ラッコの映画生活

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2008.09.07
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カテゴリ: ヨーロッパ映画
DU LEVANDE

Roy Andersson
ロイ・アンデション
aka ロイ・アンダーソン
94min(1:1.66、スウェーデン語)
(桜坂劇場 ホールCにて)

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スウェーデンのロイ・アンデションという映画監督、けっこうな話題作でもあった『散歩する惑星』は見ていなかったので、先日レビュー書いた 『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』 がはじめてだった。この2作品のチラシに「スウェーデンの巨匠ロイ・アンダーソン」なんて書いてあって、スウェーデンの巨匠と呼べるのはイングマール・ベルイマンだけでしょ、なんてベルイマン好きのボクには反感があった。でも実際に見て、巨匠の名が相応しいかどうかはともかく、どちらもいい映画だった。

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既に書いたようにはっきり夢として語られる部分もあるけれど、それ以外の部分は現実かと言えば、それもまた夢なのかも知れない。それに現実と言ったとしても、もともと映画というのは作り話なのだ。何度か登場する、とあるバー。いつも店主が「ラストオーダー、また明日があるさ。」と言う閉店まぎわだ。そこに若いアンナもいたが、彼女は憧れのロックミュージシアンのミッケがいるのを見つけ「あなたの音楽は素晴らしい」と話しかける。ミッケは彼女に一杯どう?、と言ってくれる。後日彼女はミッケのグループ(ブラック・デビルだったかな?)のスタジオ・リハにやってくるけれど、そんなリハはなかった。最初のバーでの出会いから既に彼女の夢、あるいは妄想なのかも知れない。渋滞の中の1台のトラック。荷台にコンクリートミキサーが積んであるから運転するのは工事作業員だろう。彼の語る悪夢を映画は映像として見せてくれる。何処かの家庭での豪勢な会食会。テーブルには年代物の貴重な皿やグラスがセットされている。彼はテーブルクロス引き(テーブルクロスを引っ張って、食器等はテーブル上にそのまま残し、クロスだけを抜き取る技)の名手とされていて、居並ぶ会席者を前にクロスを引くのだけれど、食器も一緒に引いてしまい、すべて壊してしまう。法廷で彼は死刑判決を受け、電気椅子で処刑される。2百年以上前の年代物の貴重な食器と罪を犯した人1人の生命とどちらが重いかという含意もあるだろう。そんな死刑判決を言い渡しながら法廷でビールを飲んでいる裁判官。教会の集会で「罪に比べて重すぎる罰を与えていること」に対する赦しを神に求める女性が後で描かれる。彼女はその他色々なことを祈るのだけれど、ここでは監督の社会に対する批判が列挙されているのかも知れない。

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小学校の教室にやってきた女教師。授業を始めようとするのだけれど、突然廊下に出て泣き始める。不安そうに1人また1人と廊下に出てくる生徒たち。夫婦喧嘩で夫にひどい言葉を言われたことを悲しんでいたのだ。一方別のシーンではその夫。彼はカーペット屋で、カーペットを買いに来た老夫婦の相手をしているのだけれど、やはり泣き始めてしまう。その他、自分は誰からも理解されないと嘆く女、誰からも愛されたことがない男、世界でいちばんついていない夫婦、ダメ息子の金の無心にウンザリしている父親、他人の悩みばかりを聞くことがイヤになっている精神科医。彼は銀行にまんまと騙されて投資をしてしまい、老後のための貯蓄を減らしてしまったことを悩んでいる。カウリスマキの映画もそうだけれど、ここでも銀行は悪者に描かれていた。

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この映画の原題は「生きている(生活している)君」ぐらいの意味なのだろうか。『愛おしき隣人』はなかなか良い邦題だけれど、そして決して内容を裏切ってはいないけれど、ここで描かれるそれぞれ悩みを持って日々を生きる普通の人々に対する解釈(感想)を押し付けてしまっている。それは本来映画を観た観客が感じるべきことだ。一部で結構な人気映画らしくブログ等でのレビューも少なくないが、おおかたどれもその解釈・感想を基本としている。この映画は何人もの人物の生活の一こまを描いているけれど、中心的な人物の1人はロックミュージシャンとの結婚に憧れる少女アンナで、たぶんいちばん何度も出てくるし、冒頭の男の悪夢と枠構造を成す最後の場面でも登場して全編を締めくくっている。映画の最も美しく、感動的な、そして撮影に力の入ったシーンも、晴れてミッケと結婚した彼女の夢だ。白いウエディングドレスを着た彼女が、タキシードを着てエレキギターを手にしたミッケと2人、ささやかな新居にいる。窓の外の風景は流れている。実はそれは車窓で、建物ごと列車のようにレールの上を走っている。到着したのは駅ならぬ街の一角。窓の外に集まった人々は2人を祝福する。冒頭の男が寝ていた部屋もそうだったけれど、それまでも部屋には窓があった。しかしいつも外には何も見えなかった。あるいは群集も出てきたが、そのシーンの主人公との関係は希薄だった。豪雨の中、屋根のあるバス停は雨宿りの人で既に一杯。後から来た男の場所はないけれど、そんな男に雨宿りの人々は無関心だった。しかしこのシーンではじめて窓は開かれ内と外、主人公と群集の関係・交歓が描かれた。もちろん2人の結婚も、その2人を祝う群集もアンナの夢ではあるのだけれど、ここに監督の人間に対する希望・夢があるのかも知れない。夫婦喧嘩で1人廊下に出て泣き出した女教師を気遣うように出てきたのは生徒たちだった。これは子供に対する希望・期待なのかも知れない。

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冒頭の居眠りする男のシーンで窓の外に近付いてくる列車の音らしきが聞こえたと書いた。そして目覚めた男は夢に見た空爆の恐怖を語った。列車の音はアンナとミッケのレール上の新居と結びついている。そして映画の最後では飛来する何機もの黒い大型爆撃機が描かれ、それも男の悪夢と枠を成している。はじめて描かれる広い空間(丘のような場所)にいるアンナが空、たぶん飛来する爆撃機を見上げるシーンで終わる。ここまでは、狭い室内や、屋外でも街のほんの一角しか描かれなかった。そんな狭い室内で悪夢を見る男で始まった映画。列車の音と空爆の悪夢。列車の音は人間に対する期待である新婚の2人を祝う群集に帰結し、空爆の恐怖は最後の爆撃機に帰結する。はじめての広い空間は、もしかしたらこれだけが夢ではなく現実を表しているのかも知れない。もちろん我々市民には参政権や社会活動の自由はあるけれど、世界はもっと高度に強い権力や体制、政治によって動かされていて、そんな中で我々一介の市民一人ひとりは、日々喜怒哀楽を持って生きるしかない。そんな中でイヤでも懸命に生きているのだ。

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Last updated  2008.09.09 22:55:44
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