ラッコの映画生活

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2008.10.15
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カテゴリ: 日本映画
おそいひと

Tuyoshi Shibata
白黒83min(DV/35mm 日本語)
(桜坂劇場 ホールCにて)

LateB_0.jpg

何時間か前に見てきました。非常に面白い映画でした。障害者が殺人鬼になるという物語を、実際の障害者が俳優として演じている。賛否両論は障害者ということに関してばかりだ。監督の意識に実際にあったかなかったは不明だが、ボクはこの作品に障害者ということから離れて、もっと普遍的な意味あいをも感じた。住田雅清という重度身体障害者の俳優の存在感と演技に圧倒された。(引用写真はちょっと恐そうですが、殺人シーンなどもおどろおどろしいものではありません)。

LateB_1.jpg

住田雅清(42才)、それは役者の名前であると同時に作中の人物の名前でもある。重度の車椅子脳性麻痺の障害者だ。こうした障害者とは一般に、健常者とここでは呼んでおくが、その健常者である我々にとって何なのだろう。街角でそうした障害者と出会うと、目を背ける、あるいは見て見ぬふりをする。それはなぜだろう。それは、大袈裟に言うと、我々が自分のアイデンティティーをそれによって持っている根拠を揺さぶられるからだ。我々は何らかの自己存在価値、別の言い方をすればプライドによってアイデンティティーを保っている。そしてそれには多かれ少なかれ他者との比較が根底にある。いくら自分のために勉強をしていると言っても、クラスで1番になったという誇りは、クラスの残りの生徒に勝ったということだ。こんなプライドにはもちろんピンからキリまである。みんなが持っているわけではないブランドもののバッグを持つのだってそんなプライドの一つ。それはオリンピックで金メダルを取ったというプライドと、プライドであるという意味での本質は何らからない。イケメンの女にもてる男は、そんな自分が嬉しいし、好きだ。もちろん人によって程度の差はあるけれど、「自分が他人より」、だからプライドとなる。全世界の男がみんな同じ顔、スタイル、声・・・だったらそれはプライドとはなり得ない。つまりはもてないブス男がいるからこそのプライドだ。そして「このブス男が!」と優越感を持つこともできるし、そんなブス男を公然とバカにする男もいる。ところがたいていの場合、障害者に出会うと、自分より究極にブスであると思えるはずの障害者を、バカにすることが出来ない。かえって自分の存在を後ろめたくも感じてしまう。つまりは、自分が「もてる男」として持っていたプライドは、障害者を前にすると根拠を無にされてしまうのだ。この健常者と障害者との間には一線があるのである。それが区別とか差別だ。だから障害者に殺人鬼を演じさせたという理由でこの映画に不快感を持つ観客は、その根底にこの「区別」や「差別」意識を強く持っているということだ。健常者が殺人鬼を演じても誰も文句は言いはしない(その映画内容批判は別の問題)。障害者への偏見を助長するというような理屈は、とってつけた理由でしかない。

LateB_2.jpg

変なカッコウで、妙な歩き方をしている障害者を目にしたとき、目を背けるよりも、指差して大笑いする方が罪がない。なぜなら前者の意識には障害者と健常者を区別する「一線」があるのに対して、人を笑い者にするのは褒められたことではないけれど、後者の意識には「一線」がないからだ(もちろん単なる節度の無さである場合もあるけれど)。色々な価値観から我々は美しい物から醜い物まで、最良の物から最悪の物まで、様々なものをグラデーションを持った連続性のどこかに位置付ける。人だって同じなのだ。肉体的運動能力という物指しで計れば、グラデーションのいちばん下位の方に位置付けられるだけで、自分とは一線の別の側に存在するのが障害者ではない。

