぇ・・ アンダルスは、自分達の噂話に興じている貴族達を冷めた目で見ていた。「どうした?」「いや・・暇人はどこにでも居るんだね。」「そうだな。」 アンダルスは、ガブリエルと共に狩りが行われる場所へと向かった。 そこには既に、ルチアとマリアの姿があった。 だが、アレクサンドリアの姿はなかった。「本日は狩りにお招き頂き、ありがとうございます、ルチア様。」「アンダルス、忙しいのにわざわざ狩りに来て下さってありがとう。」「アレクサンドリア様のお姿がどこにも見当たりませんね?」「あぁ、お兄様ならお風邪を召されてしまって狩りには参加できないとおっしゃっていたわ。」「まぁ、それは残念ね。」 ルチアはそう言っていたが、その顔が何処か嬉しそうにアンダルスは見えた。「さてと、そろそろ皆さんが集まって来た所だし、始めましょうか?」「えぇ。」 ルチアは侍従に目配せすると、彼は狩りの開始を告げる角笛を吹き鳴らした。「アンダルス、わたしから離れるなよ。」「わかった。」 狩りが始まる前は晴れていたが、角笛の音が森の中に響き渡った頃には、次第に空は黒雲に覆われていった。にほんブログ村
2020年04月16日
コメント(0)
![]()
美しく激しく、そして短い35年という時を生きた土方歳三の生涯を描いた作品。何だか大河ドラマ「新選組!」を思い出しながら読みましたが、こちらの作品の方が大河ドラマ向けでした。ただ、ひとつ不満だったのは土方さんのイケメンぶりばかりが押し出された感じでしたかねぇ・・少女漫画ならいざ知らず、それを小説で出されると少し萎えましたし、イラッとしましたね。
2020年04月14日
コメント(0)
![]()
上野駅で起きた殺人事件の真相を探る十津川たち。何だか、後味が悪い結末でした。
2020年04月14日
コメント(0)
![]()
最初から最後まで息をつかせぬ展開が続いた作品でした。十津川警部シリーズとは一味違ったもので、読んでいて新鮮でした。
2020年04月14日
コメント(0)
![]()
サラブレッドを愛する兄の失踪と、兄の消息を知る女の死に隠された犯罪の陰。山村美紗さんの作品は、人間の情念を描くのが上手いですね。
2020年04月14日
コメント(0)
![]()
京都で起きた連続殺人事件の裏には、もうひとつの事件が絡んでいたー陰陽道にまつわるエピソードがありましたが、結局は人間の強欲さと身勝手さが引き起こしたものですね。
2020年04月14日
コメント(0)
![]()
アラジンの実写版映画は観ていませんが、ジャスミン王女の凛とした強さやアラジンの真っ直ぐな性格は変わっていませんでしたし、物語も最高でした。機会が会ったら実写版映画の方も観てみたいと思います。
2020年04月14日
コメント(0)
![]()
いよいよ最終巻!秀麗とりゅうきはこれからどうなってしまうのか…というところで上巻が終わり、下巻へ。下巻は一気にこれまでの伏線が次々と回収されていき、怒涛の展開が続いてページを捲る手が止まりませんでした。秀麗の短い生涯とその功績は彼女の名とともに末代まで語り継がれてゆくのでしょうね。全17巻という長編中華ファンタジーですが、読みごたえがあって面白かったです。
2020年04月14日
コメント(0)
あの舞台が功を奏したのかどうかはわからないが、舞台の後から何故か急に入隊希望者が新選組屯所の門を連日叩くようになり、その対応に千達は追われていた。「入隊希望者が増えるのは嬉しいんですがねぇ、屯所が手狭になる一方ですね。「そりゃ志方ねぇな。それにしても、天童の奴最近にやけに大人しくねぇか?」「えぇ、そうですね。平田さんがお亡くなりになってからは特に・・」 天童と平田が長州側の間者であった事は、新選組内では周知の事実だった。 しかし、平田が謎の死を遂げた後、あれほどまでに歳三にまとわりつき、彼の周囲に探りを入れていた天童は、今は鳴りをひそめているかのように大人しくなっている。「あいつが長州側の間者だったはねぇ。まぁ、最初から怪しいと思っていたんだが・・」「副長は暫くあいつを泳がせておくように言っていたが、監察方は何か掴んでいるのか、千?」「さぁ、僕は何も知りません。」―良いですか、誰かに何かを聞かれても、何も言ってはなりません、わかりましたね。(千尋さんは7あぁ言ったけれど、多分隊内(ここ)には平田さん以外に天童さんと繋がっている者が居るかもしれない・・)「千、副長が呼んでいるぞ。」「わかりました、すぐに行きます。」 厨房から出て、千が副長室へと向かっていると、彼は中庭で何かが光っている事に気づいた。(何だろう?) 千が“それ”を拾い上げると、“それ”は拳銃だった。 