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August 12, 2018
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カテゴリ: 平和
新潟青陵大学大学院教授 碓井真史

■「核抑止論」に陥る人間の心理とは
社会心理学の用語に「社会的ジレンマ」というものがあります。個人にとっての最適な選択が、必ずしも社会全体にとって最適な選択とは言えないことを意味します。

他国の核兵器の脅威に対抗するために自国も核兵器を保持するという核抑止の考え方は、自国のKことだけを考えれば最適な選択かもしれません。しかし、仮に核戦争が勃発するような事態になれば、当該国を含めた全人類にとって最適な選択とは言えないのです。その時になって、「核兵器さえ保有してなければ……」と言っても時すでに遅しです。

また、米ソ冷戦時代にアメリカの社会心理学者ドイッチとクラウスが行ったゲーム理論の実験では、二者間で何らかの交渉をする際に、威嚇(脅し)によって相手を譲歩させようとするのは得策ではないという結果が出ています。威嚇は、相手の自尊感情を刺激し、反発や報復を招きます。そうすれば双方ともに感情的になり、結果的にどちらも利益を得ることができなくなってしまうのです。

もし双方ともに利益を得ようとするならば、冷静に話し合い、互いに譲歩する形が最も有効であるというのがこの実験の結論です。心理学ではこれを「互譲効果」と呼びます。

ただし、人間にはどうしても、他者に負けたくない気持ちがあるため、そう簡単には互譲効果を生み出すことができず、社会的ジレンマに陥ってしまいがちです。ひどい場合には、自分が不幸になってでも、相手を不幸にしたいとさえ考えてしまうのです。そうなれば、未来には破滅が待っているだけなのです。

私が子どもたちを対象に行った実験では、他者と協力関係を構築できるかどうかは、学校の成績の良しあしとは関係がないことがわかりました。むしろ、成績が良い子どもほど、相手を打ち負かして自分だけが勝てばいいと考える傾向があるのです。

国家レベルの話をすれば、他国に負けたくないからこそ、核戦争だけでなく、偶発的な事故のリスクがあることがわかっていても、核抑止論に依存し続けてしまうのでしょう。







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Last updated  August 12, 2018 04:27:52 AM
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