PR
Keyword Search
Freepage List
世界から注目される豊岡の取り組み
中貝宗治(豊岡アートアクション理事長)
一流が来る創造の場に
皆さんは、フランスのカンヌやアヴィニヨンをご存じでしょうか。カンヌは世界三大映画祭の一つカンヌ国際映画祭が開催され、アヴィニヨンは世界で最も成功した演劇祭の一つが開催される町、小さな地方都市ながら、世界中の多くの人が知っている「小さな世界都市」なのです。
兵庫・豊岡も、何かに突き抜けた魅力を持つ「小さな世界都市」を目指しています。それを伝えたく、近著『なぜ豊岡は世界に注目されるのか』(集英社新書)を出しました。
一番の取り組みは、演劇の町づくり。演劇の町づくりというと、皆が演技気を上演し、それを見て楽しむ、というメッセージを持つかもしれません。
でも、それでは、自分は関係ないと思う人も多く出てしまいます。個人の好き嫌いではなく、演劇を町づくりに生かしていこうという取り組みなのです。
実際、 9 月に行われる豊岡演劇祭には、昨年には約1万8000人の来場者がありました。城崎国際アートセンターは、宿泊しながら部隊を作り上げる「アーティスト・イン・レジデンス」として、一流のア-ティスとが世界中からやって来ます。これを観光につなげ、町を元気にしていくのです。
また、子どもたちはコミュニケーション能力を高めるため、学校で演劇を学び、最近は、認知症の人とのコミュニケーションに演劇を生かせないかという取り組みも進められています。
演劇によって町を活性化
小さな世界都市をアピール
地方に残る日本らしさ
これまで豊岡は、コウノトリ野生復帰で注目されてきました。また、農薬に頼らない「コウノトリを育む農法」を普及。安全・安心な農作物として人気を集めています。
さらに、城崎温泉は日本の伝統的な風景が残されている温泉街として、海外の人たちからの観光人気が高くっています。出石にしても、江戸時代の城下町のような情緒が残っています。
海外の人たちが観光に来たら、まず東京、大阪、京都などに行くことでしょう。でも、その次となると、都市部ではなく、日本らしさが残っている地方になるはず。豊岡はその候補地になるわけです。
豊岡では、コウノトリ、インバウンド、演劇に加え、ジェンダーギャップの解消を加えた4本の矢を考えています。
人口減少を考えると、問題なのは若者がいなくなっていること。高校を卒業し、都会の大学へと進学した和漢のが、就職時には地元に戻ってこないのです。特に女性の減少が問題です。
現在は、市内103の企業がジェンダーギャップを、どう解消するかに取り組んでいます。その中から、初めて女性管理職が誕生したり、社長自らが 1 カ月の育児休暇を取ったりするケースも。まだ、ゆっくりですが、変わり始めています。
多様性を生かせる社会
コウノトリが空を舞い、伝統的なものにひかれて海外から多くの人が集まり、豊岡を素敵な場所だと言ってくれる。また、演劇が世界と結びついて、豊岡が創造の場になる。町の人々も、演劇的なワークショップがコミュニケーションのために役立つ。
さらに、ジェンダーギャップがかなり解消され、男性でも女性でも、障がいがあってもなくても、お年寄りでも若くても、それぞれに居場所があり、ちゃんと社会的役割を果たしている。そんな多様性が生かされている町になったら、本当に素敵だと思います。
そこに向かう取り組みが、少子化、人口減少という危機を克服することにもつながるのではないでしょうか。ローカルの魅力は、大都市のように「大きい・高い・速い」ではありません。
大切なのは、何かに突き抜けようとする意識を持つこと。突き抜けられそうなものを見つけ、磨いていく。それが町の魅力になり、町を変えていくことになるのだと思います。=談
【文化 Culture 】聖教新聞 2023.8.24
宮沢賢治『春と修羅』を読む November 25, 2024
シュティフターの魅力 November 22, 2024
海と人のアーカイブ November 20, 2024
Calendar
Comments