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2007.05.04
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カテゴリ: フランス映画
DEDALES
Rene Manzor
99min

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寸評:逮捕される6日前から刑事マティアスが連続殺人犯を追う軸、裁判も終わって専門施設でブレナック医師が精神鑑定と治療を行う軸、犯人の過去のトラウマ、それらが平行して描かれ最後のどんでん返しに至る脚本と編集は見事。その意味で楽しませてもらった。しかし主要3人物の心理の「何故?」については人間心理に関する監督の洞察不足で説得力がなく、ありきたりの浅い知識に頼っただけ。

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患者(犯人)のファイルを抱えたブレナック医師が白衣の別の職員と病院の廊下を歩いている。途中ブレナックはすれ違う患者に「ドクター」と呼び掛けられたりするが、実はこのセリフ自体が既に伏線と言ってもいい。同行の職員が部屋の扉の鍵を開け、ブレナックは室内へ。三脚に固定されたビデオカメラを準備し、椅子に腰掛ける。映画の画面はビデオカメラのモニターを写し、そこに映ったブレナックが語り始める。クロードという27人を殺害した連続殺人犯のとの出会いからだ。ブレナックは「私の人間としての存在に衝撃を与えた患者だ(字幕とは別訳)」と語る。

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犯人クロード逮捕の6日前。クロードの行動が描かれる。警察の捜査は難航していて、マティアス刑事が助っ人に呼ばれ、マティアスは霊媒か透視のような幻視を見ながら事件と犯人に迫っていくが、その幻視は彼を苦しめる睡眠中の悪夢とも重なっている。一方3ヶ月の鑑定・治療期間も2ヶ月過ぎたが上手くいかない担当のカール医師(ちなみにこの医師の姓はFREUD、日本式に言えばフロイトとなっている)の方はブレナック医師に助っ人を頼む。ビデオカメラを設置してブレナックは犯人クロードに面接するが、あまり協力的でないクロードはカメラをソファーに座ったブレナックに向ける。ちょうど冒頭と同じ光景が現出するわけだ。翌日の面接では7才半という人格の少年となっていて、前日の面接の記憶はない。そしてやがて子供・大人・男性・女性の7つの人格があることがわかる。病院内で他の患者達から彼(and/or彼女)はドクターと呼ばれているが、面接で登場する人格の名前はテーセウス、ダイダロス、アリアドネ等で、どれもギリシア神話でミノタウロスを閉じ込めた迷宮の物語に登場する人物たちの名前だ。一方マティアス刑事も9年ごとに少年と少女各7人ずつをミノタウロスに生け贄とした神話にクロードの連続殺人が重なっていると推理する。

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(以下少しネタバレ)
一方カール医師はクロードが少年時代を過ごした地方の家等を訪れて彼(or/and彼女)の母親をめぐる過去のトラウマを調べに行くが、これと逮捕に至る軸、鑑定・治療の軸、マティアス刑事の内面と人格の問題、ブレナック医師の内面と人格の問題、これらすべてがアッと言わせる最後のどんでん返しで1つに統合される物語構成で、寸評にも書いたようにその脚本力と綿密な編集は見事だ。しかしこと3名の各心理と病理、例えばそういうトラウマがあって人格分離に逃げて自分を守ったクロードならクロードの心理の必然とか、それが原因で(迷宮の物語の絵本を子供の頃から愛読していたにせよ)連続殺人を彼(or/and彼女)が犯すようになる必然が描かれていない。説明的に描かれていないだけではなく、その辺に関する深い考察をもともと欠いているのだ。それゆえ単なる常識的発想による心理サスペンスになってはいても、深い人間心理のドラマには決してなってはいない。その点がこの映画の限界であろうし、もし2つが両立していたら恐ろしいほどの傑作になっていたに違いない。本能的には分離したくない自分の中の多数の人格を、社会生活を送るために意識(理性)で無理に統合していると言っているのだが、ここで原語のconscienceを「良心」と字幕に訳しているのはやや意訳が過ぎ、「意識」とか「理性」と解した方が相応しいと思った。

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クロードを演じたシルビー・テステューは見事。男女色々な年令の人格を適格に演じ分けていた。女性でありながら、決して特に男装しているわけではないが、男性の若者や子供にも見えてくる。色々な役を演じられる有能な女優さんだ。ブレナックを演じたランベール・ウィルソンも良かったが、マティアスを演じたフレデリック・ディファンタールにはやや不満。大袈裟な演技で役をしっかりこなせないことを誤魔化しているといった感じだった。

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(以下もう少し、でも決定的ではないネタバレ)
この映画はラストを知らずに見るのが面白いので結末は書かないが、ヒントとしてはクロードClaudeというフランス名が男女に共通であること、クロードが病院内で他患者に「ドクター」と呼ばれていたこと、人物を入れ替えての同じような似たようなショット(ビデオで撮られるのがクロードであったりブレナックであったりとか、2人の座る位置とか・・)、こうしたことが全て伏線となっている。またギリシア神話の予備知識はなくても十分見られる。それと最後の結末は、全部が統合された1つの物語として解釈することも出来る他に、あくまで3つ別々の物語の比喩的表現による単一化とも解釈できると思う。

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Last updated  2007.06.13 19:06:57
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