指紋をつけないように、千は拳銃を懐紙で包むと、それを持って副長室に入った。「土方さん、千です。」「入れ。」「失礼致します。」「それは何だ?」歳三はそう言うと、千が持っている拳銃を見た。「中庭で見つけたんです。」「こんな物騒なもんを落としたのは何処のどいつなんだ?」「さぁ、わかりません。」千はそう言うと、拳銃に弾が装填されていない事に気づいた。「この銃、弾が入っていません。」「そうか。それよりも千、例の件は誰にも話してねぇだろうなぁ?」「はい、誰にも話していません。」「そうか。この銃は俺が預かっておく。」「わかりました。それにしても、天童さんが妙に静かですね・・」「向こうから下手に動くなと言われているんだろう。なぁ千、土佐の坂本が言っていた事は本当か?」「はい。アメリカで内戦が終わって、その内戦で使用済みになった銃が近々流れてくるそうです。」「そうか。それにしても、この前お前を拉致したエゲレス軍の動きも気になるな・・」「はい。」千と歳三がそんな話をしていると、廊下の方から慌しい足音が数人分聞こえてきた。「土方さん、大変だ!」「どうした、お前ら!」「天童が自害しました!」「それは本当か?」「はい・・」 千と歳三が天童と平田が使っていた部屋に入ると、そこは血の海だった。 これで、彼が長州側と繋がっている証拠が手に入らなくなってしまった。「・・そうか、天童が・・」「ご安心下さい、彼の遺書は処分致しました。」「助かったよ、向こうにわたし達の動きがバレたら大変だからね。これからもよろしく頼むよ。」「はい・・」 御陵衛士の屯所である高台寺の中にある一室で、伊東甲子太郎はそう言って一人の青年に微笑んだ。「これから、どうなさるのですか、伊東さん?」「さぁね。」この作品の目次はコチラです。にほんブログ村
2020年04月14日
コメント(0)
![]()
湊かなえさんのミステリーは、ほっとした展開の後に予想もしないラストが待っていて、この作品も先が知りたくて一気読みしてしまいました。
2020年04月13日
コメント(0)
「進撃の巨人」の二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 「お義父様も、お元気そうで何よりです。」 「奈々さんの事は非常に残念だったが、君達が来てくれた事は、奈々さんが喜んでいるんじゃないかな?」 「そうだと、いいんですか。」 エルヴィンとリヴァイが奈々の焼香を終えて寺を後にしようとした時、奈々の父親がエルヴィンに向かって何かを投げつけた。 「お前の顔なんて二度と見たくない、とっとと消え失せろ!」 「エルヴィン、行こう。」 「あぁ・・」 寺を後にした二人は、その足でリヴァイの実家へと向かった。 「ただいま戻りました、お義母さん。」 「お帰りなさい、エルヴィンさん。あちらの様子はどうだったの?」 「余り歓迎されませんでした・・当然ですよね、彼女を死なせたのはわたしなのですから。」 「それは違うわ、エルヴィンさん。そんなに自分を責めないで。」 「ありがとうございます、お義母さん。梓を預かって貰って助かります。」 「お礼なんて言わなくていいのよ。わたしも孫に会えて嬉しいわ。」 クシェルはそう言うと、エルヴィンに優しく微笑んだ。 「母さん、ここで一人暮らしは大変だろ?うちに来て一緒に暮らさないか?」 「そんな、悪いわよ・・」 「リヴァイの言う通りです、お義母さん。同居だとわたし達も安心ですし、何かあればすぐに対応できます。」 「そうね。ここの家は、一人で住むには広過ぎるわね・・」 クシェルの家からの帰り道、リヴァイはチャイルドシートに座って眠っている梓の頭を撫でた。 「なぁエルヴィン、この前の話、覚えているか?」 「二人目を考えるって話か?」 「あぁ。俺もお前もそんなに若くねぇし、梓に弟妹を作ってやりてぇ。」 「そうだな・・」 エルヴィンは、梓が可愛がっているキンクマハムスターのコスモが腫瘍を抱えてもう長く生きられない事を知っていた。 もともとスミス家に迎えられた時から、コスモは既に生後半年を過ぎていたし、ペットショップで粗悪な餌を与えられた所為で、彼の身体にはその毒素が蓄積していったのだと、エルヴィンは獣医からそう言われて、コスモが抱えている苦しみや痛みを代わってやれない悲しさに襲われた。 リヴァイとよく話し合い、エルヴィンはコスモに出来る限りの事をしてあげようと決めた。 コスモの腫瘍は日に日に大きくなっていたが、彼は生きる事を最期まで諦めなかった。 そして彼は、リヴァイ達が見守る中、静かに息を引き取った。 エルヴィンがコスモの遺体を植木鉢を入れ、彼が生前大好きだった向日葵の種と共に埋めた。 