その住田雅清演じる住田雅清42才。この手の障害者は実年齢よりも幼く見える場合もあるが、彼の麻痺の状態と同様、それはグラデーションの位置付けであって、42才の男性であることに変わりはない。一見子供っぽくも感じられるけれど、最後に俳優・住田雅清のメッセージを引用するように、知的レベルまで劣っているわけではない。普段はおばさんのヘルパーが来て料理等をやってくれる。他にデスメタルのバンドをやっているヘルパーとも言えるし、飲み友だちとも言えるようなバンドマンがいる。ある日そんな彼のもとに、卒業論文を書くために介護を経験したいと、女子大生の敦子が2ヶ月の予定で通うことになる。住田雅清は彼女が来る前から、「その娘はいつ来るの?」と内心わくわくしている。やって来てみると、敦子はなかなか良い娘。そしてそんな彼女に住田雅清は「叶わぬだろう」恋心を持ってしまう。3名のルームメイトと4人で暮らす敦子だったが、ある晩男の友だちも何人か来ていつものように騒いでいると、敦子の携帯が鳴る。彼女が出るとほとんど無言だ。住田雅清はボイス・ヘルプ・マシーンを使って意志を伝えていたが、話すことは出来ない。それを察して敦子はファックスの番号を教える。やがて電話が鳴り、ピーとファックスが送られてくる。「一発やらせてくれ。住田雅清」。戸惑いと怒りで凍り付く敦子。



LateB_3.jpg

映画は、社会の中で自分ではどうすることも出来ない不遇を持たされた住田雅清が、無差別殺人鬼になっていく過程が描かれていた。冒頭にも書いたように監督にその意識があったかどうかは解らないけれど、障害者という枠を外してのテーマが、ボクには感じられた。良い悪いで言えばもちろん悪いのだけれど、色々な意味で社会の矛盾や不備によって、ここで言う意味での健常者であっても、出口無し(と本人は感じている)不遇に置かれた人々がいる。そんな不遇は、生まれ落ちたときからの全ての偶然や必然の出来事の積み重ねであって、必ずしも本人の責任ばかりとは言えない。そしてその人が持つようになった憎悪は、やはり無差別殺人という結果をも生む。昨今の各地の無差別殺人、通り魔殺人事件。そうした事件(あるいは犯人)を生む本質と過程を描いたメタファーとも受け取れる物語なのだ。健常者による障害者差別が、障害者の憎悪を生み、無差別殺人を生む。この一線による区別が無かったら、住田雅清は敦子に失恋しても殺人鬼にはならなかっただろう。それは健常者の通り魔殺人犯も同じなのである。 ある方の日記 へのコメントととして書いたことだが、社会の中での不利益な立場は、それが集団としてまとまっていれば、フランス革命とかロシア革命となる。しかしその背景にある社会の矛盾に苦しむ個人が、集団とならずにバラバラに憎悪を持ったとき、それはこのような事件になるのではないだろうか。


以下は、映画のチラシにあった、俳優・住田雅清のメッセージです。

「はじめまして、住田雅清と申します。私は、言葉が全くしゃべれず、現在トーキングエイドを使用してコミュニケーションを図っている重度の車椅子脳性麻痺者です。この度『おそいひと』という映画に主演俳優として出演しました。この作品の中で、私は殺人犯を演じています。『障害者が殺人鬼として登場するから、障害者差別を助長する』と感じる方たちもおられるでしょう。日本の映画で今まで殺人を扱った作品は無数にあると思います。この『おそいひと』はその一つに過ぎません。障害者というだけで、過激な表現が暗黙の了解のもとに制約されてきた日本映画界において、障害者が常軌を逸した人物として登場するこの映画は、強いメッセージを持ち、且つ優れた文化作品だと誇りを持って言えます。困難なことかも知れませんが、障害者が自分たちの文化を取り戻す作業が必要だと思います。障害者も障害者の世界に閉じこもらず、もっといろいろな人たちと協力し合い、文化創造を力強くしていかねばならないと思っています。」




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Last updated  2008.10.15 04:49:55
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