「パパ、早く早く~!」 「わかったよ、梓。お願いだからそんなに走らないでくれ。」 植木鉢に埋めた向日葵が咲いて何度目かの夏を迎えた後、エルヴィンは梓と共に近所の公園へ遊びに来ていた。 「ねぇパパ、ママと赤ちゃんはいつ帰ってくるの?」 「それは、パパにはわからないなぁ。」 リヴァイが梓の弟である忍を産んだのは、つい一ヶ月前の事だった。 リヴァイの産後の肥立ちが悪く、彼の体調が回復次第退院する事になっているが、それがいつになるのかはわからない。 「梓、もう帰ろうか?」 「やだ、まだ遊ぶ!」 「おい、余りパパを困らせるんじゃねぇぞ、梓。」 エルヴィンが駄々をこねている梓を必死に宥めていると、そこへ忍を抱いたリヴァイがやって来た。 「ママ、お帰りなさい。」 「ただいま、梓。」 リヴァイは、愛娘に優しく微笑んだ後、エルヴィンの方を見た。 「ただいま、エルヴィン。」 「おかえり、リヴァイ。」 夕陽が照らす中、リヴァイ達は仲良く並んで歩きながら家路を辿った。 (完) にほんブログ村
2020年04月13日
コメント(0)
「進撃の巨人」の二次創作小説です。 作者様・出版者様とは関係ありません。 二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 「・・そうか、奈々が・・」 土方から奈々の自殺を知ったエルヴィンは、その日一日中仕事が手につかなかった。 「ただいま・・」 「お帰り、エルヴィン。」 珍しく夜遅くに帰宅した夫の様子がおかしいことに、リヴァイは気づいた。 「何かあったのか、エルヴィン?」 「奈々が自殺した。」 「それは本当か?」 「あぁ。彼女は取り調べの際、こんな事を言っていたらしい・・」 “わたしばかり不公平だわ。昔も今も、幸せになれない。” 「その言葉を聞いた時、奈々が“彼女”だとはじめて気づいた。それなのに、わたしは・・」 「エルヴィン、忘れろ・・昔の事は、みんな忘れるんだ。」 リヴァイはそう言うと、エルヴィンを抱き締めた。 「どれだけ昔の事を悔やんでも、もう時間を巻き戻す事は出来ない。だから、今を生きろ!」 「リヴァイ・・」 「奈々は、もう死んだ。」 リヴァイはそう言うと、エルヴィンの涙を手の甲で拭った。 「もう、昔の事は忘れるんだ。」 「わかった・・」 エルヴィンが浴室でシャワーを浴びている間、リヴァイが洗濯物をベランダから取り込んでいると、エルヴィンのスマートフォンに着信を告げるメロディーが鳴り響いた。 『もしもしエルヴィン、奈々さんが自殺した事は知っているわよね?離婚したからと言っても、あなたにはまだ奈々さんの夫としての責任があるんだから、ちゃんと喪主としての責任を・・』 エルヴィンの母親の声をそれ以上聞きたくなくて、リヴァイはスマートフォンの電源を切った。 「さっき母さんの声が聞こえたんだが、気の所為か?」 「さっき、お前のお袋さんが奈々の葬式の喪主として責任を果たせと、勝手な事を言って来た。」 「そうか・・」 「で、どうするつもりだ?」 「彼女の葬儀には参列するが、すぐに帰って来る。」 「俺も行こう。」 「いいのか。」 「俺はお前の女房だ。一緒に行くに決まってるだろう。」 「ありがとう、リヴァイ。」 翌日、奈々の葬儀にエルヴィンとリヴァイが参列すると、そこにはエルヴィンの両親も来ていた。 「お久しぶりね、リヴァイさん。」 「大変ご無沙汰しております、お義父様、お義母様。」 「元気そうで良かった、リヴァイさん。」 にほんブログ村
2020年04月13日
コメント(0)
「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「・・とんだ結婚披露宴になっちまったな。」「あぁ。」 披露宴の後、エルヴィンとリヴァイは宿泊先のホテルの部屋に入った後、そう言いながら溜息を吐いた。「奈々はどうして、ここに来たんだ?」「さぁな。だが、あの女はもう二度と俺達の前には現れないだろうよ。」「そう願いたいね。」エルヴィンはそう言うと、リヴァイを抱き締めながら眠りについた。「彼女の様子はどうだ?」「変化なしです。相変わらず支離滅裂な事ばかり言っています。」「そうか・・」 土方歳三は、何処か暗く淀んだ目で自分を見つめているような奈々の顔を、マジックミラー越しに見た。「・・わたしばかり不公平だわ。昔も今も、幸せになれないなんて・・」 奈々は、ブツブツとそんな事を言いながら、髪の毛をイライラとした様子でいじった。(わたしばかり、どうしてこんな目に遭うの?) そんな事を思いながら奈々が取調室の入口の方を見た時、懐かしい人物がそこに居た。「彼女と二人きりで話をさせてくれ。」「はい、わかりました。」 部下が取調室から出て行くのを確認した土方は、奈々の前に腰を下ろした。「お久しぶりですわね、土方様。」「あぁ・・確かあんたは、エルヴィン=スミスの許嫁だった女か?」「えぇ、そうよ。昔(前世)はわたくしとエルヴィン様は結ばれなかったけれど、今度こそ彼と結ばれると思ったわ。それなのに・・わたくしはエルヴィン様に愛されない!どうしてなの!?」「それは、あんたとエルヴィン様がそういう関係じゃなかったからさ。」土方の言葉を聞いた奈々―もとい美禰(みね)は激しく嗚咽した。「あの、今のを調書にどう書けば・・」「夫と元妻がよりを戻すと知り、嫉妬に狂ってやったとか、適当に書けばいい。前世との関係がどうのこうのとか書いたら、上にはねのけられるに決まってんだろう。」「そうですね・・」 土方は溜息を吐きながら、取調室で啜り泣く奈々の姿を見た。 前世の記憶に執着し、囚われるという事は、何と愚かで哀れな事だろうか。 奈々が自殺したという報せを土方が聞いたのは、彼女を取り調べてから数日後の事だった。 彼女は隠し持っていたカミソリで、喉を突いて長時間苦しんだ末に、自分の血で窒息して死んだのだった。にほんブログ村
2020年04月13日
コメント(0)
「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「こちらこそお久しぶりです、沖田さん・・あ、今は土方さんでしたね?」「手術成功と、退院おめでとうございます。結婚式、わたし達も出席しますね。」「ありがとうございます。」“沖田総司”こと、土方由美はそう言ってリヴァイに微笑んだ。「エルヴィン、一体何だ・・この招待客リストの長さは?」「色々と、わたし達が日頃お世話になっている人達の事を考えて作ったら・・こんな風に長くなってしまった。」「俺達は芸能人じゃねぇんだぞ?招待客リストをはじめから作り直せ、今すぐにだ!」「わ、わかった・・」 エルヴィンが慌てて奥の書斎へと戻っていくのを見た由美は、思わず噴き出してしまった。「どうした、由美?」「何だか、お二とも昔から変わってないなぁと思って。」「あ、もうお子さん生まれたんですか?」「えぇ、元気な女の子です。顔はわたしに似ているんですけれど、性格は土方さん似かなぁ?」「まだわからねぇだろ?」「良かった、無事に産まれたんですね、おめでとうございます。」「ありがとうございます、梓ちゃんは幼稚園ですか?」「えぇ。何だか、梓とエルヴィンと三人で暮らしている事が、俺はまだ信じられません。」「それはそうでしょう。前世が波乱万丈だっただけに、今の幸せが実感できないというか・・」「わかります。」 リヴァイがそんな事を言いながら由美と笑い合っていると、スミス家のハムスター・コスモが巣箱の中から顔を出してあくびした。 「うわぁ、可愛いなぁ~!」「最初、俺はハムスターなんてネズミと同じだと思っていたんですけどね、毎日世話をしている内にすっかり情が移ってしまいました。」「わたし達、子どもが出来るまで動物を飼うかどうか迷っていて・・でも結局、動物を飼う前に子どもが出来たからその話はなくなりましたけど。」「そうですか。動物を飼うのって、意外とお金がかかりますものね。」「おい総司、もうそろそろ桜を迎えに行く時間じゃねぇのか?」「本当だ、もうこんな時間!じゃぁリヴァイさん、また会いましょうね。」「えぇ、また。」 結婚式まで後一ヶ月を切った頃、リヴァイはエルヴィンに連れられて、ドレスショップへと向かった。「おいエルヴィン、俺は絶対にドレスなんて着ねぇぞ!」「リヴァイ、お願いだから・・」「おい、その目はやめろ。」「梓にお前のドレス姿を見せてやりたいんだ・・」「わかった、ドレスは着るから、今すぐその目をやめろ、エルヴィン!」 結局、リヴァイはエルヴィンの提案を渋々と呑み、結婚式にドレスを着る事になった。「お色直しは、白無垢でいこう!」「あぁ、わかったよ・・」 結婚式当日は、雲ひとつない快晴だった。「ハンジさん、お久しぶりです!」「エレン、元気そうで良かった。」 結婚式が行われる予定の教会には、ハンジやエレン、ミカサやナナバ、そしてケニーとクシェルがやって来た。「ミカサ、今まで辛い思いをさせてしまって、申し訳ないわね。」「謝らないで、母さん。もう辛くて苦しい日々は終わったのよ。」「そうね・・」 ミカサとクシェルがそう言いながら再会を喜び合っている頃、新婦控室では渋面を浮かべているドレス姿のリヴァイが、仁王立ちでハンジと対峙していた。「おいハンジ、そのデカい箱はなんだ?」「見てわからない?メイクボックスだよ。」「てめぇのメイクの腕前が壊滅的なのは知ってる。それ以上近寄ると、俺はあの窓から飛び降りる。」「やだなぁリヴァイ、あんたにメイクするのはわたしじゃなくて、ナナバだよ。」「そうか、それなら安心した。」「まぁ、あんたの人生の晴れの日を台無しにしないよ、わたしは。」「さてと、早速メイクしていくよ。」 一方、新郎控室では、エルヴィンが友人達に囲まれていた。「まさかお前が妻子持ちだったなんて、思いもしなかったよ!」「今まで黙っていて悪かった。」「まぁ、人嫌いで気難しいお前が選んだ相手なんだから、俺達は受け入れるぜ。」「ありがとう。」 教会に入って来たリヴァイの美しさに、招待客達は息を呑んだ。「ママ、綺麗。」「キレイだねぇ。」 結婚披露宴は、和気あいあいとした雰囲気で行われた。「何だか、平和過ぎて眠たくなっちゃう・・」ハンジがそう言ってあくびを噛み殺していると、突然宴会場のドアが開いて、一人の女が入って来た。「許さない、あんた達だけが幸せになるなんて!」 血走った目でエルヴィンとリヴァイを睨みつけた女―奈々は、包丁を握り締めながら高砂席の方へと突進してきた。だが、彼女が高砂席へ辿り着く前に、警察官が宴会場に入って来た。「何をするのよ、離せ~!」奈々は泣き喚きながら、警察官に連行されていった。
2020年04月13日
コメント(0)
![]()
警察組織を創設した川路利良の生涯を描いた作品。何だか大河ドラマにもなりそうな、骨太な作品でした。
2020年04月10日
コメント(0)
![]()
映画は観てませんが、小説で読んでも楽しめました。
2020年04月10日
コメント(0)
![]()
冷戦時のチェコ・プラハで共に学んだ、国籍も出身地も違う友人達と過ごした万里は、30年ぶりに彼らの消息を探すが・・祖国とは、民族とは何かを問いかける作品でした。
2020年04月10日
コメント(0)
![]()
見合いの為にやって来た浅見の友人・桜田が、次々と殺人事件に巻き込まれ・・浅見がいつものように難事件の真相を解明する姿は格好良いです。ラストのやくざ達との対決が読みごたえがありました。
2020年04月10日
コメント(0)
「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。 手術室の前で、エルヴィンは梓とリヴァイの手術が終わるのを待っていた。 やがて、手術室からストレッチャーに載せられたリヴァイが出て来た。「リヴァイ!」「ママ!」 リヴァイの顔は、何処か蒼褪めていた。「ハンジ、どうなんだ?」「手術は上手くいったよ。けれど、出血が酷くてね・・後は本人の生命力に頼るしかない。」「そうか・・」「わたし達に出来る事は、リヴァイを信じる事だ。」ハンジはそう言うと、エルヴィンの肩を叩いた。「さぁ、これからはゆっくり休んでくれ、エルヴィン。リヴァイの事は、わたし達に任せてくれ。」「わかった。ありがとう、ハンジ。」 リヴァイは、遠くに見える光に向かって、ただ只管(ひたすら)闇の中を歩いていた。―人殺し!―気味の悪い化け物! 遠くから時折礫(つぶて)のように投げつけられる怨嗟の言葉など聞いても立ち止まりもせず、リヴァイは只管歩いていた。 彼が闇に包まれたトンネルを抜けると、眼前には一面の菜の花畑が広がっていた。―やっと、来たな。 誰かに肩を叩かれてリヴァイが振り向くと、そこにはもう一人の自分が立っていた。(どうして俺が、こんな所に?)―お前はもう、“過去”に縛られなくていいんだ。遠い昔の記憶も、お前が今まで苦しんで来た記憶も、全てここに置いていけ。(俺は、幸せになってもいいのか?俺は・・)―全て置いていけ。家族の元へ帰れ。(わかった。だが、お前はどうするんだ?)―消えるだけだ。 もう一人の“リヴァイ”は、そう言うとリヴァイの前から消えた。 やがて、リヴァイは全身を白い光に包まれ、気を失った。「う・・」リヴァイが目を開けると、そこには病室の白い天井が広がっていた。「リヴァイ、気がついたんだね?」「ハンジ・・」「お帰り、リヴァイ。」ハンジはそう言ってリヴァイに微笑むと、彼の手を握った。 「リヴァイ、朝食の時間だよ。」「あぁ。ハンジ、いつも忙しいのに済まねぇな。」「いいって。でもあんたの生命力と回復力は大したものだね。後遺症もないし、このまま順調に行くと退院は来週に出来そうだ。」「そうか、それは良かった。」「じゃぁ、また後でね。」 ハンジが病室から出て行った後、リヴァイは朝食を取りながら、不思議な夢の事を考えていた。 何故、前世の自分自身が出て来たのか―その夢の意味を知りたくて、リヴァイはずっとインターネットで夢の事を調べていたが、何もなかった。 朝食後、リヴァイがインターネットで再び夢の事を調べていると、その途中で某巨大掲示板の記事を見た。“記者殺しの真犯人、逮捕される!” リヴァイがマウスでその記事のタイトルをクリックすると、そこには自分達一家を狂わせたあの事件の犯人が緊急逮捕された事が詳しく書かれていた。―全て置いていけ。 あの時、夢の中でもう一人の自分が言った言葉の意味は、こういう事だったのかとリヴァイは理解した。『真犯人逮捕ってことは、A家はもう無罪放免ってこと?』『それは当然だろ。』『A家を誹謗中傷した奴ら、今頃震えてるんだろうなw』 手術から一週間が過ぎ、リヴァイの周囲が急に慌ただしくなった。 事件のことで、エルヴィンが手配したインターネット犯罪専門の弁護士がやって来た。「あなた方を長年誹謗中傷して来た七人の氏名と住所がわかりました。彼らを名誉棄損で訴えようと思いますが、いかがでしょうか?」「・・徹底的にやってくれ。」「わかりました。」 弁護士が去った後、病室に入って来たのはケニーとエルヴィンだった。「よぉリヴァイ、手術成功おめでとう。」「ケニー、相変わらず元気だな。」「エルヴィンから聞いたぜ、お前ぇこいつと結婚式を挙げるんだってなぁ?」「は?俺そんな事何も・・」「済まないリヴァイ、わたしが勝手に決めてしまった。」「てめぇ、一体どういうつもりだ?」「いいじゃねぇか、一生に一度の事なんだからよぉ、パァーっといこうぜ!」 退院したリヴァイは、結婚式の準備と裁判への準備を並行して進める事になり、休む暇なく忙殺される日々を送っていた。 そんな中、スミス家に意外な訪問者がやって来た。「お久しぶりです、リヴァイさん。」にほんブログ村
2020年04月10日
コメント(0)
「進撃の巨人」の二次創作小説です。作者様・出版者様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。リヴァイが両性具有設定です。苦手な方は閲覧なさらないでください。「ママ~!」「よぉ梓、元気にしていたか?」「うん!パパもコスモも元気だよ!」「コスモ?」「おばあちゃんと一緒にペットショップに行って、お迎えしたの!」「そうか・・退院したら俺も会いてぇな・・」「ママ、いつおうちに帰ってくるの?」「手術が終わったら、帰ってくる。」「わかった、それまでパパの言う事を聞いてるね!」「良い子だ。」リヴァイはそう言うと、娘の頭を撫でた。 手術は簡単なもので、何も心配は要らないとハンジから説明を受けたが、未だにリヴァイは不安で堪らなかった。 もし手術が失敗してしまったら・・そんな事を考えないようにはしているものの、ベッドに一人横になっているとどうしても悪い事ばかり考えてしまうのだ。「こんにちは、今日も良いお天気ですね。」 突然、隣の病室から声を掛けられ、リヴァイが窓から視線を外すと、そこにはあの“沖田総司”の姿があった。「沖田・・さん?」「もしかして、わたしの事を覚えていてくれたんだぁ、嬉しいなぁ。」そう言って、“沖田総司”は微笑んだ。「沖田さんは、いつからここの病院に?」「半年前かなぁ・・妊娠中に病気が見つかって、出産するまでずっとここに居ます。」「そうなんですか・・」「リヴァイさんは、どうしてここに?」「少し心臓が悪くて、近々手術する予定です。」「さっきの可愛い子は娘さんですか?」「えぇ、もう三歳になります。」「そうですかぁ、わたしね、女の子が欲しいって言ったら、主人に大笑いされたんです。子どもは神様からの授かり物だから、性別関係なく健康でいればいいって言うんです。」「良いご主人ですね。」「えぇ、わたしにはもったいないくらい。」 そんな事をリヴァイが“沖田総司”と話していると、そこへ彼女の夫が病室に入って来た。「今日は随分賑やかだと思ったら、友達が出来たのか。」「はい。」「久しぶりだな・・リヴァイ。」「土方さん・・」“土方歳三”との思わぬ形での再会に、リヴァイは驚きの余り絶句した。「・・まさかあなたが、いえ、あなた達が結婚されているなんて思いもしませんでした。」「まぁ、色々あってな。お前の方も、色々とあるようだな?」「えぇ、まぁ・・」「お前の家族が巻き込まれた殺人事件の真犯人の目星がついた。」「母さんに殺しの濡れ衣を着せた奴の名前を教えて下さい。」「そいつの名は・・」“土方歳三”は、リヴァイの耳元であの事件の真犯人の名を告げた。「後は俺達(警察)の仕事だ。お前は自分の身体を労わってくれ。」「わかりました・・」 とうとう、リヴァイが手術を受ける日が来た。「兄さん、大丈夫だからね。」「ミカサ、俺に何かあった時は・・」「駄目、そんな事を言っちゃ。兄さんは強い。」「そうだな・・」「リヴァイ、行くよ。」「ハンジ、俺はお前を信じている。」「・・わたしは、絶対にあんたを死なせないよ。」ハンジはそう言うと、リヴァイの手を握った。「リヴァイ、あんたはここで死ぬような男じゃない。わたしに全て委ねて、必ずわたし達の元に戻って来い、いいね?」「・・わかった。」「じゃぁ暫く眠って、リヴァイ。」 酸素マスクをつけられ、全身麻酔をかけられたリヴァイは、ゆっくりと両目を閉じた。「先生、血圧と脈拍、共に安定しています。」「よし、このまま続けよう。」ピッピッという電子音のリズムを聞きながら、ハンジはリヴァイの心臓にメスを入れた。 手術は滞りなく進み、ハンジがリヴァイの傷口を縫合しようとした時、血飛沫が彼女の手術着に飛び散った。「ハンジさん、出血が止まりません!」「リヴァイ、こんな所で死ぬな!絶対にあんたを死なせない!」“・・おい、起きろ。” 何処からか、誰かの声が聞こえて来る。(うるせぇよ、俺はもう休みてぇんだ。)“まだ休む時じゃねぇだろ。” リヴァイがゆっくりと目を開けると、目の前には懐かしい光景が浮かんだ。(ここは・・西本願寺の屯所・・どうして俺は、こんな所に?)“リヴァイ。” 襖が開き、リヴァイの前に髷を結ったエルヴィンが現れた。“リヴァイ、前世ではわたし達は結ばれなかったが、今の世ではお前と幸せになりたいんだ。だから、生きてくれ。”(エルヴィン・・) エルヴィンに抱き締められ、リヴァイはその温もりを感じ涙を流した。 その時、一筋の光がさした。 その光に向かって、リヴァイはゆっくりと歩いていった。にほんブログ村
2020年04月10日
コメント(0)

「グレイ家を襲った強盗犯は、三人組といいましたね?」 「えぇ。暗くて顔は良く見えませんでしたが、三人共男でした。」 「ジョン様とチャールズ様はどちらに?」 「さぁ・・お二人は・・」 ステファニーとエドガーが強盗事件について話していると、ジョージの悲鳴が聞こえた。 「ジョージ様、大丈夫ですか?」 「誰かが僕を殺しに来る・・怖いよぉ~!」 「大丈夫ですよ、ジョージ様。ここにはわたし達しか居ませんよ。」 悪夢にうなされていたジョージを、ステファニーは彼が寝るまで傍に居た。 「ジョージ様は?」 「やっとお休みになられましたよ。今は彼の心のケアが大事ですね。」 「ええ。ご両親を殺された上に、自分も殺されそうになったのですから、悪夢にうなされるのは当然です。」 「ステファニーさんも早くお休みになって下さい。」 「はい、わかりました。」 翌朝、ステファニーは実家の家族へ宛てた手紙を認(したた)めていた。 「スティーブ様、NYにいらっしゃるステファニー様からお手紙が届きました。」 「ステファニーから?」 執事長から、ステファニーの手紙を受け取ったスティーブは、蜜蝋の封を切り、それに目を通した。 『親愛なるお兄様、突然のお手紙を寄越してしまい、申し訳ありません。 NYで、わたしはジョージ=グレイという少年と知り合いました。彼は優しく聡明な子ですが、先日彼の両親は強盗によって命を奪われ、上の兄二人は行方不明となりました。このままジョージ様は孤児院に送られてしまいます。その前にどうか、ジョージ様をセルフォード侯爵家の一員に加えて頂けるよう、取りなして下さいませ。どうかお願い致します。 あなたの愛する妹、ステファニーより』 手紙を読み終えたスティーブは、ステファニーの手紙を携え、父の執務室へと向かった。 「父上、スティーブです。今、よろしいでしょうか?」 「スティーブか、入れ。」 「失礼致します。」 執務室に居る父の顔は、何処か疲れているように見えた。 「父上、お顔の色が少し優れないように見えますが・・」 「少し風邪をひいてしまった。それよりも、話しとはなんだ?」 「ステファニーから、こんな手紙が・・」 セルフォード侯爵は、ステファニーの手紙に目を通した後、こう言った。 「スティーブ、ステファニーにすぐ返事を出せ。ジョージ=グレイを我が侯爵家に受け入れると。」 「わかりました。では、失礼致します、父上。」 「スティーブ、今週末用事を空けておけ。お前に会わせたい人が居る。」 「わかりました。」 自室に戻ってステファニーの手紙への返事を認(したた)めながら、スティーブは深い溜息を吐いた。 (結婚、か・・) やがてセルフォード侯爵家を継ぐ身としていずれ自分は結婚しなくてはならない。 身分と家柄が釣り合う相手を。 (ステフはいいよな、愛する相手と巡り会えて。) まだ認めた訳ではないが、スティーブの目から見ても、ステファニーとエドガーは似合いのカップルだった。 同じ価値観を持つ者同士が結ばれるのが一番理想的な結婚なのだが、現実はそうはいかない。 せめて、ステファニー達には幸せになって欲しい―そう思いながら、執事長を呼ぶ為にベルを鳴らした。 「この手紙を、ステファニーに届けてくれ。」 「かしこまりました。」 グレイ家の強盗事件発生から数日後、長男・ジョンと次男・チャールズが、カルフォルニアの海岸で遺体となって発見された。 そしてチャールズの遺書には、自分が人を雇って両親を殺害し、全財産を奪おうとしたと書かれていた。 「信じられません、こんな・・」 「確かに・・」 ステファニーとエドガーが朝刊の記事を読んでいると、フロントから電話が来た。 「ステファニー=セルフォード様ですね?スティーブ=セルフォード様からお手紙が届いております。」 「ありがとう。」
2020年04月08日
コメント(0)

『お元気そうで良かったです。』 『ねぇステファニー、隣の方は?』 『はじめまして、ジョージ様。わたしはステファニーの婚約者・エドガー=セルフシュタインと申します。』 エドガーがそう言ってジョージに挨拶すると、彼は憧れの目でエドガーを見た。 『プレゼントは、後でお渡ししますね。』 『わかった!』 パーティーは、盛況だった。 「あなた、どうしてわたくしがあの子の誕生日をお祝いしなければならないの?」 「そう言うな。」 「あの子、何処か薄気味悪いったらありゃしない。あの女にそっくりね!」 「やめないか、こんな日に・・」 継母と父が自分の事で言い争っているのを偶然聞いてしまったジョージは、今にも泣きそうな顔をしながら自分の部屋へと向かおうとした時、彼は廊下でエドガーとぶつかってしまった。 『どうしたんだい、そんな顔をして?誰かにいじめられたのかい?』 『僕、要らない子なの?』 『そんな事はないよ。』 ステファニーからグレイ家の複雑な家庭環境を聞いていたエドガーは、そう言うと彼に微笑んだ。 『どうして、お母様は僕を嫌うんだろう?』 『ジョージ、君にはお母様が二人居るだろう?それはとってもうらやましい事なんだよ。』 『本当?』 『あぁ、本当さ。』 エドガーと共に客達の前に現れたジョージは、もう泣いていなかった。 「今日は楽しかったわ、あなた。」 「ジョージにプレゼントは?」 「そんなもの、はじめから用意していないわ。ねぇあなた、わたしやっぱりあの子を受け入れる事は出来ないわ。」 「あの子をひとりでフランスへと送り返すつもりか?あの子は物じゃないんだぞ!」 「だったら、孤児院にでも入れて下さいな!もうこれ以上、あの子の顔を見るのはうんざりなの!」 グレイ夫人がそう言った後、外から突然悲鳴が聞こえて来た。 「一体、何が・・」 グレイ氏が寝室から出ようとした時、一発の銃弾が彼の胸を貫いた。 「あなた!」 グレイ夫人が慌てて夫の元へと駆け寄ると、彼は息絶えていた。 「金を出せ!」 「やめて、殺さないで!」 グレイ夫人はそう言って強盗達に必死に命乞いしたが、無駄だった。 『今の、何の音?』 銃声を聞いたジョージが部屋から廊下へと出ると、そこは血の海だった。 「お父様、お母様!」 彼が両親の寝室へと向かうと、二人共死んでいた。 (何で、どうしてこんな事に・・) 突然の両親の死にショックを隠せず、その場に固まったまま動かないジョージのこめかみに、冷たい物が押し当てられた。 「声を出すな、出したら殺す。」 (誰か、助けて・・) 「跪け。何、すぐに両親の元へ送ってやる。」 ジョージは死を覚悟した。 だがジョージのこめかみに銃を押し当てていた強盗は、何者かによって倒された。 『ジョージ様、お怪我はないですか?』 『ステファニー・・』 ジョージはステファニーの顔を見た瞬間、安心して気を失った。 「あなた達は、強盗の顔を見たんですか?」 「えぇ。強盗は三人組ですが、一人はわたしが倒して、残り二人は家の裏口から逃走しました。」 ステファニーは、グレイ家に駆け付けて来た警官達に逃走した強盗犯二人組の人相を教えた後、毛布にくるまって震えているジョージの方を見た。 「ジョージ様はこれからどうなるのですか?」 「彼は、孤児院に行く事になりだろうね。」 「そんな・・」 「ジョージ様を、わたし達が預かってもよろしいでしょうか?」 「それは、構いませんが・・」 警察の事情聴取を終えたステファニーとエドガーは、孤児となったジョージを連れて宿泊先のホテルへと向かった。 『ジョージ様、もう大丈夫ですよ。今夜は一緒に寝ましょうね。』
2020年04月06日
コメント(0)

毎年同じ場所で桜の写真を撮っているので、今年は桜の写真は一ヶ所だけ撮りました。桜は来年も撮れますからね。
2020年04月05日
コメント(2)
全56件 (56件中 1-50件目)
![]()
![]()
